月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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再び迫る影

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 1話

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シオン達が魔王を封じた旅から2年後ーー

世界は平和の一途を辿っていた。

魔王城は壊れ、ハーフエルフに対する差別も薄れていき、

それぞれが、平和な日々を送っていた。

けれど、それは突然、終わりを告げる。

この世界では、新たな影が、動き出し始めていた……


世界は滅ぶ。過去に犯した罪でーー


某所。

???「これでいいんだな?」

???「うん、それでいいみたいだね!」

???「あのお方が力をつけるまで……」

???「…了解」

???「まずはあれが必要ですね…」

???「本当に探すの?」

???「手段は問いませんわ。それと同時に、あのお方の事もお願いします。」

ローブを着た四人と、貴族のような風貌の三人が話をしていた。


その夜……

1つの村が襲撃された。その村の名は「ヴェリタス」。

シオン達が行動した大陸であるラディル大陸・クレイドル大陸でもない、

もう一つの大陸。ディレオン大陸にある村だ。

そこが襲撃された理由は、たった一人の少女が持つ指輪。

その少女の名は、ソレイユ。



ソレイユ「はあっ…はあっ…村が…火が…!」

村の人が大勢倒れている。自分は逃げているだけで精一杯だ。

でも、どこへ逃げても火の手があって…

どこが村の出口かもわからず走っていたら、行き止まり。

ソレイユ「ヤバっ…戻らないと……っ!?」

振り返って元の道を戻ろうとしたら、歩いてきた黒衣の男。



???「やーやー、こんばんはってか?」

ソレイユ「あなた、…なんで…こんなこと…」

???「お前の持ってるその指輪が目的だ。だから、それを渡してくれれば命は助けてやる」

そう言われて指輪に目を向ける。

ソレイユ「…これはっ! ママが私にくれた物! 絶対に渡さないわ!!」

この状況でも命より大事な物なんて無いって分からないのか…

???「あーそうかよ。別に俺は見逃すって言ってんだけどな。

生きるチャンスは与えた。指輪を大人しく渡さなかった事、あの世で後悔しろ!」

黒衣の男が持っている剣を振り上げる。けれど、それがソレイユを斬る事はなかった。

目を開けた時、ソレイユの目の前に人が立っている。

その人が、黒衣の男の剣を受け止めていた。

???「なんっ…お前は!?」

???「………はあっ!!」

深く白いローブを被った人は、多くは語らず相手の剣を弾き飛ばす。



???「ちいっ! (何だこいつは…ただ者じゃ…!)」

???「退け。剣を持っていない状態では貴様の負けは明らかだ」

その言葉に黒衣の男は黙って転移していった。剣もその転移と共に消えた。

ソレイユ「…あの…ありがとうございます……」

???「怪我は…ないとは言えないか…火傷をしているな…」

そう言うと、白いローブの人が手をかざした部分の傷がたちまち塞がった。

ソレイユ「これは…回復魔法……あ、あれ…何か、眠気が……」

すると、白いローブの人は手に一枚の紙を握らせた。

???「ここは消火しておく。

もしも住む宛てと働き口がないなら、その村に行くといい」

ソレイユ(…待って…貴方の…名前…は……)

それは声にならず、安心して気が抜けた眠気であっさりその場に眠ってしまった。


翌日、目を覚ますと、村の火は完全に消されていた。

ソレイユ「あっ、この紙…じゃあ、夢じゃなかったんだ…」

指輪も無事だ。

ソレイユ(暗がりで、ローブも深く被ってたから、顔分からなかったな…

…いつか会えたら、お礼したい……)

とは言っても手がかりがない。取りあえず、この村を一通り見てから出発する事にした。

ソレイユ(みんなのお墓も何とかしないと……)

そう思って歩くが、倒れている人一人いない。代わりにあったのはお墓。

ソレイユ「……もしかして、昨日のあの人が…やってくれた?」

あの時動けたのはあの人だけなはずだ。ソレイユはお墓の前で手を合わせてから立ち上がる。

ソレイユ「…みんなの仇は私が討つ。私が討たないと…!」

そう決意して、ソレイユは自身の武器を手に構えて村を出て行った。


場所は変わり、ここはイナニスの村。

ここでは一人の青年が最近まで住んでいた村だ。

名はゼニス。今は王都で騎士をやっている。そのため王都に今は住んでいるが…

それでも、たまにこの村には顔を出していた。

この村に来る時は、騎士正装ではなく、普段着で来る。

ゼニス「ブライトさん」



ブライト「ああ、ゼニス。手紙は届いたか」

ブライトと呼ばれた男性は、ゼニスの師匠だ。




ゼニスの過去について説明しておこう。

ある日、ゼニスはこの村の浜辺に倒れていて、それをブライトが助けたのが最初だ。

ゼニスは記憶が無い上に、その眼帯は何をやっても外れる事が無かった。

ゼニスと言う名も、ブライトが名付けただけだ。

ブライト「…ゼニス。お前にその気があるならば、俺が剣の稽古をしてやるが?」

ゼニス「いいんですか? …はい、お願いします!」

この世界で生きていくなら、誰かを守る立場がいいと、ゼニスはブライトの弟子についた。

もちろん、過酷だった。ブライトの剣の腕は超一流。

でも、それが何故なのか、ブライトは語る事はなかった。

そうして特訓を開始して数か月。凄まじい速度でゼニスは上達。

騎士団入団試験に合格して、飛び級飛び級である一隊を任されている。


ブライト「一つの村が焼け落ちたらしい。

助かったのは一人だそうだ。その一人がここへ向かっていると、

遠征に行っていた城の兵士が伝えに来た。

ここまで来るという事は、宿無しの職無しだろう。

そういう奴が行ける場所、お前は知っているな?」

少し考えた後、

ゼニス「ギルド…ですか?」

ギルド。人々の依頼を受ける場所。

依頼の街ウェスタのように、酒場に依頼が集う街もありますが、

この大陸ではそれは無く、代わりにギルドという場所が、各町にありました。

ブライト「そうだ。それも大きいギルド。

危険が無い空のギルドに入れてやってくれ」

空のギルドとは、その名の通り、空を移動する船のような見た目のギルド。

名は「天馬」

たった一つしか無い上に、地上には下りない。

けれど、各地どこでも依頼に行ってくれるので、

各町にある「天馬」用の依頼晶に依頼がたくさん入っている。

それを「天馬」の関係者が受け取って自分達のギルドに持ち帰る。といった感じだ。

ゼニス「ギルド「天馬」は城も贔屓にしています。

連絡手段はあるので、任せてください。この村に来るんですよね」

ブライト「ああ。家族を失って傷心しているかもしれん。頼んだぞ」


そんな話をしていると、村に一人の少女が現れた。

ソレイユ「手紙によると、ここだよね。

看板もこの村の名前だし……」

ゼニス「あ、君は…見慣れないけど、もしかして」

ソレイユ「あ…えっと、私、ソレイユ。

村が焼けちゃって、ここに行くように言われたんたけど…」

ソレイユは渡された紙をゼニスに見せる。

ゼニス「君は、これを渡した人に助けられたのか?」

ソレイユがうなずく。

でも、見た目は分からないし、名前も聞いていないと。

ゼニス「まあ、いいよ。無事で良かった。

働き口と住む場所なら案内するよ。僕はゼニス。

ここの王都にある王城で、騎士をやってる」

手を差し出してきたので、ソレイユもそれに応える。

ゼニス「ブライトさん! じゃあ、送ってきますね!」

家から出て来たブライトに一言声をかける。

ブライト「ああ」

ソレイユ「……???」

相変わらずそっけない返事だったが、それで慣れてしまった。

ゼニス「君はギルドに行くことになるんだけど、良いか?」

ソレイユ「どこの?」

ゼニス「空にあるギルド。「天馬」だ」 
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