月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 23話

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街道を通ってコンフィージェの塔まで向かった一行。

ゼニス「またここに来る事になるなんて」

コバルト「師匠はここに来た事あるんですか?」

ソレイユ「お城の人が人質に取られて、私達、四零士にここに閉じ込められたのよ」

それを聞いた途端、コバルトが慌てる。

コバルト「す、すみません、何も考えずにここに来てほしいなんて!?」

サルファー「いいんですよ。その剣は私達も気になりますしね」

ビオレ「ただ、四零士か側近格の奴らがいたら、コバルトは下がって。

貴方じゃ勝てないから」

パリス「……剣は…どこにあるんですか…?」

えっと…といいながら本を開く。

コバルト「皆さんが捕まったのは多分地下牢です。

剣は真逆。最上階にあります。この塔は5階建てですよ。」

5階…前に来た時は魔物はいなかったが…どうだろうか。


ソレイユ「ねえコバルト。前、宿に泊まらなかったらしいけど、何の用事だったの?」

コバルト「あ、えーと…特に用はないんですけど、

友達に会いたくなって…僕、思い立ったらすぐに動いちゃうので、つい夜に…」

危なすぎるだろう…

ゼニス「コバルト…夜に活動する魔物だっているんだから、気を付けてくれ。」

コバルト「すみません、気を付けます」

忠告するとすぐに聞くんだよなぁ…

ソレイユ「…絵に描いたようないい子…」

それがコバルトだ。


塔の、三階ぐらいまで来た辺りだろうか。

ビオレ「っ! みんな構えて。」

ビオレがそう言ったのとほぼ同時に、魔物の群れが。

ゼニス「さっきまで何もいなかったのに!?」

サルファー「とりあえず片づけますよ!」

コバルトは……

ソレイユ「コバルトは戦えそうならお願い!

無理そうなら下がっていいから!」

コバルト「た、戦います!! 僕もできます!」

……

ゼニス「わかった、気を付けて!」


まず量が多いのはゼニスの全体技でどうとでもなる。

ただ、できるだけコバルトの方に数は行かせたくない…

ビオレ「ゼニス! 私なら動き止められるわよ!」

パリス「わ、私も目くらましなら、できます…!」

ゼニス「わかった!」

そう言ったと同時にビオレが踏み込む。

魔物もアクションしようとしているのだが、ビオレの動きに付いていけていない。

ビオレ「遅いよ…闇毒牙・麻痺!!」

流れるように連続で何体も斬りつける。

斬りつけられた魔物の個体は動きが封じられてしまった。

ソレイユ「今のって、麻痺!?」

その間に詠唱を終えたパリスが魔法を放つ。

パリス「視界を閉ざせ…フラッシュスクリーン!」

閃光のようなものが辺りを覆う。

自分達に影響はないようだが、魔物には効果あり。

視界が奪われたのか、攻撃をこちらに当てる気があるのかというほどに、

命中率が下がっている。

ソレイユ「よし、私も! 回火裂舞!!」

サルファー「水圧よ斬れ…アクアエッジ!!」

ソレイユとサルファーがある程度片づける。

後は…

コバルト「ゼニス師匠! 僕が視界を奪われている方をやります!

ゼニス師匠は身動きが取れない方を!」

……量的に、身動きが取れなくなっている方の方が数が多い。

全体技を使えるゼニスがやった方がいいだろう。

ゼニス「よし、そっちは頼んだよ、コバルト!」

コバルト「はい!」

コバルトがゼニスに背を向けて立つ。

コバルト「……はあああっ!」

何体かは普通に斬りこんで撃破できるぐらい。

一体だけ、やたら硬くなっていた。

ゼニス(こっちはすぐに片付く…!)

「円閃舞!!」

ゼニスの技は動けない敵全てに命中。

魔物はビオレの攻撃をくらっていた事もあり、即倒れた。

ソレイユ「ゼニス! コバルトの方が!」

ゼニス「!!」

まだ倒れていない、一体だけ。

ビオレ「もういいわよ! 後はゼニスに…」

コバルト「いいえ! このぐらいできます! やらせてください、ゼニス師匠!」

……

師匠なら…ブライトさんなら、きっとやらせてくれた。

ゼニス「分かった…ただ、相手に視界が戻る前に倒せなかったら、下がって」

パリス「…ゼニスさん…」

コバルト「……氷・魔法剣!!」

その攻撃は命中。でも、まだ倒れていない。

サルファー「盲目状態、いつまでももちませんよ!?」

ソレイユ「コバルト…」

コバルト(大丈夫、まだ一撃いける。でももう解ける。

これが外れれば無理)

コバルトが刀を構え直す。

コバルト「……中レベルの魔法剣…僕はできるんだから…

……いきます! …裂氷・魔法剣!!」

その攻撃は相手を仕留めるには十分だった。

ゼニス「…よくやった、コバルト!」

コバルト「師匠、ありがとうございます、見守ってくださって!」

サルファー「ちゃんと師匠やっていますね。コバルトもお見事です」

ビオレ「……」

ビオレが黙り込んでいる。

ソレイユ「どうしたの? 何か…」

ビオレ「魔物達、統率が取れてた。

普通これだけいれば、数体は逃げだしたり、おかしな行動を取ったりする。」

つまり…何か統率者がここに…

ゼニス「っ!?」

パリス「ゼニスさん、どうしたんですか…!?」

魔力を感じる。この大きな魔力は…

ゼニス「最上階からだ。最上階から…四零士の魔力を感じる。

しかもこの魔力は…まさか…」

最初だ。ファーム遺跡で感じた魔力…

ソレイユ「ここから先は、魔物もいるかもって考えた方がいいかもね」

ビオレ「ソレイユ、あんまり無理しないでよ?」

ソレイユ「それを言うならビオレもだよ♪ いつも気を張ってる感じだもん」

そんな事…とビオレは否定しているが、本当にその通りだと思う。

サルファー「パリスも、コバルトも。もちろんゼニスもですよ。」

ゼニス「サルファーがそれ言う? 本の読みすぎで疲れてるなら、休んでいいから」

コバルト(……仲いいんですね。僕もこの中に加えてもらえているのが、嬉しいな)

そう思っていたら、ゼニスに声をかけられた。

ゼニス「コバルトは僕達の動き見て、捌き方とかも覚えて行けばいいから。

たまには戦わないで見てるのもいいから」

コバルト「はい、同じようにできるか分からないですけど!」

ソレイユ「うんっ、ゼニスの戦い方かっこいいもん♪

ずーっと見てる♪」

……

ゼニス「いや、その、ソレイユにあんまり見ていられると、なんか戦いにくい、かも」

ソレイユ「ええええ!?」

嫌なわけじゃない。ただ、なんかじっと見られてると恥ずかしい気がする。

コバルト「…あははっ」


魔物を倒しながら最上階まで駆け上がって行った。

最上階の剣があると思われる場所には大きな両開きの扉があった。

ゼニス「…開けるよ。」

ソレイユ「うん、気を付けて…」

扉を開けた途端、開けるまでその中で感じていた魔力が消えた。

その通りに、部屋に誰もいない。

サルファー「…四零士はどこに…」

ビオレ「いないなら今の内よ。あの剣?」



目の前の台座に突き刺さっている剣がある。

コバルト「あ、あれです! 本に載っていたのと同じです!」

ソレイユ「だったら、早く取って帰ろう?」

ソレイユが駆け出した時…

???「悪命絶!」

ゼニス「ソレイユ!!」

咄嗟に飛び出したゼニスに突き飛ばされて危機を脱す。

ソレイユ「な、なに!?」

???「ちっ、外したか…」

今の攻撃で起こった土煙の中から出て来たのはフェズだった。

ゼニス「赤零士フェズ! 今の…完全にソレイユの事狙っただろ!?」

フェズ「当たり前だろー? 俺達の目的はそいつの指輪だ。

諦めたとでも思ったかよ?」

思っていないが…いきなり奇襲してソレイユを狙うとまでは読めてなかった。

あと一秒、反応が遅れていたら…

コバルト「こ、この人が四零士の一人!?」

フェズ「あ? 何か一人増えて…」

(こいつの顔見覚えが…エルブ…いや、あいつはこんなに魔力低くないな)

フェズがコバルトの方を見てる…

フェズ「おい、いいのかよ。

ゼニス君はおろか、他の奴らにも満たないような奴ここに連れて来て」

サルファー「貴方がいなければ、何ら問題はない実力はあるのですがね」

よりにもよってフェズ…勝ち目は…勝機は……

フェズの背後にある剣だけだ。

ソレイユ「コバルトは後ろに! 絶対に前に出ないでね!」

コバルト「は、はい!!」

ソレイユにそう言われて大人しく下がる。


フェズ「お荷物一人下げたって、お前らの負けは目に見えてんだよ!

俺の能力スキルへの対抗策も何もない奴らが!」

そう言うと、いつもの如く、剣を前に構え、

フェズ「飢えの痛みドロア・フェイムス!」

サルファー「力が…! イテールナ城で私達が喰らった奴ですか…!」

コバルト「皆さん!?」

この状態で攻撃をくらえば全滅…なら…!

ゼニス「パリス! 視界を閉ざしてくれ! サルファーは魔法封じ!」

サルファー「……わかりました! シールアロー!」

重い体を起こして封印の矢を放つ。

パリス「分かり、ました…! 視界を閉ざせ…フラッシュスクリーン!!」

パリスの魔法がフェズの視界を奪う。

フェズ「へぇ?」

ゼニス「僕達が何もしていなかったと思うな! 

サルファーが魔法を、パリスが物理を可能な限り封じる!

この能力スキルの持続も永久じゃない。効果が切れるまで、時間を稼げばいいだけだ!」

もちろん、これだって体力と魔力の戦いだ。

あの剣が無いと…能力への打開策としては決定打に欠ける。

隙を突いて取りに行かなければならない。

フェズ「まあ、相手してやるさ。魔法と攻撃を封じたぐらいじゃ俺には勝てないがな!」

ビオレ「そんなこと言ってられるのも今だけよ! 風殺剣!!」

ソレイユ「燃え盛れ…イフリティア!」

ビオレの風属性の剣とソレイユの火属性魔法が合わさったせいで、

威力は単体ずつより大きく上がった。

フェズ「ちっ! あの時遺跡でやり合った時よりは色々やれるようになってるな!」

ソレイユ「いつの話してんの! あの時は私とゼニスの二人だった! 今は違う!」

体は相変わらず重い、けど…

フェズ「はっ! 死黒乱!」

ビオレ「当たらない! ゼニス!」

フェズの攻撃は命中率がかなり下がっている。

ゼニス「っ、 連絶剣!!」

フェズ「ぐっ!ゼニス君とソレイユちゃん、本当にあの頃よりは変わったなぁ?

けど、まだまだだ! 飢えの痛みドロア・フェイムス!」

また能力を使われる。

ゼニス「無駄だ! お前の攻撃は封じてある! 魔法もだ!」

ソレイユ「あんたの能力スキルは攻略してる!」

……

フェズ「はっ、俺の能力スキルはこーいう事もできてだな…」

フェズが手をかざすと、ゼニス達の真下に魔法陣が現れた。

サルファー「これは!?」

ビオレ「しまっ…!!」


発動した魔法のようなものを生命力減少の所へまともに喰らい倒れた。

ゼニス「今の、は、魔法じゃない…!?」

フェズ「俺の能力スキルにダメージ与えるものが無いとは一言も言ってないぜ!?」

そのままゼニスだけ壁に弾き飛ばされた。

ゼニス「ぐあっ!?」

うっすら目を開ける。叩きつけられた壁は剣の方の壁だった。

ゼニス(取れれば……でも…)

フェズもこっちに近付いてくる。剣を取る前に斬りつけられればアウトだ。

他のみんなは気を失っているのか動けない。

フェズ「まあ頑張った方だが、まだまだ呆気ねぇな。

……あれ、使わねぇのか?」

皆が危険になった時に無意識下で使っていた技…

意図的には、まだできない…まして、自分が危険な時には絶対に使えない…

その時…

コバルト「ゼニス師匠に手を出すな…!」

皆が戦って、フェズの視界を奪っている間にここまで移動して隠れていたのか、

横からコバルトが飛び出してきた、が…

コバルト「ぎゃっ!?」

ドターンとフェズの足元に転んだ。

フェズ「うわっと、なんだ!?」

けれど思いっ切り前に倒れてきたので

フェズも反射的に避けてバランスを崩した。

コバルト「…くっ、裂氷…魔法剣…!!」

転んだ状態から片膝をついて魔法剣を繰り出した。

フェズ「こいつ…! まとめて能力使っておくべきだったか!?」

コバルトの刀とフェズの剣がぶつかって火花が上がっている。

ゼニス(コバルト……! …今しかない、取るなら…!!)

力の入らない身体を何とか動かして立ち上がる。

そして…

ゼニス(っ…取れた…!)


???「ゼニス…力がいるか?」

ゼニス「お前、誰だ!?」

頭の中に声が響く。

???「聞いてる場合か、力がいるなら力を貸す。

質問があるなら町に戻ってからだ」

ゼニス「…わかった。今は力が欲しい。フェズの能力スキルを止める力が…!」

???「いいだろう。ほら、早く行け。

緑の髪の奴ももうもたないぞ」


フェズとコバルトの方を向く。

コバルト「うわっ! く…っ!!」

フェズ「邪魔しやがって…!」

不思議だった。もう、力が入らないなんて事が無い。

剣を取った途端、軽くなった。

ゼニス「フェズ…!!!」

フェズ「あ? ゼニス君動けたのか…」

コバルト「ゼニス、師匠…!」


???「やり方はこの剣を取った時点で分かっているはずだ」



ゼニス「……ああ! 力を貸してくれ流変剣りゅうへんけん!!

歪みの阻止アレスト・スキル!」

カーンとフェズの剣で音が鳴る。

その音で、気を失っていた仲間が目を覚ます。

フェズ「!? 何があったか知らねぇが、俺の能力は耐えられない!

飢えの痛みドロア・フェイムス!」

……発動しない。

フェズ「なっ!? これなら!」

さっきと同じで手をかざす。でも発動しない。

フェズ「はあ!?」

サルファー「…能力スキルが発動していないのですか…?」

パリス「ゼニスさん……」

ビオレ「…あんた…」

ソレイユ「……ゼニ、ス…」

起き上がって加勢しようとするみんなを止める。

ゼニス「みんなはそこで休んでいてくれ。僕がやる。」

フェズ「何で能力スキルが発動しない! これは…」

ゼニス「歪んだ力の阻止…狂った流れを変える力だ!

それが時間の流れでも運命の流れでも能力の流れでもだ!」

もはや神の領域…

フェズ「それ、は…」

(何でこいつがそれを…!? いや、いまはそんなことはどうでもいい!)

ゼニス「これでお前とは同じ条件だ。行くよ、フェズ!!」

………

フェズ「…はっ……クククゲヒャヒャヒャアアアア!

よく言ってくれたゼニス君!! あの状況で諦めないか、さすがだぜ…!」


両者同時に踏み込んだ。

フェズ「ダークアロー!」

ゼニス「…っ! 時双波!」

フェズのダークアローにゼニスの技が当たって相殺。

フェズ「おおっ!? 相殺するとかやるなぁ…!?」

ゼニス「まだまだだ! 五連刃!!」

ゼニスの連撃が来る。でも、フェズもまともに喰らってやる気は毛頭なく…

フェズ「暗黒連義!!」



フェズの方も連撃で対抗。

傍から見れば、両者一歩も譲らない戦闘。

不謹慎だが、さぞ綺麗に見えただろう。

ゼニス「行くぞ、フェズ!」

フェズ「ククゲゲヒャヒャヒャア! じゃあな、ゼニス君!!」

双方武器を構え直して…同時に打ち出した。

ゼニス「無に帰せ…流れを変えろ…無白流変斬!」

フェズ「黒竜貪裂牙!」

二人の技が喰らい合う。

その衝撃で周りは顔を伏せずにいられなかった。

衝撃が収まった時…勝ったのは…

フェズ「がっ…俺の技が、敗れた…!?」

ゼニス「はぁ…はあ…っ」

……

ソレイユ「ゼニスが、勝った…?」

コバルト「ゼニス師匠…!」

サルファー「物凄い力がぶつかって…」

ビオレ「やる、じゃない…」

パリス「良かった…!」

まだフェズは息があるし、立ってもいられる。

でも、もうとどめを刺すだけの力はない。

フェズ「ゼニス君…今日の所は退いてやる…

いつか必ず…決着つけようぜぇ…」

そう言って転移していった。

ゼニス「も、う駄目…だ…少し休ませて…」

どさっとその場に座り込む。


???「…力を使いすぎたか。無理もない。

ゼニス、休んでからでいい。そこの壁にある古代文字読んでおけ」

ゼニス「……分かった、よ…」
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