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番外編11.とある日常の風景II(side香緒)
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仲良くなろう大作戦その2。
「お散歩へ行く…だって。武琉、行ける?」
洗濯物を干してリビングに戻って来た武琉にそう声を掛けると、「ちょうど買い物行こうと思ってた」と返事が返って来て、僕たちは出かける用意を始めた。
かんちゃんは僕の後をずっと付いて歩いてて、忙しなく尻尾を振り続けていた。
最後に武琉が荷物からリードを取り出して見せると、一目散に駆けて行って、現金だなぁって微笑ましく見てた。
もう秋も深まった季節だけど、今日は比較的暖かい。
近くの大きな公園まで行ってみようと、かんちゃんと共に2人で外に出た。
もう夕方で、かなり陽は落ちている。あんまり時間取れないかも、と思いながらも公園を目指す。
リードは武琉が持っていて、最初こそ、なんでお前が持ってるんだみたいに吠えたけど、しばらく歩くとそんな事も忘れたように、先頭を切って歩いている。
ただし、そこはやっぱり犬。ありとあらゆるところを嗅ぎ周り、中々真っ直ぐには進んでくれない。
「かんちゃん、公園着く前に暗くなりそうだよ~」
そう僕が言うと、なぁに?と振り返りながらも歩みを進めている。
「本当にこいつ…香緒の事好きだな」
「え⁈」
唐突にそう言われて、歩きながら武琉の方を見る。
「だって、さっきから香緒の事しか見てないし」
武琉はリードが気になるのか前を向いたまま続けた。
「そう…かなぁ?」
そう首を傾げる僕に、武琉は笑いながら「そうだよ」と答えた。
公園に着くと、大きな池の向こう側には茜色の空が見えていて、西の空には宵の明星が輝いていた。
それでも街灯の灯る公園の中は散歩には困らない程度には明るかった。
「さすがに陽が落ちるの早いね」
「だな」
「ね、手、繋いでいい?」
武琉の方を向いてそう言うと、武琉はふふっと笑って「俺もそう言おうと思ったところ」と手を繋いでくれた。
重ねあった手の温もりが、心まで暖かくしてくれる。
横に並ぶ恋人の顔を眺めながら、幸せだなぁって思わずにはいられなかった。
池の周りをぐるっと一周して、スーパーに寄って帰ると、武琉はすぐに夕飯の準備を始めた。
遅くなったから、時間かからないものでいいからねって僕が言うと、「分かった」って返事が返って来た。
武琉がご飯作っている間にお風呂を掃除して、お湯を溜める用意だけしておく。
かんちゃんは疲れたのか、また丸まって大人しく寝ていた。
今日の夕食は、豚の生姜焼きに豚汁。
凄く寒くはなかったけど、やっぱり外を歩き回ると身体が冷えている。
「いただきます!」
2人で声を合わせて手を合わせると、お箸を持った。
「は~っ!あったまるーっ」
「それは良かった」
僕が豚汁を啜りながらしみじみと言うと、武琉が向かいで満足そうに笑った。
いつも思うけど、自分だけ武琉のご飯食べてて申し訳ないなー…と思う。
希海と響が一体どんな食生活をしているのか知らないけれど、希海の家から出る時それが一番気になった。
でも、やっぱり武琉と2人で暮らしていきたいって気持ちが勝って独立した。
「俺、明日はちょっと遅くなりそうだけど、大丈夫?」
ご飯を食べながら武琉が口を開いた。
休みの前日は大抵普段より遅くなる。明後日は休みだから、明日の帰宅は夕方くらいになるはずだ。
となると、必然的にかんちゃんは1人で見なきゃならないわけで…。
「さっちゃんは、午前中は結構寝てるって言ってたし、お散歩に長めに行ってみる。どちらかと言えば僕の体力の方が心配かな?」
「明後日は俺が見るから、とりあえず明日は頑張れ。夕食はリクエストに応えるから」
「やった!ハンバーグがいい。ソースはお任せで」
思い出のメニューのハンバーグは、今でも好きで、たまに作って貰う。
けど、毎回どこかしらアレンジされてて、今度はどんなのだろうっていつも楽しみにしているのだ。
「了解」
武琉は僕の返事を聞くと、いつもの優しい眼差しで微笑んでくれた。
「お散歩へ行く…だって。武琉、行ける?」
洗濯物を干してリビングに戻って来た武琉にそう声を掛けると、「ちょうど買い物行こうと思ってた」と返事が返って来て、僕たちは出かける用意を始めた。
かんちゃんは僕の後をずっと付いて歩いてて、忙しなく尻尾を振り続けていた。
最後に武琉が荷物からリードを取り出して見せると、一目散に駆けて行って、現金だなぁって微笑ましく見てた。
もう秋も深まった季節だけど、今日は比較的暖かい。
近くの大きな公園まで行ってみようと、かんちゃんと共に2人で外に出た。
もう夕方で、かなり陽は落ちている。あんまり時間取れないかも、と思いながらも公園を目指す。
リードは武琉が持っていて、最初こそ、なんでお前が持ってるんだみたいに吠えたけど、しばらく歩くとそんな事も忘れたように、先頭を切って歩いている。
ただし、そこはやっぱり犬。ありとあらゆるところを嗅ぎ周り、中々真っ直ぐには進んでくれない。
「かんちゃん、公園着く前に暗くなりそうだよ~」
そう僕が言うと、なぁに?と振り返りながらも歩みを進めている。
「本当にこいつ…香緒の事好きだな」
「え⁈」
唐突にそう言われて、歩きながら武琉の方を見る。
「だって、さっきから香緒の事しか見てないし」
武琉はリードが気になるのか前を向いたまま続けた。
「そう…かなぁ?」
そう首を傾げる僕に、武琉は笑いながら「そうだよ」と答えた。
公園に着くと、大きな池の向こう側には茜色の空が見えていて、西の空には宵の明星が輝いていた。
それでも街灯の灯る公園の中は散歩には困らない程度には明るかった。
「さすがに陽が落ちるの早いね」
「だな」
「ね、手、繋いでいい?」
武琉の方を向いてそう言うと、武琉はふふっと笑って「俺もそう言おうと思ったところ」と手を繋いでくれた。
重ねあった手の温もりが、心まで暖かくしてくれる。
横に並ぶ恋人の顔を眺めながら、幸せだなぁって思わずにはいられなかった。
池の周りをぐるっと一周して、スーパーに寄って帰ると、武琉はすぐに夕飯の準備を始めた。
遅くなったから、時間かからないものでいいからねって僕が言うと、「分かった」って返事が返って来た。
武琉がご飯作っている間にお風呂を掃除して、お湯を溜める用意だけしておく。
かんちゃんは疲れたのか、また丸まって大人しく寝ていた。
今日の夕食は、豚の生姜焼きに豚汁。
凄く寒くはなかったけど、やっぱり外を歩き回ると身体が冷えている。
「いただきます!」
2人で声を合わせて手を合わせると、お箸を持った。
「は~っ!あったまるーっ」
「それは良かった」
僕が豚汁を啜りながらしみじみと言うと、武琉が向かいで満足そうに笑った。
いつも思うけど、自分だけ武琉のご飯食べてて申し訳ないなー…と思う。
希海と響が一体どんな食生活をしているのか知らないけれど、希海の家から出る時それが一番気になった。
でも、やっぱり武琉と2人で暮らしていきたいって気持ちが勝って独立した。
「俺、明日はちょっと遅くなりそうだけど、大丈夫?」
ご飯を食べながら武琉が口を開いた。
休みの前日は大抵普段より遅くなる。明後日は休みだから、明日の帰宅は夕方くらいになるはずだ。
となると、必然的にかんちゃんは1人で見なきゃならないわけで…。
「さっちゃんは、午前中は結構寝てるって言ってたし、お散歩に長めに行ってみる。どちらかと言えば僕の体力の方が心配かな?」
「明後日は俺が見るから、とりあえず明日は頑張れ。夕食はリクエストに応えるから」
「やった!ハンバーグがいい。ソースはお任せで」
思い出のメニューのハンバーグは、今でも好きで、たまに作って貰う。
けど、毎回どこかしらアレンジされてて、今度はどんなのだろうっていつも楽しみにしているのだ。
「了解」
武琉は僕の返事を聞くと、いつもの優しい眼差しで微笑んでくれた。
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