月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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過去は絶望を率いて

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 53話

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ディペアード国跡地。

もともと悪逆の国として名が挙がっていたこの国も変わろうとしたらしい。

けれど、魔族はこの国に攻め、滅亡した。

悪逆の国の滅亡に、人は大半が喜んだとか…。


パリス「……酷い……」

クレイドル大陸。

ディペアード国の城があったであろうその場所は、

大穴が空いていて、城なんて跡形もない。

ゼニス「……改めて、魔族の強さを思い知るな…」

……壁画がある所に通じている道は見えない。

けど…

エルブ「この大穴の後ろ。そこの壁にカギを使ってください。

そうすると、きっと内部へ入れます」

サルファー「なるほど…それでは見つかりませんよね」

ロココ「ねえ、早く行かない?」

バレヌ「そうだな、あいつらが来る前に」

大穴を迂回するようにぐるっと歩いて行く。その途中…

ソレイユ「あれ、これなんだろ?」

ソレイユが拾い上げたのは薄汚れて、欠けた…何だろうか、紋章?

ゼニス「これ、ディペアード国の紋章だ…! 城で一度見た事あるよ」

見覚えのある形。確かに城の図書室で見たものだ。

ゼルシェード「どうする? 持って行くのか?」

サルファー「セイクレイ城がディペアード国と深い親交があったはずです。

そちらに持って行ってみては? ここに置き去りというのもあれですし…」

確かに、こんな殺風景で滅び切ったところに置いておくのも酷い話だ。

ビオレ「行くわよ! 三人とも!!」

ビオレに呼ばれて、急いで向かう。

エルブ「もう、ゼニス師匠がカギ持ってるんですから」

ゼニス「ごめんごめん…えーと、これを…」

カギを取り出して壁に向ける。

すると、その場が光が包んだ。

ソレイユ「これに入ればいいって事かな?」

パリス「そうだと思います…」

サルファーが入ると、どこかに転移されていった。

ゼルシェード「…転送されるようだな。行くぞ」

次々に仲間が入る中、一番最後はゼニス。

ゼルシェード「…行かないのか?」

ゼニス「……胸騒ぎがするんだ。…この先で、何かが変わる…

そんな気がするんだ…」

ゼルシェード「………奇遇だな。俺もだ…」

………

ゼニス「……行こう」

ゼニスも中へ入る。


中は神殿のような構造だった。

遺跡にしてはとても綺麗…だけど殺風景かもしれない。

エルブ「ゼニス師匠、何かありました? 遅かったですけど」

ゼニス「あ、ううん、気合入れてただけだよ」

今思った事を告げて、心配をかけたくなかった。

今はただ、先へ進む事だけ考える。

と、目の前に天使のような見た目の…魔物? が出て来た。

サルファー「ガーディアンって奴ですかね」

ソレイユ「急いで倒そう!」

この先も出るかもしれないな…。

ビオレ「天使なら……闇ね! 殺空!」

バレヌ「闇の世の草木よ…ダークレスト!」

ゼニス「属性変換エレメント・クロス! 絶闇・魔法剣!!」

闇属性の人はビオレとバレヌだけなので、

ゼニスも能力を使って闇属性に変換して倒す。

パリス「能力、本当に便利ですね…! 何でも属性使えるなんて羨ましい」

ソレイユ「お、パリスも自分の気持ち言えるようになったじゃない!」

ゼルシェード「…やろうと思えばお前達の属性を一つ増やす事もできそうなんだがな…

こいつだとできるかどうか……」

ゼニス「悪かったな、元の使い手と違って!!」

ロココ「喧嘩??」

ゼルシェードの遠回りな嫌味もだいぶ慣れてきた。

……あと何度、こんなやり取りができるんだろう。

……あれ、何でそんな事を想ったんだろう。

胸騒ぎが、気持ちを落ち込ませているのかもしれない。


道は一本道。ただ、天使のガーディアンは結構いたし、

定期的に、強めのも出て来た。

闇属性で攻撃していると、結構早く片付くからよかった。

しばらく長い通路を進む。

サルファー「……扉…ありますね」

ソレイユ「この先、なんだね」

………

ゼルシェード「お前達、どうせこの先の壁画はお前達には読めん。

ゼニスの解読が終わり次第、ゼニスと俺とエルブから告げる。」

エルブ「その際、話は最後まで聞いてほしいんです。

驚いていたら、終わらないと思うので」

バレヌ「だそうだ、驚くなよ」

ロココ「言われれば大人しくしてるし!!」

そうして扉を開ける。

目の前には広い部屋。その中央に壁画。

ゼルシェード「ゼニス、お前は古代文字を解読しろ。

そのあとで、説明を俺とエルブからする」

ゼニス「わかった。しばらくみんなは休んでて」


ゼニスとエルブが壁画の前にいる間、

仲間たちはみんな座って休んでいた。

ロココ「あー暇だー」

バレヌ「どうせ俺達には古代文字なんて読めないからな…」

ソレイユ「バレヌって読めそうな感じだったけど…」

まあ、魔導書を読み漁っているし、見た目からするとそういう印象は着きやすい。

サルファー「どれだけ本を読んでいても、古代文字の本に集中して読んでいないと、

なかなか読めませんよ。あとは、明らかな遺跡マニアとかですかね」

そういえば、ゼニスの師匠のブライトが遺跡好きで、

古代文字の読み方は教えられたんだったか。

ビオレ「あれだけの解読、大変そうだけど平気なのかしら?」

パリス「ゼルシェードさんもいるし、大丈夫だと思いますよ」

ロココ「エノキタケ、なんかギャグやって」

バレヌ「できるか!!」

ソレイユ「エノキタケが自分の事って理解しちゃってるんだ;;;」

するといきなり…

ゼニス「こんな…こんな事があっていいのか!?

願いを叶える!? あいつらしか得しないじゃないか!」

ゼニスが声を上げた。

エルブ「…皆さん、よく聞いてください。これからすべて、お話します」

全員、エルブとゼニスの前に移動してくる。


ゼニス「まず、この壁画には、今まで欠けたり、途切れていた内容が、

全部揃って書かれている。

「七つの秘宝。

それは願いを叶えし、神秘の魂。

それが集い、力を取り戻し時ーー

それが集い、彼の世の者に共鳴し時ーー

時の王は蘇る。


一に、飢餓の魂。それは孤独な泣けぬ異形。

二に、勝率の魂。それは平和を願う優しい心。

三に、戦鬼の魂。それは復讐を誓う強き盾。

四に、病苦の魂。それは病を救う頼れる神官。

五に、血塗の魂。それは友を想う狂気の淑女。

六に、消去の魂。それは友の剣となる邪悪な紳士。

七に、呪殺の魂。それは民のために呪いを詠う姫君。


各魂は、各遺跡にあり。

散り散りにされたり。

呪殺の魂、指輪に封じ、永く受け継がれたり。


呪殺以外の魂が揃いし時、

全てを零にし律する剣が現れる。

それは願いを叶える剣。

一振りすれば、死者さえ蘇る。


これが今まで僕が読んだ物が揃った全部。」


………


エルブ「ここからは、僕達が説明しますね。


まず、七つの秘宝は、ゼニス師匠達が遺跡をまわった際に手に入れたあの宝玉。

それが魂というわけです。

その宝玉が何を指しているのかは、察せますよね?

飢饉の魂はフェズ。勝率の魂はサラテリ。戦鬼の魂はプリムローズ。病苦の魂はグラファイト。

血塗の魂はセピア。消去の魂は僕…今はエピナールだけですが。そして呪殺の魂。

それは、陛下の妹。フロスティ様の事です。


姫様の魂は指輪に封じられています。それがソレイユさんが持っているその指輪。

この魂以外の魂が揃ったら、一つの剣が現れます。

向こうは、もしかしたらすでに剣の生成が済んでいるかもしれません。

その剣を振る事で願いを叶える。死者さえ蘇らせるその力で何をするのか。

それは、僕達のいた国の事を話す必要があります。」


ゼルシェード「まず、こいつらがいた国。一万年前は確かに存在していた、

今の童話の世界、クレセディア。話は童話通りだ。大体な。

魔物と仲が良く、慈悲深い王子がいて、国民からも慕われて…

だが、ハッピーエンドではない。


まず、俺はその時、肉体を持ち王子たちと共にいた。

当時、神が不在で衰退していた世界の管理に、俺が来たんだ。

そして衰退から救う術を人間にも与えようと思った。それがこの剣だ。

この流変剣は俺が造り、優しき王子に授けたものだ。


この力を欲しがった悪しき者…それを討ったと童話にあるが、

悪しき存在は討てなかった。王子側が優勢だったが、

優しい王は、全ての罪を告白する事を条件に命を助けると持ち掛けた。

その隙を突いて、悪しき存在…ベレイザは王子を攻撃し、俺を取り込もうとした。

全ての力を奪われる寸前で、俺は流変剣の中に避難した。

王子は重傷で国に逃げ帰った。ほかの奴らも同様だ。


その後、ベレイザは三国。セイクレイ、ディペアード、イテールナを、

クレセディアは魔物を支配し、こちらを潰そうとしていると嘘を流した。

騙された当時の国々は、三国協力なんてして、クレセディアを攻めた。

王子は嘆いた。「魔物といることがそんなに罪なのか。

世界をただ、衰退から救いたかっただけなのに。と」

そして一つの策を提案した。力が溜まった一万年後、クレセディアを復活させようと。

宝玉に魂を半分預ければ、姿そのままに目覚める事ができる。

四零士と側近三人の魂を宝玉に半分預け目覚められる一万年後まで眠る。

そして妹の魂を指輪に封じて血族へ家宝として受け継がせる。

王子は、七人が目覚め次第、復活するように。

ただし、復活したばかりでは力が無い。

奴らは陛下を陛下の自覚を無くさせて人里に紛れさせる。力が戻る時までな。

まだ見つかっていなければ、あいつらは今も探しているんだろう。

魔力が王子と変わっているだろうし、姿も変わっているだろう。

王子である自覚すらない状態で彷徨っているのだろうから見つけるのは至難のはずだ。」


エルブ「剣を使うためには、陛下と姫様の歌の力と、大罪の力と負が必要不可欠。

一万年後まで待っていたのは、一万年分の人間の負が必要だったから。

そして、大罪はこの前兄が奪っていきました。

陛下はそれを振り下ろす事で、クレセディアを復活させるつもりなのです。

でも、一国の民を全て生き返らせるのです。代償が必要なんです。

それが、かつて国を滅ぼした三国の命全て。」


ソレイユ「…真面目に世界の危機じゃない!」

ロココ「え、え、どういうこと!?」

サルファー「童話のクレセディアは存在していた。

今四零士と側近は復活し、王子は目覚めているが見つかっていないかもしれない。

姫はその指輪の中に。

力が戻り、姫が手に入り次第、剣を振り、三国を犠牲に自分達の国を復活させる。」

ビオレ「もう、指輪を奪われたら、ほぼヤバいって事ね!」

パリス「というか、ベレイザが全ての元凶じゃないですか…!」

バレヌ「一万年前に騙された三国も愚かです! …ですが、

その怒りを何も知らない、していない今の三国にぶつけられても…」

………

ゼルシェード「俺もそう思う。かつての三国になら俺も見過ごしただろう。

だが、今そんな事をしても悲しみを振り撒くだけだ。

だから、クレセディアを滅ぼした後、

ベレイザがこの流変剣をあの塔に封じたのをいい事に、

俺はあいつらを止められる人材を待っていたわけだ。

そこへ来たのがお前達だ。そして四零士達は

エルブがそうだったように、俺がこの中にいることは知らん。」

……

理由はどうでも、この世界の人達を犠牲にさせるわけにはいかない。

全員の意見は一致だ。

王子の事は探しようがないから、もう、指輪を渡さないようにする事しかない。

ゼニス「ゼルシェード、その、世界改ざんみたいな事ができる、その剣の名前は?」

ゼルシェード「…律刻剣。大いなる代償を払い、

世界を変え、時を戻したように死者を蘇らせられる…ある意味、願いを叶える剣だ」

…………

ゼルシェード「…帰るぞ。嫌な予感がする」

ゼニス「あ、ああ…」

そう言って引き返そうとした時…

???「ククゲヒャヒャヒャアァ!! そんなことさせると思ってんのかよ!?」

姿は見えないが、この声は……

ゼニス「……フェズ!?」
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