月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

文字の大きさ
上 下
80 / 100
取り戻すべく

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 80話

しおりを挟む
ブライトと交戦後、階段を上っていくと、

歌が耳に届くようになった。

何度か指輪から聞こえた歌だ。

サルファー「今だから分かりますが、

この歌は指輪に封じられた姫の魂が歌ってるんですね」

ビオレ「『民のために呪いを詠う姫君』…何で私達の事何度も助けてくれたの?」

ソレイユ「……」

(何度も私に語り掛けてきた声が、クレセディアの姫。

…彼女は、私達に敵意はない感じだった…どういうこと?)

いきなりエルブが駆け足になった。

パリス「エルブ?」

エルブ「歌…!

律零王の覚醒には、記憶が戻るだけじゃダメなんです。

記憶さえ戻れば姿は律零王に戻ります。

けれど、少し指輪が預かっている分の陛下の力がある。

それは、姫様が歌う事で返される」

それは……

ゼルシェード「急がないと、不味いかもしれないな…」

ソレイユ「い、行こう!?」


階段を一気に駆け上がると、

少し開けた場所に出た。

六つの魔法陣に宝玉が。

真ん中に律刻剣…らしきもの。

左端の魔法陣には指輪が置かれていた。

そして、中央奥には…

ソレイユ「ゼニス!!」

ラージャ「ゼニス!!!」

ゼニス「………」

セピア「無駄ですわよ。ゼニスは残りの過去を全て思い出して、

今、姫様の歌で動けないし、口もきけない。」

サルファー「セピア…!」

エピナール「おそらくは貴方方の声も届いていません。

私達がいなければ、難なく奪還できたのでしょうが、残念でしたね」

エルブ「兄さん……!」

立ちはだかったのは二人の側近。

ビオレ「っ、仕方ない。やるわよ!」

パリス「は、はい!!」

でも、構えた時に二人が取り出したのは、あの時エルブが使ったオーブ。

ゼルシェード「それは…っ」

セピア「クレセディアには人なんていませんもの。

ここでなら殺戮衝動を出しても問題ありませんわ。」

エピナール「私達が死ぬ前に陛下に言われておりまして。

クレセディアでなら使って良いと。」

あの状態…いや、それ以上の力を二人同時に出されたら…。

こっちの不安をよそに、二人は容赦なかった。

セピア「ヴァンピル・グラーキ!」

ソレイユ「ちょっと……」

エピナール「ディアブロス・クトゥグア!」

サルファー「そういうのやめてくださいよ…」

火山での時と同じ。

閃光の中に一瞬翼が見えた気がした。


再び、目を開けると、目の前にはシルクハットが外れて翼のついたエピナールと、

リボンがほどけ翼がついたセピアの姿。






エルブ『うるせぇ! そいつの指輪の奪取が目的だぁ! てめぇらは引っ込んでろ!!』


あの時の事を考えておもわず身構える。

でも、この二人は、元からエルブより血の気がある。だから…

ビオレ「な、何とか隙を見つけないと…」

セピア「オホホホホホ!!! 隙なんてありマせんワヨ!!」

気圧。狂気の塊をぶつけられた感じ。もう目が狂っている。

エピナール「陛下の復活は邪魔させねェ…紳士はさっきまでで終わりだ…!」

サルファー「変わりすぎではないですか!?」

エピナールの方は目こそセピアよりマシだが、どうも見下されてる感が…。

そして口が悪い;;;

セピア「さあさあ、いらっしゃってくださいな!

貴方達の血を、ワタクシに!!」

エピナール「全員地面に這いつくばらせてやるよ!!」

ゼルシェード「お前達、気を付けろ!」

気を付けろって言ったって……

セピア「ブラッドバーン!!」

ビオレ「っ!?」

パリス「う、そ…見えなかった…!」

サルファー「それだけじゃ…威力が高すぎる…!?」

血の爆発をまともに喰らった三人が崩れる。

エピナール「氷裂円舞!!」

ソレイユ「うっ!?」

エルブ「兄、さん……っ」

ラージャ「何だ、この威力…!!」

これまたかわす間もなくまともに喰らう。

ゼニスの事で焦っている皆には、まともに相手の行動を読む余裕さえなかった。

そんな事をしている間に…歌が止んだ。

ゼルシェード「……歌が……」

セピア「ああ、思えば長かったですわ…」

エピナール「一万年間、ただ憎しみを背負って長い事…」

セピア「四零士が全員敗れたのは想定外でしたが、

最終的にはワタクシ達の勝利です…さあ、陛下の再臨ですわ!!」

駄目だ……そんなの……

ソレイユ「……やめて…

やめてええええええええええええええええええ!!!!」


再び閃光が走る。

次の瞬間にはセピアとエピナールの状態は元に戻っていた。

そして、指輪のあったところには一人の女性が。



ビオレ「あれが……姫…?」

???「……」

目の前にはこちらに背を向けている二人。

セピア「…起きるのが遅いですわ」

エピナール「またお会いできて嬉しいですよ、陛下」

???「ああ、我もだよ。…そういえばセピア。

ブライトはどうしたんだい?」

セピア「彼らに負けたようですわ。…憎しみの増幅も止まりました」

そうか…と一言言って少し黙る。

???「君も、こっちを向いてくれないかな。フロスティ」

女性の…姫の名はフロスティらしい。

フロスティ「…久しぶりじゃの。兄」

???「さて、じゃあ彼らの相手をしようか。

あまり待たせるのも悪いしね」

セピアとエピナールが道を開け、こちらに歩いてきたのは、髪の長い男性。



パリス「……え…」

ゼルシェード「……ゼファ……」

!! この人が、律零王ゼファ。

ゼファ「そうだ。改めて名乗るよ。

我はクレセディアの王。ゼファ・セイル・クレセディア。

律零王と呼ばれているよ。君達には、うん。ゼニスが世話になったね。

ゼルシェードも久しぶり。会えるとは思わなかった。」

……ゼニスは?

ラージャ「ゼニスは…どうなった?」

ゼファ「もういないよ。ここにあるのは我の意識だけだ。」

何か、急に…戦意がそがれた感覚がした。

パリス「ゼニス……」

エルブ「……陛下、その剣を振るったら、自身がどうなるか分かっているのでしょう!?

やめてください!!」

ゼファ「これは我の責任だ。

我があいつに、ベレイザに情けをかけなければこうはならなかったんだ。

だから、我の命を使うのは当然なんだ。

みんな、もっと生きたかったはずだ。それを、我が壊したんだよ」

だからって…この世界の人達を巻き込む、と…?

ゼファ「止めるかい?」

………

ソレイユ「……止める! ゼニスが愛したこの時代を、世界を、壊させるものですか…!」

ソレイユの言葉で一気に全員我に返った。

ビオレ「そうよ!」

サルファー「ゼニスが、どんな思いで…!」

パリス「自分の過去を知っても、立ち止まらなかった…!」

エルブ「僕は…ゼニス師匠との思い出があるこの地を、奪われたくない…!」

ラージャ「あいつが、どれだけ悩んだと思ってる!?」

全員が立ち上がったのを見て、セピアとエピナールが前に出ようとしたのをゼファが止める。

ゼファ「我が一人でやるよ。

……君達に、止めるチャンスを与えよう。

我を倒せば、少なくとも世界は救われるよ」

………

ソレイユ「わざわざチャンスをくれてありがとう…!!」

ゼルシェード(ゼファ……こいつ、こいつらに勝たせる気あるのか?)


そこへ後ろから次々に応援が来た。

ロココ「みんな!」

バレヌ「無事か!? って、誰!?」

ネメシア「すみません、遅れました!」

ローレル「…もしかして、あいつが…」

バジル「…っ、ゼニスは!?」

沈黙。それが何よりの答えだった。

ゼファ「…大勢来たね。いいよ、全員で」

ラージャ「その余裕がいつまで保てるだろうな!! 炎獄戒刃!!」

ロココ「惨炎拳!!」

バレヌ「闇の魂よ…シャドーソウル!」

三人で攻撃するが、……当たらない。

ラージャ「は!?」

ネメシア「聖光斬!」

バジル「絶剣!」

ローレル「月蝕…闇の光で…切り裂く!!」

将軍三人がかり。奥義さえも当たらない。

ローレル「はあ!?」

サルファー・パリス「貫け! セイクリッド・シルフィ!」

ビオレ・エルブ「砕けろ! アイスナイフスラッシュ!」

二組の連携さえもかわされた。

ソレイユ「……連煌斬舞! 回火裂舞! 爆ぜろ…バーンブレイズ!!」

ソレイユが連続で技を叩きこむも、それさえも。

サルファー「ど、どうして当たらないんですか!?」

ゼファ「無理だよ。君達に我は倒せない。

……少し、我の力も見せておこうかな。」

そう言うと、律刻剣を手に取った。

ゼファ「まあ、君達にはこれで充分だろうね。

律刻剣! 我の体力を使って大罪を集わせろ!」

あの時、施設でエピナールが奪った大罪だ。

その力が剣に収束する。

ゼファ「グロリア・レレヴィウム!!」

ただ、その場で剣を振るっただけだった。

でも、その威力は馬鹿にできないもので…

ゼファがそう言った次の瞬間には、全員が地に伏した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

堕天使の黙示録-アポカリプス-

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜
ファンタジー
記憶を取り戻すための旅。 記憶は、あった方がいいのか、それとも戻らない方がいいのか…。 見たくない過去なら? 辛い運命なら? 記憶の無い者達が導かれ、めぐり逢い、旅をしていく物語。 真実を見た先に、彼らの出す答えは…。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり
ファンタジー
渡会 霧(わたらい きり)。36歳。オタク。親ガチャハズレの悲惨な生い立ち。 幸薄き彼女が手にした、一冊の辞典。 それは異世界への、特別招待状。 それは推しと一緒にいられる、ミラクルな魔法アイテム。 それは世界を救済する力を秘めた、最強の武器。 本棚を抜けた先は、物語の中の世界――そこからすべてが、始まる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...