月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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二魂の心は相違して

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 59話

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零術使用で衣装が変わったプリムローズと対峙。

威力、防御、体力もろもろ、さっきと同じじゃないだろう。

ゼニス「……流れを向けるスキル・リムーバル!」

試してみるが、やはり効果はない。

プリムローズ「この状態を解く事は不可能。

…だから、もう私が負ける事はない…!」

ビオレ「……」

ビオレが一歩前に出た。

ビオレ「焦ってるの? 四零士ともあろう人が」

確かに、プリムローズに余裕が見れないが…

けど…

ソレイユ「ちょっ、挑発しない方が…!?」

ビオレ「お願い、私に任せて。

どうせ解除できないんだし」

正直、心配なのはある。さっきより強化された状態で一対一なんて。

ビオレ「いいよね? 言質取ってるし」

……

ゼニス「…うん、信じるよ、ビオレ」

うん、とビオレがうなずく。

プリムローズ「この……っ、調子に乗るなぁぁぁ!!」


激昂したプリムローズが斬りかかってきた。

エルブ「ビオレさん気を付けてください! 今斬りつけられたら!」

ビオレ「教えてくれてたから分かってる!」

かわして即反撃に移る。

ビオレ「風殺剣!!」

プリムローズ「雷破殺環!!」

弾かれたのはビオレの方。

ビオレ「っ! 重い…!」

プリムローズ「傲慢! 私達には勝てない…!」

この力を持ったのが、後三人も……

ビオレ「どっちが傲慢かしらね…! 私だって、まだ!」

持ち前の運動神経で後退して距離を取る。

ビオレ「塵となれ…デスハリケーン!」

プリムローズ「ヴォルテックソード!」

二人の魔法が、風・闇と雷の三属性が衝突する。

あまりの勢いに、周りは目を伏せる。

ゼニス「……!?」

その時、ゼニスの中に、何か流れ込んできた…

ゼルシェード「……これは……」


???『さてと、じゃあ次はその奴隷市場を押さえる。

中にいる人の避難と…』

グラファイト『あのさ…それ、王子がやる事じゃないよね…』

???『諦めた方がいいのじゃ。今に始まった事ではないのはグラファイトも知ってるじゃろ』

プリムローズ『……ねえ、それ、手伝ってあげようか?』

???『君は…?』

プリムローズ『私はプリムローズ。

一応ハンターって職をやってるから戦力になると思うけど』

グラファイト『いいわけ?』

プリムローズ『うん、私もその依頼受けてるし』

ゼファ『そうか、じゃあよろしく頼むよ、プリムローズ

我はゼファ。よろしく』


ゼニス(今のは……ゼファの…いや、プリムローズの記憶…)

意識を戻した時、また剣戟の音が聞こえてきた。

まだ戦っている。

ビオレ「はあっ!」

プリムローズ「らああっ!!」

カン、キン、という音が立て続けに鳴り続ける。

ビオレだけじゃない。プリムローズも息が切れ始めていた。

ビオレ「で、何、まだくる!?」

プリムローズ「お前達を殺してゼニスを連れ帰る!

悪鬼戦雷凶!!」

プリムローズの奥義だ。

ビオレ「燕は翔け…風に殺し葬る…風葬殺燕翔!」

それを真っ向から奥義で対抗する。

ドーーーーンとものすごい音が響く。室内だけに、音も大きい。

ソレイユ「も、もう…さっきから凄い事になってる…」

サルファー「…っ、ビオレ…!!」

プリムローズも怪我を負っているが、今の奥義でビオレもダメージを喰らっていた。

ビオレ「っ…!! ふっ!」

立て続けに斬撃をかましてきたので慌てて避ける。

エルブ「今、攻撃をくらったから、ビオレさんの攻撃と防御が下がっているはず!」

それは、まずくないか……?

ビオレ「みんなは手を出さないで! 私は平気!」

プリムローズ「これで…終わらせる!!」

…やっぱり、焦っている。もう終わらせないとプリムローズももたないのだ。

プリムローズ「零術状態じゃないと使えない技……」

今のより強大な奴…!? ビオレは……

ビオレ「いいよ、私も負けられないもの」

ゼニス「ビオレ!」

それには答えない。

プリムローズ「零戦雷殺斬!!」

それを避けようとはしない。ただ、真っ直ぐ見据えて…

ビオレ「……私は、リラ姉様に頼まれた…負けるなと…! だから…!」

ビオレの武器が一瞬光った。

パリス「今のは!?」

ゼルシェード「…ビオレ…」

ビオレ「リュージュランダーム!!」

ビオレが放った奥義は、闇でも風でもない。

ゼニスとゼルシェードだけは覚えがある。これは…

二人の奥義が衝突して、相手を押し返そうと揺れる。

そして……

ビオレ「はああああああああ!!!」

プリムローズ「!!!」

敗れた奥義は零術奥義のプリムローズの方。

零術による姿は解け、元に戻る。


ビオレ「はあ、はあ…勝った…?」

ゼルシェード「今のは、万等属性…まさか、使えるようになるとはな…」

万等属性は未知の属性。

律零王ゼファが使っていた属性だ。

プリムローズ「……どう、して…ゼニス…

ゼファ様に…陛下に戻ってないの…?」

ゼニス「僕の意識が強いんだと思うよ。…僕は、今の人達に死んでほしくない。

…みんなの気持ちが分からないわけじゃない。これでも記憶は多少戻っている。

された事を考えれば、正しいかもしれない。でも、僕自身は承認できない」

そこに崩れ落ちて、こちらを見る。

ビオレ「……プリムローズ…」

プリムローズ「…私達、は、ただ…「陛下がいれば、どこでも…良かったのに…」」

それが、本音か…

プリムローズ「私…死ぬんだ、本当に…今度こそ…」

そういうとプリムローズの体が透けてきた。

ソレイユ「あっ!!」

ゼルシェード「ゼニス! 急げ!」

ゼルシェードに急かされて、慌てて意識を集中させる。

プリムローズという存在を、この時代に…この世界に…!

ゼニス「彼の時の歪曲アクセプト・エグゼスト!」

そう言うと、プリムローズの胸元が光り、透過していた身体が元に戻る。

プリムローズ「え…どうして…!?」

ゼニス「死んで終わりになんてさせない。他のみんなもだ。

生きてもらう。全員生きて、罪を償え」

……

プリムローズはなぜ殺さないのか、憎くないのか、殺す気でいたんじゃないか。

色んな疑問が浮かんでいるような感じだった。

ビオレ「あんたは生きて。ゼニスの決定よ。

……死んで終わりなんて、そんな罪軽すぎる。長生きしなさい。

処刑なんて、ゼニスがさせないから」

プリムローズ「………陛下は、陛下…なんだね……」

気を失った。鼓動は動いているから生きてはいる。

ゼニス「良かった……」

サルファー「…では、ギルドに転送しておきましょう。」

ソレイユ「うん、後はエーリカさんに任せよ」

自分達はこの後も行かないといけない所がある。

マスター達からもらった装置を取り出し、プリムローズを天馬へ転移させる。

ゼニス「ここから一番近いのは?」

ソレイユ「クレイドル大陸みたい。そこに向かおっか?」

よし…次は…グラファイトだな…。
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