月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 3話

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無事にギルド「天馬」に乗り込んだゼニスとソレイユ。

立っている場所は、船というより一つの大地のようだった。

でも、確かに空を飛んでいて…

ソレイユ「すごい…」

ゼニス「雲の上、だよな?」

そう話していると、後ろから女性の声。

???「ゼニスさん、ソレイユさん。はじめまして」



ソレイユ「あ、この声は…もしかして、ギルドマスターさん?」

女性は首を横に振る。

???「私はギルドのサブマスターです。あの放送はマスターの代わりにしていました。」

代わり?

エーリカ「申し遅れました。私はエーリカ。

お二人とも訳ありのようなので、取りあえず、マスターの所へご案内します」

ゼニス「は、はい。お願いします。

……あの、マスターってどんな人ですか?」

それに対してすぐに答えず、間があいたあと、

エーリカ「…残念な人です」

はあ??

そう思いながらもエーリカの後を付いて行った。


その頃、王城では…

ラージャ「………」

国王と王妃に報告を終えたラージャが廊下を歩いていた。

ラージャ(国王様と王妃様が話の分かる人で良かった…

けど…あいつが道を踏み外したら止めるどころか、殺せなんて…

そこまで言うか? …国のため、か…)

「はあーーあ…頼むから道踏み外すなよなー俺はお前を殺したくはないぞー」

そこへゼニスの隊員が話しかける。

「大丈夫ですよ、ラージャ隊長。ゼニス隊長はそんな事しません」

「きっといつか戻ってきますよ。」

……

ラージャ(随分慕われてんだな、あいつ)


「天馬」にて。

コンコンとマスターの部屋をノックする。

エーリカ「マスター。ゼニスさんとソレイユさんを連れて来ました。」

???「分かった。入れ」

なんだ、すごい怖いイメージしかわかないんだけど。

ドアをエーリカが開けると椅子に座っている男性がこちらを見る。

第一印象。若い。



???「よく来たな。我が名はアクバール。

この、ギルド「天馬」のギルドマスターだ。

さて…このギルドに入るからには、全身全霊で頑張ってもらいたい」

ゴクリ、と、勢いについ唾を飲み込む。

アクバール「はははははっ、その褒美と言っては何だが、

この世界の半分を貴様らにくれてやろう。悪い話ではあるまい?」

………

ゼニス「はぁ?」

ソレイユ「残念な人って……」

そう言った瞬間エーリカがマスターを蹴りつける。

エーリカ「変にキャラを作らないで話を。

新人お二人が戸惑っています」

アクバール「ご、ごめん…緊張ほぐそうとしたんだけど…逆効果だったか…」

どうやらキャラが違うようだ。どちらかというと優しい人、か。

アクバール「えーと…もう一度名乗るよ。私はアクバール。

このギルドのギルドマスターをしている。こっちのエーリカはサブギルドマスターだ。」

ゼニス「は、はあ、よろしくお願いします。ゼニスです。」

ソレイユ「ソレイユです。よろしく、お願いします。」

軽く自己紹介をした後、二人は事の経緯について話した。

ゼニス「僕は、乗り込む前に話した通り、記憶を取り戻すために、

世界を視て回れれば、何か思い出すかもと思い、ここに来ました。

騎士隊長を務めていたので、剣技には自信があります。」

ソレイユ「私は村が襲撃されてしまい、その時に助けてくれた人が、

働き口と住める場所がないなら、と、村に行くように言ってくれて、

イナニスの村に行ったら、ゼニスがここを紹介してくれました。

スピナーと、多少は剣も扱えます。」

少しの間。

アクバール「なんか、すごく大変そうだね、二人とも…」

エーリカ「ソレイユさん。襲撃された理由は分かりますか?

後、その助けてくれた人は?」

ソレイユ「襲撃された理由はこの指輪です。なぜ狙ってきたのかは分かりません。

私を助けてくれた人は暗がりでよく見えなかったので…

白いローブを着ていた事だけは分かります」

……

エーリカ「分かりました」

アクバール「他にもギルド員はいるんだけど、今みんな仕事中でさ。

そうそう、ここのギルドは基本的に自由でね。

仕事が無くても降りたい所にいつでも降りれるようにしてあるんだ。

ゼニス君なんかは記憶のためだし色々降りてみるといいよ。」

マスターがそう言うと、ソレイユが割って入る。

ソレイユ「あの! 私、ゼニスと行動したいです!」

ゼニス「ソレイユ?」

アクバール「うん。一人だと危険だしね。そうしてもらう予定だったよ。」

元からその予定って…世界は、隊長格一人じゃ厳しい場所があるのか。

エーリカ「貴方達の部屋に案内します。付いて来てください」

ゼニス「…あ! 普段着忘れた!」

慌てていると、エーリカが一言。

エーリカ「それなら、貴方方が外を見ている間に持って来ましたよ」

へ? いつ? そんな短時間で???

アクバール「まあまあ、細かい事は気にしちゃいけないよ。

エーリカ「では、ご案内します」

もう何が何だか…でも、マスターも含めエーリカも強者だという事は何となく分かった。


ゼニスの部屋。

ゼニス「ここが今日から僕の部屋か…」

狭くもなく広くもなく丁度いいぐらいだ。

ベッドに机、窓の向こうにはバルコニー。何とも豪華だ。

ゼニス(…記憶…それが分かれば、この外れない眼帯の事も分かるかもしれない…

早く思い出して、みんなの所へ戻らないと…)


ソレイユの部屋。

ソレイユ「わあ! バルコニー! 外が見える! 一面の星空!」

ソレイユはさっそく外に出てみた。

もう夜遅く、空は星がたくさん出ていた。

ソレイユ(…私を助けてくれたあの人…どこにいるんだろう…

私は今、「天馬」というギルドにいます。…お礼がしたい…

ううん、必ず見つける…!)


マスター室では…

アクバール「エーリカちゃん」

エーリカ「ええ…」

アクバール「…村の焼失、王城への襲撃…何かが起き始めている気がしないか?」

……

エーリカ「さらに、王城へ襲撃した魔物の中に、黒衣の人間がいました。

外見はよく分かりませんでしたが、かなりの実力者かと…」

アクバール「…気を付けないとね。このギルドのみんなは家族だ。

誰一人、死なせないようにするよ」

エーリカ「……はい」

異変の連続に頭を抱え、話し込んでいた。

アクバール「まあ、それはそれとして、

明日はとりあえず試験的にゼニス君とソレイユちゃんに依頼でも行ってもらおうかな。」

依頼リストに目を通して、一つの依頼に目を付ける。

アクバール「…これが良いかな。精霊の里。

そこにいる精霊が危険だって話だ。…魔物か何かかな?」

精霊の里は、ラディル大陸で言う精霊の森だ。

エーリカ「では明日、お二人をここにお呼びしますね。

そういえば、ギルド内の案内はどうします?」

アクバール「依頼は昼からにして、午前中に案内頼むよ。

朝には帰って来るメンバーもいるから、ついでに挨拶させておいて」

一礼してマスター室を出る。

エーリカ「さて、これから忙しくなりそうですね」
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