月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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二魂の心は相違して

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 70話

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船で遠目で見た限り、ソムニウム城下町は魔物がうろうろしている。

あんまり正面突破はしたくないけど…隠し通路なんてあるものか?

船の着岸なんてとんでもない。

ブライト「……イナニスに停めるぞ。」

イナニスの村…ゼニスが流れ着いた村で、ソレイユと会った場所だ。

イナニスの村の海岸に船を停めて、全員降りる。

ゼニス「懐かしいな…」

ソレイユ「私の村が壊されて、ここにブライトさんの手紙を頼りに来たんだったなぁ」

二人は感傷に浸っているが、残りは置いてけぼりである。

サルファー「いい村ですね…小さいですが、静かで」

ビオレ「自然豊かで良いじゃない。…でも、村人は他にいないの?」

パリス「多分……幽閉されているのでは?」

……無事なのは間違いないだろう…

担当がフェズなのだから…

エルブ「……あ、皆さん!」

エルブが指さした方を見ると、二人の人影が。

二人だから、フェズじゃない。側近格の二人? 魔力が違う。

ゼニス「……シュロ…レオノティス!!」

その声で気付いたのか、二人がこっちに向かって来る。

シュロ「君達!! 無事だったのか!」

レオノティス「なぜここに来た?」

実は…と、今までの経緯を話す。


レオノティス「すごいな…お前達は…で、次はこの大陸を解放しようと」

ソレイユ「二人はどうしてここに? 捕まってたんじゃ…」

シュロ「城に捕まっているのはラージャさんと国王だけ。

町の人達はどうあったってフェズに勝てないってんで、野放しにされてる」

野放して…まあ、フェズに挑んだところで…勝ち目は…

ソレイユ「どこにいるの?」

レオノティス「ルーナの里だ。長が避難場所にしてくれた。」

ビオレ「姉様が!? …そっか…そうなんだ…」


リラ『…里総出で応援しようじゃないですか。

ここまでしてくれるような人がいるなんて思わなかった…

ごめんなさい、大丈夫? ゼニスさん』


今が、その時…応援してくれたんだ。

だから、人々を里へ…

シュロ「けれど…皆さんまだ不安が強いようで…」

ブライト「俺がその里に向かう。お前達は行け。城へ」

レオノティス「……俺達も…」

…気持ちは嬉しいけど、それは無理だ。二人が危険になるだけ。

サルファー「お二人は各地にいる魔物の討伐をお願いします。

あいつらの味方をしている魔物が、まだ溢れているでしょうから」

パリス「こちらは大丈夫です」

エルブ「どうか」

しばらく渋っていたが、最後にはシュロとレオノティスも頷いてくれた。

シュロ「じゃあ、僕らは出るよ。君達も、気を付けて」

ゼニス「うん、わかった。二人も」

ソレイユ「ブライトさんも気を付けて」

サルファー「ブライトさん。里に、ジューン様もいると思います。どうか、お願いします」

ブライト「ああ」


三人と別れ、こちらは城に向かって歩き始めた。

ビオレ「問題はどうやって入り込むかね…」

サルファー「正面突破は…あの量は…

隠し通路など知っていたりは?」

…………シーン………

パリス「不明…ですか…」

しばらく悩んで、思い出したようにゼニスがはっとした。

ゼニス「そうだ…あれなら…!」

エルブ「なにか、思い出したんですか?」

ゼニス「うん…城下町正面門の左の木の……え?」

何か踏んだ? な、え、地面が光って…!?

ソレイユ「何これ!?」

ゼニス「っ!?」

瞬間ゼニスとソレイユ、二人の姿が消える。

ビオレ「えっ!? どこ行ったの!?」

エルブ「転移式の術式!!」

パリス「罠…!?」

サルファーが地面にわずかに残った術式の文様を確認する。

サルファー「これは…特定の魔力に反応してその者を転移させるやつ…!

…今回のは、ゼニスとソレイユの魔力に反応したのでしょう…」

エルブ「…多分、フェズさんです。ゼニス師匠の事は気に入っていましたし…

ソレイユさんもこの前、サラテリさんに勝ちましたから…気に入ったのかと」

じゃあ、今二人は、城内へ!?

ビオレ「急がないと!?」

パリス「城下町の正面門の左の木の…なにが隠し通路!?」

サルファー「分かりませんが、その木を調べる必要がありそうですね。

とにかく、町まで急ぎましょう!」


ゼニス「っと…!? え…ここは…イテールナ城の中…?」

ソレイユ「私達だけ、飛ばされちゃったの?」

ゼルシェード「そうみたいだな…フェズ辺りだろう。

お前達との戦いを望みらしいな」

うわぁ……二人でフェズ相手か……。

………ファーム遺跡での事を思い出すな。

あの時は自分とソレイユの二人だけで、ゼルシェードもいなかった。

ソレイユ「………勝てるかな、私達」

ゼニス「勝てるよ…あの時とは違う…いや…勝つんだ、必ず」

ただ、それだけ…フェズとは、二人して因縁がある。

ゼニスは城を襲撃された事、ソレイユは村を滅ぼされた事。

飛ばされた部屋を出て、玉座を目指す。

道中にも魔物はいたが、城下町にいたほどではない。

ゼニス「時双波!!」

ソレイユ「燃え盛れ…イフリティア!!」

時間が無いとばかりに蹴散らしていく。

成り行きとはいえ、ディレオン大陸の解放が一番最後になった。

民の不安も酷いものだろうから。

……そして……


玉座の扉前。綺麗に閉じられていた。

ソレイユ「フェズ、中?」

ゼニス「いや、フェズの魔力じゃない…多分、龍だよ」

ゼルシェード「……闇、か……こちらの体力を吸い取って回復する、何てあるかもしれん」

面倒な敵だな……フェズの龍だけはあるか。

ゼニス「…………」

その扉をゆっくり開ける。

いたのは紅い龍だった。

テネブリス「私はテネブリス…フェズ様の武器から生まれた龍だ。

ゼファ様…いや、ゼニスにソレイユ。フェズ様は随分とお前達を買っている」

ゼニス「やっぱり、か…」

テネブリス「フェズ様には、二人が来たら通すように言われているが、

弱者を私は通しはせん。勝ってみせろ。弱者になってくれるなよ」

……フェズ同様、血の気盛んだな。強者しか認めないってか。

ソレイユ「ゼニス、やろう」

ゼニス「うん、もちろん!」

そう言った瞬間にテネブリスも動き出す。

その爪から逃れるために、両端に分散して躱す。

ゼニス「五連刃!!」

攻撃するが、すぐに反撃が来る事も考えて、すぐに後ろに飛びのく。

ソレイユ「光臨舞!!」

相手は闇属性。光は効くようだ。

テネブリス「ほう…なかなかやるな…!」

ダークブレス! やたら範囲が広く、どれだけ躱しても腕を掠った。

ゼニス「っ! 属性変換エレメント・クロス!

絶光・魔法剣!!」

光に属性を変えて、魔法剣を放つ。

テネブリス「魔法剣か…流変剣も使いこなせているようで何よりだ。

さすがはゼファ様という事か」

ソレイユ「ゼニスは、ゼニスだよ! 光線刺し穿て…レイスピアー!」

テネブリスにはそれなりにダメージは与えているはず。

弱点ばかり突いているのだから。

でも……

テネブリス「まだだ! 闇旋翼!!」

ゼニス「なっ!」

ソレイユ「きゃっ!?」

攻撃をくらうが、とりわけ何か状態異常になった感じはない。

だけど、変化は向こうだ。

ゼニス「……傷が!?」

ソレイユ「回復した!!」

ゼルシェードの予想通りだ。相手の体力を喰らって自らを回復する。

テネブリス「さあ、私を倒すには、回復量以上のダメージが必要だ。

どうするつもりだ?」

テネブリスが攻撃の構えを取る。

いつも、他の龍が撃ってきた強い技…

テネブリス「シャドウウィンディア!!」

止まればやられる。相殺するしかない。

ゼニス「無に帰せ…流れを変えろ…無白流変斬!!」

ソレイユ「燃えろ切り裂け…光炎の精霊よ…フレアスピナーロア!」

ソレイユもそれは分かっていたようで、二人で奥義を叩きこむ。

強い衝撃音がした。技は…相殺された。

テネブリス「!!」

後は…間に合わないぐらいの威力の技を…!

ゼニス「ソレイユ!」

ソレイユ「分かってる、ゼニス!」

二人の考えは同じ。

ゼニス「時双波!」

ソレイユ「空天翔!!」

ゼニス・ソレイユ「時に迷え! 天翔刃・時空!!」

二人の連携技がテネブリスに炸裂。

これで終わってくれないと困るな…何と思っていた。

でも、それは杞憂で…

テネブリス「くっ…見事だ…弱者ではないようだな…」

ソレイユ「か、勝った……」

ゼニス「さ、さすがに…強いな…」

……にしても、真面目な龍だな…致命傷は、与えていない。

与えられていない。どちらかというと、試練に打ち勝った、感じで止まっている。

ゼルシェード「テネブリス。魔物との和解を手伝え。

メリディエムだけでは荷が重い」

メリディエムの名を聞いて、はっと顔を上げる。

テネブリス「……私を救う気か?」

ゼルシェード「お前からはそこまで酷い殺意は感じない。

……全ての決着がついたあとの、お前達の味方に付いた魔物達の説得を頼みたい」

しばらく黙っていたテネブリスが口を開く。

テネブリス「魔物達のあれを止められず、今後も戦いが続き傷付くのは見たくないな…

わかった。だが、それはお前達がフェズ様に勝ったらだ。

それを条件で、俺はそちらに行こう」

……何だ、そんな事か。

ゼニス「勝つよ。だから、ここで待っていてくれ」

ソレイユ「フェズも助けて来るからさ!」

…………

テネブリス「フェズ様は、ここの奥の部屋の魔法陣に乗った先におられる。

外に出るぞ。かつて…フェズ様とゼファ様が初めて出会った場所だ。」

??? まあ、いいか。外なら広いし戦いやすい。

ゼニス「仲間たちが来たら、みんなにも教えてあげて。

あ、戦おうとしないでくれないかな」

テネブリス「お前達の仲間なら強者だ。それが分かるなら戦わん。」

それを聞いて、ゼニスとソレイユは奥の部屋へ入っていく。

テネブリス「……さて…フェズ様に勝てる者が、現れるのかどうか…」
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