月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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過去は絶望を率いて

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 44話

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イグニスの村に戻って来て、村の人に装置の破壊が終わった事を報告していると…

「あの、さっき山頂の方で強い光が起きましたけど…大丈夫でしたか?」

エルブ「っ…」

さっきのエルブが宝玉を使った時のだ。

ゼニス「はい。ちょっと…僕の魔法が暴発してしまいまして。

でも、大丈夫です。」

エルブ(…! ゼニス師匠……)

「良かったです…皆さんはもう旅を再開するのですか?」

ビオレ「ええ、私達行く所あるからね」

そうして村の外に出て、マスターに連絡を取ってみた。

アクバール「はいはい、アクバールだよ。ゼニス君久しぶりー!

どうかした??」

ああ、マスターの声だ。

ソレイユ「私達、一度ギルドに戻って、話したい事があるんですけど、

戻ってもいいですか??」

そう言った途端に、ドタバタガッシャんというような物音が端末越しに聞こえた。

パリス「だ、大丈夫なんですか…」

ゼニス「ああ、うん。マスターはいつもこんな感じ」

音が止むと、もう一度マスターが返事した。

アクバール「もちろんだよ! 帰って来て!

…話は、大事な事なのかな。なら、エーリカも呼ぶ」

ソレイユ「できたら、ロココとバレヌも呼べますか?

みんなに聞いてもらった方がいいかもしれないです」

「わかった。少し待ってて」と返事をして連絡を切る。

ビオレ「どうやってギルド行くの?」

ソレイユ「えっと、この端末を操作すれば…」

操作すると、転移魔法陣が出て来た。

サルファー「なるほど、これに乗っていくんですね」

……そう言えば…

ソレイユ「エルブは入れるの?」

確か入れないとかなんとか…だったような…

エルブ「この能力を持つ者が遮断されているので、

能力を奪われた今、僕は無問題だと思います」

なるほど……


魔法陣に乗ってギルドに戻る。

エーリカ「おかえりなさい。あら。随分とお仲間が増えたんですね。

始めまして、エーリカです。このギルドのサブマスターです」

エーリカが迎えに来てくれていた。

それと…

ブライト「元気そうだな、ゼニス」

ゼニス「ブライトさん!!!」

ブライトも来ていた。…逆に丁度良かった。

エーリカ「貴方達から連絡がきた後、ブライトさんにも連絡してきていただきました」

エーリカはこういうところ、本当に手際がいい。

ゼニス「そうだ、増えた仲間。サルファーとパリスとビオレ。

えっと…ビオレは忍びなんですけど……」

心配いらないと言う感じでほほ笑む。

エーリカ「忍びに対する考え方の改め。カテドラル王よりの宣言は、

このギルドにも届いています。心配しないでください。ところで…そちらは…」

エルブだ。

エルブ「……「元」側近。エルブ。

…ゼニス師匠の弟子です」

エーリカ「え…?」

ソレイユ「あ、あの! ここに居る時点で分かると思いますが、

エルブはあいつらを裏切って、私達を助けてくれたんです。

その結果、彼は能力を奪われて…」

しばらく困惑していたようだったが、

ソレイユとゼニスとエルブの目を見て、納得したようだった。

エーリカ「敵意は感じませんね。…わかりました。

ありがとうございます、エルブさん。彼らを助けてくれて」

エルブ「え、は、はい…」

ブライト「俺の弟子の弟子か。俺はブライト。ゼニスの師だ」

エルブ「貴方が…! あの、ゼニス師匠から話は聞いています!」

ゼニスの方を向いて変な事は言っていないな、と睨まれたので、

慌ててゼニスは否定する。


何とかエルブの事もビオレの事もどうにかなった。

ギルドのロビーに入ると、マスターとロココとバレヌがもう座っていた。

ロココ「ゼニス、ソレイユ!!」

バレヌ「本当に久しぶりだな。いつぶりだ?」

取りあえず軽く自己紹介し合って。席に着く。

アクバール「あ…うん…何か、変な感じだね。以前敵だった人がここに居るなんて…」

エルブ「すみません……」

アクバール「いや、責めてるわけじゃないよ。

ゼニス君達の話を聞いてると、君はどうにも、敵にしては優しすぎてたようだからね」

……

ゼニス「エルブ。この際だから聞くけど、僕達と敵対する気がなくなってたのは、いつから?」

エルブ「…最初から、です。ただ、迷ってて……」

バレヌ「迷ってた?」

少し言葉に悩んでから、切り出した。

エルブ「陛下のやり方は、今の人達にぶつけても仕方ない事なのに…

この世界に対して攻撃を開始しようとしている。

それに、それを仮に果たせたとしても、陛下はいない事になる。

僕は、正直目的なんてどうでも良い。この世界でもいい。

陛下達と一緒に生きていたいだけなんです」

何を言っているのか、分からない部分が多いが、今は流す事にした。

エルブが言うには、壁画を読み解いたら、詳しく話すと。

ゼルシェード「エルブ…お前は…」

ロココ「?? 今話したの誰??」

ゼニス「ああ、ゼルシェードだね。この剣の中にいるんだけど…

そうだ。エルブ、この剣は…陛下のって言ってたよね」

エルブ「はい。その剣は、以前陛下が持っていたものです。

まさかゼルシェード様が中にいるとは思いませんでしたが…

また会えて嬉しいです。ゼルシェード様」

ゼルシェード「…そうだな」

知り合いなのか…。フェズ達の事も詳しかったし…

エルブ「あ、それから山頂での僕の豹変ですが…

あれは宝玉の力です。

僕ら側近格が持っているもので、使うとかなりの戦闘力を得る代わり、

凶暴になる副作用みたいなのを含んでいまして…僕はそれで…」

だから、あんなに口調が変わって、荒れていたようだ。

本当に、死ぬかと思った…。

ビオレ「壁画を見てみないと、話が見えないわね。

…そう言えば、ここに保管してる宝玉はまだ無事なのね?」

エーリカ「ええ。大丈夫です。四零士、セピア、エピナールは入れませんしね。」

なら、大丈夫かな……何か、忘れている気がするんだけど…


ブライト「とりあえずは、壁画探しに行くか。

エルブ。お前はその場所を知っているんだよな」

エルブ「はい。場所はクレイドル大陸。元ディペアード城のあった跡地です。

その先に洞窟があります。

…ただ、そこに入るための鍵が必要で、それはプラタナスさんとアリウムさんが…」

なるほど…敵が持っていて、自分達だけで今すぐ乗り込もうというわけにもいかない、と…。

アクバール「ねえ、その二人ってかつての英雄だよね? どういう事?」

ゼニス「ああ、それは…」

あの二人の今の状況を話す。憎しみに操られているような感じだと。

エーリカ「かつての英雄まで、敵なのですか…」

アクバール「敵の戦力が半端ないね……」

………ん?

サルファー「ゼニス。ここには、四零士と、セピア、エピナールが入れないのですよね…

最近、しかも半ばセピアに利用された形での敵陣への参加。

…プラタナスとアリウムも、ここに入れないん…ですか…??」

ゼニス「!? それは……!」

ドーーーンとその瞬間、爆撃が怒る。

ブライト「敵襲か!?」

アクバール「え、まさか今、言った二人が!?

エーリカちゃん! ちょっと宝玉の確認を!」

エーリカ「はい!」

エーリカが急いで部屋に向かう。

ビオレ「私達は侵入者を探すわよ!」

ゼニス「わ、わかった! 手分けしよう!」


ブライトは単独で、ゼニスとソレイユ、サルファーとビオレ、

パリスとエルブ、バレヌとロココに分かれて、広いギルドを手分けする事になった。

ソレイユ「向こうが転移できるなら意味ないよ!?」

ゼニス「まだ残っているなら、出て来い!」

ゼニスとソレイユが探したのは転移エリアの方。

ゼニス「……ここにもいない。ソレイユ、そっちはどう!?」

ソレイユ「いないよ! こっちじゃないのかな」

転移エリア一つでも結構広い。

どこかに隠れているのか、違うエリアか、もう逃げているのか。

そう思っていると…誰かが転移した気配を後ろから感じて振り返る。

プラタナス「久しぶり。いつぶり、だっけ」

ゼニス「お前ら! 何しにここに堂々と!」

アリウム「宝玉の奪取だけど? もう、セピアたちの所に送ってあるわよ」

…遅かった…忘れていた。この二人なら、乗り込めてしまう…!

アリウム「それから、宣戦布告。

…今度、イテールナ城とセイクレイ城が、手を正式に取り合うって事で、

パーティが行われるんだって。私達はそこに乗り込む」

ソレイユ「何のために!?」

………

プラタナス「僕らに全部任せたセイクレイ城が許せない。

イテールナ城は正直どうでもいいけど、四零士は全国嫌いだからね。

まとめて僕達で消そうかって話。両国が揃うパーティ、絶好の機会なんだよ」

……!!

ゼニス「…僕らに出て来いって事か。」

アリウム「私とプラタナスに勝てるのは、君達ぐらいだろうしね。

出てきたくないならそれでもいいよ。セイクレイ城とイテールナ城ごとき助けなくっても」

そんな事できるものか……はいそうですかというものか。

ゼニス「させないよ。二人にそんな事は…

目を覚まさせてやる!!」

プラタナス「それでこそ、騎士だよ。

出て来るなら気を付けてね。宝玉と大罪の力が向こうには揃っている。

後はその指輪だけ。それが奪われたら終わりだよ?」

ソレイユの、指輪……

ソレイユ「考え直す気は、無いの?」

アリウム「私達はこの世界を正す。いざとなって、生き残りたければ、

貴方達はこっちに来るしかなくなる。」

ゼニス「どういう事…?」

聞いたところで返事は分かっている。

アリウム「真実に辿り着いてみて。私達に勝てたらね。

…私達にはこの道しかないの。この感情が無ければ苦しまなかったかもしれない。

でも、この感情が無ければ、私達は今ここに…」

……どういう意味だ……。

プラタナス「君達の覚悟と、僕達の覚悟、どっちが勝つか、決めよう。」

ゼニス「僕達は負けない!」

そう言うと、プラタナスとアリウムは転移していった。


それと入れ替わるようにギルドのみんながこっちに来る。

エーリカ「お二人とも、宝玉が奪われました!」

ゼニス「知ってます。さっき、ここにプラタナスとアリウムが来ました。」

!!

ソレイユ「近々行われる城同士のパーティを攻めると宣戦布告していきました。」

サルファー「…止めなければなりませんね。

どのみち私達は彼らに勝つ必要があります」

パリス「パーティはいつですか?」

明後日…準備するとしたら明日一日しかない。

ビオレ「急を要するわね。」

エルブ「僕も行きます。信用できないかもしれませんが、手伝わせてください!」

……

ゼニス「うん、行こう。エルブ」

アクバール「準備は怠らないようにね。

まだ狙いが分からないけど、その指輪を奪われないように…」

ソレイユ「はい!」


その晩……

ゼニス「ゼルシェード」

ゼルシェード「何だ。そっちから話があるから…なんて珍しい」

ゼニス「…プラタナスとアリウムの事だ。

…あの二人の憎しみを加速させた…セピアが小細工した何か…

それを取り除く事は、この剣じゃできないのか?」

………

しばらくゼルシェードが渋る。

ゼルシェード「あるにはある、が…後悔はしないか?」

ゼニス「うん。…あるなら教えて。

憎しみに焼かれ続けるのは、辛いはずだ…彼らは、本当はすごく優しい人のはずだから…」

苦しくても、悩んでも、世界のために命を懸けられた人達なんだから。

ゼルシェード「彼らの憎悪増幅。無理矢理セピアの血を混ぜられている状態だ。

その血が、一つの能力となって、彼らに残っている。」

!? またえげつない話が…

ゼルシェード「その血が及ぼす能力を解除する術は一つある。

これをすれば彼らは落ち着き、元に戻るだろう」

ゼニス「どうやるんだ!?」

ゼルシェード「断ち切る絶望アブシディレ・ディスペル

無理矢理植え付けられた能力を壊す力だ。

相手をこの能力で斬りつければいい。

能力を壊すから、本人にダメージを与える事はない。」

…とは言っても、弱らせないと不可能だろう。やっぱり少しの戦闘は避けられないか。

ゼニス「ありがとう、ゼルシェード。」

ゼルシェード「中々話せなくて済まない。

これが終わったら、壁画の場所で、全て話す。もう少し待ってくれ。」

ゼニス「うん、わかってるよ。じゃあ、明日は準備があるからもう寝るな」

ゼルシェード「ゼニス…どんな結果になっても、悔やむな。

…憎しみに囚われているよりは、きっと楽だろうからな…」

ゼニス「うん。そうだね」
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