69 / 100
二魂の心は相違して
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 69話
しおりを挟む
城外では…
ブライト「霊殲破!」
セピア「っ! ブラッドナイフ!!」
攻撃音がずっと響いている。
両者とも譲るつもりはないが、押されているのはセピアの方だった。
セピア「っ…血の…」
ブライト「幽玄の支配! 五連刃!!」
セピア「なっ!」
言い終わる前にまたしても吹っ飛ばされる。
ブライト「霊斬! 閃実義! 十字閃!!」
三連続で斬りかかってその回数分突き飛ばす。
セピア「っ…かはっ…」
(霊属性ブライト…初めて会った時も思いましたが…
この者の実力は…あまりにも脅威に…!
違反になりますが…生かしておくよりは…オーブを使ってでも……)
ブライト「どうした。もう終わりか。律零王の側近ともあろう者が」
ブライトの声に顔を上げる。
ブライト「ゼニスを狙うなら、俺は容赦せん」
セピア「………貴方にとって…ゼニスはどういう存在で…?」
セピアの意図が分からない。ただ、答えは…
ブライト「俺の弟子だ。そしてあいつを見捨てる事はない。
見捨てるなど…師がするべき事ではない」
セピア「……フフッ…そうですか…
良いですわ…今日は退きます…ゼニスがこちらに来た時、あなたはどうするのでしょうね」
ブライト「そうはさせん。」
きっぱりと言い切る。
セピア「……さようなら。どうか、ゼニスを守ってあげてくださいな」
セピアはそれで退場していった。
ブライト「……」
メリディエム「そうですか…ありがとうございます…」
ソレイユ「私達としては、サラテリとは仲直り…? したつもりだから」
ゼニス「これから君もギルド「天馬」に送る。
マスター達には許可を取ったから、安心していいよ」
ペコペコと何度も頭を下げながら「ありがとうございます」を連呼している。
メリディエム「あっ! …セピアさんの魔力が消えました…」
ビオレ「まさか…殺し…」
メリディエム「いえ、転移しただけのようですね。」
良かった…殺していたら困ったところだ。
サルファー「ブライトさんは無事でしょうか?」
パリス「平気だとは思いますけど…急ぎましょうか」
メリディエムをギルドに送り、城の外へと出る。
道中の魔物は倒していたので、帰りは楽だった。
ゼニス「ブライトさん!!」
ブライト「お前達、戻ったか。その様子だと成功したようだな」
ソレイユ「はい! セピア…大丈夫でしたか?」
さすがに心配したが…問題ないようで。
ブライト「かすり傷一つない。気にするな」
さすがだ……セピア相手に無傷だなんて…;;;
サルファー「ブライトさん、私達でも能力を習得できるといいましたよね。
それは、本当ですか…?」
ブライト「ああ。別にクレセディアの奴らだけが使えるわけじゃない。
意志に反応するんだ。意志が具現化したという感じか…」
それを聞いてエルブが俯く。
ブライト「……エルブ。お前は確か、能力を奪われたと聞いたが…
…使えなくなったなら、新たな意志を作ればいい。」
エルブ「え……」
ブライト「今のお前がしたい事、成し遂げたい事は何だ。
お前の意志はどこを見ている」
エルブ「…僕の…意志……」
……もしかして、エルブも形は違えど、また能力が使えるように…
サルファー「とりあえず、人々を解放しませんか?」
ソレイユ「そうだね。いこっか」
幽閉されていたのはセイクレイ城の地下牢だった。
街の人達もいた。
ローレル「お前ら!?」
ゼニス「お久しぶりです。敵はもういないので、解放しに来ました。
……断ち切る絶望!」
牢を壊す。
ネメシア「さすがです…ありがとうございます。」
ガイラルディア「また君達には助けてもらってしまったな」
後、もう二人。
シオン「みんな、無事だったのか、良かった」
アイリス「私達も戦ったんだけど…勝ち目なくて…ごめんね」
パリス「彼ら相手じゃ仕方ないですよ…」
アイリス「ほら、ブローディアとローズマリー…起きて?」
立ち上がってる人たちの陰で視えなかったが、ああ、二人が寝ている。
ローズマリー「え…? あ、助け来たの!?」
ブローディア「ふわぁーーーあ…やっと出られる…?」
肝が据わってるな…まあ、寝れる時に寝た方がいいだろうけど…。
ガイラルディア「我々はこれから国の立て直しをしなければならない。
…共に戦えずすまない」
ビオレ「気にしないでください。国が機能しないと解放した意味がないですから」
シオン「……ゼニス、その、大丈夫か…?」
ゼニス「…うん。平気。シオン達は国を頼むよ」
………
アイリス(……ゼニス、無理、してないかな…)
彼らを解放して、再び船に乗り込む。
ブライトも一緒なのだが…
ゼニス「ブライトさんも付いて来てくれるんですか?」
エルブ「だったら、ブライトさんに人々を解放してもらいませんか?
僕達が戦っている間、不安にさせておくのもあれですし…」
確かに、次の相手はフェズだ。時間は掛かるかもしれない。
ブライト「わかった。…なら、そっちはお前達に任せる。
…フェズか……あいつの強さは?」
サルファー「ゼニスの話だと、フェズかサラテリが四零士最強。
フェズの強さはよく分からないそうですが…」
ゼルシェード「あいつの強さは…俺達もフェズと戦った事がないから分からん。
ただ…魔王…いや、もしかしたら神に匹敵するかもしれん」
………は!?
パリス「そんなに強いんですか?」
ゼルシェード「多分だからな? あいつの強さは不明だ」
…これは…気を引き締めないといけないな…
ブライト「町の人達は近くの町に幽閉されていると聞いている。
要人はどこか知らないが……
そして、フェズは城の中だ。…死ぬなよ」
……
ゼニス「……ソレイユ、ちょっと、向こうで話がある」
ソレイユ「? いいよ」
その魔導船。なぜか噴水もある形式で…
おそらくマスターの趣味だろう。
そこに二人で向かった。
ソレイユ「話って、何?」
ゼニス「次の戦いは、今までで一番厳しいと思う。
降りたければ、降りて構わないよ…僕は、ソレイユには傷付いてほしくない」
返事はノー。
ソレイユ「私はゼニスについて行くよ。それに、フェズには借りがあるから」
……そうだった。
ソレイユ「話、他にもあるでしょ」
ゼニス「…もし、僕がゼファになってしまったら……」
ソレイユ「その時は、私が助ける。連れ戻してみせる」
予想外の返事に驚いた。
ゼニス「それが退けだけ危険か分かってる!? 殺す方がずっと簡単なのに!
僕は…君を傷つけたくないって言っ…」
ソレイユ「私は! ゼニスを失いたくない。
そのためだったら、どれだけ傷付いたって、助ける。
そして、絶対に死なない」
…………
ゼニス「でも……」
ゼルシェード「ゼニス。お前を失いたくない奴は多いんだ。
その中でもソレイユはずば抜けているだろう。
今狙われているのはどちらかというとお前だ。
たまには、頼ってもいいんじゃないのか」
…ゼルシェードの言う通りだ…
ソレイユ「あーもう、じゃあ指切り! 約束しよ!
私はゼニスがどうこうなったら必ず死なずに助け出します!
ゼニスは?」
………
ゼニス「呑まれたとしても、抗い続ける。
ソレイユが手を伸ばしたなら、必ず伸ばし返す。そしてまた君の元へ戻る」
指切り…なんてあいまいな約束。
でも、今の自分達には、これほど大事で、確実な約束の方法はない。
その時ゼニス達の手元で、光を放った。
ソレイユ「え……」
ゼルシェード「俺の力を少し込めておいた。
……そこらの約束事よりは、果たされてくれると思うぞ」
ゼニス「……ありがとう、ゼルシェード」
気休めでも、何でもいい。
不安は一気に消えて行く。信じよう、彼らを。
イテールナ城。
………
フェズ「おーい、生きてっか?」
そこにいたのはラージャとカテドラル王。
さっきから無応答なのだ。
フェズ「はあ…テネブリス、こいつら生きてるのか?」
隣にいた紅い龍に話しかける。
テネブリス「生きてはいる。が、考える事を放棄…若干諦めモードだな」
やれやれ、と頭を抱える。
フェズ「ゼニス君達なら生きてるぜ? ああ、違うか。
ゼニス君がゼファだって言うんで、不安なわけか」
ラージャ「っ…ああそうだよ! ゼファにもしもなったら…俺はあいつを…」
フェズ「殺さないとならねぇって? 情けねぇなぁ…元に戻すとか、呼び戻すとか、
引きはがすぐらいの事も言えねぇのかよ」
そう言われてつい睨みつけてしまう。
テネブリス「止しておけ。お前達はここから出られないし、フェズ様に勝つことは不可能だ」
実力的にも精神的にも勝てないのは明白だった。
フェズ「ゼニス君だけどな…ゼルク大陸、クレイドル大陸、ラディル大陸を解放して、
今、ここに向かってるらしいぜ」
テネブリス「! それは…」
フェズ「他の三人は生きて捕虜だ。龍はメリディエムは生きてるぜ」
ラージャ「ゼニス……!」
カテドラル「やはり…勝てるのは彼らだけか…」
自分達の無力が悔しい…抜け出せなければ、戦っても足手纏い…。
フェズ「ゼルシェードは完全にあっちの味方だってセピアとエピナールが言ってたな…
あと、ゼニス君の師匠にセピアが負けたってよ」
テネブリス「セピア様が…!? どれほどの者なんだ……」
肩をすくめてそれを返事とする。
フェズ「まあ、俺はゼニス君と闘えればいいんだけどなぁ。あとはソレイユちゃんか」
テネブリス「それ以外の奴らも来るぞ。どうするんだ」
フェズ「ここに来るには近場の町に船を止めねぇと駄目だ。
そこから徒歩で城まで…その道中に一つ罠を仕掛けた。
ゼニス君とソレイユちゃんの魔力に反応して、城内まで飛ばす罠をな」
つまり、誰かがそれに気付かない限り、二人でここへ乗り込む事になる。
ラージャ「おい、お前!!」
フェズ「信じてやったらどーだよ。後輩だろ?
…ゼニス君は今まで何度も俺達を退けた…その力は何だと思う?」
………
テネブリス「……流変剣……?」
フェズ「ちげーよ。最初だぜ。俺を退けたのは。その時は流変剣なんて持ってない」
ラージャ「守りたい奴の存在と、後悔したくないからだ」
カテドラル「悔いのない最善手を取ろうとして、迷って、そんな自分を悔いて旅に出た…
ゼニスは…誰よりも優しく、強い心を持っている…」
その答えに満足したのか、「くくっ」と笑う。
フェズ「テネブリス以外は分かってんだなぁ!」
その言葉にテネブリスもイラつく。
フェズ「そうだ、それがゼニス君の力の正体。
律零王の技とか関係ねぇ。それが俺を退けた。他でもない俺を。
ソレイユちゃんもそうだ。ゼニス君を失いたくない一心で、悲しませたくない一心で、
ここまで強くなった。サラテリと一騎打ちできるまでになぁ。
……テネブリス。ゼニス君達が来たら奥に通せ」
………
テネブリス「弱者を通すほど私は甘くないぞ」
フェズ「へいへい。殺すなよぉ?」
ラージャ(ゼニス………無事でいろよ……っ)
フェズが牢から背を向け、天井を向く。
フェズ「さあ、俺はここに居るぜゼニス君!
さいっこうの闘争の果てに決着を!
お前らの希望も救いも何もかも、俺が貪り尽くしてやるよ!!」
ブライト「霊殲破!」
セピア「っ! ブラッドナイフ!!」
攻撃音がずっと響いている。
両者とも譲るつもりはないが、押されているのはセピアの方だった。
セピア「っ…血の…」
ブライト「幽玄の支配! 五連刃!!」
セピア「なっ!」
言い終わる前にまたしても吹っ飛ばされる。
ブライト「霊斬! 閃実義! 十字閃!!」
三連続で斬りかかってその回数分突き飛ばす。
セピア「っ…かはっ…」
(霊属性ブライト…初めて会った時も思いましたが…
この者の実力は…あまりにも脅威に…!
違反になりますが…生かしておくよりは…オーブを使ってでも……)
ブライト「どうした。もう終わりか。律零王の側近ともあろう者が」
ブライトの声に顔を上げる。
ブライト「ゼニスを狙うなら、俺は容赦せん」
セピア「………貴方にとって…ゼニスはどういう存在で…?」
セピアの意図が分からない。ただ、答えは…
ブライト「俺の弟子だ。そしてあいつを見捨てる事はない。
見捨てるなど…師がするべき事ではない」
セピア「……フフッ…そうですか…
良いですわ…今日は退きます…ゼニスがこちらに来た時、あなたはどうするのでしょうね」
ブライト「そうはさせん。」
きっぱりと言い切る。
セピア「……さようなら。どうか、ゼニスを守ってあげてくださいな」
セピアはそれで退場していった。
ブライト「……」
メリディエム「そうですか…ありがとうございます…」
ソレイユ「私達としては、サラテリとは仲直り…? したつもりだから」
ゼニス「これから君もギルド「天馬」に送る。
マスター達には許可を取ったから、安心していいよ」
ペコペコと何度も頭を下げながら「ありがとうございます」を連呼している。
メリディエム「あっ! …セピアさんの魔力が消えました…」
ビオレ「まさか…殺し…」
メリディエム「いえ、転移しただけのようですね。」
良かった…殺していたら困ったところだ。
サルファー「ブライトさんは無事でしょうか?」
パリス「平気だとは思いますけど…急ぎましょうか」
メリディエムをギルドに送り、城の外へと出る。
道中の魔物は倒していたので、帰りは楽だった。
ゼニス「ブライトさん!!」
ブライト「お前達、戻ったか。その様子だと成功したようだな」
ソレイユ「はい! セピア…大丈夫でしたか?」
さすがに心配したが…問題ないようで。
ブライト「かすり傷一つない。気にするな」
さすがだ……セピア相手に無傷だなんて…;;;
サルファー「ブライトさん、私達でも能力を習得できるといいましたよね。
それは、本当ですか…?」
ブライト「ああ。別にクレセディアの奴らだけが使えるわけじゃない。
意志に反応するんだ。意志が具現化したという感じか…」
それを聞いてエルブが俯く。
ブライト「……エルブ。お前は確か、能力を奪われたと聞いたが…
…使えなくなったなら、新たな意志を作ればいい。」
エルブ「え……」
ブライト「今のお前がしたい事、成し遂げたい事は何だ。
お前の意志はどこを見ている」
エルブ「…僕の…意志……」
……もしかして、エルブも形は違えど、また能力が使えるように…
サルファー「とりあえず、人々を解放しませんか?」
ソレイユ「そうだね。いこっか」
幽閉されていたのはセイクレイ城の地下牢だった。
街の人達もいた。
ローレル「お前ら!?」
ゼニス「お久しぶりです。敵はもういないので、解放しに来ました。
……断ち切る絶望!」
牢を壊す。
ネメシア「さすがです…ありがとうございます。」
ガイラルディア「また君達には助けてもらってしまったな」
後、もう二人。
シオン「みんな、無事だったのか、良かった」
アイリス「私達も戦ったんだけど…勝ち目なくて…ごめんね」
パリス「彼ら相手じゃ仕方ないですよ…」
アイリス「ほら、ブローディアとローズマリー…起きて?」
立ち上がってる人たちの陰で視えなかったが、ああ、二人が寝ている。
ローズマリー「え…? あ、助け来たの!?」
ブローディア「ふわぁーーーあ…やっと出られる…?」
肝が据わってるな…まあ、寝れる時に寝た方がいいだろうけど…。
ガイラルディア「我々はこれから国の立て直しをしなければならない。
…共に戦えずすまない」
ビオレ「気にしないでください。国が機能しないと解放した意味がないですから」
シオン「……ゼニス、その、大丈夫か…?」
ゼニス「…うん。平気。シオン達は国を頼むよ」
………
アイリス(……ゼニス、無理、してないかな…)
彼らを解放して、再び船に乗り込む。
ブライトも一緒なのだが…
ゼニス「ブライトさんも付いて来てくれるんですか?」
エルブ「だったら、ブライトさんに人々を解放してもらいませんか?
僕達が戦っている間、不安にさせておくのもあれですし…」
確かに、次の相手はフェズだ。時間は掛かるかもしれない。
ブライト「わかった。…なら、そっちはお前達に任せる。
…フェズか……あいつの強さは?」
サルファー「ゼニスの話だと、フェズかサラテリが四零士最強。
フェズの強さはよく分からないそうですが…」
ゼルシェード「あいつの強さは…俺達もフェズと戦った事がないから分からん。
ただ…魔王…いや、もしかしたら神に匹敵するかもしれん」
………は!?
パリス「そんなに強いんですか?」
ゼルシェード「多分だからな? あいつの強さは不明だ」
…これは…気を引き締めないといけないな…
ブライト「町の人達は近くの町に幽閉されていると聞いている。
要人はどこか知らないが……
そして、フェズは城の中だ。…死ぬなよ」
……
ゼニス「……ソレイユ、ちょっと、向こうで話がある」
ソレイユ「? いいよ」
その魔導船。なぜか噴水もある形式で…
おそらくマスターの趣味だろう。
そこに二人で向かった。
ソレイユ「話って、何?」
ゼニス「次の戦いは、今までで一番厳しいと思う。
降りたければ、降りて構わないよ…僕は、ソレイユには傷付いてほしくない」
返事はノー。
ソレイユ「私はゼニスについて行くよ。それに、フェズには借りがあるから」
……そうだった。
ソレイユ「話、他にもあるでしょ」
ゼニス「…もし、僕がゼファになってしまったら……」
ソレイユ「その時は、私が助ける。連れ戻してみせる」
予想外の返事に驚いた。
ゼニス「それが退けだけ危険か分かってる!? 殺す方がずっと簡単なのに!
僕は…君を傷つけたくないって言っ…」
ソレイユ「私は! ゼニスを失いたくない。
そのためだったら、どれだけ傷付いたって、助ける。
そして、絶対に死なない」
…………
ゼニス「でも……」
ゼルシェード「ゼニス。お前を失いたくない奴は多いんだ。
その中でもソレイユはずば抜けているだろう。
今狙われているのはどちらかというとお前だ。
たまには、頼ってもいいんじゃないのか」
…ゼルシェードの言う通りだ…
ソレイユ「あーもう、じゃあ指切り! 約束しよ!
私はゼニスがどうこうなったら必ず死なずに助け出します!
ゼニスは?」
………
ゼニス「呑まれたとしても、抗い続ける。
ソレイユが手を伸ばしたなら、必ず伸ばし返す。そしてまた君の元へ戻る」
指切り…なんてあいまいな約束。
でも、今の自分達には、これほど大事で、確実な約束の方法はない。
その時ゼニス達の手元で、光を放った。
ソレイユ「え……」
ゼルシェード「俺の力を少し込めておいた。
……そこらの約束事よりは、果たされてくれると思うぞ」
ゼニス「……ありがとう、ゼルシェード」
気休めでも、何でもいい。
不安は一気に消えて行く。信じよう、彼らを。
イテールナ城。
………
フェズ「おーい、生きてっか?」
そこにいたのはラージャとカテドラル王。
さっきから無応答なのだ。
フェズ「はあ…テネブリス、こいつら生きてるのか?」
隣にいた紅い龍に話しかける。
テネブリス「生きてはいる。が、考える事を放棄…若干諦めモードだな」
やれやれ、と頭を抱える。
フェズ「ゼニス君達なら生きてるぜ? ああ、違うか。
ゼニス君がゼファだって言うんで、不安なわけか」
ラージャ「っ…ああそうだよ! ゼファにもしもなったら…俺はあいつを…」
フェズ「殺さないとならねぇって? 情けねぇなぁ…元に戻すとか、呼び戻すとか、
引きはがすぐらいの事も言えねぇのかよ」
そう言われてつい睨みつけてしまう。
テネブリス「止しておけ。お前達はここから出られないし、フェズ様に勝つことは不可能だ」
実力的にも精神的にも勝てないのは明白だった。
フェズ「ゼニス君だけどな…ゼルク大陸、クレイドル大陸、ラディル大陸を解放して、
今、ここに向かってるらしいぜ」
テネブリス「! それは…」
フェズ「他の三人は生きて捕虜だ。龍はメリディエムは生きてるぜ」
ラージャ「ゼニス……!」
カテドラル「やはり…勝てるのは彼らだけか…」
自分達の無力が悔しい…抜け出せなければ、戦っても足手纏い…。
フェズ「ゼルシェードは完全にあっちの味方だってセピアとエピナールが言ってたな…
あと、ゼニス君の師匠にセピアが負けたってよ」
テネブリス「セピア様が…!? どれほどの者なんだ……」
肩をすくめてそれを返事とする。
フェズ「まあ、俺はゼニス君と闘えればいいんだけどなぁ。あとはソレイユちゃんか」
テネブリス「それ以外の奴らも来るぞ。どうするんだ」
フェズ「ここに来るには近場の町に船を止めねぇと駄目だ。
そこから徒歩で城まで…その道中に一つ罠を仕掛けた。
ゼニス君とソレイユちゃんの魔力に反応して、城内まで飛ばす罠をな」
つまり、誰かがそれに気付かない限り、二人でここへ乗り込む事になる。
ラージャ「おい、お前!!」
フェズ「信じてやったらどーだよ。後輩だろ?
…ゼニス君は今まで何度も俺達を退けた…その力は何だと思う?」
………
テネブリス「……流変剣……?」
フェズ「ちげーよ。最初だぜ。俺を退けたのは。その時は流変剣なんて持ってない」
ラージャ「守りたい奴の存在と、後悔したくないからだ」
カテドラル「悔いのない最善手を取ろうとして、迷って、そんな自分を悔いて旅に出た…
ゼニスは…誰よりも優しく、強い心を持っている…」
その答えに満足したのか、「くくっ」と笑う。
フェズ「テネブリス以外は分かってんだなぁ!」
その言葉にテネブリスもイラつく。
フェズ「そうだ、それがゼニス君の力の正体。
律零王の技とか関係ねぇ。それが俺を退けた。他でもない俺を。
ソレイユちゃんもそうだ。ゼニス君を失いたくない一心で、悲しませたくない一心で、
ここまで強くなった。サラテリと一騎打ちできるまでになぁ。
……テネブリス。ゼニス君達が来たら奥に通せ」
………
テネブリス「弱者を通すほど私は甘くないぞ」
フェズ「へいへい。殺すなよぉ?」
ラージャ(ゼニス………無事でいろよ……っ)
フェズが牢から背を向け、天井を向く。
フェズ「さあ、俺はここに居るぜゼニス君!
さいっこうの闘争の果てに決着を!
お前らの希望も救いも何もかも、俺が貪り尽くしてやるよ!!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
堕天使の黙示録-アポカリプス-
瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜
ファンタジー
記憶を取り戻すための旅。
記憶は、あった方がいいのか、それとも戻らない方がいいのか…。
見たくない過去なら? 辛い運命なら?
記憶の無い者達が導かれ、めぐり逢い、旅をしていく物語。
真実を見た先に、彼らの出す答えは…。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……


推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~
ことのはおり
ファンタジー
渡会 霧(わたらい きり)。36歳。オタク。親ガチャハズレの悲惨な生い立ち。
幸薄き彼女が手にした、一冊の辞典。
それは異世界への、特別招待状。
それは推しと一緒にいられる、ミラクルな魔法アイテム。
それは世界を救済する力を秘めた、最強の武器。
本棚を抜けた先は、物語の中の世界――そこからすべてが、始まる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

螺旋 ~命の音楽~
RINFAM
ファンタジー
悪夢だ。これは悪い夢に違いない。
嘘みたいだ。ほんの今朝まで、いつもと同じ日常が僕を包んでいてくれたのに。
いつものように起きて、いつものように顔を洗って、学校へ来て、友達と話して、授業を……ああ。夢なら早く醒めてほしい。これが本当に夢ならば。
血。真っ赤な血。
鉄臭い匂い。むせかえるほど。
嘘みたいだ。こんなこと。誰か、誰か嘘だって言ってよ。
目の前の光景が信じられずにいると、また一人、二人と、クラスメイトが倒れて動かなくなった。じわりとその体のまわりに血溜まりができる。そしてもう、ぴくりともしない。
ああ、僕も死ぬのだ。あんなふうに。
─────怖い。
思った瞬間、電気が走るように恐怖が涌き起こってきた。いやだ。嫌だ。イヤだ。死ぬのは怖い。死ぬのは嫌。一人はいや。一人きりで歩くのはいや。
もう独りぽっちになりたくない。
「ーーーーーーーーっ!!」
誰かの名を呼ぼうとして口を開ける。舌は張り付いて、まるで言う事をきかない。体も動かない。逃げ出したいのに、机の下から一歩も動けない。
助けて。助けて。こんなのは嫌だ。やっと見つけたのに。
イヤな音がした。僕の真上から。天井だ。落ちる。落ちてくる。僕の上へ。きっともうすぐ。
僕は叫んだ。狂ったように叫び続けた。なにか言っていたような気もする。だけど体はやっぱり動かない。誰かが僕の名を呼んだような気がした。振り返ろうとして……。
気が付くと、目の前は真っ暗だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる