月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

文字の大きさ
上 下
27 / 100
少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 27話

しおりを挟む
船を降り、セイクレイ城前まで歩いてくる。

ゼニス「ラージャ。先に話して来ていいよ」

ラージャ「いや、いいって。お前らの方が急ぎだろ」

まあ、確かにそうだけども…

ラージャ「気にすんなって。お前らが先! いいな!?」

ゼニス「わ、わかったよ」


門番に話をして通してもらう。

玉座の間に行く通路で、見覚えのある二人と再会した。

ソレイユ「あれ? シスルとリナリアじゃない!」

シスル「…あ…お前ら…;;;」

リナリア「お久しぶりですっ」

ゼニス「ちょっ、あの時は依頼人だったりしたけど、今は関係ないから楽にしていいよ」

少し考えこんでから…

リナリア「うん、じゃあそうさせてもらうわね」

サルファー「彼らは?」

ゼニス「僕達がギルドにいた時に、依頼して来たんだ。

その時の依頼が、プリムローズとの出会いだった」

パリス「四零士…ですか!?」

ビオレ「二人とも…よく生きてるわよね」

自分のことながら、そう思う…

ソレイユ「と、ところで、二人は何しに来たの?」

シスル「…ローレルの状態についてだ」

それって……


バジル『…魔族は長く魔族でいると、いつか自我を無くし化け物となる。

その速さには個体差があるが、最近ローレル将軍にも兆候が出て来ている』


リナリア「うん…私達は魔王退治の際に関わっているし、

シスルに至っては、ネメシア将軍の元…」

シスル「その事はいい。…けど、お前らもローレルの事について分かってるなら、

ガイラルディア王から話があるかもな。詳しい事はそっちで聞け。」

そう言って立ち去ろうとしたところを、つい引き留めてしまった。

魔王退治で関わってたのなら…

パリス「あの…シオンさんとは、お会いしたんですか…?」

リナリア「…うん、会って来た。結構変わってたけど、でも、優しいのは変わらなかったから…」

シスル「あいつは絶対に元に戻ってもらう。…いや、元に戻る。あいつなら、絶対に」

そう言って立ち去った。

シスルのシオンに対する絶対的な信頼…そんなものを感じた気がする。

ラージャ「…さて、取りあえず考えるのはガイラルディア王に会ってからにしようぜ。

ほら、行ってこいよ」

ラージャに背を押されて、玉座に入る。


ガイラルディア王「来たか。久しぶりだな」

……あれ? 将軍が少ない。

サルファー「ネメシア将軍はどうしました?」

バジル「ネメシアは別任務、ローレルは、知っての通りだ」

まだ、寝込んでいるのか…

ゼニス「あの、ローレル将軍の事なんですけど…」

バジル「ああ、ローレル将軍…というか、魔族がいつか化け物になる、というもの。

あれは、一種の呪いだと発覚した。」

ソレイユ「呪い!? 実験の後遺症、とかじゃなくて?」

ソレイユの疑問にガイラルディア王も頷く。

ガイラルディア「もちろんそれもあるのだが、

調べた結果、女神の力が加わっている事が分かった。

…もちろん、魔王討伐に協力してくれた女神とは別人だ。」

女神ともあろう者が…そんな事に協力を…?

ビオレ「…で、何とかする方法はあるんですか?」

バジル「…呪いを解呪する手段を研究でもしてる奴がいれば、いいんだがな…」

…呪いの解呪の、研究…

ガイラルディア「まあ、それはこちらで探そう。

そちらの用件を聞こう」

ソレイユ「えっと、船を貸していただきたいんです。度々すみませんが…」

ガイラルディア「そんなことか。問題ない。今すぐに船を貸そう」

本当に心が広いというか、太っ腹というか…

バジル「お前達も大変だな…次から次へと」

ゼニス「あはは、でも、休んでますよ。

僕の方はまだまだ平気です」

バジル「……そうか。」

バジルの表情が少し柔らかくなった。

サルファー「さて、それでは行きましょうか。

後ろがつっかえていますしね」

玉座から出てラージャとバトンタッチ。

自分達はそのまま城を出て来た。時間が無いから…。


……

ソレイユ「ねえ、シュロって確か…」

ゼニス「ああ、僕も同じこと考えてた。」


シュロ『ああ。僕達の仲間の父親が、敵にかけられた呪いで死ぬ選択肢しか残されなくてね…』


確かその事が原因で、呪いに対抗する術を研究していたはずだ。

サルファー「連絡とってみますか?」

ゼニス「そうだね」

連絡端末でシュロにかけてみる。

シュロ「もしもし、ゼニスか?」

ゼニス「あ、久しぶり、シュロ。

実は、ちょっと話があって…」


シュロ「ローレル将軍が…そうか」

パリス「何とか、なりませんか…?」

……

シュロ「…ぎりぎりまで粘っても良いかな…今だとまだ試作しかなくてね…

ぎりぎりでも完成品が無ければこれでも試してみるけど、

もしまだ時間があるなら、もう少し研究させてくれ。やるならできる限り確実の方がいい」

サルファー「ええ、それで構いませんよ。

よろしくお願いします、シュロさん」

シュロと連絡を切る。

ビオレ「どんな人なの?」

ソレイユ「ドジ???」

はあ? というような顔をビオレがする。

そりゃそうだ。解呪の研究してる人がドジなんて聞いたら。

ビオレ「ま、まあいいわ。早く船に乗って東へ行きましょ」

サルファー「そうですね。行きましょうか」

そう話をして船に移動する。

ビオレ「あ、ゼニス、ソレイユ。後で話があるから船に乗ったらいいかしら?」

ゼニス「ああ、いいよ」

ソレイユ「なになに? あ、ゼニスを好きですーって話ならお断りだよ?」

ビオレ「そんなじゃないわよ! …真面目な話」

…何を話すつもりなのだろう。


船に乗り込んでから、ソレイユとゼニスはビオレのもとにすぐに行った。

ゼニス「で、話って…」

ビオレ「二人が話している時にね。サルファーとパリスには言ったんだけど、

…えっと、まず、聞いてたの。ゼニスとラージャが話してるところ」

ああ…じゃあ、もしかしてルナドロップの事も…

ビオレ「ルナドロップ。それは私の里にある」

ゼニス「ええ!?」

ソレイユ「ねえ、何の話?」

ソレイユは聞いてないよな。話しておこう。

ゼニスはソレイユにラージャに頼まれた事を話しておいた。

ソレイユ「なるほど…で、そのルナ何とかが、ビオレの里にあるんだ?」

ビオレ「ルナドロップ。…そう、私の里の魔物が持ってるの。

襲撃しなければ襲ってこない魔物だし、挑めば返り討ちに合うから放っておいてたんだけど…

ルナドロップが必要となったら、やるしかないわよねって」

ゼニス「…ビオレ。僕達も討伐するなら協力したいと思う。

けど、里の人は平気? 部外者なんて入れたら…」

それに対し、ビオレが首を横に振る。

ビオレ「…里のみんなも何人か殺されてるし、討伐してくれるってんなら迎えるわよ。

…納得しない人もいるだろうけど、いい加減、私達も前に進まないといけないのよ」

ビオレが、そう言うなら…

ビオレ「いつか、必ず里に招くわ。

取りあえず、今は目の前の事に集中しましょ」

ソレイユ「そだね。そう言えば、東の、どの辺りだっけ?」


ゼニス「…ゼルシェード」

ゼルシェード「もう見えて来るぞ。白い建物のある場所だ。」


白い建物……

あった。船からでも見えた。森の木に少し隠れているが、不自然に白い物。

ゼニス「あそこだ。近くに船を停めよう」


船を停めて、降りる。

しばらく森を歩いて行くと、建物がはっきり目の前に現れた。


ゼルシェード「ここだ。この中にあいつらが探しているものがある。

中は敵もいないし、無人。変に仕掛けも無いし、迷う事はないだろう。」

ゼニス「…何があるんだ?」

ゼルシェード「大罪。大罪を封じてある球体がこの建物の中にあってな。

それをあいつらは目的のために集めようとするはずだ。

……あいつらより先に球体を壊し、この剣に吸収させられれば、阻止できるが…」


……

ゼニス「みんな、聞いてくれ。」

今、ゼルシェードから聞いた話をその場にいた全員に話す。

パリス「急いだ方が…いいんじゃないでしょうか…?」

サルファー「ええ、いつ来るか分からない以上、その方がいいでしょう。」

ソレイユ「変な空間じゃないんでしょ? さっさと行ってこよう?」

けれど、その扉を開けた途端、空間が歪んだような感覚。

その急激に起きた目眩に目を閉じる。


目を開けると、その空間はもう別世界で…

ビオレ「青…!? ちょっと、周りが青いんだけど!?」

ゼニス「この、青い空間は…」

見覚えがあった。これは、エピナールの能力スキルでつくられた舞台!

ソレイユ「右も左も分かんないじゃない! 上へ行く道は!?」


ゼニス「ゼルシェード!」

ゼルシェード「ちっ、すでにあいつらが乗り込んでいるか…しかも担当はエピナールだ!

間に合うか……!?」

ゼニス「ゼルシェード! 君の力で道は分からないのか!?」

ゼルシェード「エピナールの魔力を辿る事しかできない! お前も魔力は分かるだろう、手伝え!」

まだ力が万全じゃないから厳しい所もあるが、ある程度なら示してやる!」


ゼニス「みんな! ゼルシェードと僕が案内する!

とにかく走ろう! 目指すは最上階だ!」

時間が無い。本当にない。

サルファー「ここがエピナールの舞台なら、私達は後手に回される。

エピナールが球体を破壊しきるまでに追い付かなければ間に合いませんよ!?」

……間に合うか!? とにかく今は…走れ…!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...