月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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過去は絶望を率いて

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 51話

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出て来たのは、話に挙がった女神ベレイザだ。

人同士の争いが好きな女神…。

ベレイザ「その姿も懐かしいわね。今は立派な世界の管理者である神、ね」

エレジェフィア「……よくも、父を…!!」

ベレイザ「あらいいの? 変に啖呵切らない方がいいわよ? じゃないとほら…!」

ベレイザの手から魔法が撃ちだされる。

エレジェフィア「うあっ!?」

エレジェフィアに直撃して地面を滑る。

ゼニス「エレジェフィア様!?」

ベレイザ「その姿って事は、神の力は使えないんでしょう? 無理はしないしない」

エレジェフィア「っ!」

エレジェフィアがベレイザを睨みつけるが、

ベレイザは気にも留めていないようだった。

ベレイザ「それに、気配があるわ。そこにいるのでしょう、ゼルシェード」

ベレイザが見ているのはゼニスの持っている流変剣だ。

ゼニス(バレてる!?)

エレジェフィア(お義父様……!?)

ベレイザ「私が気付かないと思ったかしら。力を失い人に託すしかできない神」

ソレイユ「ええ!?」

パリス「ゼルシェードさんが…神様…!?」

エルブ「………」

しばらく間があいたあとに、ゼルシェードが口を開いた。

ゼルシェード「貴様が言える立場か。堕落した神が…!」

エレジェフィア「服も翼も黒く淀んで、目まで黒と灰。

神の象徴たる銀髪まで半分黒く染まってるじゃない。半分残ってるだけ奇跡と思いなさい!」

ベレイザはそう言われても、ぜんぜん堪えていないようだった。

ゼルシェード「それに、俺の力は…貴様が奪った力だろう。」

ビオレ「ベレイザが奪ったの!?」

ベレイザ「あっはははは! 貴方の力にしては弱かったから、おかしいとは思っていたのよ。

まさか、奪いつくされる前に、その剣の中に避難したとはね…」

だから、ゼルシェードは流変剣の中に…

ベレイザ「ほんっとにあいつは馬鹿よね! 変な情けなんかかけるからこうなるのよ!

何だっけ、名前? ゼ…」

ゼルシェード「その名を貴様が口にするな!!」

ベレイザの言葉をさえぎって、ゼルシェードが声を上げる。

ゼルシェードがここまで叫ぶなんて珍しい。

ベレイザ「…怖い怖い。…まあ、ここで会ったが万年目?

今、貴方の力を奪えばいい話…!」

「万」…?

ゼニス「ゼルシェードは奪わせない!」

サルファー「貴方が神? ふざけないでください。

人を苦しめて楽しむ神など、必要ありません…!」

エルブ「お前さえ、居なければ…! 僕達は…!

お前だけは許さない! 去ねろ!」

ソレイユ(エルブ…?)

アスター「お前達…本気か…!?」

フクシア「相手は…神だよ…!!」

動けない二人が必死に止めに入る。言ってる事はもっともだ。

けど…逃がしてくれる話かと言われれば違うだろう。

そして、ここで止めなければ、また誰かが被害に…

ビオレ「言っとくけど、私達は残るわよ。

仲間は残るつもりみたいだし」

視線を向けた先はエルブ。エルブは本気で倒す気でいるようだ。

ゼルシェード「お前達はエレジェフィアを連れて戻れ。

正直、今の状態では足手纏いだ」

……

少し迷った後、立ち上がり、エレジェフィアの手を引っ張る。

エレジェフィア「ゼルシェード!!」

ゼルシェード「エレジェフィア! お前はこの世界の管理がある!

お前が死ぬわけにはいかない事を忘れるな!」

エレジェフィア「ゼニス! ゼルシェードを…お義父様をお願い!!」

ゼニス「…え…はい!」


エレジェフィアとアスターとフクシアがその場から立ち去る。

サルファー「わざわざ待っていてくれたのですか?」

ベレイザ「すぐ殺すも、待ってあげるも、私には変わらないもの」

ゼルシェード「油断していると痛い目を見るぞ。

こいつらは少なくとも、貴様が三国を利用しなければ勝てなかった

あいつらを退け生き延び続けている。」

……あいつら…って、まさか…

それに、ベレイザが今一瞬反応した。

ベレイザ「そう…貴方が買うのも分かるわ。でも、どうして貴方はこっち側なの?」

ゼルシェード「あいつらがやっている事は、今の時代では悲しみを撒き散らすだけだ。

以前のこの三大陸になら俺も見過ごしただろう。

だが、今この時代の奴らは無関係だ。だから、止める。」

ソレイユ「ま、待って待って、話が見えないんだけど!?」

ゼルシェード「後だ! 構えろ!」

ゼルシェードが言ったとおり、ベレイザが武器を構えていた。

二つの、鎌…?

ビオレ「物騒な武器持ってるわね…!」

ベレイザ「デスウィンド!」

慌てて避けるが、その魔法の威力自体は、レクイエムをはるかに凌駕。

パリス「あ、あんなの当たったら…」

ベレイザ「かわせない人の方が多いのに、やるじゃない」

その時、一人だけ。エルブだけベレイザの方に向かって駆けだした。

サルファー「エルブ!?」

エルブ「だああああ!!!」

キーンと武器と武器がぶつかる音が響き、火花が散る音が鳴る。

エルブ「ぐ…っ!」

ベレイザ「…ゼルシェードが取り込まれた時に、泣いていた子が何ができると?」

エルブ「お前を倒せる!!」

ベレイザ「あっはは! 笑えない冗談ね!」

そういうなりエルブを弾き飛ばす。

エルブ「うわっ!?」

ゼニス「エルブ!!」

ゼルシェード「無茶を…能力スキルがあったならともかく…!」

まだ立ち上がろうとするエルブの前にゼニスが立った。

エルブ「ゼニス師匠…!?」

ゼニス「ベレイザ。…僕の弟子に手を出して、無事でいられると思うな!」

ソレイユ「エルブは、私達の仲間なの!」

同時に攻撃を仕掛けだす。

パリス「涙の意味を…光よ貫け…ライトティアーレイ!」

サルファー「風と水に…裂けろ弾けよ…風裂水泡弓!」

ビオレ「燕は翔け…風に殺し葬る…風葬殺燕翔!」

ソレイユ「燃えろ切り裂け…光炎の精霊よ…フレアスピナーロア!」

ゼニス「栄華救世剣!」

防御、回避、反撃の隙も与えないよう、全員奥義で仕掛けた。


けど…

ベレイザ「あー、さすがにきついわね…

そっちに神が味方してるのは結構ね…」

パリス「立ってる!?」

ビオレ「うそでしょ!?」

ゼルシェード「仮にも神だ! この程度じゃ死なないか!」

……おまけにゼルシェードの力も半分喰らってるんだ。

並じゃ勝てないか…

ベレイザ「…私、こういう事もできるのよ。

力を奪えるんだから、可能に決まってるわよね?」

サルファー「何を…!?」

ベレイザ「ふふっ……マナイーター!!」

ベレイザがそう言った途端、全員体から力が抜けていった。

ソレイユ「何、これ…!!」

ゼニス「力が…っ、生命力じゃない…魔力が…減った…!?」

この世界において、魔力不足は魔法などが使えなくなるだけではない。

極端に減りすぎると動く事さえままならない。

ゼルシェード「ベレイザ!!!」

ベレイザ「本当ならもっと酷いことできるのよ?

混乱させて同士討ち…とか?」

エルブ「っ…!!」


ゼルシェード「ゼニス、聞こえるか?」

ゼニス「ゼルシェード……何?」

ゼルシェード「あいつの翼を狙え…翼は神たる力を宿す。

あれさえ壊せば、後は楽なはずだ」

ゼニス「…でも、力が…」

ゼルシェード「不足なら、「連携」しろ!」


ゼニス「ぐ…くっ…!」

剣を盾にして、何とか立ち上がる。

ゼニス「ベレイザ! 殺すなら、僕を先に殺せ!

僕が相手になってやる!」

ビオレ「ゼニス!?」

焦るみんなの方を向いて口パクで「翼」とだけ告げる。

みんなはそれだけで意図を理解したのか、次々に立ち上がる。

ソレイユ「ベレイザ…! 私とゼニスの二人で、相手になる…!」

ベレイザ「……そう。…馬鹿みたい、ね!

デストロイリッパー!!」


ベレイザの攻撃を何とか防いでいるが、限界が近いから耐えきれるか分からない。

その時だった…ソレイユの指輪から歌声が響いた。

ソレイユ「これ…いつもの!!」

ゼニス「歌声だ…!」

エルブ「……!!!」

(この歌声は……)

ベレイザ「この、歌は…! あの…小娘…!?」

ベレイザの動きが止まった。

その隙にサルファー達は行動に移る。

サルファー・パリス「貫け! セイクリッドシルフィ!」

ビオレ・エルブ「砕けろ! アイスナイフスラッシュ!」

ベレイザ「…!! なっ…!!」

ゼルシェード「かかったな。ベレイザ…!」

二組の連携技が翼に命中して、両方の結晶でできた翼が砕け散る。

ベレイザ「ぐっ…!? この…っ、人間ごときが…!」

ゼルシェード「人間を低評価しすぎだ。

貴様一人と違って、こいつらには仲間がいる。

…あの時も、貴様は群れ過ごしていたあいつを馬鹿にしたな…中途半端な甘ちゃんだと。

…確かにあいつは悪く言えば甘い奴だ。だが、誰よりも優しい奴だった!」

ベレイザは剣に向かって睨み飛ばすだけ。

ゼニス「ゼルシェードの話、まだよく分からないけどさ、

仲間の力が強い事は確かだよ…ここがお前の限界だ。…ソレイユ!!」

ソレイユ「うん!!」

再び武器を構える。もう力としても限界だった。これが最後だ。

ゼニス「時双波!」

ソレイユ「空天翔!」

ゼニス・ソレイユ「時に迷え! 天翔刃・時空!!」

二人の連携技が、ベレイザを切り裂いた。

ベレイザ「こん、な…ことが…」

ゼルシェード「…終わりだ」

強い閃光がその瞬間瞬いた。


ベレイザはすでに姿を消していた。

それと同時にゼニスとソレイユもその場に崩れ落ちる。

ゼルシェード「大丈夫か?」

ゼニス「う、うん…けど…もう動けない…」

パリス「私達も、です…」

エルブ(……もう、いいんです…皆さん…真の仇は、もう、居ないんです…)

そこへ、エレジェフィアとアスターとフクシアが戻って来た。

エレジェフィア「皆さん! ベレイザの反応が消えたのですが!?」

サルファー「…倒しましたよ…」

あまりの疲労に座り込んでいるゼニス達を見て慌ててフクシアとアスターが駆け寄る。

アスター「大したもんだな…」

フクシア「二年前の私達より強いかもね」

ビオレ「ここにずっといるのも危ないし、ギルドに連絡とりましょう。

…アスターたちはどうするの?」

アスター「俺達はエレジェフィア様を世界樹に送り届けてから、

天使界と悪魔界に戻る予定だ」

フクシア「この研究所の件も、私達の我儘で行かせてらった奴だからね。

そろそろ戻って、大天使と大悪魔の勉強に戻らないと」

………じゃあ、ここでお別れだな。

ゼニス「ありがとう。エレジェフィア様の事頼むよ。」

その前に…と、フクシアがカイムに近寄る。

フクシア「御霊を救い、浄化せよ。現世での穢れを払い、清く天へ…」

アスター「…フクシアの救魂技だ。最近、覚えたんだ」

唱え終わると、カイムの姿が光に包まれて消えた。

エレジェフィア「…父は…?」

フクシア「これで、天界に魂は行くはずです。

もしかしたら、世界樹のもとへ会いに来るかもしれませんよ」

エレジェフィア「…良かった…」

ゼルシェード「…エレジェフィア…頑張れよ」

フクシアたちと別れ、ゼニス達はギルドに連絡して、その研究所を去った。

もう、二度と魔族が造られる事はなくなるだろう。

この世界の神が、今度こそ好き勝手させないはずだ。
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