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二魂の心は相違して
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 62話
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アークアムを倒して、少しその場で休んでから
再度奥へと進む。
牢はそこからもう遠くなく、すぐに辿り着いた。
ゼニス「皆さん!! ご無事で…あっ!?」
リナリア「ゼニス!? みんなも!!」
シスル「…やっぱりお前らなら辿り着けるか…」
リナリアとシスル…
フクシア「無事で良かった…」
ソレイユ「フクシア!! アスターも!」
彼らも捕まっていたのか…やっぱりあの能力を止められないと、勝ち目は…
サルファー「私達は各国解放に向かっているところなんです。」
アスター「今、状況は?」
ゼニス達は取りあえずゼルク大陸に捕まっていた人達を解放し、
プリムローズを倒し、ギルドで見張っている、と告げる。
アスター「…平気なのか?」
ゼニス「僕はゼニスだよ。だから分からない事もまだ多い。
でも、確かにゼファとしての、彼らと過ごした記憶もある。
…このまま殺すものか」
ビオレ「罪は償わせる。死ではなく、一生をかけて」
牢の奥を見ると、他にも何人も。
「リナリア…この者達は…」
リナリア「私達を助けてくれた友達よ。
あ、みんな、この二人は私のお父様と、お世話係の…」
「…まさか、結婚式から逃げ出して、乗り込んだもの物と駆け落ちして旅していたなんて…」
「…今はそんな事を話している場合じゃないだろう…」
複雑な事情がありそうだな…。
それでも、リナリアは助けようと思って、この大陸に戻って来たのか。
???「シス。お前にとっても友達か?」
奥からメッシュのかかった男性が声をかけてくる。
シスル「友達…じゃなくて、ていうか、一、二度共闘しただけだ」
パリス「シスルさん…そちらの方は?」
ジニア「俺はジニア。シスルの兄貴分で友人だ!
シスの友達になってくれてありがとな!」
シスル「だから違……」
何だか一気に緊張の糸が緩んでしまう。
そんな場合ではないのだが。
エルブ「…というか、番人はいませんね…グラファイトさんか…もしくは…」
フクシア「だ、だめ、ここには…!!」
フクシアがそこまで言うと、一人子声転移…いや、移動してきた。一瞬で。
エルブ「兄さん!!」
エピナールだ。
ソレイユ「アークアムが言ってた危ない奴って…エピナールの事!!」
エピナール「おやおや、アークアムがそんな事を?
失礼ですね…まったく…私は紳士ですよ」
人を一瞬で殺せるだけの殺傷力を持っておいて何を言う。
シスル「こいつ、俺達が全員でかかっても一撃も入らなかった!」
ゼニス「当然だよ。エピナールには真正面からやったら絶対勝てない」
今ならば、ゼニスの流れを向けるで
エピナールの消滅する時間は解除できるが…。
エルブ「皆さんは先へ! 僕が食い止めます!」
ビオレ「ちょっと! エルブだけじゃ…もう能力もないから対抗手段ないでしょ!」
エピナール「勇気と無謀は、はき違えない方がいいですよ?」
……エルブ一人じゃ当たらない…けど、グラファイトの能力を止めるのだって…
ソレイユ「ゼニス! ゼニスはここに残って!」
ゼニス「えっ…でもグラファイトは!?」
パリス「あっちは状態異常!
私とソレイユさんの魔法で、お二人が戻るまで持ち堪えてみせます!」
……自分は話にならない、こっちで決着をつけて来い、と…。
確かに、それが妥当だ。
ゼルシェード「……ゼニス、あいつらを信じろ」
エピナール「!?」
今、一瞬エピナールが反応したな。ゼルシェードの声に…。
ゼニス「…任せていい?」
サルファー「ええ、必ず追い付いてくださいね!」
そう言って、ソレイユたちは先へ駆けていく。
エルブ「凍り闇へ…ブラックアイス!!」
エルブが牢に氷で壁を作る。これなら、牢の人達には被害はいかない。
エピナール「分断して良かったんですか?」
エルブ「今は一刻を争うんです。国が機能しなければしないほど…
国民の不安は高まる。負が集まる」
負が集まり切れば、律零王が浮上し、指輪が奪われればこの世界は終わりだ。
もちろん、律零王に意識を明け渡す気はさらさらないが、万が一の事もある。
エピナール「…ところで、ゼルシェード様…生きていらっしゃったんですね…嬉しいです」
ゼルシェード「もう力はほぼ無いがな。…ゼニス達に託すのが限界だ」
エピナール「なぜ…なんてことはやめておきましょう。
理由は分かっています。この作戦に反対なのでしょう?」
ゼニス「僕も、ゼニスとして、この世界の人達を犠牲にさせる気は無い」
エピナール「…でしょうね。ですが、私達はもう止まれません。
ゼニスさんを連れて行き、ゼファに戻ってもらう。
ソレイユさんの指輪を奪う。それだけです」
退けないのはこちらも同じ事。
エルブ「兄さんとセピアさんは陛下の許可なくオーブは使えません。
僕と違い根殺戮衝動に駆られてしまうので、
この三大陸内で使うことは禁じられています」
ゼニス「だったら、まだ勝ち目はあるはず…!」
エピナール「そうですね…ですが、それ以外は出し尽くしますので」
エピナールが仕込み杖を構える。
それと同時にゼニスとエルブも武器を構えた。
エピナール「氷閣忌・絶!!」
エルブ「ぐっ!」
エピナールの攻撃をエルブが受け止めた間にゼニスが行動を起こす。
ゼニス「流れを向ける!」
これで今、エピナールにかかっていた瞬間移動は不可能だ。
ゼニス「これで、前のような瞬間移動は使えない! 対抗策はある!」
エピナール「そうですね…私だってしょっちゅう使えるわけじゃないです。
ですが、能力を封じたところで私には勝てません」
先ほどエピナールの攻撃を防いだエルブが再度体勢を立て直す。
エルブ「彼を誰だと思ってるんですか!
僕らの陛下の力を持っていて、さらに僕の師匠ですよ!」
ゼニス「エルブ……」
エルブの答えにエピナールが少し顔を伏せて呟く。
エピナール「失礼しました。そんな相手に油断はできませんね」
それはゼニス達も同じ事。瞬間移動を止めただけで、
エピナールの俊敏さはただでさえ高い。
先手必勝…!
ゼニス「時双波!!」
エピナール「当たりませんよ…! フローズナイフ!」
エルブ「氷の刃…アイシクル!」
エピナールが躱した先から撃ち出した魔法にエルブが魔法を放つ。
同じ氷魔法…相殺される。
ゼニス「はああっ!」
エピナール「っ! 相殺された光に紛れて斬り込みですか…!」
受け止められているが、今動きを捉えることができた。
ゼニス「く…っ!!」
一旦剣を離して距離を置く。
ゼニス「五連刃!!」
エルブ「桜花氷夢!」
二人の攻撃にエピナールも真っ向から迎え撃つ。
エピナール「華桜氷閃!」
剣同士がぶつかる音が二度鳴る。
ひとつはゼニスとエピナールの剣戟、もうひとつはエルブとエピナールの剣戟。
二人のを二度受け止めた事になる。けど…
ゼニス「っ!」
エピナール「くっ…」
飛びのいた時、両者とも傷を負っている。浅い傷を。
エピナール「はあ…なかなかやりますね…いいでしょう。
そろそろ舞台に招待しましょう…! 消滅する時間!」
いつものだ。青い舞台。
ゼルシェード「相手は必ず先手を取る。できるだけ当たるな!」
エルブ「そんなこと言ったって…!?」
この空間の恐ろしさはエルブが一番知っているのだろう。
自分も持っていたのだから。それを忌み嫌い、使わなかった。
ゼニス「僕達はエピナールの引き立て役じゃない。
この舞台に収まらないぐらい、暴れればいい!」
ゼルシェード(……ゼファの面影も混ざって来たな;;; …懐かしいが、喜んでいいものか…)
そう思っている間に、エピナールの攻撃が。
エピナール「っ、氷閣忌・絶!」
エルブ「あっと!? え、今見えなかった…!?」
ゼニス(この舞台を展開した時に、また瞬間移動が付与された…!!)
「流れを向ける!」
舞台を消すのは不可能だ。だが、瞬間移動だけは解除しなければ始まらない。
ゼルシェード「こうなっても先手は取られる。気を付けろ!」
エピナール「ゼルシェード様がいると厄介ですね!
ですが……アイスダーク!!」
ゼニス「っ! 無故の全能…インペリアレイ!」
慌てて詠唱し、その魔法に間に合わせる。
エルブ「裂氷・魔法剣!!」
魔法剣を魔法のどさくさに紛れてエピナールに向ける。
エピナール「なっ! くっ…!」
一撃喰らわせる。さすがは兄弟か。
エルブはエピナールがどう動くか、何となく分かるのだろう。
エピナールはゼニスに気を取られていたから、読み切れなかった。
エピナール「魔法剣……」
エルブ「ゼニス師匠から教わったものです…!」
魔法剣は通常技より威力が劣る。
相手の弱点を突く以外で使うなら、あまり効果的ではない。
でもエルブの魔法剣は、明らかに同じ属性を持った対象にさえ威力を発揮していた。
エピナール「……強くなった…ゼニスさんの教え方が良かったのでしょうか…
その点については感謝します。」
少し訪れる、静寂。
ゼニス「エピナール……」
エピナール「……ですがやるべき事があるんですよ。
氷裂円舞!!」
静寂で油断した。
エピナールが今狙ったのはゼニス。
ゼニス「グッ、かはっ!」
エルブ「ゼニス師匠!?」
深く喰らったわけではないが、当たりどころが悪かったらしい。
思わず、キッとエルブがエピナールを睨む。
エルブ「…兄さん……」
ゼニスの前にエルブが立った。
ゼニス「エルブ…駄目だ…よ…僕ならまだ平気だから…」
エルブ「僕は、ゼニス師匠の弟子ですよ! これぐらいできます!!」
そう言って、武器を構える。
エピナール「…手合わせした時は、いつもエルブが負けていましたね…
……わかりました。受けましょう…! 消忌絶氷閣!!!」
エピナールの奥義。やはり先手を取られている。
ゼニス「エ、ルブ…!」
エルブ「今日は勝ちます…! 必ず…! 桜舞え…凍れ…この一閃に…祈桜氷一閃!!!」
火花の散る音がする。奥義同士がぶつかった影響だ。
エルブ「…っ…ぐ…はあああああ!!!」
ひときわ大きい閃光が走って…それが晴れる。
ゼニス「う…はっ…エルブ!?」
両者ともに立っているが、驚いた表情をしているエピナールを見るに、
攻撃が破られたのはエピナールの方だったのだろう。
エルブ「はあ…はあ…勝負、あり…です…!」
そう告げた途端、青い舞台の空間が壊れる。
エピナール「…さすがですね、お二人は…
個性が強すぎて舞台で留まりませんでしたか…」
ゼニス「エピナール…っ、まだ、やる、か!?」
エピナール「……ここは退かせていただきます。
どうやらオーブを使用しないと勝てないようですので…」
オーブはゼファがいないと使えないんじゃ……
ゼルシェード「……ゼニスは必ずそっちに連れて行く、という意味か?」
エピナール「ええ。…それでは。
エルブ。次は容赦しませんよ」
能力で消えた。
今だって十分容赦してなかっただろう…。
ゼニス「……エルブ、ごめん。大分任せたかな…」
エルブ「そんな。何度も隙を作ってくれたおかげで多めに叩き込めました」
ふと、ゼニスの怪我に気付く。
ゼニス「ああ、これぐらい平気だよ。
ソレイユとパリスと合流すればすぐに治る。」
事実、ここで休んでいる場合じゃない。早く行かないと…
ゼニス「その前に、皆さんを解放しますね。
断ち切る絶望!」
牢を破壊する。
シスル「おい、俺達も…」
ゼルシェード「全員帰れ。精神的な疲弊は身を滅ぼす。
こっちは平気だ。戻って大陸を立て直せ。」
「…すまない…」
リナリアの父親が謝ってくる。
フクシア「あ、ならせめて…エンジェルヒール」
ゼニスとエルブの傷が癒えた。
ゼニス「フクシア…」
アスター「…頑張ってくれ。」
リナリア「応援してるね。そうだ、ゼニス。
……無理しないでね」
………!
ゼニス「うん、ありがとう」
道中はシスル達が何とかしてくれるとの事で、
その場で別れた。
エルブ「急ぎましょうか、ゼニス師匠」
ゼニス「そうだね。行こう!」
急いでその奥へ。みんながグラファイトと戦っているであろう方へ走っていく。
再度奥へと進む。
牢はそこからもう遠くなく、すぐに辿り着いた。
ゼニス「皆さん!! ご無事で…あっ!?」
リナリア「ゼニス!? みんなも!!」
シスル「…やっぱりお前らなら辿り着けるか…」
リナリアとシスル…
フクシア「無事で良かった…」
ソレイユ「フクシア!! アスターも!」
彼らも捕まっていたのか…やっぱりあの能力を止められないと、勝ち目は…
サルファー「私達は各国解放に向かっているところなんです。」
アスター「今、状況は?」
ゼニス達は取りあえずゼルク大陸に捕まっていた人達を解放し、
プリムローズを倒し、ギルドで見張っている、と告げる。
アスター「…平気なのか?」
ゼニス「僕はゼニスだよ。だから分からない事もまだ多い。
でも、確かにゼファとしての、彼らと過ごした記憶もある。
…このまま殺すものか」
ビオレ「罪は償わせる。死ではなく、一生をかけて」
牢の奥を見ると、他にも何人も。
「リナリア…この者達は…」
リナリア「私達を助けてくれた友達よ。
あ、みんな、この二人は私のお父様と、お世話係の…」
「…まさか、結婚式から逃げ出して、乗り込んだもの物と駆け落ちして旅していたなんて…」
「…今はそんな事を話している場合じゃないだろう…」
複雑な事情がありそうだな…。
それでも、リナリアは助けようと思って、この大陸に戻って来たのか。
???「シス。お前にとっても友達か?」
奥からメッシュのかかった男性が声をかけてくる。
シスル「友達…じゃなくて、ていうか、一、二度共闘しただけだ」
パリス「シスルさん…そちらの方は?」
ジニア「俺はジニア。シスルの兄貴分で友人だ!
シスの友達になってくれてありがとな!」
シスル「だから違……」
何だか一気に緊張の糸が緩んでしまう。
そんな場合ではないのだが。
エルブ「…というか、番人はいませんね…グラファイトさんか…もしくは…」
フクシア「だ、だめ、ここには…!!」
フクシアがそこまで言うと、一人子声転移…いや、移動してきた。一瞬で。
エルブ「兄さん!!」
エピナールだ。
ソレイユ「アークアムが言ってた危ない奴って…エピナールの事!!」
エピナール「おやおや、アークアムがそんな事を?
失礼ですね…まったく…私は紳士ですよ」
人を一瞬で殺せるだけの殺傷力を持っておいて何を言う。
シスル「こいつ、俺達が全員でかかっても一撃も入らなかった!」
ゼニス「当然だよ。エピナールには真正面からやったら絶対勝てない」
今ならば、ゼニスの流れを向けるで
エピナールの消滅する時間は解除できるが…。
エルブ「皆さんは先へ! 僕が食い止めます!」
ビオレ「ちょっと! エルブだけじゃ…もう能力もないから対抗手段ないでしょ!」
エピナール「勇気と無謀は、はき違えない方がいいですよ?」
……エルブ一人じゃ当たらない…けど、グラファイトの能力を止めるのだって…
ソレイユ「ゼニス! ゼニスはここに残って!」
ゼニス「えっ…でもグラファイトは!?」
パリス「あっちは状態異常!
私とソレイユさんの魔法で、お二人が戻るまで持ち堪えてみせます!」
……自分は話にならない、こっちで決着をつけて来い、と…。
確かに、それが妥当だ。
ゼルシェード「……ゼニス、あいつらを信じろ」
エピナール「!?」
今、一瞬エピナールが反応したな。ゼルシェードの声に…。
ゼニス「…任せていい?」
サルファー「ええ、必ず追い付いてくださいね!」
そう言って、ソレイユたちは先へ駆けていく。
エルブ「凍り闇へ…ブラックアイス!!」
エルブが牢に氷で壁を作る。これなら、牢の人達には被害はいかない。
エピナール「分断して良かったんですか?」
エルブ「今は一刻を争うんです。国が機能しなければしないほど…
国民の不安は高まる。負が集まる」
負が集まり切れば、律零王が浮上し、指輪が奪われればこの世界は終わりだ。
もちろん、律零王に意識を明け渡す気はさらさらないが、万が一の事もある。
エピナール「…ところで、ゼルシェード様…生きていらっしゃったんですね…嬉しいです」
ゼルシェード「もう力はほぼ無いがな。…ゼニス達に託すのが限界だ」
エピナール「なぜ…なんてことはやめておきましょう。
理由は分かっています。この作戦に反対なのでしょう?」
ゼニス「僕も、ゼニスとして、この世界の人達を犠牲にさせる気は無い」
エピナール「…でしょうね。ですが、私達はもう止まれません。
ゼニスさんを連れて行き、ゼファに戻ってもらう。
ソレイユさんの指輪を奪う。それだけです」
退けないのはこちらも同じ事。
エルブ「兄さんとセピアさんは陛下の許可なくオーブは使えません。
僕と違い根殺戮衝動に駆られてしまうので、
この三大陸内で使うことは禁じられています」
ゼニス「だったら、まだ勝ち目はあるはず…!」
エピナール「そうですね…ですが、それ以外は出し尽くしますので」
エピナールが仕込み杖を構える。
それと同時にゼニスとエルブも武器を構えた。
エピナール「氷閣忌・絶!!」
エルブ「ぐっ!」
エピナールの攻撃をエルブが受け止めた間にゼニスが行動を起こす。
ゼニス「流れを向ける!」
これで今、エピナールにかかっていた瞬間移動は不可能だ。
ゼニス「これで、前のような瞬間移動は使えない! 対抗策はある!」
エピナール「そうですね…私だってしょっちゅう使えるわけじゃないです。
ですが、能力を封じたところで私には勝てません」
先ほどエピナールの攻撃を防いだエルブが再度体勢を立て直す。
エルブ「彼を誰だと思ってるんですか!
僕らの陛下の力を持っていて、さらに僕の師匠ですよ!」
ゼニス「エルブ……」
エルブの答えにエピナールが少し顔を伏せて呟く。
エピナール「失礼しました。そんな相手に油断はできませんね」
それはゼニス達も同じ事。瞬間移動を止めただけで、
エピナールの俊敏さはただでさえ高い。
先手必勝…!
ゼニス「時双波!!」
エピナール「当たりませんよ…! フローズナイフ!」
エルブ「氷の刃…アイシクル!」
エピナールが躱した先から撃ち出した魔法にエルブが魔法を放つ。
同じ氷魔法…相殺される。
ゼニス「はああっ!」
エピナール「っ! 相殺された光に紛れて斬り込みですか…!」
受け止められているが、今動きを捉えることができた。
ゼニス「く…っ!!」
一旦剣を離して距離を置く。
ゼニス「五連刃!!」
エルブ「桜花氷夢!」
二人の攻撃にエピナールも真っ向から迎え撃つ。
エピナール「華桜氷閃!」
剣同士がぶつかる音が二度鳴る。
ひとつはゼニスとエピナールの剣戟、もうひとつはエルブとエピナールの剣戟。
二人のを二度受け止めた事になる。けど…
ゼニス「っ!」
エピナール「くっ…」
飛びのいた時、両者とも傷を負っている。浅い傷を。
エピナール「はあ…なかなかやりますね…いいでしょう。
そろそろ舞台に招待しましょう…! 消滅する時間!」
いつものだ。青い舞台。
ゼルシェード「相手は必ず先手を取る。できるだけ当たるな!」
エルブ「そんなこと言ったって…!?」
この空間の恐ろしさはエルブが一番知っているのだろう。
自分も持っていたのだから。それを忌み嫌い、使わなかった。
ゼニス「僕達はエピナールの引き立て役じゃない。
この舞台に収まらないぐらい、暴れればいい!」
ゼルシェード(……ゼファの面影も混ざって来たな;;; …懐かしいが、喜んでいいものか…)
そう思っている間に、エピナールの攻撃が。
エピナール「っ、氷閣忌・絶!」
エルブ「あっと!? え、今見えなかった…!?」
ゼニス(この舞台を展開した時に、また瞬間移動が付与された…!!)
「流れを向ける!」
舞台を消すのは不可能だ。だが、瞬間移動だけは解除しなければ始まらない。
ゼルシェード「こうなっても先手は取られる。気を付けろ!」
エピナール「ゼルシェード様がいると厄介ですね!
ですが……アイスダーク!!」
ゼニス「っ! 無故の全能…インペリアレイ!」
慌てて詠唱し、その魔法に間に合わせる。
エルブ「裂氷・魔法剣!!」
魔法剣を魔法のどさくさに紛れてエピナールに向ける。
エピナール「なっ! くっ…!」
一撃喰らわせる。さすがは兄弟か。
エルブはエピナールがどう動くか、何となく分かるのだろう。
エピナールはゼニスに気を取られていたから、読み切れなかった。
エピナール「魔法剣……」
エルブ「ゼニス師匠から教わったものです…!」
魔法剣は通常技より威力が劣る。
相手の弱点を突く以外で使うなら、あまり効果的ではない。
でもエルブの魔法剣は、明らかに同じ属性を持った対象にさえ威力を発揮していた。
エピナール「……強くなった…ゼニスさんの教え方が良かったのでしょうか…
その点については感謝します。」
少し訪れる、静寂。
ゼニス「エピナール……」
エピナール「……ですがやるべき事があるんですよ。
氷裂円舞!!」
静寂で油断した。
エピナールが今狙ったのはゼニス。
ゼニス「グッ、かはっ!」
エルブ「ゼニス師匠!?」
深く喰らったわけではないが、当たりどころが悪かったらしい。
思わず、キッとエルブがエピナールを睨む。
エルブ「…兄さん……」
ゼニスの前にエルブが立った。
ゼニス「エルブ…駄目だ…よ…僕ならまだ平気だから…」
エルブ「僕は、ゼニス師匠の弟子ですよ! これぐらいできます!!」
そう言って、武器を構える。
エピナール「…手合わせした時は、いつもエルブが負けていましたね…
……わかりました。受けましょう…! 消忌絶氷閣!!!」
エピナールの奥義。やはり先手を取られている。
ゼニス「エ、ルブ…!」
エルブ「今日は勝ちます…! 必ず…! 桜舞え…凍れ…この一閃に…祈桜氷一閃!!!」
火花の散る音がする。奥義同士がぶつかった影響だ。
エルブ「…っ…ぐ…はあああああ!!!」
ひときわ大きい閃光が走って…それが晴れる。
ゼニス「う…はっ…エルブ!?」
両者ともに立っているが、驚いた表情をしているエピナールを見るに、
攻撃が破られたのはエピナールの方だったのだろう。
エルブ「はあ…はあ…勝負、あり…です…!」
そう告げた途端、青い舞台の空間が壊れる。
エピナール「…さすがですね、お二人は…
個性が強すぎて舞台で留まりませんでしたか…」
ゼニス「エピナール…っ、まだ、やる、か!?」
エピナール「……ここは退かせていただきます。
どうやらオーブを使用しないと勝てないようですので…」
オーブはゼファがいないと使えないんじゃ……
ゼルシェード「……ゼニスは必ずそっちに連れて行く、という意味か?」
エピナール「ええ。…それでは。
エルブ。次は容赦しませんよ」
能力で消えた。
今だって十分容赦してなかっただろう…。
ゼニス「……エルブ、ごめん。大分任せたかな…」
エルブ「そんな。何度も隙を作ってくれたおかげで多めに叩き込めました」
ふと、ゼニスの怪我に気付く。
ゼニス「ああ、これぐらい平気だよ。
ソレイユとパリスと合流すればすぐに治る。」
事実、ここで休んでいる場合じゃない。早く行かないと…
ゼニス「その前に、皆さんを解放しますね。
断ち切る絶望!」
牢を破壊する。
シスル「おい、俺達も…」
ゼルシェード「全員帰れ。精神的な疲弊は身を滅ぼす。
こっちは平気だ。戻って大陸を立て直せ。」
「…すまない…」
リナリアの父親が謝ってくる。
フクシア「あ、ならせめて…エンジェルヒール」
ゼニスとエルブの傷が癒えた。
ゼニス「フクシア…」
アスター「…頑張ってくれ。」
リナリア「応援してるね。そうだ、ゼニス。
……無理しないでね」
………!
ゼニス「うん、ありがとう」
道中はシスル達が何とかしてくれるとの事で、
その場で別れた。
エルブ「急ぎましょうか、ゼニス師匠」
ゼニス「そうだね。行こう!」
急いでその奥へ。みんながグラファイトと戦っているであろう方へ走っていく。
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