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番外編3. Welcome to my home
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気がつけば、もう時間は9時を回っている。希海さんと響が帰って来てからもう1時間程が過ぎていた。
2人がダイニングテーブルでケーキを食べている間、岡田さんはそっちに移り響と楽しそうに笑いながら盛り上がっている。
瑤子さんは空いた香緒の隣に異動すると、一緒にアルバムの続きを見ていた。
「それにしても、昔雑誌で見てた人が今私の横にいるなんてなぁ」
瑤子さんは感慨深そうに香緒を見る。
「僕の事、そんな前から知ってくれてたんですか?」
「うん。実はよく読んた雑誌に、香緒さんがモデルしてた広告が掲載されてて。ちょっと憧れてた」
その時を思い出すような懐かしそうな顔で、瑤子さんは香緒を見つめた。
「え?僕に?」
「だって、あんなに可愛い服着こなしてるんだよ。私、どう頑張ってもあんな可愛い服似合いそうもないし」
「そうかなぁ……。僕は瑤子さんも似合うと思うんだけどなぁ」
香緒は意外そうに、そう答えている。
俺と初めて会ったあのしばらくの間だけでも、香緒が着ていた衣装は全て、何というかヒラヒラしていた。
一番初めは、真っ白なレースが幾重にも重ねられたフワフワな膝丈ワンピース。
他にも、間違って蝶が止まるんじゃないかと思うような、花がプリントされたドレスや、外国の映画に出てきそうなエプロンドレスなど。
最初こそ女の子だと思っていた香緒が実は男の子だったと知ってからも、そんな服装の香緒を俺は何の違和感もなく受け入れていた。それくらい、似合っていたからだ。
「じゃあ、今度着てみる?瑤子さんになら喜んで衣装提供する人いそうだし。メイクはさっちゃんにして貰って、撮影は司にして貰えばいいよ!」
目を輝かせて香緒が言うのと正反対に、瑤子さんは顔を青ざめながら「むりむりむり!」と首を横に振っている。そして、チラッと司さんの方を見た。
その司さんは、背もたれに肘を付けて頰杖を付きながら、何故か冷めた目をして瑤子さんを見ていた。
「こいつの写真を撮ろうと思ったら、結構至難の技なんだけど」
息を吐き出しながら言う司さんに「どう言うこと?」と香緒が尋ねる。
その会話に、瑤子さんはジトっとした目を向けている。
「全然カメラの方を向こうとしないから」
「だって!恥ずかしいじゃない!」
その気持ちは分からないでもない。普段写真など撮られる事がなかった俺も、希海さんに初めて写真を撮られた時は正面から撮られた訳じゃないのに、それでも結構恥ずかしかった。
パスポート用の写真を撮られた時など、最初は何処を見ていいのか分からず目が泳いでしまい、希海さんに笑われてしまったのだ。
「気持ちは分かります」
つい俺がそう口に出すと、瑤子さんは味方を見つけたからかホッとしたように「でしょう?」と俺に同意を求めた。
「えー!じゃあ、服着るだけでもいいから、今度一緒に選びましょうね?」
香緒は瑤子さんの事を、まるで姉のように慕っているのがよく分かる。
確かに兄弟のいない俺も、もし姉がいたらこんな感じなのかなと思わせてくれた。
「は、はぁ……」
当の本人は、戸惑い気味にそう返事をするだけだったが。
「そろそろ帰るか」
司さんが時計を見てそう言うと、瑤子さんも「そうだね。長居しちゃったね」と答える。
「じゃあ、タクシー呼びましょうか?」
俺がそう言うと、司さんは久しぶりに見せる悪そうな顔で笑う。
「タクシーならそこに居るだろ?」
そう言って顎を動かして差す方向には、もちろん希海さんがいた。
「希海!送ってくれ」
司さんは立ち上がると、当たり前のようにそう言う。
ダイニングテーブルに座っていた希海さんは、不機嫌そうに顔を顰めてこっちを見ている。
「タクシーを呼べばいいだろう」
冷たく希海さんが返すと、司さんはそれを意に返さず笑いながら口を開いた。
「うちまで来たら、お前が欲しがってたレンズ、やってもいいんだけど」
それを聞いた希海さんは、一層顔を顰めると立ち上がり、「鍵を取ってくる」と部屋を出て行った。
そのやりとりを見ていた岡田さんは、
「司も可愛い甥っ子に甘いじゃん!」
とゲラゲラ笑っていた。
2人がダイニングテーブルでケーキを食べている間、岡田さんはそっちに移り響と楽しそうに笑いながら盛り上がっている。
瑤子さんは空いた香緒の隣に異動すると、一緒にアルバムの続きを見ていた。
「それにしても、昔雑誌で見てた人が今私の横にいるなんてなぁ」
瑤子さんは感慨深そうに香緒を見る。
「僕の事、そんな前から知ってくれてたんですか?」
「うん。実はよく読んた雑誌に、香緒さんがモデルしてた広告が掲載されてて。ちょっと憧れてた」
その時を思い出すような懐かしそうな顔で、瑤子さんは香緒を見つめた。
「え?僕に?」
「だって、あんなに可愛い服着こなしてるんだよ。私、どう頑張ってもあんな可愛い服似合いそうもないし」
「そうかなぁ……。僕は瑤子さんも似合うと思うんだけどなぁ」
香緒は意外そうに、そう答えている。
俺と初めて会ったあのしばらくの間だけでも、香緒が着ていた衣装は全て、何というかヒラヒラしていた。
一番初めは、真っ白なレースが幾重にも重ねられたフワフワな膝丈ワンピース。
他にも、間違って蝶が止まるんじゃないかと思うような、花がプリントされたドレスや、外国の映画に出てきそうなエプロンドレスなど。
最初こそ女の子だと思っていた香緒が実は男の子だったと知ってからも、そんな服装の香緒を俺は何の違和感もなく受け入れていた。それくらい、似合っていたからだ。
「じゃあ、今度着てみる?瑤子さんになら喜んで衣装提供する人いそうだし。メイクはさっちゃんにして貰って、撮影は司にして貰えばいいよ!」
目を輝かせて香緒が言うのと正反対に、瑤子さんは顔を青ざめながら「むりむりむり!」と首を横に振っている。そして、チラッと司さんの方を見た。
その司さんは、背もたれに肘を付けて頰杖を付きながら、何故か冷めた目をして瑤子さんを見ていた。
「こいつの写真を撮ろうと思ったら、結構至難の技なんだけど」
息を吐き出しながら言う司さんに「どう言うこと?」と香緒が尋ねる。
その会話に、瑤子さんはジトっとした目を向けている。
「全然カメラの方を向こうとしないから」
「だって!恥ずかしいじゃない!」
その気持ちは分からないでもない。普段写真など撮られる事がなかった俺も、希海さんに初めて写真を撮られた時は正面から撮られた訳じゃないのに、それでも結構恥ずかしかった。
パスポート用の写真を撮られた時など、最初は何処を見ていいのか分からず目が泳いでしまい、希海さんに笑われてしまったのだ。
「気持ちは分かります」
つい俺がそう口に出すと、瑤子さんは味方を見つけたからかホッとしたように「でしょう?」と俺に同意を求めた。
「えー!じゃあ、服着るだけでもいいから、今度一緒に選びましょうね?」
香緒は瑤子さんの事を、まるで姉のように慕っているのがよく分かる。
確かに兄弟のいない俺も、もし姉がいたらこんな感じなのかなと思わせてくれた。
「は、はぁ……」
当の本人は、戸惑い気味にそう返事をするだけだったが。
「そろそろ帰るか」
司さんが時計を見てそう言うと、瑤子さんも「そうだね。長居しちゃったね」と答える。
「じゃあ、タクシー呼びましょうか?」
俺がそう言うと、司さんは久しぶりに見せる悪そうな顔で笑う。
「タクシーならそこに居るだろ?」
そう言って顎を動かして差す方向には、もちろん希海さんがいた。
「希海!送ってくれ」
司さんは立ち上がると、当たり前のようにそう言う。
ダイニングテーブルに座っていた希海さんは、不機嫌そうに顔を顰めてこっちを見ている。
「タクシーを呼べばいいだろう」
冷たく希海さんが返すと、司さんはそれを意に返さず笑いながら口を開いた。
「うちまで来たら、お前が欲しがってたレンズ、やってもいいんだけど」
それを聞いた希海さんは、一層顔を顰めると立ち上がり、「鍵を取ってくる」と部屋を出て行った。
そのやりとりを見ていた岡田さんは、
「司も可愛い甥っ子に甘いじゃん!」
とゲラゲラ笑っていた。
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