月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 27話

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船を降り、セイクレイ城前まで歩いてくる。

ゼニス「ラージャ。先に話して来ていいよ」

ラージャ「いや、いいって。お前らの方が急ぎだろ」

まあ、確かにそうだけども…

ラージャ「気にすんなって。お前らが先! いいな!?」

ゼニス「わ、わかったよ」


門番に話をして通してもらう。

玉座の間に行く通路で、見覚えのある二人と再会した。

ソレイユ「あれ? シスルとリナリアじゃない!」

シスル「…あ…お前ら…;;;」

リナリア「お久しぶりですっ」

ゼニス「ちょっ、あの時は依頼人だったりしたけど、今は関係ないから楽にしていいよ」

少し考えこんでから…

リナリア「うん、じゃあそうさせてもらうわね」

サルファー「彼らは?」

ゼニス「僕達がギルドにいた時に、依頼して来たんだ。

その時の依頼が、プリムローズとの出会いだった」

パリス「四零士…ですか!?」

ビオレ「二人とも…よく生きてるわよね」

自分のことながら、そう思う…

ソレイユ「と、ところで、二人は何しに来たの?」

シスル「…ローレルの状態についてだ」

それって……


バジル『…魔族は長く魔族でいると、いつか自我を無くし化け物となる。

その速さには個体差があるが、最近ローレル将軍にも兆候が出て来ている』


リナリア「うん…私達は魔王退治の際に関わっているし、

シスルに至っては、ネメシア将軍の元…」

シスル「その事はいい。…けど、お前らもローレルの事について分かってるなら、

ガイラルディア王から話があるかもな。詳しい事はそっちで聞け。」

そう言って立ち去ろうとしたところを、つい引き留めてしまった。

魔王退治で関わってたのなら…

パリス「あの…シオンさんとは、お会いしたんですか…?」

リナリア「…うん、会って来た。結構変わってたけど、でも、優しいのは変わらなかったから…」

シスル「あいつは絶対に元に戻ってもらう。…いや、元に戻る。あいつなら、絶対に」

そう言って立ち去った。

シスルのシオンに対する絶対的な信頼…そんなものを感じた気がする。

ラージャ「…さて、取りあえず考えるのはガイラルディア王に会ってからにしようぜ。

ほら、行ってこいよ」

ラージャに背を押されて、玉座に入る。


ガイラルディア王「来たか。久しぶりだな」

……あれ? 将軍が少ない。

サルファー「ネメシア将軍はどうしました?」

バジル「ネメシアは別任務、ローレルは、知っての通りだ」

まだ、寝込んでいるのか…

ゼニス「あの、ローレル将軍の事なんですけど…」

バジル「ああ、ローレル将軍…というか、魔族がいつか化け物になる、というもの。

あれは、一種の呪いだと発覚した。」

ソレイユ「呪い!? 実験の後遺症、とかじゃなくて?」

ソレイユの疑問にガイラルディア王も頷く。

ガイラルディア「もちろんそれもあるのだが、

調べた結果、女神の力が加わっている事が分かった。

…もちろん、魔王討伐に協力してくれた女神とは別人だ。」

女神ともあろう者が…そんな事に協力を…?

ビオレ「…で、何とかする方法はあるんですか?」

バジル「…呪いを解呪する手段を研究でもしてる奴がいれば、いいんだがな…」

…呪いの解呪の、研究…

ガイラルディア「まあ、それはこちらで探そう。

そちらの用件を聞こう」

ソレイユ「えっと、船を貸していただきたいんです。度々すみませんが…」

ガイラルディア「そんなことか。問題ない。今すぐに船を貸そう」

本当に心が広いというか、太っ腹というか…

バジル「お前達も大変だな…次から次へと」

ゼニス「あはは、でも、休んでますよ。

僕の方はまだまだ平気です」

バジル「……そうか。」

バジルの表情が少し柔らかくなった。

サルファー「さて、それでは行きましょうか。

後ろがつっかえていますしね」

玉座から出てラージャとバトンタッチ。

自分達はそのまま城を出て来た。時間が無いから…。


……

ソレイユ「ねえ、シュロって確か…」

ゼニス「ああ、僕も同じこと考えてた。」


シュロ『ああ。僕達の仲間の父親が、敵にかけられた呪いで死ぬ選択肢しか残されなくてね…』


確かその事が原因で、呪いに対抗する術を研究していたはずだ。

サルファー「連絡とってみますか?」

ゼニス「そうだね」

連絡端末でシュロにかけてみる。

シュロ「もしもし、ゼニスか?」

ゼニス「あ、久しぶり、シュロ。

実は、ちょっと話があって…」


シュロ「ローレル将軍が…そうか」

パリス「何とか、なりませんか…?」

……

シュロ「…ぎりぎりまで粘っても良いかな…今だとまだ試作しかなくてね…

ぎりぎりでも完成品が無ければこれでも試してみるけど、

もしまだ時間があるなら、もう少し研究させてくれ。やるならできる限り確実の方がいい」

サルファー「ええ、それで構いませんよ。

よろしくお願いします、シュロさん」

シュロと連絡を切る。

ビオレ「どんな人なの?」

ソレイユ「ドジ???」

はあ? というような顔をビオレがする。

そりゃそうだ。解呪の研究してる人がドジなんて聞いたら。

ビオレ「ま、まあいいわ。早く船に乗って東へ行きましょ」

サルファー「そうですね。行きましょうか」

そう話をして船に移動する。

ビオレ「あ、ゼニス、ソレイユ。後で話があるから船に乗ったらいいかしら?」

ゼニス「ああ、いいよ」

ソレイユ「なになに? あ、ゼニスを好きですーって話ならお断りだよ?」

ビオレ「そんなじゃないわよ! …真面目な話」

…何を話すつもりなのだろう。


船に乗り込んでから、ソレイユとゼニスはビオレのもとにすぐに行った。

ゼニス「で、話って…」

ビオレ「二人が話している時にね。サルファーとパリスには言ったんだけど、

…えっと、まず、聞いてたの。ゼニスとラージャが話してるところ」

ああ…じゃあ、もしかしてルナドロップの事も…

ビオレ「ルナドロップ。それは私の里にある」

ゼニス「ええ!?」

ソレイユ「ねえ、何の話?」

ソレイユは聞いてないよな。話しておこう。

ゼニスはソレイユにラージャに頼まれた事を話しておいた。

ソレイユ「なるほど…で、そのルナ何とかが、ビオレの里にあるんだ?」

ビオレ「ルナドロップ。…そう、私の里の魔物が持ってるの。

襲撃しなければ襲ってこない魔物だし、挑めば返り討ちに合うから放っておいてたんだけど…

ルナドロップが必要となったら、やるしかないわよねって」

ゼニス「…ビオレ。僕達も討伐するなら協力したいと思う。

けど、里の人は平気? 部外者なんて入れたら…」

それに対し、ビオレが首を横に振る。

ビオレ「…里のみんなも何人か殺されてるし、討伐してくれるってんなら迎えるわよ。

…納得しない人もいるだろうけど、いい加減、私達も前に進まないといけないのよ」

ビオレが、そう言うなら…

ビオレ「いつか、必ず里に招くわ。

取りあえず、今は目の前の事に集中しましょ」

ソレイユ「そだね。そう言えば、東の、どの辺りだっけ?」


ゼニス「…ゼルシェード」

ゼルシェード「もう見えて来るぞ。白い建物のある場所だ。」


白い建物……

あった。船からでも見えた。森の木に少し隠れているが、不自然に白い物。

ゼニス「あそこだ。近くに船を停めよう」


船を停めて、降りる。

しばらく森を歩いて行くと、建物がはっきり目の前に現れた。


ゼルシェード「ここだ。この中にあいつらが探しているものがある。

中は敵もいないし、無人。変に仕掛けも無いし、迷う事はないだろう。」

ゼニス「…何があるんだ?」

ゼルシェード「大罪。大罪を封じてある球体がこの建物の中にあってな。

それをあいつらは目的のために集めようとするはずだ。

……あいつらより先に球体を壊し、この剣に吸収させられれば、阻止できるが…」


……

ゼニス「みんな、聞いてくれ。」

今、ゼルシェードから聞いた話をその場にいた全員に話す。

パリス「急いだ方が…いいんじゃないでしょうか…?」

サルファー「ええ、いつ来るか分からない以上、その方がいいでしょう。」

ソレイユ「変な空間じゃないんでしょ? さっさと行ってこよう?」

けれど、その扉を開けた途端、空間が歪んだような感覚。

その急激に起きた目眩に目を閉じる。


目を開けると、その空間はもう別世界で…

ビオレ「青…!? ちょっと、周りが青いんだけど!?」

ゼニス「この、青い空間は…」

見覚えがあった。これは、エピナールの能力スキルでつくられた舞台!

ソレイユ「右も左も分かんないじゃない! 上へ行く道は!?」


ゼニス「ゼルシェード!」

ゼルシェード「ちっ、すでにあいつらが乗り込んでいるか…しかも担当はエピナールだ!

間に合うか……!?」

ゼニス「ゼルシェード! 君の力で道は分からないのか!?」

ゼルシェード「エピナールの魔力を辿る事しかできない! お前も魔力は分かるだろう、手伝え!」

まだ力が万全じゃないから厳しい所もあるが、ある程度なら示してやる!」


ゼニス「みんな! ゼルシェードと僕が案内する!

とにかく走ろう! 目指すは最上階だ!」

時間が無い。本当にない。

サルファー「ここがエピナールの舞台なら、私達は後手に回される。

エピナールが球体を破壊しきるまでに追い付かなければ間に合いませんよ!?」

……間に合うか!? とにかく今は…走れ…!
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