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二魂の心は相違して
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 69話
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城外では…
ブライト「霊殲破!」
セピア「っ! ブラッドナイフ!!」
攻撃音がずっと響いている。
両者とも譲るつもりはないが、押されているのはセピアの方だった。
セピア「っ…血の…」
ブライト「幽玄の支配! 五連刃!!」
セピア「なっ!」
言い終わる前にまたしても吹っ飛ばされる。
ブライト「霊斬! 閃実義! 十字閃!!」
三連続で斬りかかってその回数分突き飛ばす。
セピア「っ…かはっ…」
(霊属性ブライト…初めて会った時も思いましたが…
この者の実力は…あまりにも脅威に…!
違反になりますが…生かしておくよりは…オーブを使ってでも……)
ブライト「どうした。もう終わりか。律零王の側近ともあろう者が」
ブライトの声に顔を上げる。
ブライト「ゼニスを狙うなら、俺は容赦せん」
セピア「………貴方にとって…ゼニスはどういう存在で…?」
セピアの意図が分からない。ただ、答えは…
ブライト「俺の弟子だ。そしてあいつを見捨てる事はない。
見捨てるなど…師がするべき事ではない」
セピア「……フフッ…そうですか…
良いですわ…今日は退きます…ゼニスがこちらに来た時、あなたはどうするのでしょうね」
ブライト「そうはさせん。」
きっぱりと言い切る。
セピア「……さようなら。どうか、ゼニスを守ってあげてくださいな」
セピアはそれで退場していった。
ブライト「……」
メリディエム「そうですか…ありがとうございます…」
ソレイユ「私達としては、サラテリとは仲直り…? したつもりだから」
ゼニス「これから君もギルド「天馬」に送る。
マスター達には許可を取ったから、安心していいよ」
ペコペコと何度も頭を下げながら「ありがとうございます」を連呼している。
メリディエム「あっ! …セピアさんの魔力が消えました…」
ビオレ「まさか…殺し…」
メリディエム「いえ、転移しただけのようですね。」
良かった…殺していたら困ったところだ。
サルファー「ブライトさんは無事でしょうか?」
パリス「平気だとは思いますけど…急ぎましょうか」
メリディエムをギルドに送り、城の外へと出る。
道中の魔物は倒していたので、帰りは楽だった。
ゼニス「ブライトさん!!」
ブライト「お前達、戻ったか。その様子だと成功したようだな」
ソレイユ「はい! セピア…大丈夫でしたか?」
さすがに心配したが…問題ないようで。
ブライト「かすり傷一つない。気にするな」
さすがだ……セピア相手に無傷だなんて…;;;
サルファー「ブライトさん、私達でも能力を習得できるといいましたよね。
それは、本当ですか…?」
ブライト「ああ。別にクレセディアの奴らだけが使えるわけじゃない。
意志に反応するんだ。意志が具現化したという感じか…」
それを聞いてエルブが俯く。
ブライト「……エルブ。お前は確か、能力を奪われたと聞いたが…
…使えなくなったなら、新たな意志を作ればいい。」
エルブ「え……」
ブライト「今のお前がしたい事、成し遂げたい事は何だ。
お前の意志はどこを見ている」
エルブ「…僕の…意志……」
……もしかして、エルブも形は違えど、また能力が使えるように…
サルファー「とりあえず、人々を解放しませんか?」
ソレイユ「そうだね。いこっか」
幽閉されていたのはセイクレイ城の地下牢だった。
街の人達もいた。
ローレル「お前ら!?」
ゼニス「お久しぶりです。敵はもういないので、解放しに来ました。
……断ち切る絶望!」
牢を壊す。
ネメシア「さすがです…ありがとうございます。」
ガイラルディア「また君達には助けてもらってしまったな」
後、もう二人。
シオン「みんな、無事だったのか、良かった」
アイリス「私達も戦ったんだけど…勝ち目なくて…ごめんね」
パリス「彼ら相手じゃ仕方ないですよ…」
アイリス「ほら、ブローディアとローズマリー…起きて?」
立ち上がってる人たちの陰で視えなかったが、ああ、二人が寝ている。
ローズマリー「え…? あ、助け来たの!?」
ブローディア「ふわぁーーーあ…やっと出られる…?」
肝が据わってるな…まあ、寝れる時に寝た方がいいだろうけど…。
ガイラルディア「我々はこれから国の立て直しをしなければならない。
…共に戦えずすまない」
ビオレ「気にしないでください。国が機能しないと解放した意味がないですから」
シオン「……ゼニス、その、大丈夫か…?」
ゼニス「…うん。平気。シオン達は国を頼むよ」
………
アイリス(……ゼニス、無理、してないかな…)
彼らを解放して、再び船に乗り込む。
ブライトも一緒なのだが…
ゼニス「ブライトさんも付いて来てくれるんですか?」
エルブ「だったら、ブライトさんに人々を解放してもらいませんか?
僕達が戦っている間、不安にさせておくのもあれですし…」
確かに、次の相手はフェズだ。時間は掛かるかもしれない。
ブライト「わかった。…なら、そっちはお前達に任せる。
…フェズか……あいつの強さは?」
サルファー「ゼニスの話だと、フェズかサラテリが四零士最強。
フェズの強さはよく分からないそうですが…」
ゼルシェード「あいつの強さは…俺達もフェズと戦った事がないから分からん。
ただ…魔王…いや、もしかしたら神に匹敵するかもしれん」
………は!?
パリス「そんなに強いんですか?」
ゼルシェード「多分だからな? あいつの強さは不明だ」
…これは…気を引き締めないといけないな…
ブライト「町の人達は近くの町に幽閉されていると聞いている。
要人はどこか知らないが……
そして、フェズは城の中だ。…死ぬなよ」
……
ゼニス「……ソレイユ、ちょっと、向こうで話がある」
ソレイユ「? いいよ」
その魔導船。なぜか噴水もある形式で…
おそらくマスターの趣味だろう。
そこに二人で向かった。
ソレイユ「話って、何?」
ゼニス「次の戦いは、今までで一番厳しいと思う。
降りたければ、降りて構わないよ…僕は、ソレイユには傷付いてほしくない」
返事はノー。
ソレイユ「私はゼニスについて行くよ。それに、フェズには借りがあるから」
……そうだった。
ソレイユ「話、他にもあるでしょ」
ゼニス「…もし、僕がゼファになってしまったら……」
ソレイユ「その時は、私が助ける。連れ戻してみせる」
予想外の返事に驚いた。
ゼニス「それが退けだけ危険か分かってる!? 殺す方がずっと簡単なのに!
僕は…君を傷つけたくないって言っ…」
ソレイユ「私は! ゼニスを失いたくない。
そのためだったら、どれだけ傷付いたって、助ける。
そして、絶対に死なない」
…………
ゼニス「でも……」
ゼルシェード「ゼニス。お前を失いたくない奴は多いんだ。
その中でもソレイユはずば抜けているだろう。
今狙われているのはどちらかというとお前だ。
たまには、頼ってもいいんじゃないのか」
…ゼルシェードの言う通りだ…
ソレイユ「あーもう、じゃあ指切り! 約束しよ!
私はゼニスがどうこうなったら必ず死なずに助け出します!
ゼニスは?」
………
ゼニス「呑まれたとしても、抗い続ける。
ソレイユが手を伸ばしたなら、必ず伸ばし返す。そしてまた君の元へ戻る」
指切り…なんてあいまいな約束。
でも、今の自分達には、これほど大事で、確実な約束の方法はない。
その時ゼニス達の手元で、光を放った。
ソレイユ「え……」
ゼルシェード「俺の力を少し込めておいた。
……そこらの約束事よりは、果たされてくれると思うぞ」
ゼニス「……ありがとう、ゼルシェード」
気休めでも、何でもいい。
不安は一気に消えて行く。信じよう、彼らを。
イテールナ城。
………
フェズ「おーい、生きてっか?」
そこにいたのはラージャとカテドラル王。
さっきから無応答なのだ。
フェズ「はあ…テネブリス、こいつら生きてるのか?」
隣にいた紅い龍に話しかける。
テネブリス「生きてはいる。が、考える事を放棄…若干諦めモードだな」
やれやれ、と頭を抱える。
フェズ「ゼニス君達なら生きてるぜ? ああ、違うか。
ゼニス君がゼファだって言うんで、不安なわけか」
ラージャ「っ…ああそうだよ! ゼファにもしもなったら…俺はあいつを…」
フェズ「殺さないとならねぇって? 情けねぇなぁ…元に戻すとか、呼び戻すとか、
引きはがすぐらいの事も言えねぇのかよ」
そう言われてつい睨みつけてしまう。
テネブリス「止しておけ。お前達はここから出られないし、フェズ様に勝つことは不可能だ」
実力的にも精神的にも勝てないのは明白だった。
フェズ「ゼニス君だけどな…ゼルク大陸、クレイドル大陸、ラディル大陸を解放して、
今、ここに向かってるらしいぜ」
テネブリス「! それは…」
フェズ「他の三人は生きて捕虜だ。龍はメリディエムは生きてるぜ」
ラージャ「ゼニス……!」
カテドラル「やはり…勝てるのは彼らだけか…」
自分達の無力が悔しい…抜け出せなければ、戦っても足手纏い…。
フェズ「ゼルシェードは完全にあっちの味方だってセピアとエピナールが言ってたな…
あと、ゼニス君の師匠にセピアが負けたってよ」
テネブリス「セピア様が…!? どれほどの者なんだ……」
肩をすくめてそれを返事とする。
フェズ「まあ、俺はゼニス君と闘えればいいんだけどなぁ。あとはソレイユちゃんか」
テネブリス「それ以外の奴らも来るぞ。どうするんだ」
フェズ「ここに来るには近場の町に船を止めねぇと駄目だ。
そこから徒歩で城まで…その道中に一つ罠を仕掛けた。
ゼニス君とソレイユちゃんの魔力に反応して、城内まで飛ばす罠をな」
つまり、誰かがそれに気付かない限り、二人でここへ乗り込む事になる。
ラージャ「おい、お前!!」
フェズ「信じてやったらどーだよ。後輩だろ?
…ゼニス君は今まで何度も俺達を退けた…その力は何だと思う?」
………
テネブリス「……流変剣……?」
フェズ「ちげーよ。最初だぜ。俺を退けたのは。その時は流変剣なんて持ってない」
ラージャ「守りたい奴の存在と、後悔したくないからだ」
カテドラル「悔いのない最善手を取ろうとして、迷って、そんな自分を悔いて旅に出た…
ゼニスは…誰よりも優しく、強い心を持っている…」
その答えに満足したのか、「くくっ」と笑う。
フェズ「テネブリス以外は分かってんだなぁ!」
その言葉にテネブリスもイラつく。
フェズ「そうだ、それがゼニス君の力の正体。
律零王の技とか関係ねぇ。それが俺を退けた。他でもない俺を。
ソレイユちゃんもそうだ。ゼニス君を失いたくない一心で、悲しませたくない一心で、
ここまで強くなった。サラテリと一騎打ちできるまでになぁ。
……テネブリス。ゼニス君達が来たら奥に通せ」
………
テネブリス「弱者を通すほど私は甘くないぞ」
フェズ「へいへい。殺すなよぉ?」
ラージャ(ゼニス………無事でいろよ……っ)
フェズが牢から背を向け、天井を向く。
フェズ「さあ、俺はここに居るぜゼニス君!
さいっこうの闘争の果てに決着を!
お前らの希望も救いも何もかも、俺が貪り尽くしてやるよ!!」
ブライト「霊殲破!」
セピア「っ! ブラッドナイフ!!」
攻撃音がずっと響いている。
両者とも譲るつもりはないが、押されているのはセピアの方だった。
セピア「っ…血の…」
ブライト「幽玄の支配! 五連刃!!」
セピア「なっ!」
言い終わる前にまたしても吹っ飛ばされる。
ブライト「霊斬! 閃実義! 十字閃!!」
三連続で斬りかかってその回数分突き飛ばす。
セピア「っ…かはっ…」
(霊属性ブライト…初めて会った時も思いましたが…
この者の実力は…あまりにも脅威に…!
違反になりますが…生かしておくよりは…オーブを使ってでも……)
ブライト「どうした。もう終わりか。律零王の側近ともあろう者が」
ブライトの声に顔を上げる。
ブライト「ゼニスを狙うなら、俺は容赦せん」
セピア「………貴方にとって…ゼニスはどういう存在で…?」
セピアの意図が分からない。ただ、答えは…
ブライト「俺の弟子だ。そしてあいつを見捨てる事はない。
見捨てるなど…師がするべき事ではない」
セピア「……フフッ…そうですか…
良いですわ…今日は退きます…ゼニスがこちらに来た時、あなたはどうするのでしょうね」
ブライト「そうはさせん。」
きっぱりと言い切る。
セピア「……さようなら。どうか、ゼニスを守ってあげてくださいな」
セピアはそれで退場していった。
ブライト「……」
メリディエム「そうですか…ありがとうございます…」
ソレイユ「私達としては、サラテリとは仲直り…? したつもりだから」
ゼニス「これから君もギルド「天馬」に送る。
マスター達には許可を取ったから、安心していいよ」
ペコペコと何度も頭を下げながら「ありがとうございます」を連呼している。
メリディエム「あっ! …セピアさんの魔力が消えました…」
ビオレ「まさか…殺し…」
メリディエム「いえ、転移しただけのようですね。」
良かった…殺していたら困ったところだ。
サルファー「ブライトさんは無事でしょうか?」
パリス「平気だとは思いますけど…急ぎましょうか」
メリディエムをギルドに送り、城の外へと出る。
道中の魔物は倒していたので、帰りは楽だった。
ゼニス「ブライトさん!!」
ブライト「お前達、戻ったか。その様子だと成功したようだな」
ソレイユ「はい! セピア…大丈夫でしたか?」
さすがに心配したが…問題ないようで。
ブライト「かすり傷一つない。気にするな」
さすがだ……セピア相手に無傷だなんて…;;;
サルファー「ブライトさん、私達でも能力を習得できるといいましたよね。
それは、本当ですか…?」
ブライト「ああ。別にクレセディアの奴らだけが使えるわけじゃない。
意志に反応するんだ。意志が具現化したという感じか…」
それを聞いてエルブが俯く。
ブライト「……エルブ。お前は確か、能力を奪われたと聞いたが…
…使えなくなったなら、新たな意志を作ればいい。」
エルブ「え……」
ブライト「今のお前がしたい事、成し遂げたい事は何だ。
お前の意志はどこを見ている」
エルブ「…僕の…意志……」
……もしかして、エルブも形は違えど、また能力が使えるように…
サルファー「とりあえず、人々を解放しませんか?」
ソレイユ「そうだね。いこっか」
幽閉されていたのはセイクレイ城の地下牢だった。
街の人達もいた。
ローレル「お前ら!?」
ゼニス「お久しぶりです。敵はもういないので、解放しに来ました。
……断ち切る絶望!」
牢を壊す。
ネメシア「さすがです…ありがとうございます。」
ガイラルディア「また君達には助けてもらってしまったな」
後、もう二人。
シオン「みんな、無事だったのか、良かった」
アイリス「私達も戦ったんだけど…勝ち目なくて…ごめんね」
パリス「彼ら相手じゃ仕方ないですよ…」
アイリス「ほら、ブローディアとローズマリー…起きて?」
立ち上がってる人たちの陰で視えなかったが、ああ、二人が寝ている。
ローズマリー「え…? あ、助け来たの!?」
ブローディア「ふわぁーーーあ…やっと出られる…?」
肝が据わってるな…まあ、寝れる時に寝た方がいいだろうけど…。
ガイラルディア「我々はこれから国の立て直しをしなければならない。
…共に戦えずすまない」
ビオレ「気にしないでください。国が機能しないと解放した意味がないですから」
シオン「……ゼニス、その、大丈夫か…?」
ゼニス「…うん。平気。シオン達は国を頼むよ」
………
アイリス(……ゼニス、無理、してないかな…)
彼らを解放して、再び船に乗り込む。
ブライトも一緒なのだが…
ゼニス「ブライトさんも付いて来てくれるんですか?」
エルブ「だったら、ブライトさんに人々を解放してもらいませんか?
僕達が戦っている間、不安にさせておくのもあれですし…」
確かに、次の相手はフェズだ。時間は掛かるかもしれない。
ブライト「わかった。…なら、そっちはお前達に任せる。
…フェズか……あいつの強さは?」
サルファー「ゼニスの話だと、フェズかサラテリが四零士最強。
フェズの強さはよく分からないそうですが…」
ゼルシェード「あいつの強さは…俺達もフェズと戦った事がないから分からん。
ただ…魔王…いや、もしかしたら神に匹敵するかもしれん」
………は!?
パリス「そんなに強いんですか?」
ゼルシェード「多分だからな? あいつの強さは不明だ」
…これは…気を引き締めないといけないな…
ブライト「町の人達は近くの町に幽閉されていると聞いている。
要人はどこか知らないが……
そして、フェズは城の中だ。…死ぬなよ」
……
ゼニス「……ソレイユ、ちょっと、向こうで話がある」
ソレイユ「? いいよ」
その魔導船。なぜか噴水もある形式で…
おそらくマスターの趣味だろう。
そこに二人で向かった。
ソレイユ「話って、何?」
ゼニス「次の戦いは、今までで一番厳しいと思う。
降りたければ、降りて構わないよ…僕は、ソレイユには傷付いてほしくない」
返事はノー。
ソレイユ「私はゼニスについて行くよ。それに、フェズには借りがあるから」
……そうだった。
ソレイユ「話、他にもあるでしょ」
ゼニス「…もし、僕がゼファになってしまったら……」
ソレイユ「その時は、私が助ける。連れ戻してみせる」
予想外の返事に驚いた。
ゼニス「それが退けだけ危険か分かってる!? 殺す方がずっと簡単なのに!
僕は…君を傷つけたくないって言っ…」
ソレイユ「私は! ゼニスを失いたくない。
そのためだったら、どれだけ傷付いたって、助ける。
そして、絶対に死なない」
…………
ゼニス「でも……」
ゼルシェード「ゼニス。お前を失いたくない奴は多いんだ。
その中でもソレイユはずば抜けているだろう。
今狙われているのはどちらかというとお前だ。
たまには、頼ってもいいんじゃないのか」
…ゼルシェードの言う通りだ…
ソレイユ「あーもう、じゃあ指切り! 約束しよ!
私はゼニスがどうこうなったら必ず死なずに助け出します!
ゼニスは?」
………
ゼニス「呑まれたとしても、抗い続ける。
ソレイユが手を伸ばしたなら、必ず伸ばし返す。そしてまた君の元へ戻る」
指切り…なんてあいまいな約束。
でも、今の自分達には、これほど大事で、確実な約束の方法はない。
その時ゼニス達の手元で、光を放った。
ソレイユ「え……」
ゼルシェード「俺の力を少し込めておいた。
……そこらの約束事よりは、果たされてくれると思うぞ」
ゼニス「……ありがとう、ゼルシェード」
気休めでも、何でもいい。
不安は一気に消えて行く。信じよう、彼らを。
イテールナ城。
………
フェズ「おーい、生きてっか?」
そこにいたのはラージャとカテドラル王。
さっきから無応答なのだ。
フェズ「はあ…テネブリス、こいつら生きてるのか?」
隣にいた紅い龍に話しかける。
テネブリス「生きてはいる。が、考える事を放棄…若干諦めモードだな」
やれやれ、と頭を抱える。
フェズ「ゼニス君達なら生きてるぜ? ああ、違うか。
ゼニス君がゼファだって言うんで、不安なわけか」
ラージャ「っ…ああそうだよ! ゼファにもしもなったら…俺はあいつを…」
フェズ「殺さないとならねぇって? 情けねぇなぁ…元に戻すとか、呼び戻すとか、
引きはがすぐらいの事も言えねぇのかよ」
そう言われてつい睨みつけてしまう。
テネブリス「止しておけ。お前達はここから出られないし、フェズ様に勝つことは不可能だ」
実力的にも精神的にも勝てないのは明白だった。
フェズ「ゼニス君だけどな…ゼルク大陸、クレイドル大陸、ラディル大陸を解放して、
今、ここに向かってるらしいぜ」
テネブリス「! それは…」
フェズ「他の三人は生きて捕虜だ。龍はメリディエムは生きてるぜ」
ラージャ「ゼニス……!」
カテドラル「やはり…勝てるのは彼らだけか…」
自分達の無力が悔しい…抜け出せなければ、戦っても足手纏い…。
フェズ「ゼルシェードは完全にあっちの味方だってセピアとエピナールが言ってたな…
あと、ゼニス君の師匠にセピアが負けたってよ」
テネブリス「セピア様が…!? どれほどの者なんだ……」
肩をすくめてそれを返事とする。
フェズ「まあ、俺はゼニス君と闘えればいいんだけどなぁ。あとはソレイユちゃんか」
テネブリス「それ以外の奴らも来るぞ。どうするんだ」
フェズ「ここに来るには近場の町に船を止めねぇと駄目だ。
そこから徒歩で城まで…その道中に一つ罠を仕掛けた。
ゼニス君とソレイユちゃんの魔力に反応して、城内まで飛ばす罠をな」
つまり、誰かがそれに気付かない限り、二人でここへ乗り込む事になる。
ラージャ「おい、お前!!」
フェズ「信じてやったらどーだよ。後輩だろ?
…ゼニス君は今まで何度も俺達を退けた…その力は何だと思う?」
………
テネブリス「……流変剣……?」
フェズ「ちげーよ。最初だぜ。俺を退けたのは。その時は流変剣なんて持ってない」
ラージャ「守りたい奴の存在と、後悔したくないからだ」
カテドラル「悔いのない最善手を取ろうとして、迷って、そんな自分を悔いて旅に出た…
ゼニスは…誰よりも優しく、強い心を持っている…」
その答えに満足したのか、「くくっ」と笑う。
フェズ「テネブリス以外は分かってんだなぁ!」
その言葉にテネブリスもイラつく。
フェズ「そうだ、それがゼニス君の力の正体。
律零王の技とか関係ねぇ。それが俺を退けた。他でもない俺を。
ソレイユちゃんもそうだ。ゼニス君を失いたくない一心で、悲しませたくない一心で、
ここまで強くなった。サラテリと一騎打ちできるまでになぁ。
……テネブリス。ゼニス君達が来たら奥に通せ」
………
テネブリス「弱者を通すほど私は甘くないぞ」
フェズ「へいへい。殺すなよぉ?」
ラージャ(ゼニス………無事でいろよ……っ)
フェズが牢から背を向け、天井を向く。
フェズ「さあ、俺はここに居るぜゼニス君!
さいっこうの闘争の果てに決着を!
お前らの希望も救いも何もかも、俺が貪り尽くしてやるよ!!」
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