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二魂の心は相違して
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 71話
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魔法陣に乗った二人が辿り着いたのは、
どこかの大陸の端。
だだっ広い丘だ。
ゼニス「……いる。」
短くそう告げ、歩いて行く。
いた。フェズだ。
フェズ「久しぶりだなぁ。待ってたぜゼニス君」
ゼニス「……来てあげたよ。フェズ。」
ラージャ「ゼニス!!」
え、ラージャの声…どこから?
辺りを見渡す。左だ。左の方に砦のような建物がある。
その上に、ラージャとカテドラル王がいる。
ソレイユ「何、あの四隅にある結晶は!?」
フェズ「律刻剣の力をちょーっと応用してな。
どう頑張ったって壊れない目に見えない檻って奴だ。」
……
ソレイユ「人質のつもり?」
ゼニス「フェズはそんな事しないよ。…いや、四零士は本来、そんな事はしない。」
フェズ「わかってくれてんだなぁ」
心なしか嬉しそうな声に聞こえる。
ゼニス「ラージャ達は、戦利品?」
フェズ「まーそういうことだ」
…負けても何もしないし、人質にとったから、傷つけたくなければ攻撃するなってわけでもない。
……あくまで戦いに支障は出さないつもりだ。
そして、ゼニスを本気にさせるためでもあるのだろう。
ゼニス「……お前は、僕をゼファとは呼ばないの?」
フェズ「少なくとも今はゼニス君だろ」
……ゼニスとして、見ている…。
ゼルシェード「…あいつらは、ギルドにいる。
……一つ、聞きたい。お前は、ゼファが犠牲になる事を分かっているんだな?」
フェズ「ゼルシェード……ああ、俺だけじゃねえよ。全員知ってる。
…本音を言うなら俺だって、あいつを犠牲にしたくはない。
けど、あいつは友だ。あいつがそれを望むなら…俺はそれを手伝う」
ソレイユ「どうして……そこまで……」
少し沈黙した後、静かに答えた。
フェズ「俺はあいつに救われた。こんな化け物に…
泣けない化け物に涙があると教えてくれた。
俺の戦う理由は至極単純だ。友の悲願を果たさせる。それだけだ」
いつも騒々しいイメージのフェズが、この時ばかりは…
ゼファの事になり、あまりにも落ち着き、でも確かな覚悟を持っている口調なのが分かる。
ゼニス「僕の戦う理由も至極単純だよ。
仲間の生きる未来を守る! それだけだ!」
まずはこっちの手だ。先に能力を封じる!
ゼニス「歪みの阻止!」
カーン…と音が鳴り、能力封じを告げる。
フェズ「やっぱりそれにビビってるよなぁ!? ダークアロー!!」
ソレイユ「っ! 空天翔!!」
回避して攻撃を叩きこむ。
ゼニス「閃実義!!」
ゼニスもそのまま踏み込む。
フェズ「ははっ! 懐かしいじゃねぇか! あの頃は二人して雑魚だったのによぉ!
今日こそ、全て貪り尽くしてやるよ!!」
ソレイユ「あの時とは違う! 私だって戦える!」
ゼニス「ずっと戦ってきた…ひたすら、お前達に勝つために!」
これは、本音だ。
あの時、殺されかけて…守りたいと思った。こいつらから…
でも、いつも見逃されているのはこちらな気がしてた。
記憶を取り戻すための旅。いつしか命を狙われて、
今は、王の復活のため、自身を奪いに来られている。
当初の目的から大きく離れた。戻った記憶は、こんな物だった。
ゼニス「無故の全能…インペリアレイ!」
フェズ「なら、勝ってみろよ! ゼニス君!! 暗黒連義!!」
無属性の魔法さえ切り裂く力。さすが、四零士最強…!
ゼニス「っ…まだ…っ!?」
ドクン。ドロッとした血が心臓から流れたような感覚。
ゼニス「ぐ…かはっ…」
吐血…!!
ソレイユ「ゼニス!!?」
突如、その場にゼニスが倒れた。
ソレイユ「ゼニス、ゼニス! ねえ、ゼルシェード、ゼニスどうしたの!?」
ゼルシェード「これは……遺跡から帰った後、こいつが倒れただろう。
それの延長だ。…ゼファの意識がゼニスに勝ちそうになっている…!?」
それは、非常にまずい…
フェズ「………よくも、ここまでもったもんだぜ。
……よこせよ。もう無理だろ」
ソレイユ「……嫌」
???「まあ、嫌じゃろうな。ならどうする?
相手はフェズ。勝ち目は無いぞ?」
ソレイユ「……やるよ。無理でも…今、渡す事は嫌…!
それよりも、ゼニスを助ける方法は!?」
……
???「あるにはある。我の歌をそなたに送る。
歌い続けろ…ただし、フェズは待ってくれんぞ。」
ソレイユ「………」
立ち上がってゼニスの前に移動する。
そして…
ソレイユ「~~♪」
その場にソレイユの歌が響く。
ゼルシェード「これは……あいつの歌…!?
いや、それにしては、癒しの力が……」
フェズ「それで、ゼニス君を助けようと…。
…俺が何もしないとでも思ってるのか?」
分かっている。フェズが何もしないわけはない。
でも、歌っている間は……。
ゼニス「……」
(ソレイユ……)
フェズ「悪命絶!!」
ソレイユ「っ! ~~♪」
フェズ「死黒乱!!」
ソレイユ「~~♪」
……まだ……
フェズ「こいつ、まだ歌い続けるのかよ!」
ゼルシェード「! いかん! 歪みの阻止が切れる!!」
フェズ「…っ…飢えの痛み!」
ソレイユ「っ!」
その場に崩れるも、それでもまだ歌い続ける。
ゼルシェード「……ソレイユ…お前は、そこまで…」
ラージャ「っ、壊れろ! 壊れろよ!
くそっ、俺はゼニスの先輩だ……女の子まで頑張ってるのに、俺は…!」
カン、キン、ガン!! 見えない檻を斬りつける音が響く。
壊れない…。
カテドラル「ラージャ……」
ラージャ(なんでだよ…あいつばっかり…
海に流されて、目覚めたら記憶が無くて、迷ってばかりで、
後悔して、苦しんで、傷付いて、その果てがこの始末か…!?
……俺は……)
ゼニス『僕はここに居るべきじゃない! 迷って、遅れて、危うく全滅させかけてしまった。
隊長の資格なんて無いさ!』
『僕は、こんな事を繰り返したくない。
もしもこの迷いが、最善手を取れなかったらどうしようなんて不安が…
過去の記憶によるものならば! 天馬に入って、世界中を見て来て、記憶を取り戻したい!』
『必ず戻ると約束する。それまで、僕の隊を君に預ける。』
ラージャ「……カテドラル王…俺は、あいつらの盾になりに行きます。」
カテドラル「だが…この檻は…」
ラージャ「盾じゃあ、攻撃はできない、なんて、あるものか!」
その意志は、ラージャに反応した。
ラージャ「絶対守護陣!」
パリーン…と、物凄い音を立てて、四隅の結晶が壊れる。
カテドラル「ラージャ…お前……」
ラージャ「ここで待っていてください!」
そう言って飛び降りてソレイユの前まで駆けて来る。
ソレイユ「!!」
フェズ「!? あの檻を飛び出した!? どうやって…!」
ラージャ「俺の能力、絶対守護陣は、
破られない盾だ。でも、盾だって、殴れば痛いんだぜ!」
つまり、応用だ。
使えるようになったばかりの能力を応用して、檻を破壊した。
ラージャ「ソレイユ、お前は歌え! 俺が盾で凌いでおく!」
ソレイユ「っ! ~~♪」
歌っているから、頷くだけ、返した。
フェズ「この…!」
フェズが攻撃を仕掛けるが弾かれた。
フェズ「なっ!」
ラージャ「だから言っただろ。破られない盾だってな!」
ゼファ「……この歌を我は覚えているよ」
ゼニス「ゼファ…?」
また暗い中、声だけが聞こえる。
ゼファ「力を貸すとはね……我はちょっと複雑だけど…
うん、いいよ。この戦いは頑張っておいで。
我が戦った事が無い、未知の強さのフェズに勝てるか、見させてもらうよ」
ゼニス「何で……」
ゼファ「何でだろうね…甘さを捨てて…この道を選んだはずなのに…
非情になり切れていないのかもしれないね…参ったな。」
ゼニス「……ゼファ……」
ゼファ「それにこの歌に込められた力の前じゃ…我は出て来れないみたいだよ。
だから、後は任せるよ」
そう言われ、ゼニスの意識は、どんどん浮上していく。
戦いの音が、近くなる。
どこかの大陸の端。
だだっ広い丘だ。
ゼニス「……いる。」
短くそう告げ、歩いて行く。
いた。フェズだ。
フェズ「久しぶりだなぁ。待ってたぜゼニス君」
ゼニス「……来てあげたよ。フェズ。」
ラージャ「ゼニス!!」
え、ラージャの声…どこから?
辺りを見渡す。左だ。左の方に砦のような建物がある。
その上に、ラージャとカテドラル王がいる。
ソレイユ「何、あの四隅にある結晶は!?」
フェズ「律刻剣の力をちょーっと応用してな。
どう頑張ったって壊れない目に見えない檻って奴だ。」
……
ソレイユ「人質のつもり?」
ゼニス「フェズはそんな事しないよ。…いや、四零士は本来、そんな事はしない。」
フェズ「わかってくれてんだなぁ」
心なしか嬉しそうな声に聞こえる。
ゼニス「ラージャ達は、戦利品?」
フェズ「まーそういうことだ」
…負けても何もしないし、人質にとったから、傷つけたくなければ攻撃するなってわけでもない。
……あくまで戦いに支障は出さないつもりだ。
そして、ゼニスを本気にさせるためでもあるのだろう。
ゼニス「……お前は、僕をゼファとは呼ばないの?」
フェズ「少なくとも今はゼニス君だろ」
……ゼニスとして、見ている…。
ゼルシェード「…あいつらは、ギルドにいる。
……一つ、聞きたい。お前は、ゼファが犠牲になる事を分かっているんだな?」
フェズ「ゼルシェード……ああ、俺だけじゃねえよ。全員知ってる。
…本音を言うなら俺だって、あいつを犠牲にしたくはない。
けど、あいつは友だ。あいつがそれを望むなら…俺はそれを手伝う」
ソレイユ「どうして……そこまで……」
少し沈黙した後、静かに答えた。
フェズ「俺はあいつに救われた。こんな化け物に…
泣けない化け物に涙があると教えてくれた。
俺の戦う理由は至極単純だ。友の悲願を果たさせる。それだけだ」
いつも騒々しいイメージのフェズが、この時ばかりは…
ゼファの事になり、あまりにも落ち着き、でも確かな覚悟を持っている口調なのが分かる。
ゼニス「僕の戦う理由も至極単純だよ。
仲間の生きる未来を守る! それだけだ!」
まずはこっちの手だ。先に能力を封じる!
ゼニス「歪みの阻止!」
カーン…と音が鳴り、能力封じを告げる。
フェズ「やっぱりそれにビビってるよなぁ!? ダークアロー!!」
ソレイユ「っ! 空天翔!!」
回避して攻撃を叩きこむ。
ゼニス「閃実義!!」
ゼニスもそのまま踏み込む。
フェズ「ははっ! 懐かしいじゃねぇか! あの頃は二人して雑魚だったのによぉ!
今日こそ、全て貪り尽くしてやるよ!!」
ソレイユ「あの時とは違う! 私だって戦える!」
ゼニス「ずっと戦ってきた…ひたすら、お前達に勝つために!」
これは、本音だ。
あの時、殺されかけて…守りたいと思った。こいつらから…
でも、いつも見逃されているのはこちらな気がしてた。
記憶を取り戻すための旅。いつしか命を狙われて、
今は、王の復活のため、自身を奪いに来られている。
当初の目的から大きく離れた。戻った記憶は、こんな物だった。
ゼニス「無故の全能…インペリアレイ!」
フェズ「なら、勝ってみろよ! ゼニス君!! 暗黒連義!!」
無属性の魔法さえ切り裂く力。さすが、四零士最強…!
ゼニス「っ…まだ…っ!?」
ドクン。ドロッとした血が心臓から流れたような感覚。
ゼニス「ぐ…かはっ…」
吐血…!!
ソレイユ「ゼニス!!?」
突如、その場にゼニスが倒れた。
ソレイユ「ゼニス、ゼニス! ねえ、ゼルシェード、ゼニスどうしたの!?」
ゼルシェード「これは……遺跡から帰った後、こいつが倒れただろう。
それの延長だ。…ゼファの意識がゼニスに勝ちそうになっている…!?」
それは、非常にまずい…
フェズ「………よくも、ここまでもったもんだぜ。
……よこせよ。もう無理だろ」
ソレイユ「……嫌」
???「まあ、嫌じゃろうな。ならどうする?
相手はフェズ。勝ち目は無いぞ?」
ソレイユ「……やるよ。無理でも…今、渡す事は嫌…!
それよりも、ゼニスを助ける方法は!?」
……
???「あるにはある。我の歌をそなたに送る。
歌い続けろ…ただし、フェズは待ってくれんぞ。」
ソレイユ「………」
立ち上がってゼニスの前に移動する。
そして…
ソレイユ「~~♪」
その場にソレイユの歌が響く。
ゼルシェード「これは……あいつの歌…!?
いや、それにしては、癒しの力が……」
フェズ「それで、ゼニス君を助けようと…。
…俺が何もしないとでも思ってるのか?」
分かっている。フェズが何もしないわけはない。
でも、歌っている間は……。
ゼニス「……」
(ソレイユ……)
フェズ「悪命絶!!」
ソレイユ「っ! ~~♪」
フェズ「死黒乱!!」
ソレイユ「~~♪」
……まだ……
フェズ「こいつ、まだ歌い続けるのかよ!」
ゼルシェード「! いかん! 歪みの阻止が切れる!!」
フェズ「…っ…飢えの痛み!」
ソレイユ「っ!」
その場に崩れるも、それでもまだ歌い続ける。
ゼルシェード「……ソレイユ…お前は、そこまで…」
ラージャ「っ、壊れろ! 壊れろよ!
くそっ、俺はゼニスの先輩だ……女の子まで頑張ってるのに、俺は…!」
カン、キン、ガン!! 見えない檻を斬りつける音が響く。
壊れない…。
カテドラル「ラージャ……」
ラージャ(なんでだよ…あいつばっかり…
海に流されて、目覚めたら記憶が無くて、迷ってばかりで、
後悔して、苦しんで、傷付いて、その果てがこの始末か…!?
……俺は……)
ゼニス『僕はここに居るべきじゃない! 迷って、遅れて、危うく全滅させかけてしまった。
隊長の資格なんて無いさ!』
『僕は、こんな事を繰り返したくない。
もしもこの迷いが、最善手を取れなかったらどうしようなんて不安が…
過去の記憶によるものならば! 天馬に入って、世界中を見て来て、記憶を取り戻したい!』
『必ず戻ると約束する。それまで、僕の隊を君に預ける。』
ラージャ「……カテドラル王…俺は、あいつらの盾になりに行きます。」
カテドラル「だが…この檻は…」
ラージャ「盾じゃあ、攻撃はできない、なんて、あるものか!」
その意志は、ラージャに反応した。
ラージャ「絶対守護陣!」
パリーン…と、物凄い音を立てて、四隅の結晶が壊れる。
カテドラル「ラージャ…お前……」
ラージャ「ここで待っていてください!」
そう言って飛び降りてソレイユの前まで駆けて来る。
ソレイユ「!!」
フェズ「!? あの檻を飛び出した!? どうやって…!」
ラージャ「俺の能力、絶対守護陣は、
破られない盾だ。でも、盾だって、殴れば痛いんだぜ!」
つまり、応用だ。
使えるようになったばかりの能力を応用して、檻を破壊した。
ラージャ「ソレイユ、お前は歌え! 俺が盾で凌いでおく!」
ソレイユ「っ! ~~♪」
歌っているから、頷くだけ、返した。
フェズ「この…!」
フェズが攻撃を仕掛けるが弾かれた。
フェズ「なっ!」
ラージャ「だから言っただろ。破られない盾だってな!」
ゼファ「……この歌を我は覚えているよ」
ゼニス「ゼファ…?」
また暗い中、声だけが聞こえる。
ゼファ「力を貸すとはね……我はちょっと複雑だけど…
うん、いいよ。この戦いは頑張っておいで。
我が戦った事が無い、未知の強さのフェズに勝てるか、見させてもらうよ」
ゼニス「何で……」
ゼファ「何でだろうね…甘さを捨てて…この道を選んだはずなのに…
非情になり切れていないのかもしれないね…参ったな。」
ゼニス「……ゼファ……」
ゼファ「それにこの歌に込められた力の前じゃ…我は出て来れないみたいだよ。
だから、後は任せるよ」
そう言われ、ゼニスの意識は、どんどん浮上していく。
戦いの音が、近くなる。
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