月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 32話

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森の中、グラファイトと対峙してしまったサルファー達は、

ゼニスとソレイユがいない状態で、戦闘を開始する事になっていた。

ビオレ「嵐裂!!」

サルファー「シルフィアロー!」

技を連続で仕掛けるが、鎌に弾かれる。

グラファイト「遅いよ…! 亜水鎌!!」

パリス「弾けよ…バブルスプラッシュ!」

パリスの魔法もグラファイトの技の前に相殺される。

グラファイト「水属性に水属性で挑んでも、馬鹿を見るだけだけど」

グラファイトも水属性。

こちらは闇属性・風属性のビオレ、風属性・水属性のサルファー、光属性・水属性のパリス。

二種類ずつ属性を持っているとはいえ、水属性を持っている人が二人もいる。

相性が悪い。

ビオレ「もう、厄介ね! 女みたいな顔して!」

…禁句を踏んだ。

グラファイト「は? …もっかい言ってみな、よ!?」

グラファイトの蹴りがビオレに向かうが、間一髪で避ける。

喰らっていたら、骨の一本ぐらい持って行かれていたかもしれない。

ビオレ「あ、っぶな!?」

グラファイト「ちっ…どいつもこいつも女女って…」

小声でぶつぶつ言い始めた。

……

サルファー「パリス! 視界の遮断を!」

パリス「は、はい! 視界を閉ざせ…フラッシュスクリーン!」

パリスの魔法で相手の視界は恐らく閉ざされている。

サルファー「今のうちに…!」

サルファーがシールアローを撃ち込んで、魔法も封じようとしたが、

それより先にグラファイトの魔法が早かった。

グラファイト「アクアサーペント!」

撃たれた! でも、当たらないはず。なのに…

パリス「きゃ!?」

ビオレ「っあ!?」

サルファー「うっ…!」

全員に直撃。視界は閉ざされている。

グラファイト「この魔法ね。追尾するんだよ。

暗かろうが、曇っていようがお構いなく、敵対相手を追い続ける」

追尾型の魔法…それは、魔法が封じられていないと、絶対に防ぐのは無理だ。

グラファイト「…どうする? というか、能力使うまででもないよね。

…まあ、使った方が確実だし、使うけど…」

グラファイトの能力…何だ…

ジューンに病を与えたのなら、病に関わるもの…?

使われた事のない三人には、推測の域を出なかったが、

何となく、そんな感じはしていた。


グラファイト「……苦しむパーティ・…」

まずい、使われる。

そう思った時だった。

ゼニス「歪みの阻止アレスト・スキル!」

カンっと、グラファイトの鎌の辺りで音が鳴る。

グラファイト「っ!?」

サルファー「ゼニス! ソレイユ!」

ソレイユ「みんな! 無事!?」

無事、とは言えないかもしれない。が、

戦闘不能というほどではない。

グラファイト「ゼニス……!」

ゼニス「グラファイト。…一つ、聞いていいかな?」

聞きたい事、それはシーサーペントの指揮者が誰なのか。

ゼニス「シーサーペントを指揮しているのは、お前か?」

グラファイト「何でそう思う?」

ゼニス「…セピアは自分の使い魔を持っているから除外だ。

シーサーペントは元々いたのに、最近急に指揮されたような動きをするようになった。

…そして、お前が今ここに居る。

何より、お前の能力「苦しむ獣パーティ・ベスティア」。

…獣を…いや、人間以外の生物を操る力を持っている証拠じゃないのか?」

グラファイトは無言。それこそが、「そうだ」と言っているような感じがした。

そして、その予想は見事当たっていて…

グラファイト「そう。フェズは生命力を奪う以外に、攻撃もできただろ?

僕のもそういう感じで別の使い方があってさ。

相手に病を付与する以外に、生命体を操る使い道がある。

シーサーペントはそれで操ったんだ。お前達をここに引きずり込むために」

ソレイユ「やっぱり…!」

おおかた、ここから出られないようにする、ここで始末する、あわよくば溺死、

なんて考えていたんだろう。

ビオレ「二人とも! 私達も加勢する、から!」

ソレイユ「みんなは休んでいて、私達が…!」

サルファー「いえ、ゼニス、ソレイユ。ビオレも…下がっていてください。」

サルファーが制止して立ち上がる。

パリス「サルファーさん…わた、私も、手伝わせてください…」

少し悩んだが、二人の意志を汲もうと考え、

ゼニス「分かった。けど、危なくなったら加わるから」

サルファー「歪みの阻止アレスト・スキルが発動しています。

私達でも、平気ですよ…」


グラファイト「…ゼニスみたいにまだ奥義も使えないくせに、何する気?

勇気と無謀は違うよ?」

サルファー「無謀かどうかは、その身で受けてから判断してください…!」

グラファイト「水神刈り!!」

サルファーの言葉が切れた瞬間に攻撃を繰り出してくる。

正直言って、遠距離二人はそれを受け止めるための剣はないので躱すしかない。

邪魔になるといけないので、ゼニス達は少し距離を取る。

一応、すぐに飛び掛かれる位置で。

サルファー「風裂弓!」

パリス「彼の者に枷を…セイントクロス!」

グラファイト「ぐっ…!?」

グラファイトはサルファーの矢こそ弾いたものの、

パリスの魔法は直撃。

グラファイト「この程度…!」

でも、サルファーとパリスの方が早い!

サルファー「パリス、光を!」

パリス「任せて、ください…!」

サルファーが空に向かってサルファーがシルフィアローを放ち、

それに向かってパリスがセイントクロスを唱えた。

サルファー・パリス「貫け! セイクリッドシルフィ!」

光と風を纏った矢はグラファイトのもとへ落下する。

その眩しさに、ゼニス達も目を覆う。

ゼニス「今、のは…!?」

ビオレ「心が通っていないと、できない、連携技…!」

ソレイユ「すごい…!」

でも、グラファイトはぎりぎりで躱したのか、

肩から出血しているだけで終わっている。

グラファイト「やって、くれたな…」

サルファー「パリス、あなたはもう下がってください。あとは私が…」

パリス「サルファーさん…」

言われたとおり、パリスが一歩下がる。

それと同時に…

グラファイト「水刃鎌没抄!」

サルファー「風と水に…裂けろ弾けよ…風裂水泡弓!!」

鎌の衝撃波とサルファーの一本の矢がぶつかり合った。

普通に考えれば、矢の方が折れるだろう、けど、折れない。

サルファー「………!」

グラファイト「嘘、だろ!?」

ピシャンと水が割かれたような音がした後、見ると、

グラファイトの怪我をした肩丁度の所に、サルファーの矢が刺さっている。

ソレイユ「…サルファーの技が勝った…?」

グラファイト「…くっ、この…っ」

でも、片腕の負傷は鎌を振り続けるのにも影響が出る。

サルファー「どうしますか、まだ続けますか?」

少しの沈黙のあと、静かに答えた。

グラファイト「…僕は退くよ…けど、シーサーペントの指揮は解除しない。

シーサーペントに喰い殺されればいい…じゃあね」

そう言って転移で立ち去る。

パリス「サルファー! 大丈夫ですか?」

ソレイユ「とにかく、治療を! 光よ癒せ…エーテルキュア!」

パリス「光の雨を…エードヒーリア!」

ソレイユとパリスの回復魔法で、全員の傷は癒えた。

ゼニス「…サルファー」

サルファー「どうやら私も奥義習得できたようです。

意志の力とは、強い者ですね。パリスとジューン様の事を考えたら、自然とできましたよ」

前、サルファーは自分の事を、執事としては失格なんてことを言っていたが、

全然執事の鑑ではないだろうか…少なくとも、ジューンとパリスにとっては。

ビオレ「少し休んだら浜辺に移動しましょ。

シーサーペントを倒して、ここを出ないと」

ゼニス「ああ。ここに辿り着いてしまった外界の人達も外に出してあげないとね」

そんな話をしていると、ゼルシェードが割って入ってきた。

ゼルシェード「サルファー。…疲れていないか? ゼニスみたいに、気を失うほどの疲れだ」

サルファー「いえ、そこまでは無いですよ。

魔力の差でしょうか…ゼニスの奥義が魔力の消費量が多い感じでは?」

ゼルシェード「………そうか」

納得しているが、どこか気にしているようだ。

そこへ、ゼニスにだけ聞こえるように頭の中に語り掛けてきた。


ゼルシェード「ゼニス、後で話がある。ここを出たら、話す時間をくれ」

こうなると、他者には聞かれたくないのだろうから、こっちも声には出さずに答える。

ゼニス「わかったよ。後で時間つくる」

ゼルシェード「…頼む」


ゼルシェード(それにしても、グラファイト…変わってしまったな…)
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