月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 4話

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翌日、ゼニスとソレイユは起床後、エーリカに今日の予定を伝えられた。

午前中はギルドの案内。午後はマスターから依頼があること。

エーリカと一緒に取りあえず朝食を取っていると、

男女の二人組が近付いてきた。

ゼニス「…二人は?」

エーリカ「ああ、帰ったんですね。ここのギルド員です。

こちらはゼニスさんとソレイユさん。昨日からここに加入しました。」

一人は眼鏡をかけた黒髪の男性。



バレヌ「新入りか…俺はバレヌ。武器は杖。よろしく頼むよ。」

ソレイユ「えーっと、そちらは?」

バレヌより全然背が低い、薄いオレンジ色の髪をした少女。

見た感じはすごく活発そうだ。



ロココ「あたしはロココ! 武器はナックル! バレヌとチームなんだ。

あ、子供とか思わないでよ!?」

……

ゼニス「何歳なんだ?」

ロココ「多分、あんた達と同じぐらい」

まじかぁ……背の高さで判断しちゃいけないな…

ロココ「で、二人はこれから何すんの?」

バレヌ「来たばかりなら、ギルドの案内じゃないか?」

そうバレヌが言うと、付いて行く! とロココが割って入る。

エーリカ「そうですね…親睦を深めるためにも一緒に来てもらいましょうか」


こうしてバレヌとロココも連れてギルド案内が始まった。

まず受付のある本部入り口から左手。

エーリカ「ここは店が並んでいます。防具やアイテムを整えたいときにご利用ください。

食材やレストランもありますので、どうぞ」

ゼニス「すごい、充実してるんだ……って、食材?」

バレヌ「ここだと自炊も可能だ。俺も暇な時はやっている。

ロココはからっきしだが」

その言葉にロココがキレる。

ロココ「このがりがりエノキタケ! 炒めてやろうか!?」

何だこれは…仲悪いのか? いや、でもそれならチームなんて続いていないだろうし…

ソレイユ「自炊かぁ…私は甘い物なら得意かな」

それは食事にならない。


次に案内されたのは右手側。

エーリカ「ここは居住区。バレヌさんとロココさん。

ゼニスさんとソレイユさんはギルド内の部屋に案内しましたが、

家族がいる方はこちらで一緒に住む事もできます。」

ソレイユ「家族……」

あの日、襲撃された時に失った家族の事を思い出す。

ゼニス「ブライトさんもここに来ればいいのにな…

…あちこち旅に出たがるから無理か」

ゼニスの師匠ブライトはよく旅に出ていた。

ゼニスが騎士団に入ってからは不在の事が多かった。

ロココ「あたしは妹がいるけど、妹はギルドに入る気ないからあたし一人」

バレヌ「俺はひとり立ち目的だからな。今の部屋でいい」

でも、家は空き家ばかりではないようだ。

家族で過ごしているギルド員もいるのだろう。


どうやら結構広いギルドのようだ。

船というか、これはもはや大陸では;;;

エーリカ「このギルドは、浮遊大陸と呼ばれていますからね。

大体の物はギルド内で手に入りますよ」

すごすぎる…

ロココ「じゃ、あたし達はそろそろ休んで来るね!」

バレヌ「俺は魔法学でも勉強してこよう」

ロココ「またー? 休めばいいのに」

バレヌ「うるさい」

仲が悪い、とは違うのか? 喧嘩するほど何とやら、という感じか。


部屋に戻る二人を見送ってから、自分達はマスター室へ入る。

アクバール「やあ、二人とも来たね。

さっそくだけど依頼があるんだ。実力を確認するがてらね」

示された依頼は、精霊の里が危険だから助けてほしいという依頼。

ゼニス「魔物の類ですか?」

エーリカ「わかりません。ですが何度か精霊が負傷しているのを目撃されているので、

原因を見つけて、対象を止めてほしいとの事です」

ソレイユ「行こう、ゼニス。精霊可哀相だよ!」

まあ、受けるつもりだけど…

ゼニス「えっと、精霊の里へはどうやって?」

エーリカ「貴方達が乗り込んだ時に立っていた位置に、転移魔方陣を展開できます。

それに乗ってください。」


エーリカに言われたとおり、そこへ向かうと、

エーリカが設置したであろう転移魔方陣があった。

ゼニス「これかな……」

転移魔方陣に足を踏み入れると、白い光に包まれる。


目を開けると、そこは森の中。

ソレイユ「すごい、降りてきた!?」

ゼニス「……あ、そこに里がある。多分精霊の里だ」

その里の方へ行ってみると、一人の女性が歩いてきた。

「あの…もしかして、ギルド「天馬」の方ですか?」

ソレイユ「あ、うん、そうだよ」

「…ありがとうございます…依頼なんですが、奥を見てもらえると分かる通りです。

何者かに、精霊が次々に傷つけられています。

でも、私では戦えないですし、精霊も戦える相手ではなさそうなので…」

それで依頼をしたのか。

ゼニス「わかった。受けるよ。待っていて。」


二人で再び森の中に戻っていく。

とは言っても対象の見た目や特徴も分からない。

魔物か人かもわからない。

ソレイユ「見つかるかな……」

ゼニス「でも、放っておくわけにもいかないし…」

そう思いながら歩いていると…物陰から葉の揺れる音が。

ゼニス「誰かいる!?」

ソレイユ「まさか、犯人!?」

身構える間もなく、何者かの刃が突き出された。

幸い狙われたのはゼニスだったので、反射的に回避。

???「かわしたか…!」

ゼニス「なっ…女の子…!?」

そこに武器を持って現れたのは見慣れない服を着た少女。



ソレイユ「貴方何!?」

???「そっちこそ…この森を武器持ってうろついて…

精霊を傷つけているのはあんた達じゃない!? もしくは…あいつの仲間か!?」

どうやら互いが互いを犯人だと思っている状態だ。

ゼニス「ま、待ってくれ。僕達は依頼されてきたんだ。

ギルド「天馬」の依頼で、精霊を助けてくれって…!」

そこまで言ってやっと分かってくれたのか、武器をおさめてくれた。

???「また人違いか…」

また?

ビオレ「ごめん、名乗っておく。私から襲い掛かったわけだし。

私はビオレ。ある奴を追っている」

ゼニス「ある奴? あ、それより名前だな。僕はゼニス。こっちはソレイユ。」

ソレイユ「よろしくね。…で、誰を…」

それは……とビオレが言おうとした時、魔物が飛び出してきた。

赤い目をした、明らかにおかしい魔物。

蜘蛛に蛇の尻尾が付いていたり、鳥にライオンの頭が付いていたり。

ビオレ「こいつらだよ。こいつらを放った奴を探しているの!」

ゼニス「改造、でもされてるのか!?」

ソレイユ「融合じゃない…!?」

ビオレに合わせて二人も武器を構える。

ビオレ「戦えるんだよね! 手伝ってもらうよ!」


幸いそんなに数は多くない。三人でもなんとかなりそうだ。

ビオレ「嵐裂!」

ビオレは暗殺者か何かなんだろうか…素早い動きで魔物の息を一瞬で止める。

急所を把握しきっている感じだ。

ゼニス「時双波!」

こっちだって負けられない。これでも騎士隊長だったんだ。

二連続の斬撃が魔物をとらえて斬り倒す。

ソレイユ「光臨舞!」

ソレイユも結構戦えるようで、舞うように回転しながら敵を斬っていく。

戦えると言っていたのは確かなようだ。


ゼニス「これで、終わりか?」

ソレイユ「た、多分……」

ビオレが武器をしまう。

ビオレ「ん、平気。気配を感じない。」

気配ってそんなに簡単に分かるものなのか?

ビオレ「そうだ、これを依頼主に渡しておいてくれる?」

ビオレから渡されたのは一つのまが玉だった。

ゼニス「これは…何?」

ビオレ「また狙われたら精霊が傷つくでしょ?

それは外部から侵入できなくするアイテム。私の故郷で使われている物」

ビオレの所は外部から見つけられないようになっているのか。

ビオレ「じゃ、報告とかはよろしく。私は黒幕を探さないといけないから」

ソレイユ「また、会える?」

ソレイユがそう言うと、少し言葉に詰まってから…

ビオレ「本当は会わない方がいいと思うけど……まあ、また機会があったらね」

それだけ言って森の影に消えて行った。

ゼニス「…里に戻ろうか」


「ありがとうございます。まが玉のおかげでまた何かが現れても安全になりました」

ソレイユ「それをくれたのは私達じゃないから。もしまた会ったらお礼言っておくね」

「報酬はギルドに送っておきます。本当にありがとうございました」

依頼達成を報告して、里を出る。

ゼニス(…あの異形の魔物…何だったんだ…誰がそんな事…)


通信機でギルドに連絡を入れると、また魔法陣が現れたのでそれに乗る。

ギルドに戻ってマスターに一通り報告を済ませる。

異形の魔物の事、それを使っている黒幕がいそうであること、

里は外部から隠れられるようになったので、もう大丈夫な事。


ゼニスとソレイユが部屋を出た後…

マスター「…まが玉をくれたっていう人…」

エーリカ「ええ。恐らく忍びの者…脅威にならなければいいのですけど…」


ゼニス「それじゃあ、ソレイユ。また明日」

ソレイユ「あ、ねえゼニス。明日何だけど、私遺跡に行きたいんだけど…」

ゼニス「遺跡?」

幼い頃に遺跡を本で見て、一度で良いから見てみたかったのだそうだ。

ゼニス「ああ、いいよ。」

ソレイユ「じゃあ、行きたい遺跡は明日の朝教えるね! おやすみー!」

この時二人はまだ思っていなかった。

その遺跡で、とんでもない出会いをする事を…
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