月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 15話

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ミネルヴァ村で休んでいると、ゼニスの携帯端末に一つの連絡。

ゼニス「…あ、ブライトさんからだ。はい」

ブライト「ゼニスか。宝玉の方はどうなった?」

ゼニス「ええ、残りは後一つ。今手元には血塗の宝玉があります」

残りは消去の宝玉だけなのだが、場所が分からない。

ブライト「今どこにいる。朝宝玉を受け取りにそっちに向かう。」

ゼニス「ミネルヴァ村です」

分かった、と手短に答えられてきられる。

ゼニス(相変わらず不愛想だなぁ…でも、以前冗談言ってたし…)


ゼニスと連絡した時、ブライトはギルド「天馬」にいた。

アクバール「ゼニス君と連絡は取れたかい?」

ブライト「ああ。もう切ったが」

アクバール「えええ!? 話したかったのに…」

エーリカ「マスター、書類仕事が残ってるんですから、早く片付けてください」

相変わらずエーリカに怒られているマスター。

アクバール「そうだ、ブライトさん。ゼニス君に会ったらこれ、伝えておいてくれるかな?」

一枚の紙をブライトに渡す。

ブライト「これは…あれか…」

エーリカ「ロココさんとバレヌさんにも気を付けるように言ったり、

他のベテラン組に排除、捜索をお願いしているのですが、未だに掴めないのが現状です」

ブライト「分かった、伝えておく」


翌日。

ソレイユ「へぇ、シュロって呪いに対抗する手段の研究してるんだ!」

シュロ「ああ。僕達の仲間の父親が、敵にかけられた呪いで死ぬ選択肢しか残されなくてね…」

サルファー「…その人は、誰が…」

シュロ「…その人の息子が、とどめを刺した。自分がやるって言ってな…」

そんな…

サルファー「シュロさんは、そんな人を二度と出したくないから、こうして研究しているのですね」

シュロ「まあね、慣れないし大変な事ばかりだけど、

もう、あいつの辛そうな顔は見たくないしな。あいつがしおれてると調子が狂う」

誰の事だろうか……

そうやってシュロと話をしていると、部屋の外に転移魔法の光が。

パリス「…誰か、来ました…」

ゼニス「あ、もしかして」

シュロの部屋を出ると、ブライトが。

ゼニス「ブライトさん!」

ブライト「ゼニス、そいつらとは仲良くやってるのか?」

悩むまでもなく「もちろん」と答える。

ゼニス「あ、これ。言っていた宝玉です。」

宝玉をブライトに渡す。

ブライト「ああ。またギルドに持って行っておく。それから、アクバールからだ」

渡された一枚の紙。

ゼニス「…正体不明の人型の魔物。知能はない。

殺傷能力が高く、今までに何人もやられている。

それの討伐、犯人の特定を求む…何かの依頼ですか?」

ブライト「ギルドのベテランには頼んであるらしいが、ロココやバレヌ、

お前達には気を付けてほしいとの事だ。」

そう言われても…放っておけない…けれど、

仲間を危険に晒すわけには…

ブライト「こいつの事は俺も探っている。

人型の魔物とも遭遇経験があるが、俺の師と協力しても怪我を負った。

いいか、積極的に関わろうとするな。見つけたら逃げろ。

俺の方で何とかする」

ブライトとその師でも楽に勝てない相手…今の自分達では…

ゼニス「わかりました。ブライトさんも気を付けてください」

ブライト「ああ」

長く話をしていてしびれを切らしたのか、ソレイユが出て来る。

ソレイユ「ゼニスー! ブライトさんも何話してたんですかー!?」

ゼニス「あ、えっとこの事件のこt…」

ブライト「お前に好きな奴はいないのかと聞いていた」

そんな話してませんでしたよね!?

ソレイユ「ゼニスに好きな人!?」

ゼニス「違うから!」

ブライト「冗談だ。」

本当に冗談を言う人ではなかったんだけどなぁ…

ブライト「ゼニス、ソレイユを手放すなよ」

ゼニス「はい?」

ブライト「そっち方面の経験が無さすぎるぞ! 全く…」

それだけ言うと、転移して行ってしまった。

ゼニス「何だったんだろう…ね、ソレイユ」

振り返ると顏真っ赤になってるソレイユがいた。

ゼニス「ソレイユ!? 大丈夫!? 熱でもーー」

ソレイユ「うるさい!!」

ダンっと勢いよくシュロの家に戻ってしまった。

何か言ってしまっただろうか…


取りあえず、黙っているわけにもいかない。

家に入って、この事件の事をみんなにも伝える。

サルファー「物騒な事件ですね…ブライトさんでもきつい相手…」

パリス「これ、不味いですよね…?」

ソレイユ「何とかしたいけど、今の私達じゃ無理そうだね…」

シュロ「………」

シュロがさっきから黙っている。

ゼニス「どうした?」

シュロ「あ、いや…人型っていうのがな…気になって…」

んん??

シュロ「ところで、これからどこへ行くか決まったのか?」

ゼニス「いや、八方塞がりだから、一度セイクレイ城へ戻って

他の遺跡が分からないか聞いてこようと思ってる」

ソレイユ「じゃあ、また来た道戻らないとね!」

準備をして家を出る。

サルファー「では、お世話になりました」

パリス「シュロさん…研究…頑張ってください」

シュロ「ありがとう。みんなも元気で。いつでも遊びに来てくれ。

…そうだ。ゼニス」

シュロに呼び止められて振り返る。

シュロ「…この世界、まだ何か起きそうな気がする…気を付けてくれ」

ゼニス「…分かった。気を付けておく」


ゼニス達を見送った後、家に戻る。

シュロ(次の英雄は、彼らになるんだろうか…

…シオン、君が守った世界は絶対に守り続ける…)

「さーてと、研究を続けないと…」

重たい本の山を手に持ったその時…

???「シュローー!!!」

シュロ「うわああ!?」

突如背後からかけられた声にびっくりして本を落とす。

シュロ「ぐあ!?」

???「あはははっ、何回目!? いい加減慣れなよー!!」

シュロ「ろ、ローズマリー!!」

シュロの背後に立っていたのは金髪の少女。



ローズマリー「ねえ、シュロ、さっきの人型の魔物の話…」

シュロ「その時から隠れてたのか!? …ああ、多分そうだよな。」

ローズマリー「まだ変な実験続けてるっていうの、魔族を造った科学者…」


王都に戻ろうと街道を歩いていると…

空から何か…

ソレイユ「ゼニス、あれ何?」

ゼニス「太陽に被って良く見えな…え!?」

パリス「…人…ですよ!?」

サルファー「まさか…どうして!?」

落下してくる二人の人影。


その上空では…

???「翼! 翼出すぞ!」

???「で、でも下に人がいる!? 今出したら驚かせる!!」

???「落ちた先は海じゃないからただじゃすまないし、

人が落ちてきたとしても驚かせるだろう!?」

???「わ、分かったよー!!」


バサッ…と人影に翼が現れる。

パリス「…翼が…」

ゼニス「ええ……」

目の前に折りてきたのは金髪の天使? と、銀髪の悪魔?だった。





???「ごめんね、驚かせちゃった?」

ソレイユ「天使と、悪魔…?」

???「ああ、その通りだ」

まさか天使と悪魔に会えるとは…何があるか分からない…

サルファー「どうして、降りてきたんですか?」

フクシア「えーとね…って、名乗らないのもあれだね。私はフクシア。未来の大天使だよ」

アスター「俺はアスター。同じく未来の大悪魔だ」

大天使と大悪魔と言ったら、人間でいうところの王様的な立ち位置だ。

ゼニス達もそれぞれ自己紹介する。

フクシア「で、降りてきた理由は、ある人物の事。」

アスター「お前達は魔族が一人の人間によって造られた事を知ってるか?」

ゼニス「ああ、今は本に書かれているから何となくは…」

……

アスター「そいつを追っている。俺達は魔族と戦った当事者だからな…

人間を犠牲にして、魔族を造る。そんな外道がゆるされていいはずがない」

この人達も魔王討伐に行ったのか…

フクシア「で、その人が魔族を造る過程で失敗した人型の魔物と

最近生み出され始めた魔物同士の強制融合個体の討伐。

そして、始めようとしている魔物と精霊の融合を阻止するために、降りてきたの」

サルファー「…ゼニス」

ゼニス「ああ…人型の魔物はさっきブライトさんに言われた事と同じだ…それに…」

融合された魔物…精霊が狙い…

ギルドに入って初めて受けた依頼を思い出す。


『…ありがとうございます…依頼なんですが、奥を見てもらえると分かる通りです。

何者かに、精霊が次々に傷つけられています。

でも、私では戦えないですし、精霊も戦える相手ではなさそうなので…』


ビオレ『ごめん、名乗っておく。私から襲い掛かったわけだし。

私はビオレ。ある奴を追っている』


ビオレ『こいつらだよ。こいつらを放った奴を探しているの!』

ゼニス『改造、でもされてるのか!?』

ソレイユ『融合じゃない…!?』


まさか……そういう事だったのか…なら、ビオレは一人で…

ゼニス「…ソレイユ」

ソレイユ「私も気づいた。ビオレは一人でそんな物を造る大ボスを探し回ってるんだよ!」

パリス「…ゼニスさん…ソレイユさん…どうしたんですか?」

サルファーとパリスに事情を説明する。

サルファー「そうですか…女性が一人で…」

ゼニス「…少しでも、雑兵だけでも減らせないかな…

この人数なら、少しぐらいは何とかなるはずだし…」

もちろん、仲間を危険に晒してしまう可能性も考えた。

けれど、動きが俊敏だったとはいえ、ビオレは女の子だ。

そんなとんでもない奴を相手にしようとしているなんて…

フクシア「私達も、アジトは知らないから、雑兵討伐に取りあえず行こうと思ってるんだけど…」

アスター「お前達が協力してくれるなら心強いが…戦えるようだし、な」

アスターが自分達の武器を見て言う。

ゼニス「…みんな」

サルファー「私達は付いて行きますよ。大勢の方がリスクは減るでしょう」

パリス「頑張り…ます…!」

ソレイユ「ゼニス、私達は一緒に行くよ!」

……

ゼニス「じゃあ、二人に付いて行くよ。」

フクシア「わかった。行き先はクラック海岸にある洞窟」

アスター「そこから海岸にも数体漏れていてな…海に着地するわけにはいかなくて…」

それで街道を選んだのか。そしたらゼニス達がいて、

翼を出していいものか迷っていたと…

アスター「正直言って、危険だ。もういけるなら、このまま付いて来てくれ」

ゼニス「ああ、大丈夫だ」

どのみち遺跡の在り処もわかっていない。

今は目先の危機を何とかしよう。

ゼニス(……精霊か…何人か精霊を連れている人を見かけたけど、平気だろうか…)


某所。

プリムローズ「ねえ、消去の宝玉がある場所って、あいつらは知ってるの?」

???「知りませんね。ですから、彼らはセイクレイ城へ聞きに行くはずです」

グラファイト「そいつらだって知らないだろ…」

???「門番に渡しておくんです。遺跡の場所を記したメモを。

訪れた彼らに渡すように言っておきます」

サラテリ「断られても門番殺さないでよー? 必要以上の殺しは色々問題なんだから」

セピア「必要以上の殺しをしてしまっている奴は非常に迷惑ですわね…」

サラテリ「ほんとだよ。私達で排除する??」

エルブ「サラテリさんとフェズさんなら何とかなると思いますけど…」

サラテリ「え、こいつと行くの?」

フェズ「あ? 何だよ」

サラテリ「デリカシー無いんだよ、こいつー♪」

???「まあまあ、そう言わずにお願いします」

サラテリ「……無容赦でいいんだよね?」

セピア「ええ。仕留めてくださって構いません。

仮にそいつがダメでも、研究所内の雑兵は残らず消して来てください。」

……

フェズ「ククゲヒャヒャアアア! 正直ゼニス君のところ行きたいけど、今はそっちが先だな…

雑兵如き、残らず能力スキルで食らいつくしてやる…!」
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