月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 8話

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ギルドから下ろしてもらった場所は、どこかの町。

聞き込みすると、オーロラという町らしい。

ゼニス「さてと、ここからどうするか…」

ソレイユ「ねえねえゼニス、さっき聞き込みしてる時に見かけたあのお屋敷、

ちょっと近くまで行ってみない?」

確かに町の奥の方に一つのお屋敷があったけど…

ゼニス「まあ、いいよ。入れないだろうから、近くまでだけど」

せっかく来てるわけだし、気になってるならいってみようと思って、

そのお屋敷のほうまで行ってみた。

すると屋敷の中から、綺麗なバイオリンの音色が聞こえてきた。

ゼニス「綺麗なバイオリン…誰がやってるんだろう…」

ソレイユ「こんなに上手なら、大勢の前で披露してもよさそうなのに…」

けど、これはツッコんで話すわけにもいかないし、

これからの事を考えないと…

この日は取りあえず次の目的地を相談するために、宿を取ろうと宿屋に向かう。


ゼニス「……」

ソレイユ「……」

ロビーで相談中だ。

ゼニス「どこがいいとかある? 近場に限るかもしれないけど」

ソレイユ「近い所だと…トロントの森…マルバス遺跡があるみたい。

少し歩いたところなら、セルモの洞窟を通り抜けた先にアチェス遺跡。

ちなみに、この町の周りの街道はレガト街道って言うみたい」

ゼニス「…マルバス遺跡か、アチェス遺跡に宝玉ないかな…?

……ん?」

宿屋の上から駆け下りてくる女性が一人。

桃色の髪をした人だ。慌てて外に飛び出して行ってしまった。

ソレイユ「…あんなに慌ててどうしたんだろ?」

ゼニス「さあ……?」

そう思っていると、周りがざわつき始める。

「あの子、一人で大丈夫かな?」

「最近、この街道は魔物がかなり増えているし…」

「ばっか、魔物より強い奴がいて、何人もやられてただろ?」

!!?

ゼニス「まさか四零士の中の誰かが…!?」

ソレイユ「私達も様子見に行ってみよう!」

急いで二人もその後を追いかけた。


街道に出てしばらく歩くと、その女性を見つける。

周りには魔物を討伐したあとが。

ゼニス「え!? この量、もしかして一人で!?」

???「? 二人は?」



つい大きな声を上げてしまったので気付かれてしまった。

ゼニス「あ、えっと……」

ソレイユ「私達っ、貴方が一人で街道に出たって聞いて、

町の人が危険だって言うから心配で!」

ああ。と納得したのか微笑んだ。

???「大丈夫。これでも、魔王討伐の旅をしていたから…」

魔王討伐の旅? もしかして、この前会ったリナリアさんとシスルさんの仲間だったのかな?

ゼニス「あの、もしかしてリナリアさんとシスルさんと知り合いだったり…」

???「あの二人を知ってるの!?」

ソレイユ「前にギルドに依頼しに来たんです。一緒に戦ったの」

その言動から察するに、知りあい、仲間なのだろう。

アイリス「そうだ、自己紹介がまだだね。私はアイリス。

心配してくれてありがとう。敬語じゃなくっていいよ。」

ゼニス「あ、僕はゼニス。元ギルド…いや、ギルド「天馬」のギルド員だ」

ソレイユ「私はソレイユ。私もゼニスと同じだよ」

そういえば、なんで慌てて飛び出したんだろう。

それを聞いてみると…

アイリス「遺跡を探してるの。」

ソレイユ「遺跡?」

聞き返すとアイリスは頷いて

アイリス「助けたい人がいるの。現代の方法じゃ無理そうで…

碑文を探して遺跡を回っているの。そこに向かおうとしてただけ」

ここから行けそうな遺跡と言ったら、マルバス遺跡かアチェス遺跡。

ゼニス「マルバス遺跡かアチェス遺跡に行く予定なら、僕達も用があるから、行くか?」

アイリス「…二人も? じゃあ、お願いしようかな。」


そうして、取りあえず一番近場のマルバス遺跡に行くことになったところで、

空気が変わった。

アイリス「魔力が…!」

ソレイユ「私でも分かるよ、かなり強い…!」

ゼニス「…四零士?」

そこに現れたのは、燕尾服を着たシルクハットの男。

明らかに今までの四零士との出会い方とは違っていたので、

直感で分かった。四零士じゃない。



???「…んんっ! 初めまして、皆さん。

フェズとプリムローズを撃退、サラテリとの戦いでも生き残った方達」

あの三人を知っている! じゃあ、四零士の仲間か…!

???「そちらにいるのは、二年前魔王を倒した方の一人じゃないですか。」

アイリス「……ゼニス、ソレイユ。この人のこと知ってるの?」

ゼニス「いや、こいつとは初めて会うけど、今名前が出た三人は多分、こいつの仲間だ」

多分、街道に魔物よりも強い奴、というのはこいつの事だろう。

ソレイユ「何の用なの!? 私達の始末!?」

???「…いえいえ、力量を図りに来ただけです。

…まずは名乗りましょう。私はエルブ。陛下の側近の立場です。」

「陛下」……? 誰の事だ?

いや、そんな事を言っている場合じゃ……

ゼニス「……くる!」

エルブ「四零士を…中でもフェズに殺されなかったあなた方の実力、

見せていただきます」


武器は何だ、杖? いや、杖じゃなくても武器からこいつも魔法が撃てるはず。

ゼニス「十字閃!」

エルブ「ふっ! ブラックアイス!」

かわした上に魔法!? 速い…!

エルブ「申し訳ありませんが、私はまだ能力スキルを使っていません。

それなのに当てられないとなると、状況は絶望的ですよ」

こいつの能力スキルって、当てられなくする事なのか!? 今でも当たらないのに!?

ソレイユ「連煌斬舞!」

ソレイユがいま使える技の中でも一番攻撃速度がある奴だ。

それさえ当たらない。

ソレイユ「なんでよ!?」

アイリス「ミリオンレイン!!!」

アイリスが矢を空に向かって放った。…空?

ゼニス「え!?」

ソレイユ「嘘……!?」

空から光の矢が数本…いや、万!? 降ってくる。

エルブ「っ!! さすがにこれは…!」

光の矢が消えた後を見ると、

さすがに全部はかわし切れなかったのか、ダメージを受けたようだ。

でも、それでも当たった数の方が少ない。

エルブ「さすがですね…魔王封印の立役者…」

アイリス「立役者は私じゃない。…シオンよ」

……

エルブ「……失礼致しました。辛いこと思い出させましたかね。」

エルブの様子が変なような……今がチャンス!?

ゼニス「とりあえず! 封忘魔剣!!」

エルブ「ぐっ!?」

これで魔法は封じれたはず! 相手が魔法ならーー

エルブ「私が魔法だけと、思いましたか?」

そう言うと、杖を持って鞘から抜く。…杖が、鞘?

エルブ「仕込み杖です。中に刀が入っています」

刀って何だ…あんまり馴染みがない…!

アイリス「忍びの里の武器…」

もしかして、あの時会ったビオレも忍びの里の武器だったのかな…

ソレイユ「どうするのゼニス! 実力測るどころかこれじゃあ!?」

能力使われる前に何とか…

エルブ「能力使えば、一瞬で消せますよ、皆さん。」

ゼニス「アイリス、ソレイユ、下がって!

二人は殺させない!!」

剣に力を込めた時、また体が勝手に動いた。

ゼニス「はあっ!」

すっと、普通の攻撃はあっさりかわされた。

エルブ「無駄ですよ、攻撃は…って、ゼニスさんは!?」

その時ゼニスは姿を消し、エルブの背後へいつの間にか移動していた。

ゼニス「瞬裂黎絶!」

エルブ「いつの間に!?」

その不意打ちは見事に命中。逆に言えば、ここまでしないと当たらないのか…

ゼニス「…はっ!? 僕は…またっ……」

エルブ「ハァ……」

長い沈黙。ゼニス達の方は息切れ。

エルブ「……なぜ…いえ、さすがは彼らを退けただけはありますね。」

(なぜゼニスさんが…いや、でももしかしたらこの人達なら…)

ソレイユ「まだ、やるつもり!?」

それに対して首を横に振る。

エルブ「いえ、今日はもう帰らせていただきます。力量は十分わかりました。

並の人間では私に傷一つ負わせられませんよ。それではまたいつか。

どうかそれまで命を落とされる事の無いよう…」

一礼して翻る。

生き延びた…と安心した直後。

エルブ「うわっ!?」

ドターン!! と思いっ切りコケた。

ソレイユ「へ?」

アイリス「え…」

ゼニス「あの…大丈夫か?」

さっきまでの凛とした態度は何だったんだ!?

エルブ「…見なかった事にしないと消しますよ」

あ、これはツッコんではいけないやつだ。

消されたくないので黙る。

エルブ(だから向いてないんだよ…セピアさん、僕向いてないって…;;;)

エルブが転移で去る。


アイリス「……ゼニス。今の技は…」

ゼニス「分からないんだ。仲間が危険になると発動されて、

でもその間意識が無いみたいで、やり方も技名も覚えていられない」

ソレイユ「ゼニスは記憶喪失なの。だからその間の記憶なんじゃないかって…」

ゼニスが記憶喪失である事、自分は助けてくれたある人を探しているという事等をアイリスに話した。

アイリス「二人もすごい旅してるね…あの人達にも狙われてるんでしょ?

私も、敵に狙われた事はあるけど…。あ、ゼニス怪我してる。ちょっと貸して」

アイリスが手を取ると、魔法を喰らった腕の傷がすぐに治った。

ゼニス「すごい…」

ソレイユ「回復魔法…人間は才能が無いとできないのよね。

本来は魔族しか使えないんだとか…」

アイリス「……さあ、もう動ける?」

ん? 何か間が……

ゼニス「あ、ああ、動ける。僕達の場合、早めに行った方がいいから、

アイリスとソレイユが動けるようなら行こうか」

ソレイユ「私は平気!」

アイリス「私も大丈夫だよ」

エルブを何とか退けた三人はまず、ここから一番近い遺跡、

トロントの森の奥にあるマルバス遺跡を目指して歩いて行った。
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