月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 30話

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浜辺を出ると、すぐの所に村があった。

浜辺でも思ったのだが、暗くて、でもどこか神秘的な雰囲気のある場所だった。

ゼニス「何か、この世のものじゃないみたいな…」

ソレイユ「私達死んだ!?」

ゼルシェード「落ち着け。死んでない。死んでたら俺の声も聞こえない」

…ゼルシェードだって死ぬのでは…

ゼニス「ゼルシェード、まさかもう死んでるわけじゃ…」

ゼルシェード「生きては、いる、が…そうだな…

この剣が壊れる、もしくは消滅せざるを得ない状況にならない限りは居なくならないぞ。

…ソレイユと二人きりに慣れなくて残念だったな?」

ゼニス「なっ!?」

ソレイユ「ほんっとそれ! まあ、見せつけてもいいんだけどー♪」

何を言ってるんだ、こんな非常時に…

「あの…貴方達は…」

そこへ村の人と思われる人物が声をかけてきた。

ゼニス「あ、えっと僕達は…」

「もしかして、海で?」

ソレイユ「どうしてそれを…」

疑問に思って聞き返すと、「ああやっぱり」といったような顔で答えた。

「ここは、ミステリオという村です。あの…変な海蛇と出会いませんでした?

あいつと会って、海に入ると「異界」に飛ばされるんです」

異界…じゃあ、ここは「異界」なのか?

だから、こんな外界と違った雰囲気に…

「他に、人はいませんか?」

ゼニス「あ…後三人。海に飛び込んだんだけど、同じ浜に居なくて…」

「それは…「異界」の別の場所ですかね…あ、大丈夫ですよ。

道は繋がっていますし、陸地はここともう一つだけです。

ここをずっと歩いて行けばきっと途中か、抜けた先で会えますよ」

……出会ったところで、ここからはどうやって…

ソレイユ「異界から出る手段は、あるんだよね?」

「……貴方達の船を壊した、海蛇。

あいつが、この異界の海にいます。…それを倒さなければ、ここから出られません。」

…あの、大きな海蛇…倒さないと出られない…

…出られない? そして、あの海蛇はまだ生きている。

で、海蛇と出会った人がここに来る事になるのを知っているあたり、

飛ばされた人は自分達が初めてではないという事。

ゼニス「…もしかして、ここにいる人達って…」

「僕と同じ、緑色と銀のグラデーションの髪をした人以外は、

外界から海蛇によってここに来た人です。

あいつに勝てる人はいなかったので、皆、ここに留まっています。

…無理は言いません。けど、もしも海蛇を倒せるというのなら、

彼らを、ここから外界へ帰していただきたい」

勝てるかは分からない。けど勝たなければならない。

無理じゃない。やらないといけない。でないと、あいつらが何をしでかすか分からない。

けど…そうだ、ソレイユは…?

ソレイユ「いいよ。やってあげる」

ゼニス「…! ソレイユ…」

「ありがとうございます。けど、決して無理はしないで。」

この村の少年と別れる。


ゼニス「…ソレイユ。君は指輪の事もあって、あいつらに狙われる身だ。

止める事は僕達だけでもできる。君はここに残っていてもいいんだよ?」

ソレイユ「嫌だよ。私はゼニスと一緒がいい。どんなに危険でも。」

嫌だって……でも…

ゼニス「君は命を狙われてるかもしれないんだ!

指輪を奪うためなら、君の生死なんて、あいつらはどうでもいいんだ!

それなのに…」

ソレイユ「もう、みんな同じだよ! 私達は、あいつらに目を付けられた。

目的を阻止しようとする奴らがいる。

殺されるリスクがあるのは、私もゼニスもサルファーもパリスもビオレも同じ!」

………

ソレイユ「ゼニスと離れるぐらいなら、生きていても死んでいるようなもの。

ゼニスが死ぬなら、生きていたくない。…だからさ…

私がゼニスを守るから。ゼニスも、私を守ってよ」

互いを守り合う。騎士の頃はそんなこと考えなかった。

ゼニス「君に守られたんじゃ、立つ瀬がないよ。

…でも、君を悲しませたくないし、うん、僕も生きて、君も守り抜く。

…それでいいかな?」

ソレイユ「うん! ゼニスが生きてくれるなら、何だっていい♪」

さて、なら、何とかあの海蛇を…と思った時…

ゼルシェード「んんっ、お前達、いちゃつくのも結構だが、

俺がいる事を忘れるな」

ゼニス「ゼルシェードは引っ込んでくれないか!?」

ソレイユ「私は見せつけてもいいし♪」

……最近、ゼルシェードがうざい。

ゼニス「さあ、海蛇を倒すにしても、僕達だけじゃ厳しい。

まずは三人と合流しよう。ここに居ないとなるとやっぱりこの先だろうから、

取りあえず進んで行こう。」

そう言って村の奥の道を抜けようと歩き始める。

ゼルシェード(…ソレイユはゼニスがいないと生きられないのは分かりやすいが、

ゼニスも割とそうなのではないだろうか…)


村の外にいる魔物も変な色のばかり。

見覚えはあれど、色がおかしい。紫と緑の蜘蛛とか、蝙蝠とか、木の化け物とか。

ゼニス「はあっ!! …ふぅ…本当にここは異界なんだな…」

ソレイユ「実感なかったけど、こういう魔物見るとね…」

…そう言えば、さっきはここが安全圏確定前提で話をしていたけど…

…ここにフェズ達が来れない確証はあるのだろうか?

転移魔法が使えるなら…まさか…

そんな事を考えていたら、後ろから先ほどの少年が駆けてきた。

「い、言い忘れてた、事が!!」

凄く急いで来たのだろうか。息切れしている。

ソレイユ「どうかしたの?」

「…海蛇、…魔物の名前はシーサーペント。

…そいつなんですが、ここ最近、妙に動きが的確になっているんです。」

ゼニス「どういう意味…?」

息を整えてから、もう一度口を開く。

「統率…というか、誰かの指示があるような気がするんです。

なんというか、外界の海に行く時も、誰かを探しているような感じで…」

探している? 誰を?

「とにかく、指揮者がいるって事は、そう簡単には引き下がらないし、

殺すと決めた場合、殺しにかかってくるはずです。どうか、気を付けて!」

ソレイユ「わかった。でもそんなだと危険だから、

村の人達にも浜辺には出ないようにさせておいて」

「はい!」

急いで村に逆戻りする。

ゼニス「ソレイユ。魔物を操れるような奴、知ってる?」

ソレイユ「うーん…セピアのは、セピアの使い魔だもんね?

元々いた魔物を操ってる、かぁ…何だろう」

まあ、四零士や側近の奴らとも限らない。

戦う時は気を付けよう。


某所。

サラテリ「あれー? グラファイトは?」

フェズ「留守だってよ。何か海に行った」

プリムローズ「黄昏てる…?」

エピナール「無いでしょう」

セピア「そうそう、エルブ」

エルブ「は、はい!? 何でしょうか…」

セピア「これ、使いなさい」

渡されたのは宝玉。もちろん、集めていたのとは違う。

側近格がみんな持っているものだ。

エルブ「え!? い、嫌ですよ…これは…!」

エピナール「失敗続きなのは、あなたが優しすぎるからです。

宝玉の力でも何でもいい。紳士でなくても何でもいいです。

何の罪悪感も不安も苦しみも無くなった状態なら、失敗は無いでしょう」

フェズ「お? お前使うのか?」

サラテリ「ぜーんぜんエルブ使おうとしないもんね」

エピナール「本来それは陛下の許可なしでは使う事ができないのですが、

あなたの場合は、それを使って丁度いいぐらいになるでしょう。

さすがに大量虐殺の欲は出ないはずです。」

エルブ「…………でも」

セピア「次、彼らと対峙する時、任せますわよ。エルブ」

エルブ「……っ……は、はい…」
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