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番外編4. (希海&響編) The Heart Asks Pleasure First
side響2-7
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「俺からはこれだ」
希海はボトルを手にして、俺の前にあったグラスにそれを注いだ。
「えっ? まさかこれって……」
「シャンパンだ」
アルコールを前に、やっと大人の仲間入りをしたんだなぁって実感する。
今まで希海が美味しそうにお酒を飲むのを見て、「一口ちょうだい」って言っても絶対に飲ませてくれなかった。目の前の細いグラスに注がれた、黄金色の液体から細かい泡が浮き立つのを眺めながら、なんだかウキウキした。
「じゃあ、食べようか」
香緒がそう言ってグラスを持ち上げたので、3人で軽く合わせて乾杯した。
「すっげー……。お酒だ!」
炭酸飲料とは違い、アルコールの混ざった感じがする。もの凄く香りが良くて、複雑な味わい。20歳になったばかりの若造が飲む代物じゃないんだろうなぁなんて思ってしまう。
「うん。美味しい。えらく張り込んだよね?」
香緒は意味ありげに希海にそう言っていた。
「せっかくだからな」
なんて涼しい顔で言っているが、多分凄く高いんだと思う。目の前の料理も合わせて……。
基本的にこの家での食事は、外食かテイクアウトかデリバリー。俺はカレーくらいなら作れるけど、それだとカレーとシチューとハヤシのローテーションになってしまう。
希海は器用だから料理出来そうだけど、お金と時間をかけたこだわりの料理になりそうだ。
そして香緒は……卵すら満足に割れない驚異の料理音痴だった。
と言う事で、必然的にこんな食生活になってしまっている。
「にしても、舞台楽しみだね」
お酒と料理を楽しみつつ、香緒がそう口を開いた。俺がようやく勝ち取った舞台の主演だ。
「もの凄く台詞多いけど、俺も楽しみ! やりがいありそうだし」
「台本読み手伝うからね!」
「えー……。香緒、めちゃくちゃ棒読みじゃん。可笑しくて笑い堪えるの大変なんだけど」
「あ、失礼だな。僕だって頑張って読んでるし!」
そんな俺達のやりとりを肴に、希海はシャンパンを楽しげに口にしていた。
テーブルの上にガッツリあったご飯も、酒の肴もほぼなくなったころ、最後に香緒が買ってきてくれたケーキを出してくれた。
20本の蝋燭が刺さったケーキだったらどうしようと思ったら、数字の2と0の蝋燭だった。その小さめのホールケーキに灯る灯りを俺は吹き消した。ここに来てから、ずっとこんな風にお祝いしてもらっている。
そう言えば、最初の年はまだ香緒から直接プレゼントは貰わなかった。
何故か部屋の玄関先にサンタのように置いてあって、一瞬なんなのか分からなかったっけ。
去年はやっと手渡しされた。それでもちょっと照れ臭そうに「いらなかったら返してくれていいから」なんて言いながら。ツンデレか?
希海はずっと変わらない。
変に甘いところもあるけど、でも仕事の事になると厳しいところもあって、ちゃんとアドバイスをしてくれた。
新しい事務所に入って、演劇の勉強しながらオーディション受けまくって、ちょっとずつ役貰えるようになって、それをずっと一緒に喜んでくれた。そしてどんなに端役でも舞台を観に来てくれたなんか、勘違いしそうだ。でも、大きくなる気持ちは抑えられない。
俺はずっと希海が好きで、それはこれからも変わらない気がするから。
単なる弟でもいいなんてやっぱり思えなくて、それとなくアピールしてみたけど、希海は全然気付いてくれない。いや、わかっていながらスルーされているのかも知れない。そう思うと複雑な気分だけど、今日はどうしても、どうしても、ちゃんと伝えたいことがあった。
希海はボトルを手にして、俺の前にあったグラスにそれを注いだ。
「えっ? まさかこれって……」
「シャンパンだ」
アルコールを前に、やっと大人の仲間入りをしたんだなぁって実感する。
今まで希海が美味しそうにお酒を飲むのを見て、「一口ちょうだい」って言っても絶対に飲ませてくれなかった。目の前の細いグラスに注がれた、黄金色の液体から細かい泡が浮き立つのを眺めながら、なんだかウキウキした。
「じゃあ、食べようか」
香緒がそう言ってグラスを持ち上げたので、3人で軽く合わせて乾杯した。
「すっげー……。お酒だ!」
炭酸飲料とは違い、アルコールの混ざった感じがする。もの凄く香りが良くて、複雑な味わい。20歳になったばかりの若造が飲む代物じゃないんだろうなぁなんて思ってしまう。
「うん。美味しい。えらく張り込んだよね?」
香緒は意味ありげに希海にそう言っていた。
「せっかくだからな」
なんて涼しい顔で言っているが、多分凄く高いんだと思う。目の前の料理も合わせて……。
基本的にこの家での食事は、外食かテイクアウトかデリバリー。俺はカレーくらいなら作れるけど、それだとカレーとシチューとハヤシのローテーションになってしまう。
希海は器用だから料理出来そうだけど、お金と時間をかけたこだわりの料理になりそうだ。
そして香緒は……卵すら満足に割れない驚異の料理音痴だった。
と言う事で、必然的にこんな食生活になってしまっている。
「にしても、舞台楽しみだね」
お酒と料理を楽しみつつ、香緒がそう口を開いた。俺がようやく勝ち取った舞台の主演だ。
「もの凄く台詞多いけど、俺も楽しみ! やりがいありそうだし」
「台本読み手伝うからね!」
「えー……。香緒、めちゃくちゃ棒読みじゃん。可笑しくて笑い堪えるの大変なんだけど」
「あ、失礼だな。僕だって頑張って読んでるし!」
そんな俺達のやりとりを肴に、希海はシャンパンを楽しげに口にしていた。
テーブルの上にガッツリあったご飯も、酒の肴もほぼなくなったころ、最後に香緒が買ってきてくれたケーキを出してくれた。
20本の蝋燭が刺さったケーキだったらどうしようと思ったら、数字の2と0の蝋燭だった。その小さめのホールケーキに灯る灯りを俺は吹き消した。ここに来てから、ずっとこんな風にお祝いしてもらっている。
そう言えば、最初の年はまだ香緒から直接プレゼントは貰わなかった。
何故か部屋の玄関先にサンタのように置いてあって、一瞬なんなのか分からなかったっけ。
去年はやっと手渡しされた。それでもちょっと照れ臭そうに「いらなかったら返してくれていいから」なんて言いながら。ツンデレか?
希海はずっと変わらない。
変に甘いところもあるけど、でも仕事の事になると厳しいところもあって、ちゃんとアドバイスをしてくれた。
新しい事務所に入って、演劇の勉強しながらオーディション受けまくって、ちょっとずつ役貰えるようになって、それをずっと一緒に喜んでくれた。そしてどんなに端役でも舞台を観に来てくれたなんか、勘違いしそうだ。でも、大きくなる気持ちは抑えられない。
俺はずっと希海が好きで、それはこれからも変わらない気がするから。
単なる弟でもいいなんてやっぱり思えなくて、それとなくアピールしてみたけど、希海は全然気付いてくれない。いや、わかっていながらスルーされているのかも知れない。そう思うと複雑な気分だけど、今日はどうしても、どうしても、ちゃんと伝えたいことがあった。
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