月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 34話

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……

夕焼けの空。いつもの夢の中。

ゼニス「ゼルシェード…」

自分が目を覚ました時にはすでにいた。

いつも目を覚ましてから急に現れるのだけど。

ゼニス「今日、早いな」

ゼルシェード「お前が目を開けるのが遅かったんだ」

どちらかというと出て来るタイミングはゼルシェードの気紛れな気がする。

ゼニス「で、話って?

属性変換エレメント・クロスのやり方なら、あの時で理解できてるよ」

ゼルシェード「まあ。それはいい。ただ、一つ言うなら…

このメンバーだと属性に偏りがある。もし弱点を誰も突けない敵が出たら、

しばらくはお前の属性変換エレメント・クロスが要になるだろうな。」

ゼルシェードの言葉に違和感を持つ。「しばらく」?

ゼニス「しばらくってどういう事?」

ゼルシェード「お前がもう少し、この剣の力を扱えるようになったら、

もしかしたら他の奴らにも、一つずつぐらい属性を追加できるかもしれん」

そこまでできるのか!? 

普通、属性は一人につき二種類が限界。

特殊属性は持つ事ができる人が限られるほどで、

自分のように特殊属性を運よく持てた場合、

普通ならその一種類しか持てない。

だから自分は特殊属性「無属性」一個。

まあ、それは置いておいて、自分の仲間はみんな、

属性を二個持っている。ゼルシェードが言うには、

三個目を持てるようになるかもしれないという話だ。

ゼルシェード「まだ、できないからな。

もっと使いこなせるようになれ」

ゼニス「わ、わかった」

返事をすると、ゼルシェードが今度は別の事を話してきた。

ゼルシェード「…後は、奥義の事だ。サルファーはそこまで疲れないのに、

お前が奥義を使うと、いつも酷い疲労が起きる。それは魔力が一気に減るせいだ」

ゼニス「サルファーは、そんなに減ってないのか?」

ゼルシェードがうなずく。

ゼルシェード「いつもお前は剣の能力を使ってから奥義を使うから、

そのせいだと、最初は思っていたが、最近それとは別の原因が見えた。」

ゼニス「なんなんだ?」

ゼルシェード「…剣の能力使用に対して間髪おかずに奥義使用。

そこに加えて…奥義を使った時になぜか、万等属性の魔力まで、放出されている」

え……?

「万等属性」特殊属性の一つ。

まだ得体の知れない属性だ。それが何?

自分から放出されている? 奥義を使った時に?

ゼルシェード「…念のため、確認するぞ。お前は、「無属性」なんだよな?」

ゼニス「そうだよ。最初からそうなんだから。昔から…あっ!?」

最初っていつの事だ? 昔っていつの事だ?

自分は記憶喪失なんだ。いつから無属性だった?

もしかして、記憶をなくす前に万等属性を持っていたとか…

ゼルシェード「言っておくが、この剣が万等属性なわけではないからな」

ゼニス「自分から、本当に…?」

ゼルシェード「記憶をなくして、万等属性が使える事を忘れたのかもしれないな…」

いや、でも…と切り返す。

ゼニス「特殊属性は、「無属性なら無属性だけ」「魔属性なら魔属性だけ」って、

1つしか持てないはず、だよ…」

ゼルシェード「そうだな。すまない、俺もまだ分からなくてな…

…ただ、」

ゼルシェードが何か言おうとして口を閉じる。

ゼルシェード「なんでもない。また今度話す。お前の目が覚める」

ゼニス「ちょっと、待って!?」

ゼルシェード「早く壁画の、古代文字を…捜せ。

真実が駆ける事なく記されているものがどこかにあるはずだ。

それを読み解いたあとに、全て教えよう」


それを最後にゼニスは目を覚ました。

朝だ。

ゼニス「…ねえ、ゼルシェード」

ゼルシェード「…あの話は、まだ他の者には話すなよ。」

まあ、確かに今話しても混乱させるだけか。

自分でも混乱しているんだから。

ゼニス「あ、でも、古代文字の事は話してもいいよね」

ゼルシェード「ああ、それは頼む」


宿屋のロビーに降りる。

みんなは揃っ…てない。ビオレがいない。

ゼニス「ビオレは?」

ソレイユ「里に入る準備ーって言ってたよ。」

サルファー「隠れ里ですから、開くために色々あるのでしょう。

すぐ戻ると言っていましたけど…」

そんな話をしていると、ビオレが戻って来た。

パリス「あ、お帰りなさい…」

ビオレ「ただいま。あ、ゼニスも起きたのね。

里には入れるよ。だから、準備ができたらもう行こうと思うけど…」

ゼニス「あ、ちょっと待って。実は話したい事が」


先ほどゼルシェードから聞いた、真実が全て記された壁画を探してくれという事を伝えた。

それ以外は、言われたとおり言っていない。

ソレイユ「色んな遺跡で見た古代文字が全部繋がっているものって事?」

サルファー「あるいは、それ以外にも、載っているかもしれませんね…。

それを探せと?」

ゼニス「ああ。というか、もうみんなに声が聞こえるんだから自分で話せばいいのに」

ゼルシェードは無言。え? 寝てるのか?

ゼルシェード「リーダーだろう。お前が伝えろ」

起きてた。というか、自分はリーダーだったのか、と今さら思う。

パリス「今は…まだ当てがありませんね…

やっぱりビオレさんの故郷に行きましょうか…」

ビオレ「そうね。町を出て西に少し行ったら、

小さな洞穴があるわ。そこに行って」

ゼニス「了解。じゃあ、行こうか」


ソリスの町を出て西に向かうと、そう遠くないうちに洞穴が見えてきた。

中に入るが、入り口らしきものは何も見えない。

ソレイユ「ここ…なの? 入口見えないけど…」

ビオレ「当然でしょ。入口なんてあったら誰でも入れちゃう」

本当にただ短い空洞になっている洞穴の壁まで歩くと、

ビオレがまが玉を取り出し、かざす。

ビオレ「我、闇の者。悪しき「影」を討つ、「陰」の者。」

そう言うとまが玉が光り、魔法陣が現れた。

サルファー「この魔法陣の先、ですか?」

ビオレ「そう。その、中で色々言われても、反論はしないで。

私が対処するから」

ゼニス「…分かった」

この中で外の世界の人間があれこれ反発しても印象を悪くするだけだろう。

大人しくビオレの言う通りにしようと思う。


中に入ると、一気に風貌が変わり、異国のような感じがする。

パリス「あ…これって、サクラ、ですか? 本で見たのと、同じです…」

ビオレ「ええ。それよ。綺麗でしょ。私もこれ好きなの」

辺りはサクラの木が多くあり、とてもきれいな光景だった。

そこへ一人の男性。

「び、ビオレ!? そ、その者達は…入れたのですか、外界の者を…!?」

その声をビオレが静かに止める。

ビオレ「ここも、向こうも、異界みたいに言わないで。」

「し、しかし…」

ビオレ「姉様に会わせて。話があるの」

それを聞いて驚いた顔をする。

「び、ビオレが姉に会うなんて、いつぶりだ!?

会いたくないんじゃなかったのか…?」

会いたくない…? 仲、悪いのだろうか。

ため息をつきながらもビオレは答えた。

ビオレ「この状況を変えるには姉様に会う必要がある。本当なら会いたくないわよ。

けど、必要なの。外界と繋がりを持つためにも、あの魔物を倒すためにも」

「外界と…!? い、いや、それよりも、あの魔物を倒す!?」

ビオレ「彼らなら、やってくれる」

ビオレがこちらを向いたので、ぺこりと小さく会釈する。

「…彼らは…一体…」

ビオレ「私の大事な仲間よ。」

ビオレと話をしていた男性が、ゼニス達の方へ歩いてくる。

「…できる、のか?」

ゼニス「…ビオレの信用を裏切る真似はしません」

ゼニスの目を見て、その言葉を聞いて、納得、してくれたのだろうか。

「…分かった、お前達に頼もう。…ビオレ」

ビオレに再度向き直ると、

「俺はここを通そう。が、お前の姉は、長は、どういうか知らんぞ」

ビオレ「言い負ける気は無いわ。絶対に認めさせてやる。

たとえ、姉妹の縁を切られてもね」

そう言うと、道を開けてくれた彼の横をサラッと通り過ぎていく。

ぽかんとしていると、ビオレが振り返り、

ビオレ「みんな! 付いて来ていいから、来て」

ソレイユ「え!? う、うん!」

サルファー「で、ではお邪魔しますね…」

パリス「い、いいんでしょうか…」

……

ゼニス「……あの」

通り過ぎる前に門番を務めていた彼に声をかけてみる。

ゼニス「ビオレの姉って、そんなに…」

「……厳しい節は、ありますかね…ビオレもその姉…我が里の長も、

早くに親を亡くし、ビオレの姉が長についたのですよ。

だから、生温い感情を無理に捨てたと言いますか…でも、根はやさしい人、ですよ」

先を歩くビオレを見やる。

ゼニス(ビオレ…姉と縁を切る覚悟を…唯一の肉親と縁を切る覚悟をしてまで…)

ゼルシェード(ビオレ…平気か? 

姉か自分のどちらかが死ぬ覚悟さえしているんじゃないのか…?)

色々考えていたが、話し込んでいる間に結構距離を離されてしまったので、

慌てて追いかけて行った。
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