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番外編5.とある非日常の風景II(side希海)
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響は車の中でキャップを被り、マスクをしてから厚めのダウンジャケットを着ている。
もう11月も後半に差し掛かっているとそれなりに寒く、この姿でもまだ不審ではない。
「夜は魚がメインだから、昼はそれ以外にするといい」
後部座席から黒いロングコートを取り出して、羽織りながら響に言う。
「んー。りょうかーい」
そう言いながら響は当たり前のように俺の腕にしがみついてきた。
「誰かに見られたらどうするんだ」
少し眉間に皺を寄せていると、
「だーいじょうぶ!マネージャーと仲いいんだくらいにしか思われないから」
なんて軽く流された。
俺はマネージャーじゃないんだが……
「お前、もしかして東藤さんともこんな感じなのか?」
俺の腕に凭れかかるように歩く響に尋ねる。
「ん? まあ、たまには。ま、東藤さんからは『響君。重いから止めてくれるかな?』って言われるんだけど」
途中で東藤さんの真似をしながら響は言う。
ちょっとばかり東藤さんの苦労が目に浮かび、俺は溜息を漏らした。
「あまり迷惑かけるなよ? 今日も東藤さんがスケジュール調整してくれたから来れたんだぞ?」
「わかってるって!」
そこからレストランに入り昼食を取る。
響はすぐに、「あ、俺ラーメン食べたい!」と食券を買っている。俺は普段からあまり食べる方ではないから、パンが並ぶコーナーでサンドウィッチとコーヒーを買ってきた。
人があまり座っていない場所を選んで向かい合わせに座り食べ始める。
「お、結構このラーメンいける」
響は嬉しそうに麺をすすっている。
「なあなあ、後でソフトクリーム食べたい! こんなところ来たら無性に食べたくならね?」
響はサンドウィッチを無言で齧る俺に、子供のような顔して笑いかける
「夕食入らなくなっても知らないぞ?」
「子供かよっ!」
響に笑いながら突っ込まれる。
まあ、その笑顔は子供みたいに可愛いんだが。
響のリクエスト通りに売店に寄り、また車に乗り込む。エンジンをかけ暖房だけ入れると隣を見た。
助手席では響が嬉しそうにソフトクリームを食べている。コーンの部分がラングドシャになっていて、アイスは普通より濃厚らしく、あっという間に溶けたクリームが滴っていた。
「わっ! やっっばっ!」
慌てて食べているが、それでも響の指に溶けたクリームが伝っている。
「溢れるぞ」
そう言って俺は響の指の隙間に舌を這わした。
「あっ! 希海、それやばいっ」
「これ以上されたくなかったら早く食べろ」
見上げると、ハッとしたように響はまた食べ始めた。
やばいのはこっちの方だ。
目の前で舌を出してアイスを掬う仕草、溶けたアイスを啜る音。
いたって普通の動作なのに、こちらはつい頭を過ぎる行為中の姿。
欲求不満の高校生か、と自分に呆れながらも、また響の指を伝うアイスを舐めた。
「ちょっ、希海っっ! もう食べるからっ! それホント無理!」
響はアイスに巻かれている紙を必死で剥がして、ラングドシャを齧る。
「……何が無理なんだ?」
上目遣いにそう尋ねると、響は「うっっ」と動作を止める。
「わかってやってるだろ! そーいうとこ、司さんにそっくり!!」
響は顔を紅くして声を上げている。
俺はまた運転席に体を戻すと、大きく溜め息を一つ。
「……不本意、なんだが……」
隣で「ぶっ!」と吹き出しながら、響は何とか残りを食べ終えた。
「美味かったぁ!」
満足そうに声を出した響の、さっきまでソフトクリームを握っていた手を取ると、俺は指にまた舌を這わす。
「あぁ。なかなかだ」
響の顔の前でそう言って、今度はその唇を吸うように触れた。
「んっ……」
甘いその後味を確かめるように、口の中を舐め回すと、握っていた指に力が入る。
「ふっ! あっっ」
口から漏れる甘い声に酔いしれながら唇を離すと、響が熱っぽい目でこちらを見ていた。
「響……」
「何……?」
「手を洗ってこい。ベトベトだ」
うっとりするような表情が切り替わると抗議するような声が上がる。
「ムード! 考えて!」
ジトッとこちらを見て響はそう言った。
もう11月も後半に差し掛かっているとそれなりに寒く、この姿でもまだ不審ではない。
「夜は魚がメインだから、昼はそれ以外にするといい」
後部座席から黒いロングコートを取り出して、羽織りながら響に言う。
「んー。りょうかーい」
そう言いながら響は当たり前のように俺の腕にしがみついてきた。
「誰かに見られたらどうするんだ」
少し眉間に皺を寄せていると、
「だーいじょうぶ!マネージャーと仲いいんだくらいにしか思われないから」
なんて軽く流された。
俺はマネージャーじゃないんだが……
「お前、もしかして東藤さんともこんな感じなのか?」
俺の腕に凭れかかるように歩く響に尋ねる。
「ん? まあ、たまには。ま、東藤さんからは『響君。重いから止めてくれるかな?』って言われるんだけど」
途中で東藤さんの真似をしながら響は言う。
ちょっとばかり東藤さんの苦労が目に浮かび、俺は溜息を漏らした。
「あまり迷惑かけるなよ? 今日も東藤さんがスケジュール調整してくれたから来れたんだぞ?」
「わかってるって!」
そこからレストランに入り昼食を取る。
響はすぐに、「あ、俺ラーメン食べたい!」と食券を買っている。俺は普段からあまり食べる方ではないから、パンが並ぶコーナーでサンドウィッチとコーヒーを買ってきた。
人があまり座っていない場所を選んで向かい合わせに座り食べ始める。
「お、結構このラーメンいける」
響は嬉しそうに麺をすすっている。
「なあなあ、後でソフトクリーム食べたい! こんなところ来たら無性に食べたくならね?」
響はサンドウィッチを無言で齧る俺に、子供のような顔して笑いかける
「夕食入らなくなっても知らないぞ?」
「子供かよっ!」
響に笑いながら突っ込まれる。
まあ、その笑顔は子供みたいに可愛いんだが。
響のリクエスト通りに売店に寄り、また車に乗り込む。エンジンをかけ暖房だけ入れると隣を見た。
助手席では響が嬉しそうにソフトクリームを食べている。コーンの部分がラングドシャになっていて、アイスは普通より濃厚らしく、あっという間に溶けたクリームが滴っていた。
「わっ! やっっばっ!」
慌てて食べているが、それでも響の指に溶けたクリームが伝っている。
「溢れるぞ」
そう言って俺は響の指の隙間に舌を這わした。
「あっ! 希海、それやばいっ」
「これ以上されたくなかったら早く食べろ」
見上げると、ハッとしたように響はまた食べ始めた。
やばいのはこっちの方だ。
目の前で舌を出してアイスを掬う仕草、溶けたアイスを啜る音。
いたって普通の動作なのに、こちらはつい頭を過ぎる行為中の姿。
欲求不満の高校生か、と自分に呆れながらも、また響の指を伝うアイスを舐めた。
「ちょっ、希海っっ! もう食べるからっ! それホント無理!」
響はアイスに巻かれている紙を必死で剥がして、ラングドシャを齧る。
「……何が無理なんだ?」
上目遣いにそう尋ねると、響は「うっっ」と動作を止める。
「わかってやってるだろ! そーいうとこ、司さんにそっくり!!」
響は顔を紅くして声を上げている。
俺はまた運転席に体を戻すと、大きく溜め息を一つ。
「……不本意、なんだが……」
隣で「ぶっ!」と吹き出しながら、響は何とか残りを食べ終えた。
「美味かったぁ!」
満足そうに声を出した響の、さっきまでソフトクリームを握っていた手を取ると、俺は指にまた舌を這わす。
「あぁ。なかなかだ」
響の顔の前でそう言って、今度はその唇を吸うように触れた。
「んっ……」
甘いその後味を確かめるように、口の中を舐め回すと、握っていた指に力が入る。
「ふっ! あっっ」
口から漏れる甘い声に酔いしれながら唇を離すと、響が熱っぽい目でこちらを見ていた。
「響……」
「何……?」
「手を洗ってこい。ベトベトだ」
うっとりするような表情が切り替わると抗議するような声が上がる。
「ムード! 考えて!」
ジトッとこちらを見て響はそう言った。
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