月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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二魂の心は相違して

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 65話

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セリディアス大陸。

セピア「お帰りなさい、エピナール。どうでした?」

エピナール「やはり、陛下…いえ、ゼニスさん達でした。

それと、ゼルシェード様が流変剣の中にいらっしゃいます。力は失っていますが。」

セピア「そう、ゼルシェード様が……

奪われ切る寸前で避難したのでしょう…」

エピナール「…あちらは本気ですよ。

相手にしたのはゼニスさんとエルブだけだったのですが、負けました」

セピア「!! 二人しか相手にしていないのに!?」

エピナール「オーブこそ使っていませんが、それ以外は出し尽くしました…」

セピア「…大丈夫ですわ。ワタクシ達が本気になった時、彼らに勝ち目などない。

……グラファイトは?」

エピナール「ゼニスさん達はどうやら殺す気は無いようですね。

グラファイトさんもギルドです。」

セピア「……救えなかった時、彼らはどう思うでしょうね…」

エピナール「ゼニス師匠は陛下ですから…無駄に自分を責めるでしょうね…

それが何か?」

セピア「………を生かすだけの余裕が、

戦闘後にあるかどうか…という話ですわ」

エピナール「……確かに、あれとの戦闘は…国から討伐命令が下ったほどでしたからね…」

セピア「あれになったが最後、傍観しても、戦っても、負傷者は出ますわよ」

空を見上げた直後、セピアが歩きだす。

エピナール「どこへ?

セピア「次はセイクレイ城…サラテリの所でしょう?

忠告ついでに、ワタクシも彼らに会ってきますわ」


一方船上。

パリス「サラテリの零術は?」

エルブ「運…ですね。武器に触れるとこちらの運は下がります。

何と言うか、急所が狙えないというか、

どれだけ連続的に攻撃しても、絶対に急所に当たらなくなるんです」

ビオレ「って事は、その反対。サラテリは急所を的確に狙えるのね」

結構、それは厳しくないか…?

エルブ「ですが、サラテリさんも必ずじゃありません。

あくまで確率が上がるだけ。こちらも同様。確率が下がるだけ」

ゼニス「…僕の記憶上、四零士最強はサラテリかフェズだよ。」

サルファー「…彼らはどうやって、四零士になったのですか?」

ゼニス「グラファイトはゼファの友として、護衛として、勉強付き合いなどで専属についた。

一番最初の四零士。

サラテリは騎士の名家で、ゼファが村が被害を受けてると聞いて向かった先で出会ったって。

プリムローズはギルドでハンターって職をやってて、

たまたまターゲットが同じだったゼファ達にプリムローズがついてって、終わった後に城に招かれた。

フェズは…」

そこで止まった。

ソレイユ「ゼニス?」

ゼニス「ごめん…フェズの記憶だけ何か…もやがかかってるというか…

ゼファが僕に知られないように制御してるんじゃないかな…」

…何か引っかかるな…フェズが四零士になった経緯が気になる。

………

パリス「まあ、暗い話はここまでにしませんか?

ゼルシェードさん、ゼファってどんな人だったんですか?」

パリス、随分明るくなったな。うん。良かった良かった。

…ただ、今パリスが聞いた途端に、ゼルシェードが「フッ」と笑ったのが気になる。

ゼルシェード「神で、世界は色々見ていたからな。

ゼファと会ったのは結構成長してからだが…幼い頃の事も知ってるぞ。

ゼファの趣味から黒歴史までドンっと行くか」

ゼニス「は!?」

趣味はともかく黒歴史は…おい。

ゼルシェード「まず趣味は冒険だ。それは成長してからも変わらん。

後は使用人の手伝い、シェフの手伝い等々。」

雑用が入っているが…。

ゼルシェード「好きな食べ物は城下町のカレー。

王族など普通は来ない小さい食事処だったが、ゼファはそこのが好きだった。

辛い物嫌いなセピアも巻き込んでよくて食べに行っていたな」

セピア……;;; 辛いの嫌いだったのか。

ゼルシェード「それから、そうだな…幼少期…

まだグラファイトがゼファ専属につく前だな。妹と遊んでいる時にお漏らしした事が…」

ゼニス「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」

場が凍る。空気が震える。

ゼニスってこんな大声出せたのか。

ゼニスがゼファだから、他人事にならないんだろうな…。

ゼルシェード「……お手伝いさんの事を間違えて「母さん」って呼んで赤面してた事もあったな。

あとは、グラファイトが専属についてから、

グラファイト宛てに届いた恋文を自分宛と勘違いしてドギマギして…」

ゼニス「ゼルシェードォォォォォォ!! 今すぐ黙ってろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

さっきからゼニスがご乱心である。

エルブ「だ、大丈夫ですよ、ゼニス師匠! 誰でもありますよ!!」

ソレイユ「そうそう、気にしないで!」

ビオレ「結構恥ずかしいことしてるけどね…」

そう言って、一つ思い出したのか、またゼルシェードが話し出す。

ゼルシェード「あと、街に出た時だ。綺麗な女性がいてな。

だが、そいつは自分の美貌を利用して女装をしていた男だった。

…それがゼファの初恋だ」

サルファー「おやおや;;」

ゼニス「海に放り投げられたいかあああああああああ!?」

ゼルシェード「この剣が無いとあいつらには勝てん。」

論破しやがった。

ゼニス「あーもう! 無駄話はここまで! もうすぐセイクレイ城につくから!」

パリス「あ、逃げました」

ゼルシェード「逃げたな」


セイクレイ城、玉座の間。

サラテリ「あ、セピア! どうしたの?」

セピア「報告ですわ。プリムローズとグラファイトが敗れ、解放されました。」

それにサラテリもさすがに驚く。

サラテリ「うっそー!? トニートゥラとアークアムは!?」

セピア「倒されましたわ。さらにはエピナールさえも退けています」

???「それって、危ないですよね…」

サラテリの隣にいる白い龍が話す。

セピア「オーブ以外はすべて使ったとか…彼らは次ここに来るはずです」

サラテリ「セピアは?」

セピア「残りますわ。サルファーに会いたいですもの」

本気でお熱のようだ。

サラテリ「もし、ここに来てもサルファーは殺さないでおくよ」

セピア「ええ、お願いします。それでは城は任せますわよ」

セピアが転移でいなくなる。

サラテリ「サルファーを殺したら、セピア怒っちゃうもん。

ねー、メリディエム?」

メリディエム「うん……セピアさん怖い…」

気の弱そうな龍だ。龍まで怖がらせるとは…セピア…。

サラテリ「……ゼニス君はゼニス君として、別人にならないかなぁ…

陛下の事も必要だけど、ゼニス君の事、好きになっちゃったもん…」

メリディエム「サラテリさん……」

……ここに来てから、ゼニスがゼファだと分かってから、

サラテリは以前よりずっと浮かない顔が増えた。

サラテリ「…メリディエム。ここは任すね。

あたしは屋上にいるから」

メリディエム「……はい」


ゼニス「……城下町に誰もいない?」

サルファー「全員、捕まっているのかもしれませんね」

力のない人達まで…? 城下が巻き込まれる事を想定しているような…

ビオレ「魔物はいないみたい。突っ切るのは楽勝…」

ゼルシェード「!! 魔力反応、これは…!」

ゼルシェードが反応した先。歩いてきたのはセピアだった。
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