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再び迫る影
月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 14話
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翌日、宿屋を出て出発しようとする一行。
レオノティス「お前達。俺はこれからエルフの村へ帰るが、
ゼニス達はミネルヴァ村の先にある渓谷の遺跡に行くんだよな?」
ゼニス「ああ、そうする」
レオノティス「もし…でいい。モノクルをつけた白衣を着た男がいたら、
「いい加減ドジするな」と伝えておいてくれ」
ええ…?
ソレイユ「いいですけど…もしかして知り合いなんですか?」
レオノティス「魔王退治で一緒だった」
なるほど…最近、二年前の英雄と縁があるな。
サルファー「では、行って来ます。レオノティスさんもお気を付けて」
パリス「…あ、の…その人って、名前は…?」
か細い声だけど、パリスが声を出した。
レオノティス「……「シュロ」だ」
王都を出て道なりに進んでいく。
しばらく歩くと、どんどん風が強くなってきた。
ソレイユ「何か、風強くない? 髪乱れる…」
ゼニス「大丈夫か? でも本当に風が…魔物が少ないのはその影響か?」
強い風の中を進んでいくと、一つの村があった。
魔物は幸いいなかったので、怪我一つなく辿り着いた。
サルファー「…小さいけれど、綺麗な村ですね。」
パリス「…奥、教会…がある」
パリスが言う通り、村の奥に教会が見える。
ゼニス「行ってみるか? もしかしたらシュロって人がいるかもしれないし」
ソレイユ「そうね。遺跡に行く前に、少し見て回ろっか?」
教会の扉を開けると、中には子供がたくさん。
そして…
???「いらっしゃい。旅人さんですか?」
出て来たのは修道女と思われる銀髪の女性。
ミスト「私はミストと言います。ここは孤児院兼教会。
お疲れならベッドを用意する事もできますよ」
ゼニス「あ、えっと…疲れてはないので大丈夫です。
孤児院って事は…ここに居る子供たちは…」
ミスト「ええ。全員孤児です」
身寄りのない子供をここで引き取っているらしい。
外に出て駆けまわっている子供を見ていると、みんな元気そうで安心した。
ソレイユ「…ここに居る村の人達のおかげね」
サルファー「そうだ、ミストさん。この近くに遺跡が最近見つかったと聞いたのですが」
ミスト「ああ、ありますよ。ディアナ渓谷の入り口付近ですね。
この村の奥から出るとあります…あの、行くのでしたらお願いが…」
お願い…?
ミスト「遺跡にシュロという人が行ったんです。
ここの教会も手伝ってもらっているのですが…危険が無いか調べに行くと…」
シュロ…そう言えばレオノティスさんに頼まれたところだ。
ゼニス「見つけてくればいいですか?」
ミスト「はい…お願いします。彼も強いので心配いらないと思いますが…
場所が遺跡なので、ドジを踏まないか心配で…」
ドジ……
レオノティス「もし…でいい。モノクルをつけた白衣を着た男がいたら、
「いい加減ドジするな」と伝えておいてくれ」
ああ…なるほど…
サルファー「お任せを。では、行きましょうか。」
ソレイユ「うん、そうね。パリス、いける?」
パリス「は、はい…!」
村の出口に案内され、そこから村の外へ出る。
途端に物凄い突風。
ソレイユ「わっ!?」
パリス「ふぇ…!?」
ゼニス「酷い風だな…ステラの谷はこんなじゃなかったぞ…」
風の中、サルファーが辺りを見回す。
サルファー「皆さん、あそこに入り口らしきものがあります。」
指さした先に、穴の開いているところがあった。
穴の中に階段が続いている。
ソレイユ「これかな?」
ゼニス「降りよう。気を付けて」
階段を下りていく。すると、今までの遺跡とは違って、結構な広さがありそうだった。
ソレイユ「ファーム遺跡みたいだね…」
ゼニス「確かに、あそこも結構広かったし…」
この中からシュロを探すのは至難の業かもしれない…一本道でもあればいいが。
遺跡内は入り組んでいるし、罠らしきものも何個かあるし、
魔物もいる。
ゼニス「はあっ!」
サルファー「…ふっ!」
ゼニスとサルファーが大体いち早く気付いて魔物の討伐。
ソレイユとパリスは罠の確認をしていた。
ゼニス「この辺りはもういない、か?」
サルファー「ええ、結構多いですね…お二人の方はどうですか?」
ソレイユとパリスが何かを覗き込んでいるので行ってみる。
ソレイユ「ゼニス、このレバー、下げていいと思う?」
あったのは一つのレバー。
この辺りに何か罠は……
パリス「あ、あの…罠じゃないですけど…
先に進む道がキレイに四角く切り抜かれてる感じで…」
言われてみてみると、先へ進めそうな所が途切れている。
サルファー「こうなればイチかバチかです。下げてみましょう」
結構思い切りが良いのがサルファーだ。
ゼニス(僕じゃあ、しばらく悩んでるな、絶対…)
ソレイユ「分かった、じゃあ下げてみる」
レバーを下げると、案の定。途切れていた床が現れて通れるように。
パリス「わあ、すごい…!」
ゼニス「よし、じゃあ進んでみるか。」
またしばらく歩いて行くと、上に上がるための階段が。
この遺跡、不思議なもので、地下にあるのだが、
奥に行くためには内部の階段を
上がったり下ったりを繰り返す事になっていた。
パリス「これも上ればいいんでしょうか…?」
その瞬間。上の方でガタンっと物音が。
ゼニス「何だ?」
そう思った瞬間、長めの階段が坂道に変化した。
サルファー「!? 皆さん、離れてください!?」
上を見ると、声が…何か…誰か…?
???「うわあああああ!?」
ゼニス「何だよ!?」
ソレイユ「人が転がり落ちてくる!!」
ドターーンと大きな音を立てて砂煙が起きる。
サルファー「ゲホッ…んんっ、皆さん、大丈夫ですか?」
パリス「は、はい…」
ソレイユ「私も…って、ねえあれ!」
ソレイユが指さした方を見ると、壁に衝突して目を回している人が。
今の坂道から落ちてきた人だ。
ゼニス「だ、大丈夫ですか!?」
???「ら、らんなんだよ(な、何なんだよ)、もう……」
目を回している。
しばらくここで待って…
???「ん、ん…ここは…? 確か僕は、坂から落ちて…」
サルファー「気が付きましたか? 罠でも起動してしまったのでしょう。
階段が坂道に変化したんです」
???「君達は…? 君達も遺跡調査に来たのか…?」
ソレイユ「えーと、まあそんな感じかな。実はですね…」
ここに来た理由。自分達の目的と、ミストに頼まれた事を伝える。
???「ミストさんが…そうか」
ゼニス「貴方、シュロさんですよね?」
シュロ「ああ、そうだ。僕がシュロだけど…ミストさんから特徴でも聞いたのか?」
それに対して首を横に振る。
サルファー「王都でレオノティスさんに会いまして、彼から聞いたんです。
ついでに伝言を頼まれましたよ。「いい加減ドジするな」だそうです」
シュロ「あ、あいつ…!? 余計なお世話だっ
まったくレオは!!! 二年経っても変わらないな!!」
すごく仲良さそうに聞こえるのは気のせいだろうか。
シュロ「す、すまない、取り乱した…僕が起きるまで待っててくれたのか?」
ソレイユ「ミストさんに頼まれてますし」
まあ、このまま自分達は奥へ行くんだけど…
シュロも階段を上ろうとしたという事は、奥に行くつもりだったのだろう。
シュロ「僕も君達に付いて行っていいか? その古代文字や宝玉の件、僕も気になる」
ゼニス「構いません。よろしくお願いします」
敬語はいらないさ。と言われてしまったので、タメ口で話す事になった。
先ほど坂道に変化した階段は階段に戻っていた。
シュロ「かなり長い階段だ。ここを上り切れば恐らく最深部だろう」
階段を上っていくと、明らかに色の違うタイルが一つ。
サルファー「多分これですね…これを踏むと坂道に変化してしまう仕様でしょう」
シュロ「……とんでもないトラップだな…;;;」
何も気にせずに上っていたら踏んでしまうだろう。
長い階段、上り切った時には結構へとへとだった。
ソレイユ「疲れたーー!!」
シュロ「長すぎだろう…!?」
サルファー「パリス、大丈夫ですか?」
パリス「…はぁ、はあ…はい…」
体力の限界の近い体を何とか動かして前を見る。
ゼニス「…あった! 古代文字書かれてる!」
『五に、血塗の魂。それは友を想う狂気の淑女。
六に、消去の魂。それは友の剣となる邪悪な紳士。
七に、呪殺の魂。それは民のために呪いを詠う姫君。』
ゼニス「…これって…もしかして……いや、でも…
そうなると、呪殺は……」
ソレイユ「ゼニスー!! 宝玉があったよー!」
ソレイユに声をかけられて向かう。
パリス「良かった…まだ宝玉ありました…!」
シュロ「君達も大変だな、いつもこんなことしてるのか?」
サルファー「私とパリスはこれが初めてですが、ゼニスとソレイユは何度も」
気をきかせて古代文字のメモを取ってくれたサルファーが傍に来る。
ゼニス「急いで出ようか。ここにまたあいつらが来るとも分からない」
ソレイユ「そだね、じゃあ…」
帰ろうか、と言おうとしたその時。
その場の床が抜けた。
ゼニス「え!?」
ソレイユ「嘘!?」
サルファー「なっ!?」
パリス「きゃ!?」
シュロ「うわっ!?」
全員仲良くその下に落下。
…………
ゼニス「いてて…結構落ちたな…」
でも、落ちた先は土と草があって、動けないほどではない。
ゼニス「みんな、大丈夫か?」
ソレイユ「私は平気」
サルファー「ええ」
パリス「さ、サルファーさん!? 私の事抱えてくれてたんですか!?」
サルファーは落下している時にパリスを掴んで抱えて落下したようだ。
さすが執事…咄嗟にどうするべきかが分かっている。
ゼニス(動揺してそれどころじゃなかった…;;;)
シュロ「いてて…えーと、レンズレンズ…あ、あった…」
モノクルが落ちている間に外れたらしく、拾っている。
ゼニス「というか、ここはどの辺りだ…? っていうか…」
四方八方壁。
ソレイユ「…出口は!?」
焦ったところに追い打ち。遺跡が揺れ出し崩壊を始める。
サルファー「なっ!? 何が起きてるんですか!?」
そこへ一人転移してきた。
ゼニス「エルブ!?」
エルブ「お久しぶりです」
ソレイユ「この揺れは…貴方の仕業!?」
問いに頷く。
エルブ「古代文字があるので取り壊しを。
あと、血塗の宝玉の件もありますので、ここに埋めてから奪おうかと」
戦う気は、無いという事か?
エルブは転移ができる。逃げられないのは自分達だけ。
パリス「ど、どうしましょう…!?」
ゼニス「どこかに抜け道は無いのか!?」
こうしている間にも時間は過ぎる。
エルブは余裕そうだ。
エルブ「あるわけないでしょう。仮にあったとしても教えるわけがありません」
そう言って壁に寄りかかった。その時…
エルブ「わあっ!?」
だーんっと音を立ててエルブが倒れる。その後ろの壁が倒れたのだ。
……抜け道だ。
シュロ「な、何か分からないけど……」
ゼニス「みんな! 脱出するぞ!」
倒れているエルブは、転移できるからスルーでいいだろう。
エルブ「なっ! 抜け道なんて無いと言っているでしょう!!!」
後の祭りなのにそう言うエルブに走りながら告げる。
ゼニス「お前が開けてくれただろー!!!」
しばらく走っていると、坂道が見えた。それを上ると…
サルファー「ここは…ディアナ渓谷に戻って来れたようですね…」
それと同時に、地下で崩れる音がした。
シュロ「た、助かった…というか、あいつ馬鹿じゃないか???」
それはゼニス達も思っている。
ソレイユ「ゼニス、あいつの気配は?」
ゼニス「…無いけど、転移した魔力が漂ってる。逃げたよ」
パリス「良かった、です……」
見捨てて逃げ出してしまったのが心苦しかったのだろうか。
パリスが優しすぎる。
シュロ「と、取りあえず帰ろう。
教会に泊まって行ってくれ。ミストさんには言っておく」
ゼニス「ありがとう、そうさせてもらうよ」
ミネルヴァ村。
ミスト「シュロさん。無理しないでくださいよ」
シュロ「すみません…」
ミスト「皆さん、シュロさんの事ありがとうございます。
ここにお泊りください。疲れたでしょう?」
今日はお言葉に甘えてこの村で休んでいくことになった。
サルファー「もう疲れましたね…次の目的地も、明日考えましょうか」
ソレイユ「そうしよう。」
ゼニス「うん…じゃあ、みんな今日はゆっくり休んで。
…あ、そう言えば、シュロ。あの遺跡ってなんていうのか分かるか?」
シュロ「ああ、カエデス遺跡だよ」
某所。
エルブ(何であんなところに抜け道が……)
???「罠にかかった人用のせめてもの救済処置ですね…
見つけられたら逃げれば良い、と。
よりによって、その一枚に貴方が寄りかかるとは…」
エルブ「…ごめん…」
サラテリ「まーまーそこまでにしてあげてよ。
どうせ奪いに行くでしょ?」
フェズ「そのうちあいつらがな。それよりお前。
いつ出撃すんだよ」
???「ふふ、消去の宝玉を彼らが取りに行ったら…出向きましょうか」
レオノティス「お前達。俺はこれからエルフの村へ帰るが、
ゼニス達はミネルヴァ村の先にある渓谷の遺跡に行くんだよな?」
ゼニス「ああ、そうする」
レオノティス「もし…でいい。モノクルをつけた白衣を着た男がいたら、
「いい加減ドジするな」と伝えておいてくれ」
ええ…?
ソレイユ「いいですけど…もしかして知り合いなんですか?」
レオノティス「魔王退治で一緒だった」
なるほど…最近、二年前の英雄と縁があるな。
サルファー「では、行って来ます。レオノティスさんもお気を付けて」
パリス「…あ、の…その人って、名前は…?」
か細い声だけど、パリスが声を出した。
レオノティス「……「シュロ」だ」
王都を出て道なりに進んでいく。
しばらく歩くと、どんどん風が強くなってきた。
ソレイユ「何か、風強くない? 髪乱れる…」
ゼニス「大丈夫か? でも本当に風が…魔物が少ないのはその影響か?」
強い風の中を進んでいくと、一つの村があった。
魔物は幸いいなかったので、怪我一つなく辿り着いた。
サルファー「…小さいけれど、綺麗な村ですね。」
パリス「…奥、教会…がある」
パリスが言う通り、村の奥に教会が見える。
ゼニス「行ってみるか? もしかしたらシュロって人がいるかもしれないし」
ソレイユ「そうね。遺跡に行く前に、少し見て回ろっか?」
教会の扉を開けると、中には子供がたくさん。
そして…
???「いらっしゃい。旅人さんですか?」
出て来たのは修道女と思われる銀髪の女性。
ミスト「私はミストと言います。ここは孤児院兼教会。
お疲れならベッドを用意する事もできますよ」
ゼニス「あ、えっと…疲れてはないので大丈夫です。
孤児院って事は…ここに居る子供たちは…」
ミスト「ええ。全員孤児です」
身寄りのない子供をここで引き取っているらしい。
外に出て駆けまわっている子供を見ていると、みんな元気そうで安心した。
ソレイユ「…ここに居る村の人達のおかげね」
サルファー「そうだ、ミストさん。この近くに遺跡が最近見つかったと聞いたのですが」
ミスト「ああ、ありますよ。ディアナ渓谷の入り口付近ですね。
この村の奥から出るとあります…あの、行くのでしたらお願いが…」
お願い…?
ミスト「遺跡にシュロという人が行ったんです。
ここの教会も手伝ってもらっているのですが…危険が無いか調べに行くと…」
シュロ…そう言えばレオノティスさんに頼まれたところだ。
ゼニス「見つけてくればいいですか?」
ミスト「はい…お願いします。彼も強いので心配いらないと思いますが…
場所が遺跡なので、ドジを踏まないか心配で…」
ドジ……
レオノティス「もし…でいい。モノクルをつけた白衣を着た男がいたら、
「いい加減ドジするな」と伝えておいてくれ」
ああ…なるほど…
サルファー「お任せを。では、行きましょうか。」
ソレイユ「うん、そうね。パリス、いける?」
パリス「は、はい…!」
村の出口に案内され、そこから村の外へ出る。
途端に物凄い突風。
ソレイユ「わっ!?」
パリス「ふぇ…!?」
ゼニス「酷い風だな…ステラの谷はこんなじゃなかったぞ…」
風の中、サルファーが辺りを見回す。
サルファー「皆さん、あそこに入り口らしきものがあります。」
指さした先に、穴の開いているところがあった。
穴の中に階段が続いている。
ソレイユ「これかな?」
ゼニス「降りよう。気を付けて」
階段を下りていく。すると、今までの遺跡とは違って、結構な広さがありそうだった。
ソレイユ「ファーム遺跡みたいだね…」
ゼニス「確かに、あそこも結構広かったし…」
この中からシュロを探すのは至難の業かもしれない…一本道でもあればいいが。
遺跡内は入り組んでいるし、罠らしきものも何個かあるし、
魔物もいる。
ゼニス「はあっ!」
サルファー「…ふっ!」
ゼニスとサルファーが大体いち早く気付いて魔物の討伐。
ソレイユとパリスは罠の確認をしていた。
ゼニス「この辺りはもういない、か?」
サルファー「ええ、結構多いですね…お二人の方はどうですか?」
ソレイユとパリスが何かを覗き込んでいるので行ってみる。
ソレイユ「ゼニス、このレバー、下げていいと思う?」
あったのは一つのレバー。
この辺りに何か罠は……
パリス「あ、あの…罠じゃないですけど…
先に進む道がキレイに四角く切り抜かれてる感じで…」
言われてみてみると、先へ進めそうな所が途切れている。
サルファー「こうなればイチかバチかです。下げてみましょう」
結構思い切りが良いのがサルファーだ。
ゼニス(僕じゃあ、しばらく悩んでるな、絶対…)
ソレイユ「分かった、じゃあ下げてみる」
レバーを下げると、案の定。途切れていた床が現れて通れるように。
パリス「わあ、すごい…!」
ゼニス「よし、じゃあ進んでみるか。」
またしばらく歩いて行くと、上に上がるための階段が。
この遺跡、不思議なもので、地下にあるのだが、
奥に行くためには内部の階段を
上がったり下ったりを繰り返す事になっていた。
パリス「これも上ればいいんでしょうか…?」
その瞬間。上の方でガタンっと物音が。
ゼニス「何だ?」
そう思った瞬間、長めの階段が坂道に変化した。
サルファー「!? 皆さん、離れてください!?」
上を見ると、声が…何か…誰か…?
???「うわあああああ!?」
ゼニス「何だよ!?」
ソレイユ「人が転がり落ちてくる!!」
ドターーンと大きな音を立てて砂煙が起きる。
サルファー「ゲホッ…んんっ、皆さん、大丈夫ですか?」
パリス「は、はい…」
ソレイユ「私も…って、ねえあれ!」
ソレイユが指さした方を見ると、壁に衝突して目を回している人が。
今の坂道から落ちてきた人だ。
ゼニス「だ、大丈夫ですか!?」
???「ら、らんなんだよ(な、何なんだよ)、もう……」
目を回している。
しばらくここで待って…
???「ん、ん…ここは…? 確か僕は、坂から落ちて…」
サルファー「気が付きましたか? 罠でも起動してしまったのでしょう。
階段が坂道に変化したんです」
???「君達は…? 君達も遺跡調査に来たのか…?」
ソレイユ「えーと、まあそんな感じかな。実はですね…」
ここに来た理由。自分達の目的と、ミストに頼まれた事を伝える。
???「ミストさんが…そうか」
ゼニス「貴方、シュロさんですよね?」
シュロ「ああ、そうだ。僕がシュロだけど…ミストさんから特徴でも聞いたのか?」
それに対して首を横に振る。
サルファー「王都でレオノティスさんに会いまして、彼から聞いたんです。
ついでに伝言を頼まれましたよ。「いい加減ドジするな」だそうです」
シュロ「あ、あいつ…!? 余計なお世話だっ
まったくレオは!!! 二年経っても変わらないな!!」
すごく仲良さそうに聞こえるのは気のせいだろうか。
シュロ「す、すまない、取り乱した…僕が起きるまで待っててくれたのか?」
ソレイユ「ミストさんに頼まれてますし」
まあ、このまま自分達は奥へ行くんだけど…
シュロも階段を上ろうとしたという事は、奥に行くつもりだったのだろう。
シュロ「僕も君達に付いて行っていいか? その古代文字や宝玉の件、僕も気になる」
ゼニス「構いません。よろしくお願いします」
敬語はいらないさ。と言われてしまったので、タメ口で話す事になった。
先ほど坂道に変化した階段は階段に戻っていた。
シュロ「かなり長い階段だ。ここを上り切れば恐らく最深部だろう」
階段を上っていくと、明らかに色の違うタイルが一つ。
サルファー「多分これですね…これを踏むと坂道に変化してしまう仕様でしょう」
シュロ「……とんでもないトラップだな…;;;」
何も気にせずに上っていたら踏んでしまうだろう。
長い階段、上り切った時には結構へとへとだった。
ソレイユ「疲れたーー!!」
シュロ「長すぎだろう…!?」
サルファー「パリス、大丈夫ですか?」
パリス「…はぁ、はあ…はい…」
体力の限界の近い体を何とか動かして前を見る。
ゼニス「…あった! 古代文字書かれてる!」
『五に、血塗の魂。それは友を想う狂気の淑女。
六に、消去の魂。それは友の剣となる邪悪な紳士。
七に、呪殺の魂。それは民のために呪いを詠う姫君。』
ゼニス「…これって…もしかして……いや、でも…
そうなると、呪殺は……」
ソレイユ「ゼニスー!! 宝玉があったよー!」
ソレイユに声をかけられて向かう。
パリス「良かった…まだ宝玉ありました…!」
シュロ「君達も大変だな、いつもこんなことしてるのか?」
サルファー「私とパリスはこれが初めてですが、ゼニスとソレイユは何度も」
気をきかせて古代文字のメモを取ってくれたサルファーが傍に来る。
ゼニス「急いで出ようか。ここにまたあいつらが来るとも分からない」
ソレイユ「そだね、じゃあ…」
帰ろうか、と言おうとしたその時。
その場の床が抜けた。
ゼニス「え!?」
ソレイユ「嘘!?」
サルファー「なっ!?」
パリス「きゃ!?」
シュロ「うわっ!?」
全員仲良くその下に落下。
…………
ゼニス「いてて…結構落ちたな…」
でも、落ちた先は土と草があって、動けないほどではない。
ゼニス「みんな、大丈夫か?」
ソレイユ「私は平気」
サルファー「ええ」
パリス「さ、サルファーさん!? 私の事抱えてくれてたんですか!?」
サルファーは落下している時にパリスを掴んで抱えて落下したようだ。
さすが執事…咄嗟にどうするべきかが分かっている。
ゼニス(動揺してそれどころじゃなかった…;;;)
シュロ「いてて…えーと、レンズレンズ…あ、あった…」
モノクルが落ちている間に外れたらしく、拾っている。
ゼニス「というか、ここはどの辺りだ…? っていうか…」
四方八方壁。
ソレイユ「…出口は!?」
焦ったところに追い打ち。遺跡が揺れ出し崩壊を始める。
サルファー「なっ!? 何が起きてるんですか!?」
そこへ一人転移してきた。
ゼニス「エルブ!?」
エルブ「お久しぶりです」
ソレイユ「この揺れは…貴方の仕業!?」
問いに頷く。
エルブ「古代文字があるので取り壊しを。
あと、血塗の宝玉の件もありますので、ここに埋めてから奪おうかと」
戦う気は、無いという事か?
エルブは転移ができる。逃げられないのは自分達だけ。
パリス「ど、どうしましょう…!?」
ゼニス「どこかに抜け道は無いのか!?」
こうしている間にも時間は過ぎる。
エルブは余裕そうだ。
エルブ「あるわけないでしょう。仮にあったとしても教えるわけがありません」
そう言って壁に寄りかかった。その時…
エルブ「わあっ!?」
だーんっと音を立ててエルブが倒れる。その後ろの壁が倒れたのだ。
……抜け道だ。
シュロ「な、何か分からないけど……」
ゼニス「みんな! 脱出するぞ!」
倒れているエルブは、転移できるからスルーでいいだろう。
エルブ「なっ! 抜け道なんて無いと言っているでしょう!!!」
後の祭りなのにそう言うエルブに走りながら告げる。
ゼニス「お前が開けてくれただろー!!!」
しばらく走っていると、坂道が見えた。それを上ると…
サルファー「ここは…ディアナ渓谷に戻って来れたようですね…」
それと同時に、地下で崩れる音がした。
シュロ「た、助かった…というか、あいつ馬鹿じゃないか???」
それはゼニス達も思っている。
ソレイユ「ゼニス、あいつの気配は?」
ゼニス「…無いけど、転移した魔力が漂ってる。逃げたよ」
パリス「良かった、です……」
見捨てて逃げ出してしまったのが心苦しかったのだろうか。
パリスが優しすぎる。
シュロ「と、取りあえず帰ろう。
教会に泊まって行ってくれ。ミストさんには言っておく」
ゼニス「ありがとう、そうさせてもらうよ」
ミネルヴァ村。
ミスト「シュロさん。無理しないでくださいよ」
シュロ「すみません…」
ミスト「皆さん、シュロさんの事ありがとうございます。
ここにお泊りください。疲れたでしょう?」
今日はお言葉に甘えてこの村で休んでいくことになった。
サルファー「もう疲れましたね…次の目的地も、明日考えましょうか」
ソレイユ「そうしよう。」
ゼニス「うん…じゃあ、みんな今日はゆっくり休んで。
…あ、そう言えば、シュロ。あの遺跡ってなんていうのか分かるか?」
シュロ「ああ、カエデス遺跡だよ」
某所。
エルブ(何であんなところに抜け道が……)
???「罠にかかった人用のせめてもの救済処置ですね…
見つけられたら逃げれば良い、と。
よりによって、その一枚に貴方が寄りかかるとは…」
エルブ「…ごめん…」
サラテリ「まーまーそこまでにしてあげてよ。
どうせ奪いに行くでしょ?」
フェズ「そのうちあいつらがな。それよりお前。
いつ出撃すんだよ」
???「ふふ、消去の宝玉を彼らが取りに行ったら…出向きましょうか」
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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