月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 26話

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宿屋ロビー。

ソレイユ「あ、ゼニス。これ、受付の人が預かっててくれたんだけど…」

ソレイユから翌日渡されたのは手紙のようなもの。

…そう言えば、コバルトがいないな。


コバルト「ゼニス師匠。魔法剣の特訓ありがとうございました。

それと、僕、やる事があるので朝一で出ます。

直接挨拶せずに出てすみません。

皆さんのもよろしくお伝えください。また特訓お願いしますね!」


ゼニス「コバルト…」

ソレイユ「コバルト、結構忙しそうだよね。夜中に町を出たり…」

多分、家の事か、自分の事か、何かで複雑な環境なんだろう。

……弟子を疑うなんて馬鹿げてる。たとえゼルシェードが言う事でも。

ゼニス「あれ、みんなは?」

ソレイユ「今、船の確認に…」

そこまで言ったところで足音が外から聞こえてきた。

ビオレ「二人とも! もうすぐ船出るわよ!」

サルファー「乗り遅れたら大変ですよ、行きましょうか」


船に乗り込むと、パリスはすでに乗り込んで待っていた。

パリス「あ、ソレイユさん、ゼニスさん…遅いですよ?」

ゼニス「ごめんごめん」

サルファーが地図を開く。

サルファー「次の目的地の確認ですが、

ここからまずセイクレイ城近くの港に行きます。

それからセイクレイ城へ向かい、船を貸してもらう。

そしたら東へ向かう。…東のどの辺りかは、ゼルシェードさんは知っているのですよね?」


ゼニス「……どうなんだ?」

ゼルシェード「分かるに決まっているだろう。

安心しろ。見えたら告げる」


ゼニス「分かるから、目的の場所が見えたら伝えるってさ」

カイ「いやはや、ゼニスさんにはいろいろ聞こえているんですよね。不思議です」

ちょっと不便だけどな…早く流れを向けるスキル・リムーバルを覚えないと…

ビオレ「そういえば、イテールナ城の隊長さん。

ゼニスの知り合いだっけ? 赤髪の」

ラージャか?

サルファー「同じ船に乗っていますよ。」

ゼニス「え!? 他の隊員は!?」

パリス「いない…みたいです。お一人…」

なんだ? 様子でも見て来ようと、移動しようとしたら…

ソレイユ「ゼニスー! 話し終わったら私と過ごしてー!」

ゼニス「…うん! わかったよ!」


一人で海を見ているラージャ。

誰とも話さずに一人だ。

ゼニス「ラージャ」

ラージャ「へ? あ? ええええ!? ゼニス!?」

何か物凄く驚かれた。

ラージャ「お前無事だったかよ!? ダメージは!? 内臓は!? 心臓は!?

生きてるか!?」

ゼニス「生きてるし、怪我もないから安心していいよ…

ラージャ達こそ大丈夫だった? 人質になる前に戦ってたんだろ?」

ラージャ「俺達の事はいいんだよ! …まあ、死者は出たけどな」

城の地下でも聞いたな…

ゼニス「…ラージャは、どうしてここに?

一人なのか?」

ラージャ「戦いに行くんじゃない。セイクレイ城への使者としてだ。」

使者? 何の…

ラージャ「まず一つ目は忍びの里への偏見を我らが王が持ちすぎている事。

もう一つは、我らが王が病に伏した事だ。」

ゼニス「病!? 倒れたのか!?」

ラージャ「ああ。あのエルフもガイラルディア王に進言しているだろうし、

今攻められたら一たまりもない。まあ、そんなことガイラルディア王はしないと思うけど…。

あと、王がいない事で連携が取れなくなる。

その事もガイラルディア王に言わないといけない…」

王が病に…

ラージャ「…あの時は、王が仲間を悪く言って悪かったな。

俺も王に言った。差別だと。

…それからなんだ、どんどん弱っていって、ついこの前倒れた。」

ゼニス「心労…か?」

ラージャ「多分、責任…罪悪感…に、よるもの。

うわごとのように、「すまない…すまなかった…」と言うようになって…

……なあ、ゼニス、こんなことお前に頼むのもあれなんだけど…」

気にしなくていいんだからねそんなに申し訳なさそうにしないでもらいたい。

ゼニス「なんだ?」

ラージャ「…ルナドロップ。

魔力による病じゃない限り、どんな病でも治すと言われている薬草だ。

それを、探してほしい。俺も探す。」

ゼニス「…分かった。暇がある時や、旅の合間で良ければ…」

ラージャ「それでいい。お前らの方が危険な旅だしな。

一応、自分達もセイクレイ城に向かっている事を、ラージャに伝えた。

ラージャ「お、じゃあ途中まで一緒に行くぜ。

女の子と仲良くなっとくか」

ゼニス「ねえ」

出た。ラージャの癖。

ラージャ「つーか、お前は? 好きな子とか出来たのか?

口説いてるか??」

ゼニス「口説かないよ!」

……しまった。この言い方は不味い。

ラージャ「好きな子がいない! とは言わないのな???」

にやにやしながら覗き込んでくる。

ゼニス「うるさいな!! そっちこそ口説き癖…何とかしたら?」

ラージャ「分かってねえな…そんなことしたらチャンスも逃すだろ!?

声をかけて玉砕して、また声をかけて…」

チャンス逃してんじゃん。

ゼニス「じゃ、僕はこの後、ソレイユと話す約束してるから」

そう言って足早にその場を立ち去る。

ラージャ「……ソレイユ…最初に城であった子か…

…話す約束、ねぇ…他の仲間とはしてねぇのな???

ったく、……抜け駆けすんじゃねーーーーーーーーーーーーー!!!!」

その叫び声が轟いて、船内の客を驚かせたのは言うまでもない。


ビオレ「……ルナドロップ……か」

サルファー「心当たりでもあるんですか? ルナドロップ」

ビオレ「ひゃあああ!?」

自分でも不覚を取ったと思ったほどの声が出て慌てる。

ビオレ「…誰にも言うんじゃないわよ?」

サルファー「言いませんよ…」

パリス「あの…ルナドロップって…」

聞かれてたんなら仕方ない、と諦めて話す事に。

ビオレ「三人に聞かれてるんじゃ仕方ないし、後でゼニス達にもちゃんと話す。

…ルナドロップはね…私の里にいる魔物が持ってる。」

サルファー「魔物が…?」

……

ビオレ「ええ。でも、勝ち目がないから、放っておいてる。

挑まなければ…誰も死ななかったから。襲ってはこなかったから。

けど……必要となったら、そのうち、やらなきゃならないわね…」

やらなきゃ、ならない…。

パリス「ビオレさんは…いいんですか?

貴方を…貴方の里の方の事を…」

ビオレ「隠れ続けるのも限界があると分かっていたわ。

隠れていれば、怪しまれるのも。

…それに、ここで動かなきゃ、余計に忍びの信用は無くなるわ。」

右手の方で話しているゼニスとソレイユの方を見る。

ビオレ「…私を信じてくれた…サルファー達も含めて、ね」

サルファー「…倒す時は…私達もお手伝いしますよ。

ゼニスもそうするでしょう」

パリス「私も…手伝わせてください…」

ビオレ「…ありがとう、いつかみんなを、里に入れてげるわ」


ソレイユ「あ、ゼニスー! 話し終わった??」

ゼニス「うん、終わった…」

何か疲れている。うん、疲れている。

ソレイユ「さっきの叫び声と関係ある?」

ゼニス「ある」

ラージャのせいか…

ゼニス「そうだ。ラージャもセイクレイ城に用があるから、そこまで一緒に行くってさ」

ソレイユ「そっか。…私はゼニスがいれば何でもいいけど♪」

……何の意図もない。別に何か気がかりなわけじゃない。

でも、聞いておきたかった。

ゼニス「ソレイユ…は、もし僕が悪い奴だったらどうする?」

ソレイユ「え? どうしたの、急に」

ゼニス「僕は記憶が無い。もしかしたら、記憶をなくす前は悪い奴…

もしくは、人間じゃなかったかもしれない。見た目は人でも、化け物かもしれない。

それでも……」

………

ソレイユ「それでも、私はゼニスを信じる。

私が見て来た、ゼニスを信じる。」

ゼニス「もし君を傷つけるような事でもあったら…!!!」

それに対してソレイユが首を振る。

ソレイユ「もしゼニスが狂ったら…私が止める。

そのために強くなる。

私は、どんなことになっても、ゼニスと一緒にいる未来を諦めない。」

ゼニス「!!!」

こんな…ここまで……

ゼニス「……ありがとう。…まあ、なると決まったわけじゃない。

そうならないように、しないとな…」

ソレイユ「放っとかないよ。

みんなも、私には及ばないけど、ゼニスの事、だーい好きだもん♪」

ゼニス「……ああ」


ラージャ「おーーーーーーーい!! お前らー!!!!!

もう着くぞーーーー!!」

うるさい。

ゼニス「もう少し普通に呼べないのか。近付いて来ればいいのに」

ソレイユ「近づけなかったんじゃない???」

そう言いながら腕に抱き着いてくる。

ゼニス(ああ…ラージャが余計近付いてこないよ…)

セイクレイ城の近くの港についた一行は、

再度セイクレイ城に向かうために、移動。


その頃…

プリムローズ「エルブ。ここにいたの」

エルブ「…あ…」

フェズ「次の仕事にお前も任せられるってよー」

エルブ「次の仕事…?」

エピナール「大罪回収です。とある施設の。

とはいえ、それを封じている球体は私でも時間を要します。

ですから、私が砕いている間、あなたは時間稼ぎをお願いします。」

……

エルブ「なんで? また僕、失敗するかもしれないよ」

セピア「僕ではなく、私。あと「知れませんよ」です。

…あなた、会議にあまり参加していないのですから、仕事なさい。」

エルブ「……はい、セピアさん」

サラテリ「あ、プラタナス、アリウム。アンタ達は別の仕事ね」

プラタナス「わかってる。」

アリウム「でも、まだ先になるでしょ? それまでは待機してるね」
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