月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 13話

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ラディル大陸。王都カイルスの近くの港町に降り立つ。

ゼニス「他大陸に来たんだな…実感ない」

ソレイユ「王都カイルスってどこ?」

地図を広げてみる。

サルファー「…ここから西ですね。すぐ傍です」

歩き出そうとすると、町の人の会話が聞こえてきた。

「王都カイルスの占い師知ってるか?」

「私知ってる。占ってもらったんだけど、すごく当たるの」

「二年前までは放浪占い師だったんだろ?」

占い師か…王都に着いたら、見てみようか。


港町を出ると、王都はすぐに見えた。

ソレイユ「わあ、すごい活気がある!」

ゼニス「ソムニウム城下町よりにぎわってないか?」

サルファー「ここにあるセイクレイ城は、二年前、

魔王を封じた御一行に協力したと言われていますから。

それに占い師の評判。人気も出ますよ」

少し歩いていると、パリスが足を止めた。

パリス「あの…あれ…」

パリスが見ている方を見ると、すごい行列が。

ゼニス「…あれは…」

ソレイユ「あ、占いだ! こんなに行列…!?」

寄ってみたいけど、この行列の中は…

サルファー「とりあえず、城で用事を済ませてから、もう一度寄ってみましょうか。」

パリス「い、いいんですか…?」

ゼニス「もともと寄るつもりだったから」

そう言うとパリスがふわっと笑った。


城の前まで来て、門番にブライトが書いてくれた紹介状を見せると、

すぐに確認を取って通してくれた。

「今、謁見者が来ていましてね。

もうお帰りになると思いますが…あ、いました」

廊下の向かいから歩いてきたのは緑の髪の…エルフ…?



???「謁見者か?」

「ええ。レオノティス様はお帰りですか?」

レオノティスというらしい。

レオノティス「ああ。戻る前にブローディアに顔出してくるが」

「また用事が終わったら寄って行けと言われました?」

そんな所だ、と笑うとその場を立ち去って行った。

ゼニス「今の人は…」

「この大陸のエルフの村の長を務めている、レオノティス様です。

ハーフエルフに対する偏見をなくすため、ガイラルディア王と協力して、

世界に広めてくださっているんですよ」

最近になってハーフエルフの差別が減って来たのはそのせいだったのか。


玉座の間に通してもらう。

「ガイラルディア様、お連れしました」

ガイラルディア「ありがとう。…よく来てくれた」



穏やかそうな王様だ。その両脇にいるのは、将軍だろうか…三人いる。

ゼニス「ゼニスと言います。イテールナ城で騎士隊長をやっていました」

ソレイユ「ソレイユです」

サルファー「私はサルファー、こちらはパリス」

ぺこりとパリスがお辞儀だけする。

ガイラルディア「ああ、イテールナ城の騎士か。

紹介状に、ブライトの弟子だと書いてあった」

師匠は…別にそこまで教えなくてもよくないだろうか;;;

ガイラルディア「こちらも紹介しておこうか。」

そう言うと、脇に控えていた三人が前に出る。

ネメシア「初めまして。私はネメシア。将軍兼、この国の王女です」



いきなり爆弾投下。

ソレイユ「王女様!? 戦ってるんですか!?」

ネメシア「ええ。」

今は王女も戦える時代か…

???「よっと、俺の事は知ってるか!?」



なぜクイズ形式…

サルファー「ローレル将軍ですよね。

以前屋敷の前に任務でいらしていたので覚えています」

ローレル将軍はディレオン大陸に来た事があったのか。

ローレル「くぅぅぅぅ! 名前を間違えられない! なんて素晴らしいんだ!?」

何だこの反応は…間違えられた事があるのか???

バジル「俺はバジル。一年前に将軍に昇格した。」



魔王との戦いが決着して一年後…ということは以前は次期将軍候補だったのだろう。

ガイラルディア「さて、ここには何の用だったか…」

ゼニス「実は…遺跡の事で」


ガイラルディア「なるほど…新たな敵か…

それで、相手にその宝玉を取られないようにするのと、古代文字の解明のために

遺跡に行きたいのだが、場所が分からないから聞いて来いと」

ソレイユ「はい」

……

ガイラルディア「わかった。知っての通り、最近見つかった遺跡で、

場所は地下だ。ミネルヴァ村の置く。ディアナ渓谷の地下。

今行くと、もしかしたら彼と鉢合わせるかもしれないな」

人が…!?

ソレイユ「どんな人ですか!?」

ネメシア「安心してください。四零士などではありません。

過去に魔王を封じてくださった人の一人ですよ」

シオンの仲間か…

ローレル「宝玉も狙いじゃないし、

自分の故郷の近くって事で調べたかったらしいから、行かせてあるんだ」

ガイラルディア「ただ、彼にも言ったが場所は地下だ。

地震でも起きて崩れない保障はない。それでも行くか?」

サルファー「もちろんです」

パリス「わ、私も…平気…です…」

ゼニスとソレイユも頷く。

ガイラルディア「わかった。許可する。

貴公らの無事を祈っている」


謁見を終えて外に出る。

占い師のいた所は行列が無くなっていた。

かわりにレオノティスが来ている。

ゼニス「あ、さっきの…」

レオノティス「ああ、お前達か。謁見は終わったのか?」

サルファー「ええ。」

ガタっと、椅子に座っていた占い師が立ち上がる。

???「お客さん!? どーぞどーぞ、まだやってるから!」



ソレイユ「え、私達は覗きに来ただけで…」

???「いいのいいの、遠慮しないで! 初回限定ただで占ってあげるから!」

席からこちらに駆け寄ってきた。と思えば…

???「きゃあ!?」

ドターン!! …こけた。

レオノティス「ハァ…ドジは直っていないんだから落ち着けといつも…;;;」

???「いたたた…;;;;」

???「ビ……ルビ…重いルビ!!」

こけた占い師の下から何か声が…

パリス「占い師さん…その子、潰れてる…」

???「わーあ!? ごめんカルビ!!」

慌てて退くと、茶色いカピバラが顔を出す。

カルビと呼ばれたその子は喋っているので、恐らく精霊だろう。

カルビ「何するルビか!? ブローディア!」

どうやらその占い師はブローディアという名前らしい。

???「大丈夫ルイか? カルビ」

レオノティスの肩から白いカピバラが顔を出す。

カルビ「酷いルビよね!? テイル!!」

パリス「……可愛い」

ブローディア「この子達ね、兄弟なんだよ♪」

兄弟の精霊…

ブローディア「で、どうする? 占う!?」

ゼニス「じ、じゃあ…お願いしようかな…;;; えっと…僕はゼニスです。」

まかせてっ! と張り切って杖を構える。

さっきまでの陽気な雰囲気からは一転。神秘的な空気が辺りを包む。

ブローディア「彼の者の名はゼニス。彼の進む道を教えたまえ」

ブローディアがそう言うと、杖の珠に何かが映る。

ブローディア「これから行く遺跡で、誰かと会うみたいだね」

さっき王様が言っていた「彼」の事だろうか。

ブローディア「後ね…何だろう…シルエットでよく分からない。

封じられてる感じ。髪の長い誰かが映ってるよ? その人ともいつかで会うのかな?」

?

ブローディア「ここまでだね。そういえば、ゼニス君。

記憶ないのかな? そんな感じが占いで感じたよ」

ゼニス「えっ!? すごい…そこまでわかるのか…」

レオノティス「ブローディアの占いの腕は折り紙付きだ。

魔王退治の際、俺達も何度も助けられた」

…もしかして…

ソレイユ「ブローディアさんも魔王退治してたんですか!?」

うん、と頷く。

ブローディア「他に占ってほしい人いる?」

サルファー「私は平気ですよ」

パリス「わ、私も…平気、です…」

恋愛占いも受け付けるよー? とニコニコして言うと、

ソレイユが喰いついた。

ソレイユ「やってください! このメンバーに内容は秘密で!」

ブローディア「オッケー! ほら、他の人達は下がった下がった!!」

レオノティスもカルビもテイルもゼニス達も下げられた。


レオノティス「すまない。疲れるだろう;;;」

サルファー「印象と大分違いましたが、元気で明るい女性ではないですか。

占いの腕も確かなようですし、人懐っこい。人気なのも頷けます」

……

レオノティス「彼女は旅で色々葛藤したんだ。

兄が魔王に乗っ取られていたり、乗っ取られたまま魔王を倒せば兄は死ぬと告げられたり。

それにより覚悟が決まらず、かつての英雄が持っていた武器に認められなかったり…」

ソレイユ「な、なんか過酷…;;; 今、そのお兄さんは?」

……

レオノティス「操られていたとはいえ、自分がした事の罪滅ぼしのため、

傷付いた村や町の復興をしながら旅をしているらしい。」

ゼニス「そうなのか……」


ブローディア「終わったよー!」

呼ばれて戻ると、ソレイユがすごく笑顔だ。

ゼニス「結果は…?」

ソレイユ「なーいしょ!」

????

サルファー「皆さん、もう日が暮れます。

今日の所は宿を取って、明日向かいましょう。」

ゼニス「そうだね。レオノティス達は…」

レオノティス「俺も宿だ。ブローディアはこの街に住んでいるから問題ない」

なら明日また会えるだろうか。

ソレイユ「疲れちゃったねー。船旅のせいかなぁ…休もう。

ほら、パリスも!」

パリス「は、はい」

ブローディア「またねー!」

宿屋に入るのを見送ってから、ブローディアも帰路につく。

ブローディア(頑張ってね。ソレイユちゃん)


ソレイユの占い結果。

『途中、困難があるけれど、最後には必ずその想いは届く』


その頃。セイクレイ城では…

ネメシア「ローレル! また勝手にウロウロと! 書類は終わったの!?」

ローレル「悪い悪い! やってあるから安心しろって!!」

もう…と飽きられながらネメシアが立ち去る。

それと入れ替わりでバジルがローレルに話しかける。

バジル「ローレル将軍」

ローレル「もう対等なんだから別に将軍つけなくても…」

バジル「いえ、俺にとっては先輩に変わりないので」

堅物。と一言言ってやるがバジルには効果が無い。

ローレル「ところで何の用だー?」

バジル「大丈夫ですか?」

ローレル「何のことだよ! ほら、元気じゃねーか!

あ、ネメシアに怒られてたからか!? 今さらだろーが!」

ハイテンションで受け答えをする。

ローレル「さーて、仕事仕事ーー!!」

バジルの横を通り過ぎて去ろうとする。

バジル「ローレル将軍!!」

大声を出して呼び止める。

バジル「気付かないと思ってるんですか!?」

ローレル「……へーきだって! ネメシアが死ぬまでは持ち堪えてやるさ!!

じゃあなー! お前も仕事終わったら早く寝ろよ!」

そのまま今度こそ立ち去ってしまう。

バジル「……何とかしないと…このままでは…」


城の地下。

ローレル「…ぐ、ゲホッ!!」

咳を受け止めたローレルの手には血。

ローレル「く、ハハ…化け物になる兆候が…。魔族が人に恋をした罰か? 

…あんの、科学者の思い通りになって堪るかよ…!!」
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