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番外編4. (希海&響編) The Heart Asks Pleasure First
side響2-5
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せっかくだから入れて貰ったコーヒーを飲みながら待つ事にする。何となく希海みたいにブラックで飲んでみようと一口含むが、苦くて飲めない。慌ててミルクと砂糖を入れて掻き混ぜると、それを流し込んだ。
にしても、部屋の中が広い上に立派過ぎて落ち着かない。向こう側にはバーカウンターのようなものが見えるし、でっかいテレビと、その前には半楕円形に備え付けられた立派な皮張りのソファ。
キッチンのカウンター横には4人掛けの広いダイニングテーブル。
希海ってもしかしなくてもお金持ちか……?
すでに住む世界の違いに溜め息が出た。
家賃一体いくらだよ……
不動産屋を回っていたときには怖くて値段も見られないような物件だ。俺の貯金で1ヶ月住めるかどうか。なんて現実的なことを考えてしまった。
気を紛らわそうとスマホを取り出して、ゲームアプリを始める。どのくらい時間が経ったか。そろそろ飽きてきたな、と思っていると、奥の扉が空いた。
「遅くなった。すまない」
少し慌てたようにこちらにやって来ると、座ったままの俺の頭を優しく撫で「着替えてくる」と部屋を出て行った。
ああやって希海は頭を撫でてくれるけど、嬉しい反面何か子供扱いされているような、ペットの犬を撫でているような、そんな感覚なんじゃないだろうかと思ってしまう。
だいたい、俺が一方的に希海のことを好きなだけで、向こうが俺のことをどう思っているかなんてわからない。やっぱり『弟みたいなもの』なのかな。それでもいいや。こうやって気にかけてくれるんだから。
戻って来た希海は、もちろんヨレヨレのスエットなど来ておらず、何処が普段着? みたいな白のシャツにネイビーのチノパン。正直見惚れるくらい格好良かった。
「コーヒー……香緒が入れたのか」
「あぁ、あの猫みたいな人……?」
「猫? まあ確かに。紹介するよ」
ちょっと笑いながらそう言われて2人で部屋を出ると、向かい側にある3つの扉のうち真ん中の部屋のインターフォンを押した。それに応答することがなく扉が開く。
「お帰り、希海。今日の仕事はどうだった?」
「順調に進んだよ」
「良かった」
俺からは扉に隠れて見えないが、多分香緒って人はさっきとは違い笑っている。
「香緒、紹介するよ」
そう言って扉をもう少し開き、俺の顔が見えた途端、表情がなくなるのが分かった。
俺、歓迎されてないんだろうなぁ……
その顔を見てそう思った。
「三条響。去年仕事で一緒になって知り合った」
そう希海に紹介され俺が頭を少し下げると、相手は「橋本香緒です」とだけ答えた。
「そのうちここに住むことになるから」
「「えっ?」」
希海の言葉に、2人同時に声を上げる。
「家、見つからないんだろう?」
「いや……。そう、だけど……その」
香緒の顔をチラッと見ると、少しだけ眉をひそめている。それに気づいたのか、「僕は反対しないけど。この家にいる条件だし」と呟くように小さく言った。
「条件?」
俺が疑問を口に出すと、希海が言った。
「家主の決めたことに逆らわない、かな。まあ、そんな無茶な事は言わない」
「でも……」
「いつでも出て行けばいい。だが、今はここにいる方がいいだろ?」
「……わかった」
そう返事をすると、また希海は俺の頭を撫でた。その様子を香緒は複雑そうに眺めながら、「煩くしなければそれでいいから。じゃあ」そう言って扉を閉めた。
「すまないな。香緒は人見知りが激しいんだ。大丈夫、そのうち慣れる。部屋、案内するから」
そう言って希海は隣の部屋に移動した。
にしても、部屋の中が広い上に立派過ぎて落ち着かない。向こう側にはバーカウンターのようなものが見えるし、でっかいテレビと、その前には半楕円形に備え付けられた立派な皮張りのソファ。
キッチンのカウンター横には4人掛けの広いダイニングテーブル。
希海ってもしかしなくてもお金持ちか……?
すでに住む世界の違いに溜め息が出た。
家賃一体いくらだよ……
不動産屋を回っていたときには怖くて値段も見られないような物件だ。俺の貯金で1ヶ月住めるかどうか。なんて現実的なことを考えてしまった。
気を紛らわそうとスマホを取り出して、ゲームアプリを始める。どのくらい時間が経ったか。そろそろ飽きてきたな、と思っていると、奥の扉が空いた。
「遅くなった。すまない」
少し慌てたようにこちらにやって来ると、座ったままの俺の頭を優しく撫で「着替えてくる」と部屋を出て行った。
ああやって希海は頭を撫でてくれるけど、嬉しい反面何か子供扱いされているような、ペットの犬を撫でているような、そんな感覚なんじゃないだろうかと思ってしまう。
だいたい、俺が一方的に希海のことを好きなだけで、向こうが俺のことをどう思っているかなんてわからない。やっぱり『弟みたいなもの』なのかな。それでもいいや。こうやって気にかけてくれるんだから。
戻って来た希海は、もちろんヨレヨレのスエットなど来ておらず、何処が普段着? みたいな白のシャツにネイビーのチノパン。正直見惚れるくらい格好良かった。
「コーヒー……香緒が入れたのか」
「あぁ、あの猫みたいな人……?」
「猫? まあ確かに。紹介するよ」
ちょっと笑いながらそう言われて2人で部屋を出ると、向かい側にある3つの扉のうち真ん中の部屋のインターフォンを押した。それに応答することがなく扉が開く。
「お帰り、希海。今日の仕事はどうだった?」
「順調に進んだよ」
「良かった」
俺からは扉に隠れて見えないが、多分香緒って人はさっきとは違い笑っている。
「香緒、紹介するよ」
そう言って扉をもう少し開き、俺の顔が見えた途端、表情がなくなるのが分かった。
俺、歓迎されてないんだろうなぁ……
その顔を見てそう思った。
「三条響。去年仕事で一緒になって知り合った」
そう希海に紹介され俺が頭を少し下げると、相手は「橋本香緒です」とだけ答えた。
「そのうちここに住むことになるから」
「「えっ?」」
希海の言葉に、2人同時に声を上げる。
「家、見つからないんだろう?」
「いや……。そう、だけど……その」
香緒の顔をチラッと見ると、少しだけ眉をひそめている。それに気づいたのか、「僕は反対しないけど。この家にいる条件だし」と呟くように小さく言った。
「条件?」
俺が疑問を口に出すと、希海が言った。
「家主の決めたことに逆らわない、かな。まあ、そんな無茶な事は言わない」
「でも……」
「いつでも出て行けばいい。だが、今はここにいる方がいいだろ?」
「……わかった」
そう返事をすると、また希海は俺の頭を撫でた。その様子を香緒は複雑そうに眺めながら、「煩くしなければそれでいいから。じゃあ」そう言って扉を閉めた。
「すまないな。香緒は人見知りが激しいんだ。大丈夫、そのうち慣れる。部屋、案内するから」
そう言って希海は隣の部屋に移動した。
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