月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 31話

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ゼニスとソレイユが目を覚ましたころ、

村を抜けた反対側にいたサルファー、ビオレ、パリスは…

サルファー「……参りましたね…」

ビオレ「目を覚ましたら、異界みたいなところ…というか、異界で…」

パリス「帰るには、さっきの魔物、シーサーペントを倒さないといけないんですよね…」

色々事情を聞き終わり、これからどうするかを考えていた。

ビオレ「まずはソレイユとゼニスよ。ここに来てるのよね?」

サルファー「…村の方が言うには、そうですね。

…しかし気になります。シーサーペントに指揮者がいる…という話」

パリス「やっぱり…四零士側の誰かでしょうか…?」

そうなると、もしここに乗り込んできた場合が危険すぎる。

早めにゼニスとソレイユと合流しなければ。

ビオレ「ここの先が反対側の村に続いているのよね。

えっと、こっちの村がヴィデ。向こうがミステリオって村よね」

パリス「じゃあ…取りあえずそちらの村へ行ってみますか?

道中で会えるかもしれませんし…」

ここでぼーっとしていても仕方ない。

森は一本道だと聞いているし、取りあえず、ここから移動してみる事に。


サルファー「水月弓!」

ビオレ「巻き上がれ…トルネード!」

魔物はそうでもない。少なくとも四零士に比べたら。

サルファー「…一本道とはいえ、結構遠いですね。

……パリス?」

立ち止まっているパリスに声をかける。

パリス「え、あ、あの…ううん、何でもないです、行きましょう」

ビオレ「……ねえ、パリス」

ビオレがサルファーの後を追うパリスを呼び止めた。

パリス「は、はい?」

ビオレ「…意見あるなら、言ったら?

色々、遠慮がちというか、誰かに付いて行ってばかりに見えるんだけど…」

それはサルファーも思っていたが、強く言えなかった事で…

サルファー「確かに、パリスは自分の意見を押し殺しがちですが…」

パリス「ごめんなさい…でも、うん、と…

私は、……」


『意見なんてお前は持たなくていいんだ』

『言われた事にだけ従っていればいいの。

貴方は私達の…』


パリス「……お人形…なん、で…」

その様子を見てサルファーが慌てる。

サルファー「いけない! パリス、パリス!! 聞こえますか!?」

パリス「ごめ、ごめんなさい、お母様、お父様…!」

発作に似た症状がパリスに起きた。

今までそんな事はなかったのだけれど…

ビオレ「サルファー! パリス、どうしたの!?」

サルファー「すみません、ビオレは悪くないんです。

…彼女は両親に、自分達に逆らわない人形として扱われました。

…そのせいで、自分の意志を告げにくく育ってしまった…。

意志を持てど、口に出す事をためらうようになってしまったんです…」


数分息切れのような状態が続き、やっと落ち着いた。

パリス「……サルファーさん…ビオレさん…」

ビオレ「大丈夫? あの、ごめん。何も知らなくて…」

悪くない、とは言われたが、それでも申し訳なさがあって、謝った。

パリス「良いん、です…ビオレさんの言う通りでしたから…」

ゆっくりと立ち上がる。

ビオレ「でもさ、パリス。お嬢様だとか、家柄とか関係なく、

私は、人の人形になる事なんて無いと思う。…例えばさ。

…好きな人と生きるために、家を飛び出したお姫様、何ていうのもいるんじゃないかな」

あくまで仮定の話だけど、と告げるが、パリスは嬉しかったようで…

パリス「ありがとうございます……好きな人、じゃ、無いですけど…

…仲間や友達と生きたい、で、飛び出しても、いいんでしょうか…?」

本当なら家出なんて駄目だろう。認めるわけにはいかないんだろう。

けれど…

サルファー「貴方は道具でも人形でもないんです。

自分の道は、自分で決めていいんです。もし話をして聞いてくれないなら、

もしもあなたを縛り付けて来て、あなたがそれを嫌だと思うなら…

パリス。あなたが行きたい道のために、飛び出してもいいんです」

……

パリス「……はい」

(…いつか、できたら…いいな)


パリスが動き始める事ができそうだったので、もう一度歩き始める。

ビオレ「ゼニスとソレイユはこっちに向かってるのかしら?」

サルファー「しばらく動けなかったですが、まだ出会いませんね…」

パリス「きっと、向かってます。

このまま歩いていたら、必ず…」

でも、先に会えたのは、別の人…だった。

???「…こっちには、ゼニスいないのかな?」

物陰から出て来たのは…

サルファー「……あなたは…」

ここに居る全員は会った事が無い。

???「あ…知り合いじゃない奴ばっか。こっちの村は外れか。」

パリス「だ、誰ですか…!?」

……

グラファイト「グラファイト。四零士、黒零士」

サルファー「なっ…」


ゼニス『……やっぱり…お嬢様から、四零士の魔力を感じる』

ソレイユ『それってつまり!』

ゼニス『お嬢様の病が、四零士の誰かの仕業の可能性が高い。』


ゼニス『しかも、今までどんな回復魔法も薬も根絶には至らなかった。

となると、術者に解かせるか、術者を殺すしかないだろうな…

…彼女の症状は?』

サルファー『最初は、倦怠感と睡魔だけでしたが、今は時々麻痺したり、発熱しやすくなったり…』

ソレイユ『ゼニス!!』

ゼニス『多分、病苦の能力を持った四零士、グラファイトの仕業だ』


ゼニスが言っていた。ジューンの病はグラファイトのせいだと…!

グラファイト「まあ、後で脅威になられても困るしこいつらも殺し…」

サルファー「グラファイト! なぜ、ジューン様に術を!!」

急に大声を上げたサルファーにその場が凍り付く。

ビオレ「サルファー?」

パリス「……」

グラファイトはその名について考えこんでいるようだったが、しばらくして口を開く。

グラファイト「ああ…あの病弱だった人?

理由、か…負を撒き散らすため、かな」

サルファー「何のことですか!?」

グラファイト「僕達には負は必要不可欠でさ…

愛されてる人がいた。そいつを傷つけ苦しませて、最終的にそいつが命を落としたら。

どれぐらい負が生まれる? 悲しみ、怒り、苦しみ、絶望。

僕らの目的には、大量にいるんだよ。負が。」

それだけ…それだけのために……

ビオレ「あんたね!?」

パリス「ジューンの病を…治してください…!」

心底面倒そうな顔をした後、一言。

グラファイト「治すと思う?」

サルファー「思わない。だから、あなたを倒させてもらいます!」

全員が武器を構えたと同時にグラファイトも武器を構える。

グラファイト「無知って怖いね。君達はすぐにこの地に伏す。

……まあ、ある程度力は見てあげるけどさ」


ゼニス「っ!?」

ソレイユ「ゼニス?」

何だろう、今の悪寒は…

いや、知っている。魔力。これは…

ゼニス「ゼルシェード」

ゼルシェード「お前も気づいたか。急ぐぞ。四零士の反応。この先だ」

ゼルシェードも感じたらしい。

とっくに魔力感知の力が消えているソレイユだけは感じられないが。

ソレイユ「急ごう!? この先はサルファー達が多分!」

そうだ、もしかしたら応戦してるかもしれない。

ゼニス不在でグラファイトと戦うなんて、自殺行為だ。

彼らはグラファイトの能力に詳しくないのに…
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