月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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取り戻すべく

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 80話

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ブライトと交戦後、階段を上っていくと、

歌が耳に届くようになった。

何度か指輪から聞こえた歌だ。

サルファー「今だから分かりますが、

この歌は指輪に封じられた姫の魂が歌ってるんですね」

ビオレ「『民のために呪いを詠う姫君』…何で私達の事何度も助けてくれたの?」

ソレイユ「……」

(何度も私に語り掛けてきた声が、クレセディアの姫。

…彼女は、私達に敵意はない感じだった…どういうこと?)

いきなりエルブが駆け足になった。

パリス「エルブ?」

エルブ「歌…!

律零王の覚醒には、記憶が戻るだけじゃダメなんです。

記憶さえ戻れば姿は律零王に戻ります。

けれど、少し指輪が預かっている分の陛下の力がある。

それは、姫様が歌う事で返される」

それは……

ゼルシェード「急がないと、不味いかもしれないな…」

ソレイユ「い、行こう!?」


階段を一気に駆け上がると、

少し開けた場所に出た。

六つの魔法陣に宝玉が。

真ん中に律刻剣…らしきもの。

左端の魔法陣には指輪が置かれていた。

そして、中央奥には…

ソレイユ「ゼニス!!」

ラージャ「ゼニス!!!」

ゼニス「………」

セピア「無駄ですわよ。ゼニスは残りの過去を全て思い出して、

今、姫様の歌で動けないし、口もきけない。」

サルファー「セピア…!」

エピナール「おそらくは貴方方の声も届いていません。

私達がいなければ、難なく奪還できたのでしょうが、残念でしたね」

エルブ「兄さん……!」

立ちはだかったのは二人の側近。

ビオレ「っ、仕方ない。やるわよ!」

パリス「は、はい!!」

でも、構えた時に二人が取り出したのは、あの時エルブが使ったオーブ。

ゼルシェード「それは…っ」

セピア「クレセディアには人なんていませんもの。

ここでなら殺戮衝動を出しても問題ありませんわ。」

エピナール「私達が死ぬ前に陛下に言われておりまして。

クレセディアでなら使って良いと。」

あの状態…いや、それ以上の力を二人同時に出されたら…。

こっちの不安をよそに、二人は容赦なかった。

セピア「ヴァンピル・グラーキ!」

ソレイユ「ちょっと……」

エピナール「ディアブロス・クトゥグア!」

サルファー「そういうのやめてくださいよ…」

火山での時と同じ。

閃光の中に一瞬翼が見えた気がした。


再び、目を開けると、目の前にはシルクハットが外れて翼のついたエピナールと、

リボンがほどけ翼がついたセピアの姿。






エルブ『うるせぇ! そいつの指輪の奪取が目的だぁ! てめぇらは引っ込んでろ!!』


あの時の事を考えておもわず身構える。

でも、この二人は、元からエルブより血の気がある。だから…

ビオレ「な、何とか隙を見つけないと…」

セピア「オホホホホホ!!! 隙なんてありマせんワヨ!!」

気圧。狂気の塊をぶつけられた感じ。もう目が狂っている。

エピナール「陛下の復活は邪魔させねェ…紳士はさっきまでで終わりだ…!」

サルファー「変わりすぎではないですか!?」

エピナールの方は目こそセピアよりマシだが、どうも見下されてる感が…。

そして口が悪い;;;

セピア「さあさあ、いらっしゃってくださいな!

貴方達の血を、ワタクシに!!」

エピナール「全員地面に這いつくばらせてやるよ!!」

ゼルシェード「お前達、気を付けろ!」

気を付けろって言ったって……

セピア「ブラッドバーン!!」

ビオレ「っ!?」

パリス「う、そ…見えなかった…!」

サルファー「それだけじゃ…威力が高すぎる…!?」

血の爆発をまともに喰らった三人が崩れる。

エピナール「氷裂円舞!!」

ソレイユ「うっ!?」

エルブ「兄、さん……っ」

ラージャ「何だ、この威力…!!」

これまたかわす間もなくまともに喰らう。

ゼニスの事で焦っている皆には、まともに相手の行動を読む余裕さえなかった。

そんな事をしている間に…歌が止んだ。

ゼルシェード「……歌が……」

セピア「ああ、思えば長かったですわ…」

エピナール「一万年間、ただ憎しみを背負って長い事…」

セピア「四零士が全員敗れたのは想定外でしたが、

最終的にはワタクシ達の勝利です…さあ、陛下の再臨ですわ!!」

駄目だ……そんなの……

ソレイユ「……やめて…

やめてええええええええええええええええええ!!!!」


再び閃光が走る。

次の瞬間にはセピアとエピナールの状態は元に戻っていた。

そして、指輪のあったところには一人の女性が。



ビオレ「あれが……姫…?」

???「……」

目の前にはこちらに背を向けている二人。

セピア「…起きるのが遅いですわ」

エピナール「またお会いできて嬉しいですよ、陛下」

???「ああ、我もだよ。…そういえばセピア。

ブライトはどうしたんだい?」

セピア「彼らに負けたようですわ。…憎しみの増幅も止まりました」

そうか…と一言言って少し黙る。

???「君も、こっちを向いてくれないかな。フロスティ」

女性の…姫の名はフロスティらしい。

フロスティ「…久しぶりじゃの。兄」

???「さて、じゃあ彼らの相手をしようか。

あまり待たせるのも悪いしね」

セピアとエピナールが道を開け、こちらに歩いてきたのは、髪の長い男性。



パリス「……え…」

ゼルシェード「……ゼファ……」

!! この人が、律零王ゼファ。

ゼファ「そうだ。改めて名乗るよ。

我はクレセディアの王。ゼファ・セイル・クレセディア。

律零王と呼ばれているよ。君達には、うん。ゼニスが世話になったね。

ゼルシェードも久しぶり。会えるとは思わなかった。」

……ゼニスは?

ラージャ「ゼニスは…どうなった?」

ゼファ「もういないよ。ここにあるのは我の意識だけだ。」

何か、急に…戦意がそがれた感覚がした。

パリス「ゼニス……」

エルブ「……陛下、その剣を振るったら、自身がどうなるか分かっているのでしょう!?

やめてください!!」

ゼファ「これは我の責任だ。

我があいつに、ベレイザに情けをかけなければこうはならなかったんだ。

だから、我の命を使うのは当然なんだ。

みんな、もっと生きたかったはずだ。それを、我が壊したんだよ」

だからって…この世界の人達を巻き込む、と…?

ゼファ「止めるかい?」

………

ソレイユ「……止める! ゼニスが愛したこの時代を、世界を、壊させるものですか…!」

ソレイユの言葉で一気に全員我に返った。

ビオレ「そうよ!」

サルファー「ゼニスが、どんな思いで…!」

パリス「自分の過去を知っても、立ち止まらなかった…!」

エルブ「僕は…ゼニス師匠との思い出があるこの地を、奪われたくない…!」

ラージャ「あいつが、どれだけ悩んだと思ってる!?」

全員が立ち上がったのを見て、セピアとエピナールが前に出ようとしたのをゼファが止める。

ゼファ「我が一人でやるよ。

……君達に、止めるチャンスを与えよう。

我を倒せば、少なくとも世界は救われるよ」

………

ソレイユ「わざわざチャンスをくれてありがとう…!!」

ゼルシェード(ゼファ……こいつ、こいつらに勝たせる気あるのか?)


そこへ後ろから次々に応援が来た。

ロココ「みんな!」

バレヌ「無事か!? って、誰!?」

ネメシア「すみません、遅れました!」

ローレル「…もしかして、あいつが…」

バジル「…っ、ゼニスは!?」

沈黙。それが何よりの答えだった。

ゼファ「…大勢来たね。いいよ、全員で」

ラージャ「その余裕がいつまで保てるだろうな!! 炎獄戒刃!!」

ロココ「惨炎拳!!」

バレヌ「闇の魂よ…シャドーソウル!」

三人で攻撃するが、……当たらない。

ラージャ「は!?」

ネメシア「聖光斬!」

バジル「絶剣!」

ローレル「月蝕…闇の光で…切り裂く!!」

将軍三人がかり。奥義さえも当たらない。

ローレル「はあ!?」

サルファー・パリス「貫け! セイクリッド・シルフィ!」

ビオレ・エルブ「砕けろ! アイスナイフスラッシュ!」

二組の連携さえもかわされた。

ソレイユ「……連煌斬舞! 回火裂舞! 爆ぜろ…バーンブレイズ!!」

ソレイユが連続で技を叩きこむも、それさえも。

サルファー「ど、どうして当たらないんですか!?」

ゼファ「無理だよ。君達に我は倒せない。

……少し、我の力も見せておこうかな。」

そう言うと、律刻剣を手に取った。

ゼファ「まあ、君達にはこれで充分だろうね。

律刻剣! 我の体力を使って大罪を集わせろ!」

あの時、施設でエピナールが奪った大罪だ。

その力が剣に収束する。

ゼファ「グロリア・レレヴィウム!!」

ただ、その場で剣を振るっただけだった。

でも、その威力は馬鹿にできないもので…

ゼファがそう言った次の瞬間には、全員が地に伏した。
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