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番外編4. (希海&響編) The Heart Asks Pleasure First
side響3-1
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「ごめん…」
そう聞こえて頭が真っ白になった。なのに、その言葉とは裏腹に、俺は希海の腕の中に閉じ込められいた。
「え……?」
そう言うのがやっとだった。
「響のことを弟だと思ったことはない」
背中を優しく撫でながら希海は俺の耳元で言った。
それが、一体どう言う意味なのか、ごめんってどう言うことなのか、すでにアルコールの回ったフワフワした頭では考えが纏まらない。
希海は俺を抱きしめたまま、頭を優しく撫でている。まるで、愛しいと言っているように。
「俺は……口下手で誤解も受けやすい。それに臆病だ。だから、お前にそんな事を言わせてしまった……」
まるで懺悔するように、重苦しい口調。
やっぱり、迷惑だったかも知れない……
そう思いかけたとき希海の言葉が続いた。
「好きだ。ずっと。たぶんお前に初めて会った日からずっと」
ゆっくりと腕を離して、希海は俺を見た。一見すると、いつもの涼しい顔。でも、いつもと違う熱を帯びた瞳。
「……あ。……え?」
予想もしてなかったその言葉に驚きすぎて言葉も出ない。だって、今まで香緒と同じ様に可愛がってくれてるだけだって思ってたから。それにそんな前から俺の事が好きって……。何かの冗談かと思った。
「響? どうかしたのか?」
固まっている俺は希海からそう声をかけられて、ようやく現実に戻ってきた。
「いや。ごめんって言うから……。てっきり振られるんだと思った……」
辿々しくそう言うと、申し訳なさそうな顔で笑った。
「だから、ごめん。俺から先にお前に告白すべきだったのに。……好きだよ。響」
真っ直ぐにそう言われて、俺の顔はアルコールが余計に回ったかの様に熱くなった。
「本当に?」
まだ信じられなくて、俺はそう言う。
「本当だ」
目の前には、今までで一番優しく笑う希海の顔があった。そして、ゆっくりとその顔が近づいて、俺は瞳を閉じる。
初めてのキスは、シャンパンの香りがした。
◆◆
希海に好きだって言われて、なんとなく……付き合ってることになってるのかな? 希海は以前にも増して俺に甘くなった。
自分に仕事が入っていなければ、当たり前に俺の送り迎えをしてくれるようになった。
「希海だって忙しいんだから、俺のことは気にしないでいいよ」
それに涼しい顔で希海は答える。
「俺がしたいからやってるだけだ」
なんて普通に言うから顔が熱くなる。
夕食後も何となく一緒に過ごして、お互いの仕事の話とか、ちょっとした出来事とか話すようになって、いつの間にか希海の部屋に朝までいるようになった。
香緒に改めて報告するのも気恥ずかしくて、何も言わないままだった。でもある日、俺が寝ぼけながら希海の部屋から出てくると、仕事へ行く希海と香緒と鉢合わせした。
「おはよ、響。希海借りてくね!」
なんて香緒に笑顔で言われた。
「もうちょっと寝ててもいいぞ」
希海には優しい表情で頭撫でられて、物凄~く恥ずかしかった。
もう、バレバレじゃん。
香緒はそれからも変わらなかった。と言うより、祝福してくれた。
「よかった。希海が幸せなら、僕も幸せだよ」
そう言いながら香緒は少し寂しそうな顔で笑っていた。俺は香緒にだって幸せになって欲しい。その顔を見て思った。
あと……。一番の衝撃的な出来事はあれだ。
ある日、希海と2人でご飯を食べに行った時の事。ホテルのレストランでご飯食べて、帰ろうと店を出た時に、「あら、希海じゃない」と俺たちのうしろから声がした。
振り返ると、仕事仲間なのかモデルみたいなスタイルのいい綺麗な女の人が立っていた。
「あぁ。久しぶりだな」
抑揚なく希海はその人に言う。
もしかして元カノ……とかだったら嫌だなぁ、なんて思いながら希海を見上げると目が合った。
「紹介するよ。俺の母だ」
母ね、母。……。
「母⁈」
驚いてそう声を上げた俺の顔を不思議そうに希海は見下ろしている。
「初めまして。希海の母のまどかです。希海のお友達?」
「あ、あの。三条響です」
テンパったまま、名前だけ何とか告げる。
「母さん。響は、友達じゃない。恋人だ」
へ? 何か凄い事サラッと言われたけど…。と思う間もなく、「きゃー!」と軽く悲鳴を上げて、まどかさんに抱きつかれた。
「本当に? こんな可愛い子が? わ~! よろしくね~」
この人、希海と本当に血が繋がっているんだろうか……?
血が繋がっていると言えばあの人もだ。
まあ、俺と希海が出会うきっかけを作った人。正直、あの人が仕事を放棄しなければ、今の希海との関係もなかったかも知れない。
あの時はチラッと見ただけで、話もしたことなかったけど。
ちゃんと会ったのは、希海と付き合い始めて1年くらい経った頃。俺が仕事でニューヨークに映画の撮影に行ったときだ。
俺のスケジュールをすっかり把握している希海は、ニューヨークでの仕事が入っているのを知って、自分もこっそりスケジュールを開けていた。それを知った時はかなり驚いたけど。
そして、その時ニューヨークで仕事をしていた司さんを紹介された。
「お前か。希海の恋人とか言う奴は」
第一声がこれだった。
だから、つい俺は「悪い?」なんて言ってしまった。きっと第一印象は最悪に違いない。でも、ニューヨークに滞在中は色々と連れて行って貰ったり、撮影も見に来てくれたりして、なんだかんだで気にはかけてくれたみたいだ。
最後には「また来いよ」なんて笑って言ってた。
それからまた月日が流れた、冷たい雨の降る春先。
希海は大きな犬を拾って帰ってきた。その犬は、突然現れたかと思うと、うちの猫を簡単に手懐けた。俺だってずいぶんと時間をかけてようやく……だったから、まあ、かなり嫉妬はした。だから、なかなか認められなかった言うのが正直な気持ちだ。
でも、一歩引いて見ているとよくわかる。お互い惹かれ合ってる、なんて言葉じゃ説明出来ないほどお互いを想い合っているのに全く進展しない。
自分が言うのも何だけど、物凄く焦ったくて、武琉をけしかけたりもした。
なんだかんだで武琉はいい奴で、香緒があんなに自分を曝け出していられる相手は他にはいない。だから、上手く行くといいな、なんて思ってた。
けど……
そう聞こえて頭が真っ白になった。なのに、その言葉とは裏腹に、俺は希海の腕の中に閉じ込められいた。
「え……?」
そう言うのがやっとだった。
「響のことを弟だと思ったことはない」
背中を優しく撫でながら希海は俺の耳元で言った。
それが、一体どう言う意味なのか、ごめんってどう言うことなのか、すでにアルコールの回ったフワフワした頭では考えが纏まらない。
希海は俺を抱きしめたまま、頭を優しく撫でている。まるで、愛しいと言っているように。
「俺は……口下手で誤解も受けやすい。それに臆病だ。だから、お前にそんな事を言わせてしまった……」
まるで懺悔するように、重苦しい口調。
やっぱり、迷惑だったかも知れない……
そう思いかけたとき希海の言葉が続いた。
「好きだ。ずっと。たぶんお前に初めて会った日からずっと」
ゆっくりと腕を離して、希海は俺を見た。一見すると、いつもの涼しい顔。でも、いつもと違う熱を帯びた瞳。
「……あ。……え?」
予想もしてなかったその言葉に驚きすぎて言葉も出ない。だって、今まで香緒と同じ様に可愛がってくれてるだけだって思ってたから。それにそんな前から俺の事が好きって……。何かの冗談かと思った。
「響? どうかしたのか?」
固まっている俺は希海からそう声をかけられて、ようやく現実に戻ってきた。
「いや。ごめんって言うから……。てっきり振られるんだと思った……」
辿々しくそう言うと、申し訳なさそうな顔で笑った。
「だから、ごめん。俺から先にお前に告白すべきだったのに。……好きだよ。響」
真っ直ぐにそう言われて、俺の顔はアルコールが余計に回ったかの様に熱くなった。
「本当に?」
まだ信じられなくて、俺はそう言う。
「本当だ」
目の前には、今までで一番優しく笑う希海の顔があった。そして、ゆっくりとその顔が近づいて、俺は瞳を閉じる。
初めてのキスは、シャンパンの香りがした。
◆◆
希海に好きだって言われて、なんとなく……付き合ってることになってるのかな? 希海は以前にも増して俺に甘くなった。
自分に仕事が入っていなければ、当たり前に俺の送り迎えをしてくれるようになった。
「希海だって忙しいんだから、俺のことは気にしないでいいよ」
それに涼しい顔で希海は答える。
「俺がしたいからやってるだけだ」
なんて普通に言うから顔が熱くなる。
夕食後も何となく一緒に過ごして、お互いの仕事の話とか、ちょっとした出来事とか話すようになって、いつの間にか希海の部屋に朝までいるようになった。
香緒に改めて報告するのも気恥ずかしくて、何も言わないままだった。でもある日、俺が寝ぼけながら希海の部屋から出てくると、仕事へ行く希海と香緒と鉢合わせした。
「おはよ、響。希海借りてくね!」
なんて香緒に笑顔で言われた。
「もうちょっと寝ててもいいぞ」
希海には優しい表情で頭撫でられて、物凄~く恥ずかしかった。
もう、バレバレじゃん。
香緒はそれからも変わらなかった。と言うより、祝福してくれた。
「よかった。希海が幸せなら、僕も幸せだよ」
そう言いながら香緒は少し寂しそうな顔で笑っていた。俺は香緒にだって幸せになって欲しい。その顔を見て思った。
あと……。一番の衝撃的な出来事はあれだ。
ある日、希海と2人でご飯を食べに行った時の事。ホテルのレストランでご飯食べて、帰ろうと店を出た時に、「あら、希海じゃない」と俺たちのうしろから声がした。
振り返ると、仕事仲間なのかモデルみたいなスタイルのいい綺麗な女の人が立っていた。
「あぁ。久しぶりだな」
抑揚なく希海はその人に言う。
もしかして元カノ……とかだったら嫌だなぁ、なんて思いながら希海を見上げると目が合った。
「紹介するよ。俺の母だ」
母ね、母。……。
「母⁈」
驚いてそう声を上げた俺の顔を不思議そうに希海は見下ろしている。
「初めまして。希海の母のまどかです。希海のお友達?」
「あ、あの。三条響です」
テンパったまま、名前だけ何とか告げる。
「母さん。響は、友達じゃない。恋人だ」
へ? 何か凄い事サラッと言われたけど…。と思う間もなく、「きゃー!」と軽く悲鳴を上げて、まどかさんに抱きつかれた。
「本当に? こんな可愛い子が? わ~! よろしくね~」
この人、希海と本当に血が繋がっているんだろうか……?
血が繋がっていると言えばあの人もだ。
まあ、俺と希海が出会うきっかけを作った人。正直、あの人が仕事を放棄しなければ、今の希海との関係もなかったかも知れない。
あの時はチラッと見ただけで、話もしたことなかったけど。
ちゃんと会ったのは、希海と付き合い始めて1年くらい経った頃。俺が仕事でニューヨークに映画の撮影に行ったときだ。
俺のスケジュールをすっかり把握している希海は、ニューヨークでの仕事が入っているのを知って、自分もこっそりスケジュールを開けていた。それを知った時はかなり驚いたけど。
そして、その時ニューヨークで仕事をしていた司さんを紹介された。
「お前か。希海の恋人とか言う奴は」
第一声がこれだった。
だから、つい俺は「悪い?」なんて言ってしまった。きっと第一印象は最悪に違いない。でも、ニューヨークに滞在中は色々と連れて行って貰ったり、撮影も見に来てくれたりして、なんだかんだで気にはかけてくれたみたいだ。
最後には「また来いよ」なんて笑って言ってた。
それからまた月日が流れた、冷たい雨の降る春先。
希海は大きな犬を拾って帰ってきた。その犬は、突然現れたかと思うと、うちの猫を簡単に手懐けた。俺だってずいぶんと時間をかけてようやく……だったから、まあ、かなり嫉妬はした。だから、なかなか認められなかった言うのが正直な気持ちだ。
でも、一歩引いて見ているとよくわかる。お互い惹かれ合ってる、なんて言葉じゃ説明出来ないほどお互いを想い合っているのに全く進展しない。
自分が言うのも何だけど、物凄く焦ったくて、武琉をけしかけたりもした。
なんだかんだで武琉はいい奴で、香緒があんなに自分を曝け出していられる相手は他にはいない。だから、上手く行くといいな、なんて思ってた。
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