月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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取り戻すべく

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 84話

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エルブ、サルファー、ビオレ、パリスが戦っていた頃、

ソレイユとフロスティはというと…


フロスティ「スターライト!」

ソレイユ「燃え盛れ…イフリティア!!」

魔法同士の衝突音。

フロスティの属性は見慣れない。

ソレイユ「その属性って何!?」

フロスティ「我の属性は特殊属性。星属性じゃ。

兄が特殊属性の万等属性じゃからな。妹も特殊属性で当然じゃろ」

余裕綽々だなぁ…。

ソレイユ「…っ! 空天翔!!」

フロスティ「星閃舞!!」

相手の特殊属性は星…弱点は特になし、か?

見た目に反して、双剣をうまく操るのはさすがとしか言えない。

ソレイユ「くっ!」

フロスティ「そんなものか、ソレイユ! その程度でゼニスを救えると思うのか!?」

ソレイユ「そんな事…分かってる…! 連煌斬舞!」

フロスティの動きに何とか追い付こうと食いつくが、

相手だって一歩も引かない。


フロスティ「…そなた、負い目があるのではないか?」

ふと、フロスティに問われた。

フロスティ「ゼニスに、師匠であるブライトの死を背負わせてしまった負い目。

攫われるのを阻止できなかった負い目。

約束したにもかかわらず、何もできずに逃げ帰る事になってしまった負い目」

ソレイユ「そ、それは…!」

正直、そうだった。

何も果たせてない。何もできてない。

そして今、ゼニスは自分を追い詰めてしまっている。

フロスティ「そなたはどうするのじゃ!

合わせる顔がないか? もう面と向かって話などできないか?

ならばゼニスを殺すか? 仲間を危険に晒しながら、迷い続けるか!?」

ソレイユ「………」

それに何も返せなかった。

フロスティ「…まず自分と向き合え。それができないなら…



……皆は死ぬだけじゃ…! 呪いの詠歌カディレ・セプルクラム!」

フロスティの能力スキルが放たれた。

ソレイユ「え、何、これ…」

一気に体力が奪われた感じ。

気力もない。

フロスティ「死にはせん。ぎりぎりのところで踏みとどまっている。

我の能力スキルは相手を呪う力。そなたの能力スキルと対になるものじゃ。

だが、これを耐えられないようなら勝てんぞ」

………

ソレイユ「う、あっ!?」

フロスティ「蝕み続ける呪いの力に、対抗できるか?」

ソレイユ「…っ、癒しの詠歌ヴィータ・スピリトゥム!」

能力スキルを使ってみるが、まだ立ち上がれない…。

ソレイユ(……え!?)

フロスティ「…これでも兄の妹じゃ。

そう簡単に破れると思うなよ」

ソレイユ(……私は……)


ゼニス『この時代の人を犠牲にせず、君達をこれ以上傷つけないため。

…次に対峙した時、難しい事を考えず、僕を…殺してくれていい』


ゼニス『僕だって、ゼファを助けたい…

でも、それは僕が飲み込まれていなければの話だ…! 

僕はもう、師匠さえ殺した…! 助かる価値なんて無い…!』


ゼニス『頼む、ソレイユ…生きてほしい。どうか、頼む…』


ゼルシェード『……ゼニスもゼファも馬鹿だ…

誰かを守るためなら自分の命なんていらないという』


ソレイユ「……フロスティ。私は確かに負い目があった…

次にゼニスと顔を合わせた時、どうすればいいのか迷ってた…

でも…負い目は今、吹っ切った!」

力強く、顔を上げると同時に癒しの詠歌ヴィータ・スピリトゥムの効果が上がり、

そのままに立ち上がる。

フロスティ「!! 立ち上がったか…! 

しかし、何度でも使えるぞ…! 呪いのカディレ…」

即、流変剣に持ち変える。

ソレイユ「歪みの阻止アレスト・スキル!」

カーンと音が。

フロスティ「!? そなた……ゼルシェード様の支え無しで能力を…!」

ソレイユ「私はもう、大丈夫。

みんなもゼニスもゼファも死なせない!」

フロスティ「……ふふ、そうか…ならば我も全力で応えよう…!

カーステラデッドアウト!!」

フロスティの奥義に真っ向から受けて立つ。

ソレイユ「燃えろ切り裂け…火炎の精霊よ…フレアスピナーロア!」

奥義がぶつかり合って、相手のを押し返そうとする。

けど…

フロスティ「……っ、もう、平気のようじゃな」

ソレイユ「……やあああああ!!」

二人の決着がついたと同時に、全員ゼルシェードの空間の元の位置に戻された。


ビオレ「ソレイユ!!」

エルブ「あ、皆さんもどってきた!」

サルファー「…私達は同時に終わったという事でしょうか?」

サラテリ「まー、ほぼ一緒のタイミングだよ!」

サラテリが答えた。

パリス「…能力スキルは…」

フェズ「心配しなくても全員ごーかく。」

グラファイト「思ったより強くなってて焦った…」

プリムローズ「でも、これなら託せる…」

その中で、一番くたびれていたのがソレイユ。

フロスティ「ほれ、しっかりせんか」

ソレイユ「無茶をいう…;;;」

フェズ「姫さん…何したんだよ;;;」

フロスティ「我の能力で体力と気力を一気に減らして、

さらにそのままじわじわと減らしての?」

えげつな…!?

サラテリ「お疲れ様ソレイユ。姫様、容赦ないからさー」

グラファイト「あんたもでしょ、サラテリ」

プリムローズ「グラファイトもだと思うよ」

フェズ「結局俺が一番マシだよな!?」

……え?

エルブ「……きつかったです…」

………

サルファー(い、違和感…違和感が…!)

ビオレ(友好的な四零士なんて気味が悪い…!!)

パリス(今までが今まででしたから…)

ソレイユ(でも、まあ、良かったじゃん。味方になってくれて…)


そう、わちゃわちゃしていたら、急にフロスティが黙り込んだ。

ソレイユ「フロスティ? …!?」

フロスティの体が透過している。

サラテリ「ひ、姫様!?」

フロスティ「ちょっと…無理したかの。

我は魂を具現化させたようなものじゃからな…力を無理に使えば消滅してしまう」

パリス「そんな!?」

それを分かっていて、ソレイユに力を貸してくれたのか…。

サルファー「どうしてそこまで…!?」

フロスティ「この時代が大好きで、兄、四零士、側近三人が大好きだからじゃ」

……馬鹿…。

…このままじゃ……

ゼルシェード「ソレイユ。諦めるな」

姿を消していたゼルシェードが歩いてくる。

エルブ「ゼルシェード様?」

フェズ「諦めるなって…」

ゼルシェード「ソレイユ。雰囲気で分かる。

流変剣に適する魔力は手に入れたんだろう? ならば、もう一度やってみろ。

今のお前なら、俺のサポートが無くても、どの能力も使えるはずだ。」

………この状態で使う能力は決まっている。

失敗は許されない。

ソレイユ「……フロスティ。君は、私達の仲間だよ。」

フロスティ「ソレイユ…」

ソレイユ「だから、生きて…! 彼の時の歪曲アクセプト・エグゼスト!」

ソレイユが流変剣を使うと、フロスティの透過は止まった。

グラファイト「止まった……」

プリムローズ「使いこなしたんだね」

フロスティ「……どうして…我は、そなたの好きな奴を奪った兄の…妹じゃぞ?」

ソレイユ「関係ない。だって、それを取り戻すために手を貸してくれてるんだもん」

きっぱり言い切ってしまったソレイユに、涙声でフロスティが再度問いかける。

フロスティ「裏切らない保証はないのじゃぞ? 完全に信じているというのか…!?」

ソレイユ「私達の方につくメリットはない。

君と戦って分かったけど、その実力なら全滅させられる。

君はそれをしなかった。今も手を貸してくれて、十分な信頼材料だよ」

……

フロスティ「……そなた達も良いのか?」

ビオレ「まあ、助けてもらっちゃったし」

サルファー「私達も信頼してますよ」

パリス「私達は、拒みません…」

エルブ「フロスティ様。必ず陛下を連れて帰ってきます。」

他のメンバーからも信頼…。

フェズ「…だってよ? まあこいつらはそんなだ」

サラテリ「みーんな、ゼニス君のお人好しが移っちゃってるみたいだよ」

プリムローズ「私達が陛下のお人好しが移ったみたいな感じ…」

グラファイト「確かに、言えてるかも…」

フロスティ「………まったく、嬉しくて、涙が出そうじゃ…」

もう泣いてるってーの。

ゼルシェード「フロスティ。フェズもサラテリも、グラファイトもプリムローズも。

……力を貸してくれて助かった。俺からも礼を言う。

さあ、戻るぞ。今疲れてても元の場所に戻れば平気だ。」

ソレイユ「……よし、戻ろっか! 王様達も待ってるだろうし!」

そして、ゼルシェードとフロスティの力で元の玉座に戻って行った。
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