月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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二魂の心は相違して

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 64話

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零術をグラファイトが使った。

ゼニス「グラファイトのこの状態は何の効果が?」

エルブ「プリムローズさん同様、いつも使っていた能力スキルが使えなくなります。

そしてグラファイトさんの場合は、武器に触れると何かしらの状態異常になります」

プリムローズの時より厄介そうだな…。

サルファー「ゼニス、言ったとおり、任せてもらいますね」

ソレイユ「だ、大丈夫なの?」

パリス「な、ならせめて状態異常になったら回復を…!」

それに対して首を横に振る。

サルファー「身動きができない場合のみ回復してください。

それ以外は、どうか見守っていてほしい」

サルファーは遠距離。距離を取り続けていれば、武器に触れる事はないと思うが…

ビオレ「パリスを泣かせるなんじゃないわよ」

サルファー「もちろん」

グラファイト「……話、終わった?」

グラファイトが武器を構える。

それと同時にゼニス達も下がる。


サルファー「グラファイト。私の目的はただ一つ。

貴方の死でも何でもない。ジューン様の治療、それだけ」

グラファイト「僕を殺して治すつもり、か…僕の死はついで、と」

どうやらグラファイトはあくまで、自分は負ければ殺されるものと思っている。

プリムローズもそうだっただろうが。

でも、今殺す気は無い、何て言えば、相手を勢いづかせる。

だから…

サルファー「ええ、その通り。貴方を殺して、ジューン様を救わせていただきます!」

一発、普通に矢を放つ。

もちろんそんなのあっさり防がれるが…それが戦闘開始の合図になった。

グラファイト「水神刈り!!」

サルファー「ふっ! シルフィアロー!!」

詰められた分、後退してまた距離を置く。

サルファー「風に舞え…シルフィード!」

グラファイト「アクアサーペント!」

グラファイトの魔法がサルファーの魔法に噛みついて、それと同時に弾ける。

グラファイト「どうした! その程度!?」

サルファー「そちらこそ! この様子なら押し続ければ何とかなりそうですね…!」

グラファイト「こっちには…陛下の望みがある…! 勝てると思うなよ!?」

焦り…怒り…グラファイトからそんなのが感じられる。

それを見逃しはしない。

サルファー「巻き込め…ボルテックスブロウ!!」

グラファイト「アクエトーメント!!」

衝撃による光が一帯に起きる。眩しい…

これは…プリムローズの時にも起きた…だとしたら…もしかして…

ゼニス「…あ…!!」


ゼファ『よーし、明日から自分の足で各地を回って、問題を自力で解決していこう!』

グラファイト『え……王様から許可は…?』

???『もちろん、もらっているぞ』

グラファイト『……え? もしかして、姫様も一緒…???』

???『うむ。』

ゼファ『そうそう、それでさ。父上がグラファイトも連れて行ってあげてくれって』

グラファイト『僕も!? …ま、まあいいけどさ』

???『兄よ。セピアはどうするのじゃ?』

ゼファ『彼女も連れて行くよ。とことん振り回して棘を抜かないと!』

グラファイト『いつ蹴り飛ばされても知らないからな…』

ゼファ『そうならないためにだよ! ほら、グラファイト、セピアに会いに行こー!』

グラファイト『ち、ちょっ…まだ勉強の時間終わってない!!』


ゼニス(…まただ…これがグラファイトの記憶…?)

サルファー「はああ!」

グラファイト「っ! この!」

サルファーの連射を鎌を振り回して防いでいる。

一瞬の油断が矢が自分に刺さるのを許すだろう。

サルファー「こちらは時間が無いのです! さっさと終わらせていただきます」

グラファイト「うるさいうるさいうるさい! 

水刃鎌没抄!!」

グラファイトの奥義…!!

サルファー「風と水に…裂けろ弾けよ…風裂水泡弓!!」

慌てて奥義の構えを取って、サルファーも奥義を放つ。

あの時は、サルファーの矢が鎌を破ったが、

今回は相手が零術を使っている。

瞬間、カキーンと甲高い音が響いた。

鎌の衝撃と矢が共に弾かれ、心臓こそ貫かないが、両者の肩にダメージ。

グラファイト「グッ…こいつ…!」

サルファー「う…く、っ」

サルファーの様子が…まさか、状態異常…!

ソレイユ「熱じゃない!?」

思わずパリスが駆け寄ろうとするが、サルファーに制止される。

サルファー「これが、ジューン様の味わった苦しみのうちの一つです…

この程度、何て事はありません」

よろよろしながら体勢を立て直す。

グラファイト「まだ、立ち上がれる、わけ…!?」

驚きながらも、鎌を構える。

グラファイト「零術奥義で終わらせる…!

零病水蓮刈!!」

零術奥義が迫る…

パリス「サルファー! 避けて!!」

サルファー「私は救わねばならないのです…彼女を…ジューン様を!」

サルファーの弓が今光った。

ゼニス「……もしかして、サルファーも!!」

サルファー「クストスペルマーネント!」

万等属性の奥義…ビオレに続いてサルファーまで…!

グラファイト「っ! それは…! ぐっ!」

グラファイトも必死に押し返そうとするが、一歩及ばない。

サルファー「はあああああ!!!」

グラファイト「嘘、!?」

グラファイトの奥義が敗れ、まともに奥義を喰らう。

零術が解けたグラファイトはその場に崩れる。


サルファー「………うっ…」

パリス「サルファー!! もう、なんで…!

邪を払え…リキュペレイト! 癒せ…エードヒール!!」

パリスが大慌てで回復する。

サルファー「すみません…ありがとうございます」

グラファイト「……負けたよ。…一応聞いていいかな。ゼニスに」

何を聞かれるかは何となく分かっている。でも、一応前に出る。

グラファイト「……陛下は、陛下の意識は、ある?」

ゼニス「無くは、無いよ。」

グラファイト「…陛下、聞こえてるのかな…

僕は…国が好きなんじゃない。陛下のいる国が、好きだった…」

……相当、愛されてるんだな…ゼファは…

そう思っていると、グラファイトの身体が透過し始めた。

グラファイト「ああ、時間か…な…」

ゼルシェード「ゼニス!」

ゼニス「わかってる! 彼の時の歪曲アクセプト・エグゼスト!」

間に合った。グラファイトの透過が止まり、元に戻る。

グラファイト「何、やってんの? 馬鹿!?」

ゼニス「殺す気は無いよ。元から。

全員生かす。生きて罪を償ってもらう。死んで終わり? させないよ」

サルファー「ゼニスは貴方達との思い出も思い出して来ている。

そんな人たちを、彼が殺せるわけは無いでしょう。」

そう言われて、グラファイトは目を伏せる。

グラファイト「……」

手をかざし、空を掴むとパリンと何か音がした。

ビオレ「今、何したの?」

グラファイト「あの子の…術を解いた…もう治ってるはずだよ…」

パリス「グラファイト……」

ゼニスがグラファイトの目の前に歩いていく。

ゼニス「ありがとう」

グラファイト「変だよ…ゼニス。…ハハッ、やっぱり、何年経っても、

姿が違っても、陛下、か…」

それを最後に気を失う。

ソレイユ「じゃあ、ギルドに転送を」

装置でグラファイトをギルドに送る。

サルファー「これで終わりましたね…皆さん、色々ありがとえございました。

おかげでジューン様は助かります」

パリス「私からも、お礼を」

二人にぺこりと頭を下げられる。

エルブ「僕は途中からでしたけど、良かったですね。

イテールナ城に行けばきっと会えますよ」

パリス「次に近いのは、セイクレイ城ですね。

行きましょう、ゼニス、ソレイユ、ビオレ、サルファー、エルブ!」

!!?

さっきは切羽詰まってたせいかと思っていたが、パリスがみんなを、今呼び捨てにした。

ソレイユ「パリス!!」

ビオレ「やっと、他人行儀じゃなくなった」

パリス「さっき「サルファー」って呼んだのがきっかけで、何か吹っ切れました。

もっと、皆さんに近付きたい。もっと、仲間が良いです…!」

長かったな…「さん」付けされてる期間。

ゼニス「じゃあ、行こうか、次に」

ゼルシェード「っ…」

…ゼルシェード???

ゼニス「どうした?」

ゼルシェード「……風邪だ」

嘘だ;;;;

でもそう告げても、「風邪」の一点張りだったのであきらめた。

次はラディル大陸、セイクレイ城。いるのはサラテリだ。
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