121 / 134
番外編11.とある日常の風景II(side香緒)
4
しおりを挟む
「香緒…。香緒…っ」
体が揺れて、はっとして起き上がる。
「えっ?」
目の前には武琉の顔があって、膝にはかんちゃんが跳び乗って来て僕の顔をベロベロ舐めている。
「もしかして寝てた?」
「もしかしなくても寝てたよ」
武琉は僕の顔を見てそう言って笑った。
かんちゃんを預かって2日目。
朝起きると、もちろん武琉はもう仕事へ行っていて、武琉特製のフレンチトーストとカフェオレで朝ご飯を済ますとかんちゃんを連れて散歩へ出た。
行った事ないところへ行ってみようかな?なんて、適当に歩き出す。
地図も見ずにワザと狭い路地を選んだり、かんちゃんが向かう方へついて行ったり。
気がつけば、徒歩で来たことのない河川敷までやって来ていた。
流石に遠くまで来すぎたなぁ…と思ったけど、かんちゃんは嬉しそうに走り回っている。
まあいっか…と土手に座り、かんちゃんが走り回るのを眺めた。
で、帰りは地図を見て最短で帰ってきたけど、僕もかんちゃんも、もうヘトヘトで…。
ご飯食べてすぐに床で丸まったかんちゃんを横で眺めてたら、僕も床の上で寝ていたらしい。
「ここ、ラグの跡付いてる」
武琉が目の前に座って僕の顔をなぞる。
「えっ?どこ?」
「ここ」
そう言うと、武琉は僕の頰にキスを落とした。
武琉は顔を離して優しく微笑んで、僕にそっと口づけた。
最初は触れているだけだったのに、そのうち深くなってきて、隙間から舌が差し込まれて。
僕はそれに応えるように舌を絡めあった。
「んっっ」
気持ち良くて声が漏れでて、武琉の腕にしがみつく。
と、そこからかんちゃんがズボッと頭を出してハッハッ言いながら僕達を見上げていた。
お互い唇を離して、悪気のないかんちゃんの顔を見てから顔を見合わせる。
「ふっ」
「ははっ」
2人で笑いながら「もう!かんちゃん?」と言いながら僕は彼の頭を撫でた。
「今日は俺がお預けか」
僕の額にチュッと音を立ててキスすると、武琉は立ち上がった。
「ご飯の用意するから、香緒はお風呂よろしく」
「うん。分かった」
そう言って、僕はかんちゃんを連れてバスルームに向かった。
昨日の夕食は、包み焼きハンバーグだった。
正直、お店で食べるやつみたいだった。いや、今まで食べたどこのお店のものより、武琉が作ってくれるのが一番美味しい。
愛情の差かな?
なんて、食べながら武琉に言うと、みるみるうちに顔が紅くなって面白かった。
◆◆
で、今日はかんちゃん過ごす最後の日。夕方にはさっちゃんが迎えに来る予定だ。
僕達は朝から車でさっちゃん行きつけのドッグランに行く事にした。
昨日歩いてやって来た河川敷を通りかかると、武琉は「ほんとにこんなところまで来たのか?」と呆れるように言う。
「来たよ!本当に遠かったんだからね?」
「だよな。香緒があんなところで寝落ちするはずだ」
助手席で、かんちゃんを膝に乗せて武琉は笑っている。
かんちゃんは窓の桟に手を掛けて、嬉しそうに外を眺めていた。
冬の気配のする景色だけど、空だけは青く澄み切っている。
いい天気で良かったなぁ…と運転しながら思った。
教えられたドッグランは少し郊外にあって、結構広かった。
スタッフさんには覚えられているようで、「あら、今日はお母さんじゃないのね」とかんちゃんは撫でられて尻尾をブンブン振っていた。
そこからはひたすら武琉が遊んでくれていた。
「かんちゃん、これ好きなんですよ」と、フリスビーを渡されて、武琉が投げるとかんちゃんは上手に空中でキャッチして僕の元に持って来る。
「俺が投げてんだけど…」
と武琉は半ば諦めたように僕からフリスビーを受け取りまた投げた。
「武琉、投げるの上手いね!」
「そうか?初めてやったけど、なかなか面白いな」
少年みたいな顔して、武琉はかんちゃんと遊んでいる。
何か昔の武琉を思い出して懐かしいなぁ…。
とその顔を眺めていると、武琉はフリスビーを差し出して「香緒もやるか?」と尋ねてきた。
それを受け取り投げてみると、武琉が投げる半分も飛ばずに地面に落ちた。
遠くまで飛んでくるものだと思っていたかんちゃんは、凄い勢いで走って来て地面に落ちているそれを拾って僕のところへやって来た。
「香緒って、意外と不器用だもんな!」
一連の様子を見ていた武琉は横で大笑いしていた。
「もう!知ってるよ!」
僕も笑いながら返した。
体が揺れて、はっとして起き上がる。
「えっ?」
目の前には武琉の顔があって、膝にはかんちゃんが跳び乗って来て僕の顔をベロベロ舐めている。
「もしかして寝てた?」
「もしかしなくても寝てたよ」
武琉は僕の顔を見てそう言って笑った。
かんちゃんを預かって2日目。
朝起きると、もちろん武琉はもう仕事へ行っていて、武琉特製のフレンチトーストとカフェオレで朝ご飯を済ますとかんちゃんを連れて散歩へ出た。
行った事ないところへ行ってみようかな?なんて、適当に歩き出す。
地図も見ずにワザと狭い路地を選んだり、かんちゃんが向かう方へついて行ったり。
気がつけば、徒歩で来たことのない河川敷までやって来ていた。
流石に遠くまで来すぎたなぁ…と思ったけど、かんちゃんは嬉しそうに走り回っている。
まあいっか…と土手に座り、かんちゃんが走り回るのを眺めた。
で、帰りは地図を見て最短で帰ってきたけど、僕もかんちゃんも、もうヘトヘトで…。
ご飯食べてすぐに床で丸まったかんちゃんを横で眺めてたら、僕も床の上で寝ていたらしい。
「ここ、ラグの跡付いてる」
武琉が目の前に座って僕の顔をなぞる。
「えっ?どこ?」
「ここ」
そう言うと、武琉は僕の頰にキスを落とした。
武琉は顔を離して優しく微笑んで、僕にそっと口づけた。
最初は触れているだけだったのに、そのうち深くなってきて、隙間から舌が差し込まれて。
僕はそれに応えるように舌を絡めあった。
「んっっ」
気持ち良くて声が漏れでて、武琉の腕にしがみつく。
と、そこからかんちゃんがズボッと頭を出してハッハッ言いながら僕達を見上げていた。
お互い唇を離して、悪気のないかんちゃんの顔を見てから顔を見合わせる。
「ふっ」
「ははっ」
2人で笑いながら「もう!かんちゃん?」と言いながら僕は彼の頭を撫でた。
「今日は俺がお預けか」
僕の額にチュッと音を立ててキスすると、武琉は立ち上がった。
「ご飯の用意するから、香緒はお風呂よろしく」
「うん。分かった」
そう言って、僕はかんちゃんを連れてバスルームに向かった。
昨日の夕食は、包み焼きハンバーグだった。
正直、お店で食べるやつみたいだった。いや、今まで食べたどこのお店のものより、武琉が作ってくれるのが一番美味しい。
愛情の差かな?
なんて、食べながら武琉に言うと、みるみるうちに顔が紅くなって面白かった。
◆◆
で、今日はかんちゃん過ごす最後の日。夕方にはさっちゃんが迎えに来る予定だ。
僕達は朝から車でさっちゃん行きつけのドッグランに行く事にした。
昨日歩いてやって来た河川敷を通りかかると、武琉は「ほんとにこんなところまで来たのか?」と呆れるように言う。
「来たよ!本当に遠かったんだからね?」
「だよな。香緒があんなところで寝落ちするはずだ」
助手席で、かんちゃんを膝に乗せて武琉は笑っている。
かんちゃんは窓の桟に手を掛けて、嬉しそうに外を眺めていた。
冬の気配のする景色だけど、空だけは青く澄み切っている。
いい天気で良かったなぁ…と運転しながら思った。
教えられたドッグランは少し郊外にあって、結構広かった。
スタッフさんには覚えられているようで、「あら、今日はお母さんじゃないのね」とかんちゃんは撫でられて尻尾をブンブン振っていた。
そこからはひたすら武琉が遊んでくれていた。
「かんちゃん、これ好きなんですよ」と、フリスビーを渡されて、武琉が投げるとかんちゃんは上手に空中でキャッチして僕の元に持って来る。
「俺が投げてんだけど…」
と武琉は半ば諦めたように僕からフリスビーを受け取りまた投げた。
「武琉、投げるの上手いね!」
「そうか?初めてやったけど、なかなか面白いな」
少年みたいな顔して、武琉はかんちゃんと遊んでいる。
何か昔の武琉を思い出して懐かしいなぁ…。
とその顔を眺めていると、武琉はフリスビーを差し出して「香緒もやるか?」と尋ねてきた。
それを受け取り投げてみると、武琉が投げる半分も飛ばずに地面に落ちた。
遠くまで飛んでくるものだと思っていたかんちゃんは、凄い勢いで走って来て地面に落ちているそれを拾って僕のところへやって来た。
「香緒って、意外と不器用だもんな!」
一連の様子を見ていた武琉は横で大笑いしていた。
「もう!知ってるよ!」
僕も笑いながら返した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
72
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる