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取り戻すべく
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 86話
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翌日…ギルドは朝から大忙し。
各地への連絡や、シオン達への連絡。
ギルドの強化に武器防具の強化。
回復物資の調達、城外戦闘の打ち合わせ。
ちなみに城内潜入については作戦立ては不可能だった。
ゼファの力のせいで、世界中が見れるようで、
作戦を立てても全て筒抜けになるらしい。
ソレイユ達も、それぞれ思う場所に向かった。
ソレイユに至っては、呼ばれていたので今はイテールナ城だ。
ソレイユ「あの…それで渡したいものって…?」
ラージャ「これだ!」
渡されたのはイテールナ城の騎士正装に似た感じのデザインのもの。
ソレイユ「え、え、どうしたの、これ!?」
カテドラル「流変剣を持っているのは君だ。
ゼニスの立場に今立っているようなものだ。」
ラージャ「とはいえ、正規の騎士じゃないのに正装もな?
だから、ちょっとデザイン変えて、お前専用に仕立ててもらったんだ!
ちなみに効果は魔力の持続回復付きってな!」
ゼルシェード「かなりの効果じゃないか…;;;」
ソレイユ「い、いいんですか?」
戸惑っていたら、「まあまあ着て来いって!」と押し出され、着てみることに…。
………数分後。
ソレイユ「ど、どうか、な…?」
ラージャ「あっ! 似合ってる!」
騎士みたくなったソレイユ。いかにも剣が似合いそう。
ラージャ「この姿の方が、剣とかは扱いやすいと思うしな」
ソレイユ「…着慣れないなぁ…ちょっと恥ずかしいかも。
でも、かっこいい」
女性用の騎士正装を模した感じらしく、色もソレイユに合わせてくれたそうな。
カテドラル「ゼニスの事を頼む。」
ラージャ「俺は行けねぇからな。ここは恋人が何とかしてくれよ!」
ソレイユ「こ、……うんっ、もちろん! 王子様を助けて来る!」
一瞬戸惑ったが、すぐにいつものノリで返す。
ゼルシェード「さすがだな…;;;」
サルファーは…
サルファー「ジューン様!」
ジューン「あ…サルファー! 良かった…元気そうで…」
一度屋敷に帰ってジューンに会って来ていた。
ジューンはグラファイトの言ったとおり、病は治り、
筋力が落ちているからまだ学校には戻れないが、家の中をうろうろできるまで回復していた。
ジューン「サルファー。ごめんなさい。私のために危険な事、いっぱいあったでしょう?」
サルファー「いえ。いい仲間にも出会えて、充実していますよ。」
……
ジューン「これから、最後の戦いがあるのでしょう?」
サルファー「知っているのですか?」
ジューン「これでも有力貴族の家ですよ? 情報ぐらい流れます。
……あの、サルファー。」
ジューンが何か頼みたそうにしてるので聞いてみる。
ジューン「全て終わったら…グラファイトさんに会わせてほしいんです」
サルファー「彼に?」
ジューン「一度、面と向かってお話がしてみたいんです。
責めたりはしません。ただ、会わずに逃げていたら、いつまでも前に進めないと思って…」
ジューンはこういうところ、芯が強い。
サルファー「……ええ、分かりました。じゃあ、勝って帰らないといけませんね」
ジューン「ふふ、ええ。約束してくださいね? あ、そうだこれ。」
渡されたのはブレスレット。
ジューン「私が作ったんです。効果があるか分からないですけど…どうかお守りにでも」
サルファー「……ありがとうございます。必ず、生きて戻りますね」
パリスは…
パリス「……ただいま」
「!? パリス!?」
「無事だったのか!?」
自分の家に帰宅。親と向き合うために単身戻って来たのだ。
パリス「…はい。とは言っても、すぐにまた行きますが…」
「…まだ、戦いに行くの?」
「お前がそこまでする必要はないだろう!?」
パリス「……私は! お父様とお母様の操り人形じゃありません!
…もう、強くなりました。仲間と共に行くのが私の意志です。」
きっぱり言われて、両親もたじたじ。
「…パリス…何か、変わった?」
パリス「色々あったんです。旅の中で。
もう、自分の意見を押し殺す私じゃありません。」
少し沈黙される。
正直怒鳴り散らされるのを覚悟していただけに拍子抜けだった。
「……もう、子供じゃないんだな」
「長いこと縛り付けていたような……」
パリス「え?」
………
「どこかに行ってしまうのが怖くて…ごめんなさい。」
「あんなんじゃあ、余計に離れられるよな。…変にトラウマを植え付けて、すまなかった…」
パリス「…え、あの……」
パリスが今度は内心パニック。謝られるなんて思っていなかった。
「……これ、こんな物で赦されるとも思わないけど…」
渡されたのは小さい花のブローチ。
「これでも良ければ、アミュレット代わりにでもしてくれ。
…必ず、生きて帰って来てほしい。そして今度こそ、ちゃんと家族として接しさせてくれ」
もう一度…チャンスを…。
パリス「……ありがとう、お父様、お母様。
…絶対に、生きて帰るね!」
ビオレは…
もちろん。ルーナの里へ再度訪問。
ビオレ「リラ姉様!」
リラ「ビオレ?
明日は決戦よね? 良いの、こんな所へ」
ビオレ「明日だから来たのよ。
…ねえ、向こうのサクラ、ガルムがいた所のサクラ。一緒に見に行かない?」
ビオレの誘いにリラはすぐに応じた。
………
リラ「あの時はありがとう…おかげでガルムに怯えずに暮らせるようになったわ」
ビオレ「ゼニス達のおかげよ」
今はいない彼。ゼニスがいなければガルムには勝てなかった。
あの時は、本当に無茶が過ぎたな…なんて思う。
リラ「ゼニスさんは、戻って来れるかしら?」
ビオレ「戻って来させるわ。絶対にね」
リラとしてはビオレも無理をする節があると思っている。
だから…
リラ「ビオレ。必ず、生きて帰ってくるのよ?
…これ。預けておくから」
ビオレ「姉様…これ!?」
渡されたのはリラが大事にしていた髪飾り。
リラ「現神社の管理者がつけているべき髪飾りよ。
お守りとして持って行きなさい。そして、必ず返しに来なさい」
これは、必ず帰って来させるために…。
ビオレ「……ありがとう、姉様。
…必ず、ゼニスも一緒に、この大陸に帰ってくるわ」
エルブは…
エルブ「えーと、ここはこうで…フェズさん! こっちおねがいします!」
フェズ「おー? どこだー?」
ギルドの強化、回復系統のアイテム調達などなど。
四零士とフロスティの手伝いをしていた。
エルブ「えっとこの裏ですね…あ、サラテリさん! その箱こっちに!」
サラテリ「はいはーい! いやぁ、エルブもきびきび動けるようになったなぁー!」
プリムローズ「エルブ。これどうしたらいい?」
エルブ「えっと、強化素材は…右に行った突き当りの店にお願いします!
あ、グラファイトさんは治療班が呼んでましたよ!」
グラファイト「治療班が?」
治療班は、城外戦闘で負傷した人の手当に当たるメンバーだ。
エルブ「傷の種類、状態異常の種類について聞きたいそうで」
エルブはマスターから言われた事を全部覚えて指揮していた。
フロスティ「エルブ。我は何かやる事あるか?」
エルブ「ひ、姫様は…じゃあ、僕の手伝いお願いします。
ここの魔力が弱いので、何とかしようと思ってて…」
………
フロスティ「エルブは、どこにも用事は無いのか?」
エルブ「皆さん、家族とかに会いに行ってますけど、
……僕の家族は、フェズさん達と、姫様ですから」
だからここで良いのだ。決戦前に、ここに居たいのだ。
フロスティ「……エルブ。必ず生きるのじゃ。
そして、絶対に兄を止めてくれ」
エルブ「もちろんですよ。師匠も助けてきます」
そう言うと、フロスティは魔力で一つの石を生成。
フロスティ「よし、これを渡しておくぞ」
エルブ「これって……」
綺麗な紫色の石だ。
フロスティ「四零士と我からって事で、もらってくれ。
…死ぬなよ、エルブ」
エルブ「……はい!」
城から帰った後、ソレイユは自分の村に戻って来ていた。
ソレイユ「……全部終わったらなんとかしないとなぁ……」
ゼルシェード「…酷いありさまだな。…フェズがやったんだったか?」
ソレイユ「うん…」
あれから結構経ったと思う。
その時は、こんなに大事になるとは思っていなかった。
こんなに大事な人達と出会えるとは思わなかった。
命の恩人を失うとは思っていなかった。
ソレイユはそのままの足で自分が立てた墓の前に行く。
ソレイユ「パパ、ママ…私、こんなに強くなったよ。
明日ね…最終決戦なの。
この世界の存続をかけた、信念と信念の戦い。」
あくまで静かに、ゆっくり報告をする。
ソレイユ「私ね、好きな人ができたの。
その王子様を、これから連れ戻しに行く。
……死闘になると思う。でも、必ず生きて戻って…
この村を復興させるつもり。だから、見守っていてね…」
そこまで言って、帰ろうと立ち上がる。
ゼルシェード「…ソレイユ。何か降って来たぞ」
ソレイユ「え?」
ゼルシェードに言われるまま顔を上げると、墓の上から何か降ってきた。
指輪……?
ソレイユ「……指輪だ…」
ゼルシェード「…お前の両親からかもしれんぞ。
ちょうどいいな。フロスティの指輪がなくなったところに嵌められる」
ソレイユ「パパ…ママ……。ありがとう。必ず、生きて帰るよ。
…頑張ってきます」
その晩……
フロスティ「ソレイユ。どうした?」
ソレイユ「フロスティ」
ギルドから外を眺めていたら、フロスティに声をかけられた。
フロスティ「早く寝ないか。明日は…」
ソレイユ「うん、もう寝るよ。ただ…ここに来るまでに色々あったなぁって思って…」
フロスティ「……自分の人生を、運命を、呪うか?」
フロスティにそう問われて、首を横に振る。
ソレイユ「確かに、両親を亡くして村が滅んだときは、そう思った。
でも、今はありえない。みんなと出会えたこの運命が、不幸だとは思わない」
フロスティ「ゼニスが兄に取り込まれた事に関しては?」
ソレイユ「ゼニスと出会えたからこその、試練と思う。
ゼニスがゼファじゃなかったら、私はゼニスと出会う事もなかったんだもん」
そう答えると、フロスティは呟いた。
フロスティ「…強いの」
ソレイユ「……みんなは、ギルドの防衛よろしくね」
フロスティ「任せよ。…そっちも頼むぞ。兄と、ゼニスの事を」
ソレイユ「…うん、当然!」
そして、夜が明けた。
今日はいよいよ、決戦だ。
各地への連絡や、シオン達への連絡。
ギルドの強化に武器防具の強化。
回復物資の調達、城外戦闘の打ち合わせ。
ちなみに城内潜入については作戦立ては不可能だった。
ゼファの力のせいで、世界中が見れるようで、
作戦を立てても全て筒抜けになるらしい。
ソレイユ達も、それぞれ思う場所に向かった。
ソレイユに至っては、呼ばれていたので今はイテールナ城だ。
ソレイユ「あの…それで渡したいものって…?」
ラージャ「これだ!」
渡されたのはイテールナ城の騎士正装に似た感じのデザインのもの。
ソレイユ「え、え、どうしたの、これ!?」
カテドラル「流変剣を持っているのは君だ。
ゼニスの立場に今立っているようなものだ。」
ラージャ「とはいえ、正規の騎士じゃないのに正装もな?
だから、ちょっとデザイン変えて、お前専用に仕立ててもらったんだ!
ちなみに効果は魔力の持続回復付きってな!」
ゼルシェード「かなりの効果じゃないか…;;;」
ソレイユ「い、いいんですか?」
戸惑っていたら、「まあまあ着て来いって!」と押し出され、着てみることに…。
………数分後。
ソレイユ「ど、どうか、な…?」
ラージャ「あっ! 似合ってる!」
騎士みたくなったソレイユ。いかにも剣が似合いそう。
ラージャ「この姿の方が、剣とかは扱いやすいと思うしな」
ソレイユ「…着慣れないなぁ…ちょっと恥ずかしいかも。
でも、かっこいい」
女性用の騎士正装を模した感じらしく、色もソレイユに合わせてくれたそうな。
カテドラル「ゼニスの事を頼む。」
ラージャ「俺は行けねぇからな。ここは恋人が何とかしてくれよ!」
ソレイユ「こ、……うんっ、もちろん! 王子様を助けて来る!」
一瞬戸惑ったが、すぐにいつものノリで返す。
ゼルシェード「さすがだな…;;;」
サルファーは…
サルファー「ジューン様!」
ジューン「あ…サルファー! 良かった…元気そうで…」
一度屋敷に帰ってジューンに会って来ていた。
ジューンはグラファイトの言ったとおり、病は治り、
筋力が落ちているからまだ学校には戻れないが、家の中をうろうろできるまで回復していた。
ジューン「サルファー。ごめんなさい。私のために危険な事、いっぱいあったでしょう?」
サルファー「いえ。いい仲間にも出会えて、充実していますよ。」
……
ジューン「これから、最後の戦いがあるのでしょう?」
サルファー「知っているのですか?」
ジューン「これでも有力貴族の家ですよ? 情報ぐらい流れます。
……あの、サルファー。」
ジューンが何か頼みたそうにしてるので聞いてみる。
ジューン「全て終わったら…グラファイトさんに会わせてほしいんです」
サルファー「彼に?」
ジューン「一度、面と向かってお話がしてみたいんです。
責めたりはしません。ただ、会わずに逃げていたら、いつまでも前に進めないと思って…」
ジューンはこういうところ、芯が強い。
サルファー「……ええ、分かりました。じゃあ、勝って帰らないといけませんね」
ジューン「ふふ、ええ。約束してくださいね? あ、そうだこれ。」
渡されたのはブレスレット。
ジューン「私が作ったんです。効果があるか分からないですけど…どうかお守りにでも」
サルファー「……ありがとうございます。必ず、生きて戻りますね」
パリスは…
パリス「……ただいま」
「!? パリス!?」
「無事だったのか!?」
自分の家に帰宅。親と向き合うために単身戻って来たのだ。
パリス「…はい。とは言っても、すぐにまた行きますが…」
「…まだ、戦いに行くの?」
「お前がそこまでする必要はないだろう!?」
パリス「……私は! お父様とお母様の操り人形じゃありません!
…もう、強くなりました。仲間と共に行くのが私の意志です。」
きっぱり言われて、両親もたじたじ。
「…パリス…何か、変わった?」
パリス「色々あったんです。旅の中で。
もう、自分の意見を押し殺す私じゃありません。」
少し沈黙される。
正直怒鳴り散らされるのを覚悟していただけに拍子抜けだった。
「……もう、子供じゃないんだな」
「長いこと縛り付けていたような……」
パリス「え?」
………
「どこかに行ってしまうのが怖くて…ごめんなさい。」
「あんなんじゃあ、余計に離れられるよな。…変にトラウマを植え付けて、すまなかった…」
パリス「…え、あの……」
パリスが今度は内心パニック。謝られるなんて思っていなかった。
「……これ、こんな物で赦されるとも思わないけど…」
渡されたのは小さい花のブローチ。
「これでも良ければ、アミュレット代わりにでもしてくれ。
…必ず、生きて帰って来てほしい。そして今度こそ、ちゃんと家族として接しさせてくれ」
もう一度…チャンスを…。
パリス「……ありがとう、お父様、お母様。
…絶対に、生きて帰るね!」
ビオレは…
もちろん。ルーナの里へ再度訪問。
ビオレ「リラ姉様!」
リラ「ビオレ?
明日は決戦よね? 良いの、こんな所へ」
ビオレ「明日だから来たのよ。
…ねえ、向こうのサクラ、ガルムがいた所のサクラ。一緒に見に行かない?」
ビオレの誘いにリラはすぐに応じた。
………
リラ「あの時はありがとう…おかげでガルムに怯えずに暮らせるようになったわ」
ビオレ「ゼニス達のおかげよ」
今はいない彼。ゼニスがいなければガルムには勝てなかった。
あの時は、本当に無茶が過ぎたな…なんて思う。
リラ「ゼニスさんは、戻って来れるかしら?」
ビオレ「戻って来させるわ。絶対にね」
リラとしてはビオレも無理をする節があると思っている。
だから…
リラ「ビオレ。必ず、生きて帰ってくるのよ?
…これ。預けておくから」
ビオレ「姉様…これ!?」
渡されたのはリラが大事にしていた髪飾り。
リラ「現神社の管理者がつけているべき髪飾りよ。
お守りとして持って行きなさい。そして、必ず返しに来なさい」
これは、必ず帰って来させるために…。
ビオレ「……ありがとう、姉様。
…必ず、ゼニスも一緒に、この大陸に帰ってくるわ」
エルブは…
エルブ「えーと、ここはこうで…フェズさん! こっちおねがいします!」
フェズ「おー? どこだー?」
ギルドの強化、回復系統のアイテム調達などなど。
四零士とフロスティの手伝いをしていた。
エルブ「えっとこの裏ですね…あ、サラテリさん! その箱こっちに!」
サラテリ「はいはーい! いやぁ、エルブもきびきび動けるようになったなぁー!」
プリムローズ「エルブ。これどうしたらいい?」
エルブ「えっと、強化素材は…右に行った突き当りの店にお願いします!
あ、グラファイトさんは治療班が呼んでましたよ!」
グラファイト「治療班が?」
治療班は、城外戦闘で負傷した人の手当に当たるメンバーだ。
エルブ「傷の種類、状態異常の種類について聞きたいそうで」
エルブはマスターから言われた事を全部覚えて指揮していた。
フロスティ「エルブ。我は何かやる事あるか?」
エルブ「ひ、姫様は…じゃあ、僕の手伝いお願いします。
ここの魔力が弱いので、何とかしようと思ってて…」
………
フロスティ「エルブは、どこにも用事は無いのか?」
エルブ「皆さん、家族とかに会いに行ってますけど、
……僕の家族は、フェズさん達と、姫様ですから」
だからここで良いのだ。決戦前に、ここに居たいのだ。
フロスティ「……エルブ。必ず生きるのじゃ。
そして、絶対に兄を止めてくれ」
エルブ「もちろんですよ。師匠も助けてきます」
そう言うと、フロスティは魔力で一つの石を生成。
フロスティ「よし、これを渡しておくぞ」
エルブ「これって……」
綺麗な紫色の石だ。
フロスティ「四零士と我からって事で、もらってくれ。
…死ぬなよ、エルブ」
エルブ「……はい!」
城から帰った後、ソレイユは自分の村に戻って来ていた。
ソレイユ「……全部終わったらなんとかしないとなぁ……」
ゼルシェード「…酷いありさまだな。…フェズがやったんだったか?」
ソレイユ「うん…」
あれから結構経ったと思う。
その時は、こんなに大事になるとは思っていなかった。
こんなに大事な人達と出会えるとは思わなかった。
命の恩人を失うとは思っていなかった。
ソレイユはそのままの足で自分が立てた墓の前に行く。
ソレイユ「パパ、ママ…私、こんなに強くなったよ。
明日ね…最終決戦なの。
この世界の存続をかけた、信念と信念の戦い。」
あくまで静かに、ゆっくり報告をする。
ソレイユ「私ね、好きな人ができたの。
その王子様を、これから連れ戻しに行く。
……死闘になると思う。でも、必ず生きて戻って…
この村を復興させるつもり。だから、見守っていてね…」
そこまで言って、帰ろうと立ち上がる。
ゼルシェード「…ソレイユ。何か降って来たぞ」
ソレイユ「え?」
ゼルシェードに言われるまま顔を上げると、墓の上から何か降ってきた。
指輪……?
ソレイユ「……指輪だ…」
ゼルシェード「…お前の両親からかもしれんぞ。
ちょうどいいな。フロスティの指輪がなくなったところに嵌められる」
ソレイユ「パパ…ママ……。ありがとう。必ず、生きて帰るよ。
…頑張ってきます」
その晩……
フロスティ「ソレイユ。どうした?」
ソレイユ「フロスティ」
ギルドから外を眺めていたら、フロスティに声をかけられた。
フロスティ「早く寝ないか。明日は…」
ソレイユ「うん、もう寝るよ。ただ…ここに来るまでに色々あったなぁって思って…」
フロスティ「……自分の人生を、運命を、呪うか?」
フロスティにそう問われて、首を横に振る。
ソレイユ「確かに、両親を亡くして村が滅んだときは、そう思った。
でも、今はありえない。みんなと出会えたこの運命が、不幸だとは思わない」
フロスティ「ゼニスが兄に取り込まれた事に関しては?」
ソレイユ「ゼニスと出会えたからこその、試練と思う。
ゼニスがゼファじゃなかったら、私はゼニスと出会う事もなかったんだもん」
そう答えると、フロスティは呟いた。
フロスティ「…強いの」
ソレイユ「……みんなは、ギルドの防衛よろしくね」
フロスティ「任せよ。…そっちも頼むぞ。兄と、ゼニスの事を」
ソレイユ「…うん、当然!」
そして、夜が明けた。
今日はいよいよ、決戦だ。
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