月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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取り戻すべく

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 86話

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翌日…ギルドは朝から大忙し。

各地への連絡や、シオン達への連絡。

ギルドの強化に武器防具の強化。

回復物資の調達、城外戦闘の打ち合わせ。

ちなみに城内潜入については作戦立ては不可能だった。

ゼファの力のせいで、世界中が見れるようで、

作戦を立てても全て筒抜けになるらしい。

ソレイユ達も、それぞれ思う場所に向かった。

ソレイユに至っては、呼ばれていたので今はイテールナ城だ。


ソレイユ「あの…それで渡したいものって…?」

ラージャ「これだ!」

渡されたのはイテールナ城の騎士正装に似た感じのデザインのもの。

ソレイユ「え、え、どうしたの、これ!?」

カテドラル「流変剣を持っているのは君だ。

ゼニスの立場に今立っているようなものだ。」

ラージャ「とはいえ、正規の騎士じゃないのに正装もな?

だから、ちょっとデザイン変えて、お前専用に仕立ててもらったんだ!

ちなみに効果は魔力の持続回復付きってな!」

ゼルシェード「かなりの効果じゃないか…;;;」

ソレイユ「い、いいんですか?」

戸惑っていたら、「まあまあ着て来いって!」と押し出され、着てみることに…。


………数分後。

ソレイユ「ど、どうか、な…?」

ラージャ「あっ! 似合ってる!」

騎士みたくなったソレイユ。いかにも剣が似合いそう。

ラージャ「この姿の方が、剣とかは扱いやすいと思うしな」

ソレイユ「…着慣れないなぁ…ちょっと恥ずかしいかも。

でも、かっこいい」

女性用の騎士正装を模した感じらしく、色もソレイユに合わせてくれたそうな。

カテドラル「ゼニスの事を頼む。」

ラージャ「俺は行けねぇからな。ここは恋人が何とかしてくれよ!」

ソレイユ「こ、……うんっ、もちろん! 王子様を助けて来る!」

一瞬戸惑ったが、すぐにいつものノリで返す。

ゼルシェード「さすがだな…;;;」


サルファーは…

サルファー「ジューン様!」

ジューン「あ…サルファー! 良かった…元気そうで…」

一度屋敷に帰ってジューンに会って来ていた。

ジューンはグラファイトの言ったとおり、病は治り、

筋力が落ちているからまだ学校には戻れないが、家の中をうろうろできるまで回復していた。

ジューン「サルファー。ごめんなさい。私のために危険な事、いっぱいあったでしょう?」

サルファー「いえ。いい仲間にも出会えて、充実していますよ。」

……

ジューン「これから、最後の戦いがあるのでしょう?」

サルファー「知っているのですか?」

ジューン「これでも有力貴族の家ですよ? 情報ぐらい流れます。

……あの、サルファー。」

ジューンが何か頼みたそうにしてるので聞いてみる。

ジューン「全て終わったら…グラファイトさんに会わせてほしいんです」

サルファー「彼に?」

ジューン「一度、面と向かってお話がしてみたいんです。

責めたりはしません。ただ、会わずに逃げていたら、いつまでも前に進めないと思って…」

ジューンはこういうところ、芯が強い。

サルファー「……ええ、分かりました。じゃあ、勝って帰らないといけませんね」

ジューン「ふふ、ええ。約束してくださいね? あ、そうだこれ。」

渡されたのはブレスレット。

ジューン「私が作ったんです。効果があるか分からないですけど…どうかお守りにでも」

サルファー「……ありがとうございます。必ず、生きて戻りますね」


パリスは…

パリス「……ただいま」

「!? パリス!?」

「無事だったのか!?」

自分の家に帰宅。親と向き合うために単身戻って来たのだ。

パリス「…はい。とは言っても、すぐにまた行きますが…」

「…まだ、戦いに行くの?」

「お前がそこまでする必要はないだろう!?」

パリス「……私は! お父様とお母様の操り人形じゃありません!

…もう、強くなりました。仲間と共に行くのが私の意志です。」

きっぱり言われて、両親もたじたじ。

「…パリス…何か、変わった?」

パリス「色々あったんです。旅の中で。

もう、自分の意見を押し殺す私じゃありません。」

少し沈黙される。

正直怒鳴り散らされるのを覚悟していただけに拍子抜けだった。

「……もう、子供じゃないんだな」

「長いこと縛り付けていたような……」

パリス「え?」

………

「どこかに行ってしまうのが怖くて…ごめんなさい。」

「あんなんじゃあ、余計に離れられるよな。…変にトラウマを植え付けて、すまなかった…」

パリス「…え、あの……」

パリスが今度は内心パニック。謝られるなんて思っていなかった。

「……これ、こんな物で赦されるとも思わないけど…」

渡されたのは小さい花のブローチ。

「これでも良ければ、アミュレット代わりにでもしてくれ。

…必ず、生きて帰って来てほしい。そして今度こそ、ちゃんと家族として接しさせてくれ」

もう一度…チャンスを…。

パリス「……ありがとう、お父様、お母様。

…絶対に、生きて帰るね!」


ビオレは…

もちろん。ルーナの里へ再度訪問。

ビオレ「リラ姉様!」

リラ「ビオレ?

明日は決戦よね? 良いの、こんな所へ」

ビオレ「明日だから来たのよ。

…ねえ、向こうのサクラ、ガルムがいた所のサクラ。一緒に見に行かない?」

ビオレの誘いにリラはすぐに応じた。

………

リラ「あの時はありがとう…おかげでガルムに怯えずに暮らせるようになったわ」

ビオレ「ゼニス達のおかげよ」

今はいない彼。ゼニスがいなければガルムには勝てなかった。

あの時は、本当に無茶が過ぎたな…なんて思う。

リラ「ゼニスさんは、戻って来れるかしら?」

ビオレ「戻って来させるわ。絶対にね」

リラとしてはビオレも無理をする節があると思っている。

だから…

リラ「ビオレ。必ず、生きて帰ってくるのよ?

…これ。預けておくから」

ビオレ「姉様…これ!?」

渡されたのはリラが大事にしていた髪飾り。

リラ「現神社の管理者がつけているべき髪飾りよ。

お守りとして持って行きなさい。そして、必ず返しに来なさい」

これは、必ず帰って来させるために…。

ビオレ「……ありがとう、姉様。

…必ず、ゼニスも一緒に、この大陸に帰ってくるわ」


エルブは…

エルブ「えーと、ここはこうで…フェズさん! こっちおねがいします!」

フェズ「おー? どこだー?」

ギルドの強化、回復系統のアイテム調達などなど。

四零士とフロスティの手伝いをしていた。

エルブ「えっとこの裏ですね…あ、サラテリさん! その箱こっちに!」

サラテリ「はいはーい! いやぁ、エルブもきびきび動けるようになったなぁー!」

プリムローズ「エルブ。これどうしたらいい?」

エルブ「えっと、強化素材は…右に行った突き当りの店にお願いします!

あ、グラファイトさんは治療班が呼んでましたよ!」

グラファイト「治療班が?」

治療班は、城外戦闘で負傷した人の手当に当たるメンバーだ。

エルブ「傷の種類、状態異常の種類について聞きたいそうで」

エルブはマスターから言われた事を全部覚えて指揮していた。

フロスティ「エルブ。我は何かやる事あるか?」

エルブ「ひ、姫様は…じゃあ、僕の手伝いお願いします。

ここの魔力が弱いので、何とかしようと思ってて…」

………

フロスティ「エルブは、どこにも用事は無いのか?」

エルブ「皆さん、家族とかに会いに行ってますけど、

……僕の家族は、フェズさん達と、姫様ですから」

だからここで良いのだ。決戦前に、ここに居たいのだ。

フロスティ「……エルブ。必ず生きるのじゃ。

そして、絶対に兄を止めてくれ」

エルブ「もちろんですよ。師匠も助けてきます」

そう言うと、フロスティは魔力で一つの石を生成。

フロスティ「よし、これを渡しておくぞ」

エルブ「これって……」

綺麗な紫色の石だ。

フロスティ「四零士と我からって事で、もらってくれ。

…死ぬなよ、エルブ」

エルブ「……はい!」


城から帰った後、ソレイユは自分の村に戻って来ていた。

ソレイユ「……全部終わったらなんとかしないとなぁ……」

ゼルシェード「…酷いありさまだな。…フェズがやったんだったか?」

ソレイユ「うん…」

あれから結構経ったと思う。

その時は、こんなに大事になるとは思っていなかった。

こんなに大事な人達と出会えるとは思わなかった。

命の恩人を失うとは思っていなかった。

ソレイユはそのままの足で自分が立てた墓の前に行く。

ソレイユ「パパ、ママ…私、こんなに強くなったよ。

明日ね…最終決戦なの。

この世界の存続をかけた、信念と信念の戦い。」

あくまで静かに、ゆっくり報告をする。

ソレイユ「私ね、好きな人ができたの。

その王子様を、これから連れ戻しに行く。

……死闘になると思う。でも、必ず生きて戻って…

この村を復興させるつもり。だから、見守っていてね…」

そこまで言って、帰ろうと立ち上がる。

ゼルシェード「…ソレイユ。何か降って来たぞ」

ソレイユ「え?」

ゼルシェードに言われるまま顔を上げると、墓の上から何か降ってきた。

指輪……?

ソレイユ「……指輪だ…」

ゼルシェード「…お前の両親からかもしれんぞ。

ちょうどいいな。フロスティの指輪がなくなったところに嵌められる」

ソレイユ「パパ…ママ……。ありがとう。必ず、生きて帰るよ。

…頑張ってきます」


その晩……

フロスティ「ソレイユ。どうした?」

ソレイユ「フロスティ」

ギルドから外を眺めていたら、フロスティに声をかけられた。

フロスティ「早く寝ないか。明日は…」

ソレイユ「うん、もう寝るよ。ただ…ここに来るまでに色々あったなぁって思って…」

フロスティ「……自分の人生を、運命を、呪うか?」

フロスティにそう問われて、首を横に振る。

ソレイユ「確かに、両親を亡くして村が滅んだときは、そう思った。

でも、今はありえない。みんなと出会えたこの運命が、不幸だとは思わない」

フロスティ「ゼニスが兄に取り込まれた事に関しては?」

ソレイユ「ゼニスと出会えたからこその、試練と思う。

ゼニスがゼファじゃなかったら、私はゼニスと出会う事もなかったんだもん」

そう答えると、フロスティは呟いた。

フロスティ「…強いの」

ソレイユ「……みんなは、ギルドの防衛よろしくね」

フロスティ「任せよ。…そっちも頼むぞ。兄と、ゼニスの事を」

ソレイユ「…うん、当然!」


そして、夜が明けた。

今日はいよいよ、決戦だ。
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