月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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少年との出会い

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 22話

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ゼルク大陸から船に乗って戻って来たのは

王都カイルスのセイクレイ城。

アイリスのおかげで、城の中で休ませてもらえることになった。

アイリス「シオン……」

シオンはまだ眠ったままだ。

ゼニス「ネメシア将軍、シオンさんは平気なんですか?」

ネメシア「魔力の枯渇が酷い…命に別状はないですが、

元のように感情が戻るかどうかは…」

そんな……

バジル「それよりも、1000年前の英雄が敵、だと?」

ビオレ「確かよ。私達、見たわ」

サルファー「彼らは本当に平和を望んで戦っていました。

それこそ、自分達を犠牲にしてでも守りたいと…

多少の憎しみがあれど、平和な世を見れば喜んだはずです。」

パリス「……やっぱり、セピアが何かしたと考えるべきでしょうか…」

憎しみを増幅させた、と言っていた。

あの二人に何か起きた、というより、セピアが何かした。

ソレイユ「…そう言えば、ローレル将軍はどうしたんですか?」

……

ネメシア「また寝ているんでしょう? 起こして来ましょうか」

バジル「いえ、ちょっと、ローレル将軍は王から極秘の任務を受けていまして…」

ネメシア「え!? 私は聞いていないのだけど、バジルは知っているの!?」

あ、いや…と少し言葉に詰まった後、

バジル「たまたま、俺は聞いてしまって…ですが、詳細は聞いていませんので」

ネメシア「極秘で私達にも話そうとしないなら、私も聞かない方がいいわね…

じゃあ、部屋にはいないのね?」

はい、と短くバジルが答える。

ネメシア「とりあえず、皆さんも今日は城で休んで行って下さい」

ソレイユ「はい、ありがとうございます…」


シオンの使った部屋を出て、自分の部屋に入ろうとした時、

ゼニスがバジルに呼び止められた。

ゼニス「…何ですか?」

バジル「…ローレル将軍の事なんだが…お前は、イテールナ城の騎士だ。

せめて、お前には話しておいた方がいいかと思って、な…」

何の事だろうと思っていると、バジルが話し始めた。

バジル「まず…ローレル将軍は魔族でな…知っていると思うが、

魔族は全員造られた存在だ。」

ゼニス「え…ローレル将軍が?」

バジル「…魔族は長く魔族でいると、いつか自我を無くし化け物となる。

その速さには個体差があるが、最近ローレル将軍にも兆候が出て来ている」

さっき、ネメシア将軍を部屋に行かせなかったのは、まさか…

バジル「具合の悪そうな感じから、吐血…とうとうこの前、俺の前で倒れた。

たまたまネメシア将軍が見ていなかったから、俺はガイラルディア王に報告して、

隠す事にしたんだ…ネメシア将軍が気付いたら、心労で倒れてしまう…」

バジル将軍が言うには、ネメシア将軍はローレル将軍を

いざとなったら殺さなければならないなどとなれば、正気でいられるか分からないとの事。

ゼニス「…どうにか、できないんですか…?」

バジル「今のところはない。だが、諦めてはいない。何とか見つけ出す。

…ただ、もし見つからなかった場合、俺だけで止められる自信はない。」

ゼニス「……わかりました。その時は…手伝います。

ただ、僕達の方でも、ローレル将軍を救う方法、探してみます」

助かる、と一言だけ言ってバジルは立ち去った。

ゼニス(……さて、と、部屋に一応戻るか…)

と、部屋に入ろうとした時、横に仲間が全員集合。

ゼニス「みんな!?」

ソレイユ「ごめん、聞いちゃった…」

サルファー「何か呼び止められていたので、気になりまして」

ビオレ「水臭いわよ。一人で抱え込む気だったの?」

パリス「わ、私達も…お手伝いしま、す…」

……敵わないな。

ゼニス「ありがとう。…じゃあ、頼らせてもらうよ。

ほら、みんなも早く寝て。明日からも忙しくなるだろうからさ」


翌日、城前。

ソレイユ「ゼニス! シオンさんが目覚ました!」

朝、廊下で出会ったソレイユに、大声で声をかけられた。

ゼニス「今どこに!?」

ソレイユ「まだ部屋にいるよ!」

ソレイユに連れられてシオンの寝ていた部屋に入る。

アイリス「ゼニス、ソレイユ!」

サルファーとパリスとビオレもいる。

シオン「………」

目覚めたシオンはボロボロになった服を変え、新しくなっていた。



サルファー「どうやら、食事、移動、着替えなど、アクションに問題はないようです。

本当に必要最低限しか喋りませんが…」

ビオレ「そう言えば、そのペンダント、アイリスが付けていた奴よね?」

シオンの首にはアイリスが付けていたペンダントが付いている。

アイリス「うん、返したの。もともとシオンのだし、

シオンが帰って来たら、返そうって思ってたから」

なるほど…あれ、そう言えば、どこか雰囲気が…

髪を降ろしていないから…違う。

ゼニス「…シオンさん、髪短くなりました?」

アイリス「髪が痛んじゃってて…」

シオン「……さすがに少しどころの騒ぎじゃ、無かったから…切った…」

しかもハサミとかで切ったんじゃなくて、

自らの剣でバッサリ切ってしまったというんだからもう…

アイリス「雑に切るものだから、私がそのあと整えたんだけどね」

仲いいな…でも…


ネメシア『魔力の枯渇が酷い…命に別状はないですが、

元のように感情が戻るかどうかは…』


自分達は見た事が無い。

でも、以前のように、感情が戻ってくれればと願うのは…

夢物語だろうか…

アイリス「私は、シオンの心を必ず取り戻す。諦めてないよ」

ゼニス「アイリス…?」

アイリス「…諦めないって事を、シオンから教わったから。

…これから私、仲間に手紙出すつもりなの。シオンが、帰って来たって」

仲間にも会わせるつもりらしい。何がトリガーになって元に戻るかわからないから、

試せることは試すと。

ビオレ「まあ、よかったじゃない。何かあったらまた呼んで」

サルファー「さて、私達はこれからどうしますか?」

ゼニス「えーっと…まず、敵の能力への対抗策を探したいと…」

そう言うと、ゼニスの端末に連絡が。

画面を見ると、コバルトからだ。

ゼニス「…コバルト? どうした?」

コバルト「あ、ゼニス師匠! 今って時間ありますか!?」

ゼニス「あるよ。どうしようか迷ってたところだ。

魔法剣の特訓したいか?」

少し時間があいたあと、

コバルト「それもあるんですけど…ちょっと、ゼニス師匠達を連れて行きたい所があって」

ゼニス「え??」

コバルト「詳しい事は、お会いしてから話します。

以前特訓した町まで来ていただけますか?」

一応全員に確認を取ってから、コバルトに了解と伝える。

コバルト「じゃあ、お待ちしていますね!」

連絡を切ると、またディレオン大陸に戻ると知ったネメシア将軍が、

船を手配すると言ってくれた。

ソレイユ「いつもありがとうございます」

ネメシア「いえ、シオンさんの解放を手伝ってくれたお礼もありますから」


ゼニス達が船に乗っている間、某所では。

セピア「さてと、そろそろ段取りを考えないといけませんわね」

サラテリ「天馬にある宝玉の回収? もう英雄さん達とは会わせたもんね」

フェズ「つーか、指輪はどうすんだ」

エピナール「ソレイユさんが持っているので、奪うのは一番最後です。

一番奪いやすいので」

プリムローズ「優先順位は宝玉を集めて律刻剣りつこくけんを造ること」

グラファイト「それが無いと、話にならないからな…」

………

セピア「何をするにしても、まずは剣を造りだす事からです。」

エピナール「プラタナスさん、アリウムさん。お願いします」

プラタナス「僕達の出番?」

エピナール「ええ、あなた方の能力が必要不可欠です」

アリウム「何でも分解する力で、天馬の宝玉を隠してる部屋を破ればいいのね」

サラテリ「私達はギルドに入り込めないからよろしくー♪」

グラファイト「…あのさ…最近エルブいなくない?」

フェズ「あいつは元からあんまり会議出ないだろ。」

グラファイト「そうだったね…」


船に乗っている間、ゴタゴタが落ち着いたからか、

ビオレ、サルファー、パリスから眼帯の事に聞かれた。

もちろん、隠す事もないかと思ってちゃんと話した。

まあ、こうやって聞かれない限り言うつもりもなかったのだが。

ソレイユ「みんな、そろそろ着くって!!」

ゼニス「そっか、今行くよ」


レウニオンの町で下船する。

すると…

コバルト「ゼニス師匠! 皆さんも!!」

ソレイユ「コバルト、おはよー!」

サルファー「ああ、彼がですか。」

コバルト「こちらの方達は?」

仲間だと説明する。

コバルト「そうなんですか、よろしくお願いします!」

ビオレ「絵に描いたようないい子ね…」

確かに……

ゼニス「まあ、えっと、とりあえず、コバルトの用事って何?」

コバルト「あ、えっとですね。コンフィージェの塔に行ってほしいんです!」

コンフィージェの塔は、あの時、城の人達が人質に取られた時に連れて行かれた塔だ。

確か無人で、誰も使用していなかった。

パリス「どうして…そこに?」

コバルト「四零士と戦っているとゼニス師匠から聞きました。

それで、童話じゃなくて、凄く長い原本の方を読んでみたんです。」

ソレイユ「わざわざ!? あれを!?」

絵本とは別に、原本がある。大人用というか、活字好きのためというか、

酷く分厚い本が三冊ほどになっている。もはや辞書のよう。

コバルト「それを読んでいたら、四零士やその王の側近は、

強い特殊能力があると書いてありました。師匠達はそんな能力使われませんでしたか?」

……飢餓、勝率、戦鬼、病苦、血塗、消去。

ゼニス「……ある」

コバルト「僕、本が好きで、コンフィージェの塔についての歴史も知っていたんです。

そしたら、そこに、どんな能力でも発動を止める事の出来る剣があると書いてありまして!」

サルファー「そんな剣があるのですか!?」

もしもあるのならば、これ以上ない収穫だ。

コバルト「今もあるかは分かりません。ただの噂かもしれませんし…

でも、確認に行くだけ行ってみたいと思ったんです。」

パリス「…どうしますか?」

ゼニス「行ってみよう。無かったら無かった、あったらあったでそれでいい。

確認もせずに後悔するよりはよほどいい」

コバルトはこちらの事を考えてわざわざ原本まで読んでくれたんだ。

一緒に行ってみよう。

コバルト「じゃあ、行きましょう!」

ソレイユ「何かあったら下がってね? もし四零士とかいたら、君じゃ無理があるから」

コバルト「はい、わかりました」 

能力の発動を止める剣。それならば、英雄達の消滅させる能力も止められるだろうか。

あのオーラを止める事さえできれば……

逆にそれができなければ、彼らに傷一つ付けられないのだ。

これにかけるしかない。
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