月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 41話

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レクイエム「これねー…

パパが作った私のクローンナンダァ♪」

クローン…複製体だ。このレクイエムという少女のクローン…なのか?

ビオレ「待って、パパって…」

レクイエム「ここの研究所の科学者。カイムって名前の人」

ブローディア「カイム…!」

ブローディアとレオノティスはアイリスから聞いていた。

ジェイドとの戦闘時、化け物化したジェイドから聞こえてきた声。

それがカイムと名乗っていたと。

レクイエム「まー、私もクローンなんだけどぉ…。

元の人物のクローンが私。その私のクローンがこの子達。」

ゼニス「お前も…クローン!?」

一体誰のだろうか。

それにしても、先ほどからレクイエムのクローンと言われている三体は、

「うー」「あー」など言うだけで、会話が無い。

言語能力は無いようだ。

レクイエム「クローンはクローンでも失敗作だからね。

私が指示しないと何もしないし」

そう言うと、クローンの内の一体に近付いて…

レクイエム「ほら。お手」

クローンはそれに従う。

レクイエム「三回回ってワン♪」

それにも従う、が…

クローン「あう」

レクイエム「もう、あうじゃなよ。ワン!!」

クローン「あう」

やっぱり言語能力は無い。というか、何だろうか、これだけなのに妙な恐怖がある。

レクイエム「まだまだ調節いるかなぁ。と、まあ分かった?

この子達は私に忠実なの♪」

…………

レオノティス「一つ、答えろ。精霊を使って何をしようとしている?」

レクイエム「魔物と人間の融合は後々怖いし、

魔物と魔物の融合は弱い。じゃあ、精霊と魔物を融合したら、どうなるかなってね」

サルファー「人間を融合材料には、もうしていないのですか?」

レクイエム「してないけど、融合体の実験のために、人里に送り込んだりしてるからねー。

何人かは死んじゃった。きゃはっ」

フクシアとアスターと一緒に行った、あの海岸にいたのもそういう理由か。

海に入った人間を的にして攻撃系の実験を…。

パリス「罪悪感とか、無いんですか…!?」

レクイエム「なんで? ゴミはどれだけ居たってゴミでしょ? あはははっ!!」


ゼルシェード「ゼニス」

ゼニス「あ、どうした急に。」

ゼルシェード「無容赦だ。やってくれ…この組織を、終わらせてくれ!」

ゼルシェードが頭の中で急に訴えかけてきた。

ゼニス「ゼルシェード……? ……わかった!」


剣を構えてクローンの方を見据える。

ゼニス「情けの必要はない。そう言ってる。」

「そう言ってる」それだけでブローディアとレオノティスとレクイエム以外は

誰が言ったのか察しがついた。

ブローディア「ゼニス…?」

ソレイユ「ブローディアとレオノティスはカルビとテイルを助けることを最優先して!」

ビオレ「私もそっちに回るわ。救出したらゼニス達に混ざる!」

レクイエム「ふーん。…くすっ。私の「イモウト達」こいつら殺しちゃって♪」

レクイエムがそう指示すると、「あー」「うー」など発しながら、

こちらに向かって武器を構えてきた。


パリス「走ってください! ビオレさん、ブローディアさん、レオノティスさん!」

その声で三人が走り出す。

けど、クローンは動かない。

「こいつらを殺せ」と言われたので、眼前に立ったゼニス達しか見ていない。

レクイエム「ああもう! 役立たず!」

代わりにレクイエムが三人の方に行こうとする。

ゼニス「させるか!! 時双波!!」

急いで間に割って入ったゼニスが、レクイエムを壁際に弾き飛ばす。

レクイエム「っ! いったいなぁ…!」

ゼニス「ソレイユ、サルファー、パリス! クローン三体を頼む!

こっちは任せてくれ!」

正直心配だった。けど…今はそうするしかない。

ソレイユ「わかった!」


ゼニス側。

レクイエム「溶け壊れろ…アビスフレイム!」

ゼニス「っ! あつっ!?」

間一髪で避けたが、当たれば燃えるどころか言葉の通り溶け死にかねない。

レクイエム「私は高等魔法の使い手だよ? 暗黒魔法も究極魔法も。

なんせ…のクローンだからね…」

? 何か言ったが聞き取れなかった。かなりの小声で言ったから。

ゼニス「だからといって、負けられない! 五連刃!」

レクイエム「無限に沈め…インフィニロウ!!」

ゼニスの剣技とレクイエムの魔法が衝突する。

ゼルシェード「ぐっ…!?」

ゼニス「…!? ゼルシェード!?」

ゼルシェード「気にするな、魔法を防ぐのを辞めるなよ!?」

しばらく防いで、ようやく魔法が消える。

ゼニス「く…魔法の威力が…けど…」

レクイエム「っ…傷つけられるなんて、思わなかった…」

衝撃によるダメージを少しはレクイエムに与えていた。

レクイエム「いいよ…これでも耐えられる!?

深淵に還れ…メギド!!」

ゼニス「!! 無に帰せ…流れを変えろ…無白流変斬!」


ソレイユ、サルファー、パリス側。

ソレイユ「炎閃脚!!」

サルファー「水圧よ斬れ…アクアエッジ!」

パリス「彼の者に枷を…セイントクロス!」

みんな同じ見た目なので、もう誰が誰を担当するか、なんて考えていられない。

とにかく倒せば良し。けど…

ソレイユ「うっ…!」

相手の攻撃は、何の技でもない普通の攻撃なのに、威力がおかしい。

サルファー「クローン…しかも意志を持たぬ人形状態の奴らです。

力の加減、なんて物が無いのでしょう。そして、人の限界なんて物も持ち合わせていない!」

パリス「癒せ…エードヒール!」

攻撃をくらったソレイユを回復する。

ソレイユ「ありがと…」

向こうからまともな言葉は飛んでこない。でもその代わり。

パリス「今、そこの傷が回復しましたよ!?」

サルファー「自然回復!? しかも、かなり強力です!」

それを上回る攻撃が叩きこめないと勝てる見込みがない。

ソレイユ「急所狙う!? それしかないんじゃない!?」

パリス「き、急所ってどこですか!?」

急所…急所……

それを探しながらも、相手の攻撃は避けないといけない。

ソレイユ「やあっ!! 回火裂舞!!」

ソレイユが斬り込んだ際に、勢い余って一瞬背面に回った。

ソレイユ「!!」

(傷……)

サルファーとパリスの方へ戻りすぐにそれを伝えた。

パリス「背中に傷…ですか?」

サルファー「ありえますね…イチかバチか、背に攻撃が当てられれば…」

中々背に回れる話ではないのだが…


ビオレ、ブローディア、レオノティス側。

ビオレ「どうやってこのケース開けるの!?」

レオノティス「ここに装置がある! …ロック解除…待て、解析する」

ブローディア「これ、壊せないのかな!?」

そうは思うが、やろうとは思わない。中にいるカルビたちまで危険になったら笑えない。

カイ「精霊を使うなんて言語道断です! 何やってるんですか、ここは!!」

その時ブローディアの後ろから声が。

今クローンと戦っている三人だ。


パリス「背中に傷…ですか?」

サルファー「ありえますね…イチかバチか、背に攻撃が当てられれば…」


ブローディア(傷……?)

振り返る。クローンの背には確かに傷がある。三体とも。

その時…

レオノティス「よし、解除!」

その声と同時にカプセルのようなものが開く。

カルビ「ブローディア!」

テイル「レオ!!」

飛びついてくる。

ブローディア「よかった。無事で…!」

レオノティス「心配かけるな…!」

でも、そんな事を話している場合じゃない。

ビオレ「二人も聞いた? さっきパリスたちが話してたこと」

レオノティス「ああ。背の傷、だろう」

どうやらビオレも、レオノティスも聞いていたようだ。

ブローディア「私達なら、後ろから狙えるよ」

三対三。数も合う。

ブローディア「轟け神の怒り…ヴォルトレイ!」

レオノティス「狂弾蒼義!」

ビオレ「風殺剣!!」

それぞれその傷に背後から奇襲をしかける。

その部分に攻撃をくらったクローン三体は、見事に再起不能。

ソレイユ「三人とも!!」

サルファー「助かりました…ありがとうございます」


でも…安心したのもつかの間だった。

ゼニス「ぐあっ!?」

ゼニスがこっちに吹っ飛ばされてきた。

ソレイユ「ゼニス!?」

パリス「今、何が…!?」

レクイエム「やっぱり、私の究極魔法、メギドは防ぎきれなかったかぁ。

奥義まで使ったのにね?」

ゼニス「っ…ぐ…」

レオノティス「おい、動くな、傷が!」

それでもまだ立ち向かおうとしてしまうゼニスを必死に止める。

サルファー「無理はしない約束でした。ここは退きましょう!」

レクイエム「逃がすと思ってる? 馬鹿じゃ…」

その時…

???「下がって!!」

目の前に転移して来たのは、サラテリだった。

ゼニス「サラ…テリ……?」

サラテリ「大丈夫…じゃないね。ここはあたしに任せて」

パリス「どうして、あなたが…」

こっちを振り返って微笑む。

サラテリ「あたしはゼニス君が好きなの。ソレイユとは友達になりたいし♪」

ソレイユ「サラテリ……」

それだけ言うと、またレクイエムの方を向く。

サラテリ「久しぶり。いつぶりだっけ? あの時はフェズも一緒だったけど」

レクイエム「そうだね。…ずっと隠れてたの?」

サラテリ「この子達が戦ってくれた間に私の力は溜まった。

多分、今日逃げるのはあんたの方だよ。」

サラテリが剣を前に構えた。

サラテリ「勝利の光ルクス・ヴィクトーリア!」

レクイエム「!!!」

閃光の直後にはもうレクイエムはいなかった。

ビオレ「倒した?」

サラテリ「ううん、逃げたね。まあ賢いと思うよ。

今あたしが望んだ勝利は、相手の死だったから。

さてと……」

自分達の方に歩いて来るので警戒したが、サラテリはそのまま武器を収めた。

ブローディア「どういうつもり?」

サラテリ「今日は戦いに来たんじゃないよ。

あいつを止めに来ただけ。あわよくば倒したかったけど。」

ゼニス「どうして…助けてくれた…?」

サラテリ「さっき言った理由とー、あいつは、この研究所は…

あたし達にも敵なんだよ。この研究をそそのかした女神が許せない。」

まるで、その女神を倒す事が可能かのような言い分……

サラテリ「ゼニス君……この剣やっぱり…

…これ、剣にヒビが入ってる…直るかな…

あの方がいれば、直ると思うんだけどな……」

ソレイユ「誰の事?」

サラテリ「…指輪……そうだなぁ、剣を直したかったら、指輪をかざしてみて。

もし協力してくれたら、直るかも」

何のことを言っているのか分からなかったが、聞く間もなく、

サラテリ「町に転移させてあげる。できるだけここから遠くがいい。

またね、ゼニス君、ソレイユ♪」

ゼニス「待っ…!!」

呼び止める声むなしく、全員転移させられてしまった。


サラテリ「……あいつがいなければ…何も狂わずに済んだのに…

でも、こうじゃなきゃ、ゼニス君とソレイユには会えなかったんだよね…

あーあ…また探さなきゃ。あのお方はどこをほっつき歩いてるのかなー?」

そう呟いて、サラテリも自分達の本拠に帰って行った。
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