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過去は絶望を率いて
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 44話
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イグニスの村に戻って来て、村の人に装置の破壊が終わった事を報告していると…
「あの、さっき山頂の方で強い光が起きましたけど…大丈夫でしたか?」
エルブ「っ…」
さっきのエルブが宝玉を使った時のだ。
ゼニス「はい。ちょっと…僕の魔法が暴発してしまいまして。
でも、大丈夫です。」
エルブ(…! ゼニス師匠……)
「良かったです…皆さんはもう旅を再開するのですか?」
ビオレ「ええ、私達行く所あるからね」
そうして村の外に出て、マスターに連絡を取ってみた。
アクバール「はいはい、アクバールだよ。ゼニス君久しぶりー!
どうかした??」
ああ、マスターの声だ。
ソレイユ「私達、一度ギルドに戻って、話したい事があるんですけど、
戻ってもいいですか??」
そう言った途端に、ドタバタガッシャんというような物音が端末越しに聞こえた。
パリス「だ、大丈夫なんですか…」
ゼニス「ああ、うん。マスターはいつもこんな感じ」
音が止むと、もう一度マスターが返事した。
アクバール「もちろんだよ! 帰って来て!
…話は、大事な事なのかな。なら、エーリカも呼ぶ」
ソレイユ「できたら、ロココとバレヌも呼べますか?
みんなに聞いてもらった方がいいかもしれないです」
「わかった。少し待ってて」と返事をして連絡を切る。
ビオレ「どうやってギルド行くの?」
ソレイユ「えっと、この端末を操作すれば…」
操作すると、転移魔法陣が出て来た。
サルファー「なるほど、これに乗っていくんですね」
……そう言えば…
ソレイユ「エルブは入れるの?」
確か入れないとかなんとか…だったような…
エルブ「この能力を持つ者が遮断されているので、
能力を奪われた今、僕は無問題だと思います」
なるほど……
魔法陣に乗ってギルドに戻る。
エーリカ「おかえりなさい。あら。随分とお仲間が増えたんですね。
始めまして、エーリカです。このギルドのサブマスターです」
エーリカが迎えに来てくれていた。
それと…
ブライト「元気そうだな、ゼニス」
ゼニス「ブライトさん!!!」
ブライトも来ていた。…逆に丁度良かった。
エーリカ「貴方達から連絡がきた後、ブライトさんにも連絡してきていただきました」
エーリカはこういうところ、本当に手際がいい。
ゼニス「そうだ、増えた仲間。サルファーとパリスとビオレ。
えっと…ビオレは忍びなんですけど……」
心配いらないと言う感じでほほ笑む。
エーリカ「忍びに対する考え方の改め。カテドラル王よりの宣言は、
このギルドにも届いています。心配しないでください。ところで…そちらは…」
エルブだ。
エルブ「……「元」側近。エルブ。
…ゼニス師匠の弟子です」
エーリカ「え…?」
ソレイユ「あ、あの! ここに居る時点で分かると思いますが、
エルブはあいつらを裏切って、私達を助けてくれたんです。
その結果、彼は能力を奪われて…」
しばらく困惑していたようだったが、
ソレイユとゼニスとエルブの目を見て、納得したようだった。
エーリカ「敵意は感じませんね。…わかりました。
ありがとうございます、エルブさん。彼らを助けてくれて」
エルブ「え、は、はい…」
ブライト「俺の弟子の弟子か。俺はブライト。ゼニスの師だ」
エルブ「貴方が…! あの、ゼニス師匠から話は聞いています!」
ゼニスの方を向いて変な事は言っていないな、と睨まれたので、
慌ててゼニスは否定する。
何とかエルブの事もビオレの事もどうにかなった。
ギルドのロビーに入ると、マスターとロココとバレヌがもう座っていた。
ロココ「ゼニス、ソレイユ!!」
バレヌ「本当に久しぶりだな。いつぶりだ?」
取りあえず軽く自己紹介し合って。席に着く。
アクバール「あ…うん…何か、変な感じだね。以前敵だった人がここに居るなんて…」
エルブ「すみません……」
アクバール「いや、責めてるわけじゃないよ。
ゼニス君達の話を聞いてると、君はどうにも、敵にしては優しすぎてたようだからね」
……
ゼニス「エルブ。この際だから聞くけど、僕達と敵対する気がなくなってたのは、いつから?」
エルブ「…最初から、です。ただ、迷ってて……」
バレヌ「迷ってた?」
少し言葉に悩んでから、切り出した。
エルブ「陛下のやり方は、今の人達にぶつけても仕方ない事なのに…
この世界に対して攻撃を開始しようとしている。
それに、それを仮に果たせたとしても、陛下はいない事になる。
僕は、正直目的なんてどうでも良い。この世界でもいい。
陛下達と一緒に生きていたいだけなんです」
何を言っているのか、分からない部分が多いが、今は流す事にした。
エルブが言うには、壁画を読み解いたら、詳しく話すと。
ゼルシェード「エルブ…お前は…」
ロココ「?? 今話したの誰??」
ゼニス「ああ、ゼルシェードだね。この剣の中にいるんだけど…
そうだ。エルブ、この剣は…陛下のって言ってたよね」
エルブ「はい。その剣は、以前陛下が持っていたものです。
まさかゼルシェード様が中にいるとは思いませんでしたが…
また会えて嬉しいです。ゼルシェード様」
ゼルシェード「…そうだな」
知り合いなのか…。フェズ達の事も詳しかったし…
エルブ「あ、それから山頂での僕の豹変ですが…
あれは宝玉の力です。
僕ら側近格が持っているもので、使うとかなりの戦闘力を得る代わり、
凶暴になる副作用みたいなのを含んでいまして…僕はそれで…」
だから、あんなに口調が変わって、荒れていたようだ。
本当に、死ぬかと思った…。
ビオレ「壁画を見てみないと、話が見えないわね。
…そう言えば、ここに保管してる宝玉はまだ無事なのね?」
エーリカ「ええ。大丈夫です。四零士、セピア、エピナールは入れませんしね。」
なら、大丈夫かな……何か、忘れている気がするんだけど…
ブライト「とりあえずは、壁画探しに行くか。
エルブ。お前はその場所を知っているんだよな」
エルブ「はい。場所はクレイドル大陸。元ディペアード城のあった跡地です。
その先に洞窟があります。
…ただ、そこに入るための鍵が必要で、それはプラタナスさんとアリウムさんが…」
なるほど…敵が持っていて、自分達だけで今すぐ乗り込もうというわけにもいかない、と…。
アクバール「ねえ、その二人ってかつての英雄だよね? どういう事?」
ゼニス「ああ、それは…」
あの二人の今の状況を話す。憎しみに操られているような感じだと。
エーリカ「かつての英雄まで、敵なのですか…」
アクバール「敵の戦力が半端ないね……」
………ん?
サルファー「ゼニス。ここには、四零士と、セピア、エピナールが入れないのですよね…
最近、しかも半ばセピアに利用された形での敵陣への参加。
…プラタナスとアリウムも、ここに入れないん…ですか…??」
ゼニス「!? それは……!」
ドーーーンとその瞬間、爆撃が怒る。
ブライト「敵襲か!?」
アクバール「え、まさか今、言った二人が!?
エーリカちゃん! ちょっと宝玉の確認を!」
エーリカ「はい!」
エーリカが急いで部屋に向かう。
ビオレ「私達は侵入者を探すわよ!」
ゼニス「わ、わかった! 手分けしよう!」
ブライトは単独で、ゼニスとソレイユ、サルファーとビオレ、
パリスとエルブ、バレヌとロココに分かれて、広いギルドを手分けする事になった。
ソレイユ「向こうが転移できるなら意味ないよ!?」
ゼニス「まだ残っているなら、出て来い!」
ゼニスとソレイユが探したのは転移エリアの方。
ゼニス「……ここにもいない。ソレイユ、そっちはどう!?」
ソレイユ「いないよ! こっちじゃないのかな」
転移エリア一つでも結構広い。
どこかに隠れているのか、違うエリアか、もう逃げているのか。
そう思っていると…誰かが転移した気配を後ろから感じて振り返る。
プラタナス「久しぶり。いつぶり、だっけ」
ゼニス「お前ら! 何しにここに堂々と!」
アリウム「宝玉の奪取だけど? もう、セピアたちの所に送ってあるわよ」
…遅かった…忘れていた。この二人なら、乗り込めてしまう…!
アリウム「それから、宣戦布告。
…今度、イテールナ城とセイクレイ城が、手を正式に取り合うって事で、
パーティが行われるんだって。私達はそこに乗り込む」
ソレイユ「何のために!?」
………
プラタナス「僕らに全部任せたセイクレイ城が許せない。
イテールナ城は正直どうでもいいけど、四零士は全国嫌いだからね。
まとめて僕達で消そうかって話。両国が揃うパーティ、絶好の機会なんだよ」
……!!
ゼニス「…僕らに出て来いって事か。」
アリウム「私とプラタナスに勝てるのは、君達ぐらいだろうしね。
出てきたくないならそれでもいいよ。セイクレイ城とイテールナ城ごとき助けなくっても」
そんな事できるものか……はいそうですかというものか。
ゼニス「させないよ。二人にそんな事は…
目を覚まさせてやる!!」
プラタナス「それでこそ、騎士だよ。
出て来るなら気を付けてね。宝玉と大罪の力が向こうには揃っている。
後はその指輪だけ。それが奪われたら終わりだよ?」
ソレイユの、指輪……
ソレイユ「考え直す気は、無いの?」
アリウム「私達はこの世界を正す。いざとなって、生き残りたければ、
貴方達はこっちに来るしかなくなる。」
ゼニス「どういう事…?」
聞いたところで返事は分かっている。
アリウム「真実に辿り着いてみて。私達に勝てたらね。
…私達にはこの道しかないの。この感情が無ければ苦しまなかったかもしれない。
でも、この感情が無ければ、私達は今ここに…」
……どういう意味だ……。
プラタナス「君達の覚悟と、僕達の覚悟、どっちが勝つか、決めよう。」
ゼニス「僕達は負けない!」
そう言うと、プラタナスとアリウムは転移していった。
それと入れ替わるようにギルドのみんながこっちに来る。
エーリカ「お二人とも、宝玉が奪われました!」
ゼニス「知ってます。さっき、ここにプラタナスとアリウムが来ました。」
!!
ソレイユ「近々行われる城同士のパーティを攻めると宣戦布告していきました。」
サルファー「…止めなければなりませんね。
どのみち私達は彼らに勝つ必要があります」
パリス「パーティはいつですか?」
明後日…準備するとしたら明日一日しかない。
ビオレ「急を要するわね。」
エルブ「僕も行きます。信用できないかもしれませんが、手伝わせてください!」
……
ゼニス「うん、行こう。エルブ」
アクバール「準備は怠らないようにね。
まだ狙いが分からないけど、その指輪を奪われないように…」
ソレイユ「はい!」
その晩……
ゼニス「ゼルシェード」
ゼルシェード「何だ。そっちから話があるから…なんて珍しい」
ゼニス「…プラタナスとアリウムの事だ。
…あの二人の憎しみを加速させた…セピアが小細工した何か…
それを取り除く事は、この剣じゃできないのか?」
………
しばらくゼルシェードが渋る。
ゼルシェード「あるにはある、が…後悔はしないか?」
ゼニス「うん。…あるなら教えて。
憎しみに焼かれ続けるのは、辛いはずだ…彼らは、本当はすごく優しい人のはずだから…」
苦しくても、悩んでも、世界のために命を懸けられた人達なんだから。
ゼルシェード「彼らの憎悪増幅。無理矢理セピアの血を混ぜられている状態だ。
その血が、一つの能力となって、彼らに残っている。」
!? またえげつない話が…
ゼルシェード「その血が及ぼす能力を解除する術は一つある。
これをすれば彼らは落ち着き、元に戻るだろう」
ゼニス「どうやるんだ!?」
ゼルシェード「断ち切る絶望。
無理矢理植え付けられた能力を壊す力だ。
相手をこの能力で斬りつければいい。
能力を壊すから、本人にダメージを与える事はない。」
…とは言っても、弱らせないと不可能だろう。やっぱり少しの戦闘は避けられないか。
ゼニス「ありがとう、ゼルシェード。」
ゼルシェード「中々話せなくて済まない。
これが終わったら、壁画の場所で、全て話す。もう少し待ってくれ。」
ゼニス「うん、わかってるよ。じゃあ、明日は準備があるからもう寝るな」
ゼルシェード「ゼニス…どんな結果になっても、悔やむな。
…憎しみに囚われているよりは、きっと楽だろうからな…」
ゼニス「うん。そうだね」
「あの、さっき山頂の方で強い光が起きましたけど…大丈夫でしたか?」
エルブ「っ…」
さっきのエルブが宝玉を使った時のだ。
ゼニス「はい。ちょっと…僕の魔法が暴発してしまいまして。
でも、大丈夫です。」
エルブ(…! ゼニス師匠……)
「良かったです…皆さんはもう旅を再開するのですか?」
ビオレ「ええ、私達行く所あるからね」
そうして村の外に出て、マスターに連絡を取ってみた。
アクバール「はいはい、アクバールだよ。ゼニス君久しぶりー!
どうかした??」
ああ、マスターの声だ。
ソレイユ「私達、一度ギルドに戻って、話したい事があるんですけど、
戻ってもいいですか??」
そう言った途端に、ドタバタガッシャんというような物音が端末越しに聞こえた。
パリス「だ、大丈夫なんですか…」
ゼニス「ああ、うん。マスターはいつもこんな感じ」
音が止むと、もう一度マスターが返事した。
アクバール「もちろんだよ! 帰って来て!
…話は、大事な事なのかな。なら、エーリカも呼ぶ」
ソレイユ「できたら、ロココとバレヌも呼べますか?
みんなに聞いてもらった方がいいかもしれないです」
「わかった。少し待ってて」と返事をして連絡を切る。
ビオレ「どうやってギルド行くの?」
ソレイユ「えっと、この端末を操作すれば…」
操作すると、転移魔法陣が出て来た。
サルファー「なるほど、これに乗っていくんですね」
……そう言えば…
ソレイユ「エルブは入れるの?」
確か入れないとかなんとか…だったような…
エルブ「この能力を持つ者が遮断されているので、
能力を奪われた今、僕は無問題だと思います」
なるほど……
魔法陣に乗ってギルドに戻る。
エーリカ「おかえりなさい。あら。随分とお仲間が増えたんですね。
始めまして、エーリカです。このギルドのサブマスターです」
エーリカが迎えに来てくれていた。
それと…
ブライト「元気そうだな、ゼニス」
ゼニス「ブライトさん!!!」
ブライトも来ていた。…逆に丁度良かった。
エーリカ「貴方達から連絡がきた後、ブライトさんにも連絡してきていただきました」
エーリカはこういうところ、本当に手際がいい。
ゼニス「そうだ、増えた仲間。サルファーとパリスとビオレ。
えっと…ビオレは忍びなんですけど……」
心配いらないと言う感じでほほ笑む。
エーリカ「忍びに対する考え方の改め。カテドラル王よりの宣言は、
このギルドにも届いています。心配しないでください。ところで…そちらは…」
エルブだ。
エルブ「……「元」側近。エルブ。
…ゼニス師匠の弟子です」
エーリカ「え…?」
ソレイユ「あ、あの! ここに居る時点で分かると思いますが、
エルブはあいつらを裏切って、私達を助けてくれたんです。
その結果、彼は能力を奪われて…」
しばらく困惑していたようだったが、
ソレイユとゼニスとエルブの目を見て、納得したようだった。
エーリカ「敵意は感じませんね。…わかりました。
ありがとうございます、エルブさん。彼らを助けてくれて」
エルブ「え、は、はい…」
ブライト「俺の弟子の弟子か。俺はブライト。ゼニスの師だ」
エルブ「貴方が…! あの、ゼニス師匠から話は聞いています!」
ゼニスの方を向いて変な事は言っていないな、と睨まれたので、
慌ててゼニスは否定する。
何とかエルブの事もビオレの事もどうにかなった。
ギルドのロビーに入ると、マスターとロココとバレヌがもう座っていた。
ロココ「ゼニス、ソレイユ!!」
バレヌ「本当に久しぶりだな。いつぶりだ?」
取りあえず軽く自己紹介し合って。席に着く。
アクバール「あ…うん…何か、変な感じだね。以前敵だった人がここに居るなんて…」
エルブ「すみません……」
アクバール「いや、責めてるわけじゃないよ。
ゼニス君達の話を聞いてると、君はどうにも、敵にしては優しすぎてたようだからね」
……
ゼニス「エルブ。この際だから聞くけど、僕達と敵対する気がなくなってたのは、いつから?」
エルブ「…最初から、です。ただ、迷ってて……」
バレヌ「迷ってた?」
少し言葉に悩んでから、切り出した。
エルブ「陛下のやり方は、今の人達にぶつけても仕方ない事なのに…
この世界に対して攻撃を開始しようとしている。
それに、それを仮に果たせたとしても、陛下はいない事になる。
僕は、正直目的なんてどうでも良い。この世界でもいい。
陛下達と一緒に生きていたいだけなんです」
何を言っているのか、分からない部分が多いが、今は流す事にした。
エルブが言うには、壁画を読み解いたら、詳しく話すと。
ゼルシェード「エルブ…お前は…」
ロココ「?? 今話したの誰??」
ゼニス「ああ、ゼルシェードだね。この剣の中にいるんだけど…
そうだ。エルブ、この剣は…陛下のって言ってたよね」
エルブ「はい。その剣は、以前陛下が持っていたものです。
まさかゼルシェード様が中にいるとは思いませんでしたが…
また会えて嬉しいです。ゼルシェード様」
ゼルシェード「…そうだな」
知り合いなのか…。フェズ達の事も詳しかったし…
エルブ「あ、それから山頂での僕の豹変ですが…
あれは宝玉の力です。
僕ら側近格が持っているもので、使うとかなりの戦闘力を得る代わり、
凶暴になる副作用みたいなのを含んでいまして…僕はそれで…」
だから、あんなに口調が変わって、荒れていたようだ。
本当に、死ぬかと思った…。
ビオレ「壁画を見てみないと、話が見えないわね。
…そう言えば、ここに保管してる宝玉はまだ無事なのね?」
エーリカ「ええ。大丈夫です。四零士、セピア、エピナールは入れませんしね。」
なら、大丈夫かな……何か、忘れている気がするんだけど…
ブライト「とりあえずは、壁画探しに行くか。
エルブ。お前はその場所を知っているんだよな」
エルブ「はい。場所はクレイドル大陸。元ディペアード城のあった跡地です。
その先に洞窟があります。
…ただ、そこに入るための鍵が必要で、それはプラタナスさんとアリウムさんが…」
なるほど…敵が持っていて、自分達だけで今すぐ乗り込もうというわけにもいかない、と…。
アクバール「ねえ、その二人ってかつての英雄だよね? どういう事?」
ゼニス「ああ、それは…」
あの二人の今の状況を話す。憎しみに操られているような感じだと。
エーリカ「かつての英雄まで、敵なのですか…」
アクバール「敵の戦力が半端ないね……」
………ん?
サルファー「ゼニス。ここには、四零士と、セピア、エピナールが入れないのですよね…
最近、しかも半ばセピアに利用された形での敵陣への参加。
…プラタナスとアリウムも、ここに入れないん…ですか…??」
ゼニス「!? それは……!」
ドーーーンとその瞬間、爆撃が怒る。
ブライト「敵襲か!?」
アクバール「え、まさか今、言った二人が!?
エーリカちゃん! ちょっと宝玉の確認を!」
エーリカ「はい!」
エーリカが急いで部屋に向かう。
ビオレ「私達は侵入者を探すわよ!」
ゼニス「わ、わかった! 手分けしよう!」
ブライトは単独で、ゼニスとソレイユ、サルファーとビオレ、
パリスとエルブ、バレヌとロココに分かれて、広いギルドを手分けする事になった。
ソレイユ「向こうが転移できるなら意味ないよ!?」
ゼニス「まだ残っているなら、出て来い!」
ゼニスとソレイユが探したのは転移エリアの方。
ゼニス「……ここにもいない。ソレイユ、そっちはどう!?」
ソレイユ「いないよ! こっちじゃないのかな」
転移エリア一つでも結構広い。
どこかに隠れているのか、違うエリアか、もう逃げているのか。
そう思っていると…誰かが転移した気配を後ろから感じて振り返る。
プラタナス「久しぶり。いつぶり、だっけ」
ゼニス「お前ら! 何しにここに堂々と!」
アリウム「宝玉の奪取だけど? もう、セピアたちの所に送ってあるわよ」
…遅かった…忘れていた。この二人なら、乗り込めてしまう…!
アリウム「それから、宣戦布告。
…今度、イテールナ城とセイクレイ城が、手を正式に取り合うって事で、
パーティが行われるんだって。私達はそこに乗り込む」
ソレイユ「何のために!?」
………
プラタナス「僕らに全部任せたセイクレイ城が許せない。
イテールナ城は正直どうでもいいけど、四零士は全国嫌いだからね。
まとめて僕達で消そうかって話。両国が揃うパーティ、絶好の機会なんだよ」
……!!
ゼニス「…僕らに出て来いって事か。」
アリウム「私とプラタナスに勝てるのは、君達ぐらいだろうしね。
出てきたくないならそれでもいいよ。セイクレイ城とイテールナ城ごとき助けなくっても」
そんな事できるものか……はいそうですかというものか。
ゼニス「させないよ。二人にそんな事は…
目を覚まさせてやる!!」
プラタナス「それでこそ、騎士だよ。
出て来るなら気を付けてね。宝玉と大罪の力が向こうには揃っている。
後はその指輪だけ。それが奪われたら終わりだよ?」
ソレイユの、指輪……
ソレイユ「考え直す気は、無いの?」
アリウム「私達はこの世界を正す。いざとなって、生き残りたければ、
貴方達はこっちに来るしかなくなる。」
ゼニス「どういう事…?」
聞いたところで返事は分かっている。
アリウム「真実に辿り着いてみて。私達に勝てたらね。
…私達にはこの道しかないの。この感情が無ければ苦しまなかったかもしれない。
でも、この感情が無ければ、私達は今ここに…」
……どういう意味だ……。
プラタナス「君達の覚悟と、僕達の覚悟、どっちが勝つか、決めよう。」
ゼニス「僕達は負けない!」
そう言うと、プラタナスとアリウムは転移していった。
それと入れ替わるようにギルドのみんながこっちに来る。
エーリカ「お二人とも、宝玉が奪われました!」
ゼニス「知ってます。さっき、ここにプラタナスとアリウムが来ました。」
!!
ソレイユ「近々行われる城同士のパーティを攻めると宣戦布告していきました。」
サルファー「…止めなければなりませんね。
どのみち私達は彼らに勝つ必要があります」
パリス「パーティはいつですか?」
明後日…準備するとしたら明日一日しかない。
ビオレ「急を要するわね。」
エルブ「僕も行きます。信用できないかもしれませんが、手伝わせてください!」
……
ゼニス「うん、行こう。エルブ」
アクバール「準備は怠らないようにね。
まだ狙いが分からないけど、その指輪を奪われないように…」
ソレイユ「はい!」
その晩……
ゼニス「ゼルシェード」
ゼルシェード「何だ。そっちから話があるから…なんて珍しい」
ゼニス「…プラタナスとアリウムの事だ。
…あの二人の憎しみを加速させた…セピアが小細工した何か…
それを取り除く事は、この剣じゃできないのか?」
………
しばらくゼルシェードが渋る。
ゼルシェード「あるにはある、が…後悔はしないか?」
ゼニス「うん。…あるなら教えて。
憎しみに焼かれ続けるのは、辛いはずだ…彼らは、本当はすごく優しい人のはずだから…」
苦しくても、悩んでも、世界のために命を懸けられた人達なんだから。
ゼルシェード「彼らの憎悪増幅。無理矢理セピアの血を混ぜられている状態だ。
その血が、一つの能力となって、彼らに残っている。」
!? またえげつない話が…
ゼルシェード「その血が及ぼす能力を解除する術は一つある。
これをすれば彼らは落ち着き、元に戻るだろう」
ゼニス「どうやるんだ!?」
ゼルシェード「断ち切る絶望。
無理矢理植え付けられた能力を壊す力だ。
相手をこの能力で斬りつければいい。
能力を壊すから、本人にダメージを与える事はない。」
…とは言っても、弱らせないと不可能だろう。やっぱり少しの戦闘は避けられないか。
ゼニス「ありがとう、ゼルシェード。」
ゼルシェード「中々話せなくて済まない。
これが終わったら、壁画の場所で、全て話す。もう少し待ってくれ。」
ゼニス「うん、わかってるよ。じゃあ、明日は準備があるからもう寝るな」
ゼルシェード「ゼニス…どんな結果になっても、悔やむな。
…憎しみに囚われているよりは、きっと楽だろうからな…」
ゼニス「うん。そうだね」
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