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過去は絶望を率いて
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 52話
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ギルド「天馬」に帰ってきた一行は、
さすがに疲労困憊しているのをみんなに見抜かれ、とんでもなく心配された。
ロココ「ちょっとみんな! 大丈夫なの!?」
バレヌ「おいおい…何して来たんだ…」
ゼニス「……えっと……」
バレヌ「神を倒した!?」
ロココ「はあ!? なんでゼニス達は生きてるの!?」
おい、言い方…。
アクバール「とりあえず座って! あ、寝たいかな?」
ソレイユ「疲れすぎて逆に寝れません…」
…うん、そう言う事もあるものなんだ…。
一端、ギルドのロビーで全員席に着く。
まず、聞きたい事は…一つ。
サルファー「あの…ゼルシェードさん。
あなたは……エレジェフィア様の義父なのですか…?」
ゼルシェード「…先にそっちか? まあいいか…そうだ。俺はエレジェフィアの義父だ。
つまり、俺は元神だ」
ビオレ「元ってどういう事?」
ゼルシェード「ベレイザも言っていたが、俺は力を失っている。神の力たる翼もない。
まあ、こうなったのはベレイザのせいだったんだが…」
ベレイザ『私が気付かないと思ったかしら。力を失い人に託すしかできない神』
ゼルシェード『それに、俺の力は…貴様が奪った力だろう。』
ベレイザ「あっはははは! 貴方の力にしては弱かったから、おかしいとは思っていたのよ。
まさか、奪いつくされる前に、その剣の中に避難したとはね…』
パリス「それは…いつの話なんですか…?」
ゼルシェード「一万年前だ。エルブが証人だ」
全員一斉にエルブの方を見ると、頷いた。
エルブ「たしかに一万年前…ゼルシェード様の力を奪われました。
僕達は、ゼルシェード様が殺された、と思っていたので…
剣にいた事には、驚きました…」
じゃあ…エルブは……
エーリカ「…一万年前の人なのですか…!?」
エルブ「はい、そうです。ゼルシェード様が生きていて、どれだけ嬉しかったか…」
ゼルシェード「あの頃のような力は無いがな。
ベレイザの言う通り、お前達に世界の命運を託すしかできない神だ…」
そんなこと気にしなくてもいいのに…
少なくとも、ゼルシェードがいなければ、この剣の使い方は分からなかったわけで…
アクバール「ゼルシェード様…の方がいいかな。
現時点で話せる事はある?」
ゼルシェード「別に様付けはいらん。…現時点で話しても良いが、分かりにくい。
やはり、壁画の下へ辿り着いてからにしてくれ。」
エルブ「そこにさえ着けば、僕からも説明します。
全て。…一万年前何があったのか。なぜ一万年前の僕達が、今生きているのか。
どうして、今、こんな行動を起こしているのか」
……
ゼニス「一応、聞いていいかな?
…エルブたちがいた国の名前は…?」
エルブ「ゼニス師匠達が思った通り。童話の舞台。
……クレセディアです」
童話。この世界に生きる者なら、大体読んでいるのではないだろうか。
小さい頃から、童話の絵本を読んでいたり。
原本は分厚い上に何冊もあるから、ほとんど誰も手を付けようとしないが…。
童話…絵本の内容をざっくり説明するとこんな感じだ。
昔、この世界にはクレセディアという王国があった。
そこの王子は慈悲深く、国民からとても愛されていた。
魔物も、人間も、等しく民だと思っていた彼は、
魔物が悪事を働いても、殺さず説得を試みた。
慈悲深い王子の態度に、魔物は一つ試してみた。
「なら、今すぐここで殺されるか? お前が死んだら人間と仲良くしよう」
王子は言った。
「ああ、構わないよ。それで君達が満足するのなら。
ただ、僕が死んだら必ず人と手を取り合ってくれ」と。
その言葉と覚悟に魔物達は感激し、それ以来、人と魔物は、
クレセディアでは手を取り合って生きていた。
ある時、その平和な国に、悪しき存在が攻めて来た。
王子は自分とその友である騎士と側近だけを従えて、その存在に戦いを挑んだ。
だが、国民は皆、武器を手に取り、愛する王子のために共に戦ったのだ。
そして、激闘の末に悪しき存在を討ち破ります。
こうしてクレセディアは、王子とその友、国民たちによって
その平和は守られたのでした。
めでたし、めでたし。
……と、こんな感じだ。
けれど……
アクバール「…追及はしないけど…
エルブ君の話を聞くと、ハッピーエンドじゃなさそうだよね…」
エルブ「………」
エルブの暗い表情を見る限り、やはり図星だろう。
ソレイユ「そういえば、遺跡には…」
ロココ「あたし達も予定通りついてくから!」
バレヌ「俺達より激戦だったお前達に比べたら実力不足かもしれないが…
これでも依頼は二人でこなして来てる。サポートぐらいはできるはずだ」
……頼もしいな。
サルファー「明日はお願いしますね」
エーリカ「貴方達の方は大丈夫なんですか?
疲れが……」
神と戦った疲れを気にしてくれているようだが…
ビオレ「平気よ。これ以上、真実を先延ばしにもしたくないし」
パリス「このままだと、かえって気になって眠れません…」
アクバール「じゃあ、もうみんな休んでよ。
少しでも寝ておかないと…あ、そうだ」
マスターが少し席をはずして、一つの…薬?を持ってくる。
ロココ「何この怪しい薬」
バレヌ「毒……?」
アクバール「違う違う!! これ、ブライトさんが持って来てくれたんだよ。
体力魔力疲労回復万能ドリンク!」
何だ、そのチート薬…じゃない、ドリンク…。
エーリカ「私達も試してみましたが、凄い効果ですよ。
徹夜のマスターが信じられないほど元気になりましたから」
アクバール「騒いでたらエーリカちゃんに蹴り飛ばされたよ…」
一同、呆れ。
ゼニス「じゃあ、頂いておきます。
…そう言えば、ブライトさんは?」
ロココ「さっき、外の空気吸って来るとか言ってたよ。
地上だと思う。」
エーリカ「明日は忙しいのですから、もうギルドの外には出ないでくださいね?」
エーリカに背を押されながら、強制的に部屋に戻される。
………
ゼニス「ゼルシェード…あのさ」
ゼルシェード「寝ないのか? いや、夢の中だから寝てはいるか…どうした」
ゼニス「……前、サラテリを助けられないかって話したよね?」
ゼニス『ねえ、ゼルシェード。…四零士って、殺さないと駄目なのかな?』
ゼルシェード『何?』
ゼニス『サラテリは僕達の事助けてくれた…もし…』
ゼルシェード『サラテリ以外も救うと言えるか?』
ゼニス『え…』
ゼルシェード『サラテリは、自分が生きるなら、仲間と共にこの世界で生きたいと願うだろう。
あいつ一人が生き残る事を望まない。』
ゼルシェード「……言ったな。答えは出たのか?」
ゼニス「それなんだけど……明日、壁画を見て、真実を知ってから答えを出そうと思う。
向こうが一方的に悪いのか、こっちにも非があるのか…。
そして、どちらであっても、あいつらがやろうとしている事が、今までしてきた事が、
「死んで終わりなんて罰」で済ませられるぐらい軽いものなのか」
ゼルシェード「……確かに、死んだほうが罪の軽減になってしまう奴もいるな…」
ゼニス「ねえ、ゼルシェードはあいつらと知り合いだよね?
エルブの聞いてる感じだと…」
ゼルシェード「明日まで待て。…長く待たせたな。必ず、明日話す。」
………
翌日。
ロココ「んーーー!! よし! 頑張る!」
バレヌ「何だかんだ、お前達と同じ場所で戦うのは初めてだな。」
二人はやる気満々のようだ。元気もあるようだし、問題ないか。
ゼニス「じゃあ、二人とも今日は頼むね」
エルブ「鍵も持ったし、もういけるなら、出発しましょう」
アクバール「何があるか分からない。どうか気を付けて」
アクバールとエーリカは転移エリアまで送りに来てくれた。
ソレイユ「そういえば、ブライトさん、居ないの?」
パリス「まだ帰ってないんでしょうか?」
サルファー「まあ、ブライトさんも色々あるのでしょう。」
ビオレ「私達は私達のやる事をしましょ」
そう言って、ゼニス達は転移して、クレイドル大陸。
旧ディペアード国跡地に転移していった。
アクバール「エーリカちゃん。彼に連絡は?」
エーリカ「ええ、来てくれるそうです。あと、彼も」
アクバール「そうか、いくら強くても助っ人一人はあれだしね…。
敵に実力者が多すぎる。もしもの時の保険としても助かるよ…」
さすがに疲労困憊しているのをみんなに見抜かれ、とんでもなく心配された。
ロココ「ちょっとみんな! 大丈夫なの!?」
バレヌ「おいおい…何して来たんだ…」
ゼニス「……えっと……」
バレヌ「神を倒した!?」
ロココ「はあ!? なんでゼニス達は生きてるの!?」
おい、言い方…。
アクバール「とりあえず座って! あ、寝たいかな?」
ソレイユ「疲れすぎて逆に寝れません…」
…うん、そう言う事もあるものなんだ…。
一端、ギルドのロビーで全員席に着く。
まず、聞きたい事は…一つ。
サルファー「あの…ゼルシェードさん。
あなたは……エレジェフィア様の義父なのですか…?」
ゼルシェード「…先にそっちか? まあいいか…そうだ。俺はエレジェフィアの義父だ。
つまり、俺は元神だ」
ビオレ「元ってどういう事?」
ゼルシェード「ベレイザも言っていたが、俺は力を失っている。神の力たる翼もない。
まあ、こうなったのはベレイザのせいだったんだが…」
ベレイザ『私が気付かないと思ったかしら。力を失い人に託すしかできない神』
ゼルシェード『それに、俺の力は…貴様が奪った力だろう。』
ベレイザ「あっはははは! 貴方の力にしては弱かったから、おかしいとは思っていたのよ。
まさか、奪いつくされる前に、その剣の中に避難したとはね…』
パリス「それは…いつの話なんですか…?」
ゼルシェード「一万年前だ。エルブが証人だ」
全員一斉にエルブの方を見ると、頷いた。
エルブ「たしかに一万年前…ゼルシェード様の力を奪われました。
僕達は、ゼルシェード様が殺された、と思っていたので…
剣にいた事には、驚きました…」
じゃあ…エルブは……
エーリカ「…一万年前の人なのですか…!?」
エルブ「はい、そうです。ゼルシェード様が生きていて、どれだけ嬉しかったか…」
ゼルシェード「あの頃のような力は無いがな。
ベレイザの言う通り、お前達に世界の命運を託すしかできない神だ…」
そんなこと気にしなくてもいいのに…
少なくとも、ゼルシェードがいなければ、この剣の使い方は分からなかったわけで…
アクバール「ゼルシェード様…の方がいいかな。
現時点で話せる事はある?」
ゼルシェード「別に様付けはいらん。…現時点で話しても良いが、分かりにくい。
やはり、壁画の下へ辿り着いてからにしてくれ。」
エルブ「そこにさえ着けば、僕からも説明します。
全て。…一万年前何があったのか。なぜ一万年前の僕達が、今生きているのか。
どうして、今、こんな行動を起こしているのか」
……
ゼニス「一応、聞いていいかな?
…エルブたちがいた国の名前は…?」
エルブ「ゼニス師匠達が思った通り。童話の舞台。
……クレセディアです」
童話。この世界に生きる者なら、大体読んでいるのではないだろうか。
小さい頃から、童話の絵本を読んでいたり。
原本は分厚い上に何冊もあるから、ほとんど誰も手を付けようとしないが…。
童話…絵本の内容をざっくり説明するとこんな感じだ。
昔、この世界にはクレセディアという王国があった。
そこの王子は慈悲深く、国民からとても愛されていた。
魔物も、人間も、等しく民だと思っていた彼は、
魔物が悪事を働いても、殺さず説得を試みた。
慈悲深い王子の態度に、魔物は一つ試してみた。
「なら、今すぐここで殺されるか? お前が死んだら人間と仲良くしよう」
王子は言った。
「ああ、構わないよ。それで君達が満足するのなら。
ただ、僕が死んだら必ず人と手を取り合ってくれ」と。
その言葉と覚悟に魔物達は感激し、それ以来、人と魔物は、
クレセディアでは手を取り合って生きていた。
ある時、その平和な国に、悪しき存在が攻めて来た。
王子は自分とその友である騎士と側近だけを従えて、その存在に戦いを挑んだ。
だが、国民は皆、武器を手に取り、愛する王子のために共に戦ったのだ。
そして、激闘の末に悪しき存在を討ち破ります。
こうしてクレセディアは、王子とその友、国民たちによって
その平和は守られたのでした。
めでたし、めでたし。
……と、こんな感じだ。
けれど……
アクバール「…追及はしないけど…
エルブ君の話を聞くと、ハッピーエンドじゃなさそうだよね…」
エルブ「………」
エルブの暗い表情を見る限り、やはり図星だろう。
ソレイユ「そういえば、遺跡には…」
ロココ「あたし達も予定通りついてくから!」
バレヌ「俺達より激戦だったお前達に比べたら実力不足かもしれないが…
これでも依頼は二人でこなして来てる。サポートぐらいはできるはずだ」
……頼もしいな。
サルファー「明日はお願いしますね」
エーリカ「貴方達の方は大丈夫なんですか?
疲れが……」
神と戦った疲れを気にしてくれているようだが…
ビオレ「平気よ。これ以上、真実を先延ばしにもしたくないし」
パリス「このままだと、かえって気になって眠れません…」
アクバール「じゃあ、もうみんな休んでよ。
少しでも寝ておかないと…あ、そうだ」
マスターが少し席をはずして、一つの…薬?を持ってくる。
ロココ「何この怪しい薬」
バレヌ「毒……?」
アクバール「違う違う!! これ、ブライトさんが持って来てくれたんだよ。
体力魔力疲労回復万能ドリンク!」
何だ、そのチート薬…じゃない、ドリンク…。
エーリカ「私達も試してみましたが、凄い効果ですよ。
徹夜のマスターが信じられないほど元気になりましたから」
アクバール「騒いでたらエーリカちゃんに蹴り飛ばされたよ…」
一同、呆れ。
ゼニス「じゃあ、頂いておきます。
…そう言えば、ブライトさんは?」
ロココ「さっき、外の空気吸って来るとか言ってたよ。
地上だと思う。」
エーリカ「明日は忙しいのですから、もうギルドの外には出ないでくださいね?」
エーリカに背を押されながら、強制的に部屋に戻される。
………
ゼニス「ゼルシェード…あのさ」
ゼルシェード「寝ないのか? いや、夢の中だから寝てはいるか…どうした」
ゼニス「……前、サラテリを助けられないかって話したよね?」
ゼニス『ねえ、ゼルシェード。…四零士って、殺さないと駄目なのかな?』
ゼルシェード『何?』
ゼニス『サラテリは僕達の事助けてくれた…もし…』
ゼルシェード『サラテリ以外も救うと言えるか?』
ゼニス『え…』
ゼルシェード『サラテリは、自分が生きるなら、仲間と共にこの世界で生きたいと願うだろう。
あいつ一人が生き残る事を望まない。』
ゼルシェード「……言ったな。答えは出たのか?」
ゼニス「それなんだけど……明日、壁画を見て、真実を知ってから答えを出そうと思う。
向こうが一方的に悪いのか、こっちにも非があるのか…。
そして、どちらであっても、あいつらがやろうとしている事が、今までしてきた事が、
「死んで終わりなんて罰」で済ませられるぐらい軽いものなのか」
ゼルシェード「……確かに、死んだほうが罪の軽減になってしまう奴もいるな…」
ゼニス「ねえ、ゼルシェードはあいつらと知り合いだよね?
エルブの聞いてる感じだと…」
ゼルシェード「明日まで待て。…長く待たせたな。必ず、明日話す。」
………
翌日。
ロココ「んーーー!! よし! 頑張る!」
バレヌ「何だかんだ、お前達と同じ場所で戦うのは初めてだな。」
二人はやる気満々のようだ。元気もあるようだし、問題ないか。
ゼニス「じゃあ、二人とも今日は頼むね」
エルブ「鍵も持ったし、もういけるなら、出発しましょう」
アクバール「何があるか分からない。どうか気を付けて」
アクバールとエーリカは転移エリアまで送りに来てくれた。
ソレイユ「そういえば、ブライトさん、居ないの?」
パリス「まだ帰ってないんでしょうか?」
サルファー「まあ、ブライトさんも色々あるのでしょう。」
ビオレ「私達は私達のやる事をしましょ」
そう言って、ゼニス達は転移して、クレイドル大陸。
旧ディペアード国跡地に転移していった。
アクバール「エーリカちゃん。彼に連絡は?」
エーリカ「ええ、来てくれるそうです。あと、彼も」
アクバール「そうか、いくら強くても助っ人一人はあれだしね…。
敵に実力者が多すぎる。もしもの時の保険としても助かるよ…」
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