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番外編3. Welcome to my home
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皆にはリビングのソファに移ってもらい、俺は瑤子さんの持って来たケーキを皿に並べてコーヒーを入れる。
また瑤子さんが手伝うとキッチンへ来てくれて、そこでケーキについて尋ねてみた。
「誰がどれか決まってますか?あと、もしかして希海さんと響の分も入ってます?」
今ここにいる人数より2つ多いケーキに、おそらくそうだろうと思いつつ尋ねる。
「うん。そう。2人はお仕事?」
瑤子さんは皿にフォークをセットしながらそう答える。
「いえ。2人は席が足りないからって。今日は外で食べてくるそうです」
俺はその横でカップにコーヒーを注いでいた。
「そっか。残念。あ、2人が好きそうなケーキがあれば先に取っておく?」
瑤子さんにそう言われて、希海さんにはスフレチーズケーキ、響にはモンブランを選んだ。
「良かったんですか?先に選んで」
コーヒーを乗せたトレーを持ちながら、ケーキを乗せたトレーを持つ瑤子さんに尋ねる。
「大丈夫だよ。というより予想通りでびっくりしてる」
「どうしてですか?」
キッチンを出ながらそう口にする瑤子さんに不思議に思いながら尋ねる。
「これ、誰が何食べるか予想して選んだの司だから」
「確かにそれは驚きますね」
甥っ子の分はともかく、司さんが響の好きなケーキまで知っていた事に驚きながら、俺はリビングに向かった。
ソファには岡田さんを挟んで司さんと香緒が座っていて、香緒は岡田さんとアルバムを覗き込んでいた。
「武琉!見て見てこれ!」
香緒が顔を上げて、あの時に戻ったようなワクワクしたような笑顔を見せる。
「ちょっと待って」
俺はそれに笑いながら返して、コーヒーをテーブルに置いていくと、瑤子さんは向こう側からケーキの皿を、何にするか尋ねる事なく置いていた。
司さんの前にザッハトルテ、岡田さんには苺のショートケーキ。そして香緒の前にフルーツタルトを置き、残ったレアチーズケーキとプリンアラモードを手に取ると、レアチーズケーキを自分の前に置いた。
何となく、俺をガキ扱いしたい司さんのちょっとした皮肉かな、と思いながら、俺は残りを受け取った。
「見て見てほらっ!」
ようやく香緒の横に座ると、香緒がアルバムを俺との間に寄せる。
その開いたページには、懐かしい香緒と俺の姿があった。
隠し撮り、と言うくらいだから、もちろんこっちを見てはいないが、それでも俺達がその時、どれくらい楽しかったか、写真から伝わってきた。
「これ、虫捕りしてた時だね」
香緒が懐かしそうに写真を撫でる。
そう言えば、当時香緒は虫捕りした事がないって言い出して、次の日俺は網と籠を持って行った記憶がある。
田舎に住む小学生男子の夏休みなんてする事はたかが知れていて、暇潰しに蝉を何匹捕まえられるか?なんて祐樹と争ってたのはいい思い出だ。
「お前、虫って大丈夫だったか?」
司さんはそう言いながら、いち早くケーキの皿を持ち結構な勢いでザッハトルテを口に運んでいる。
甘いものを食べるイメージなんてなかったから結構意外だ。
「え?大丈夫じゃなかったよ」
香緒は当たり前のようにそう言って、コーヒーカップを持ち上げる。
「だよね~。それ撮ってた時も、武琉君に掴んだ蝉を見せられて、すっごい顔して希海にしがみついてたもんね」
岡田さんが笑いながらそう言って、ショートケーキの苺を嬉しそうに口に放り込んだ。
「確かに凄い顔してました」
「だって!素手で蝉を掴むような子、僕の周りにいなかったし!」
顔を赤らめて、弁解するように香緒が俺に言う。
写真を見たからか、あの時の香緒を鮮明に思い出し、小さく息を漏らし笑ってしまう。
「もー!笑わないでよ!本当にあの時は怖かったんだからね?」
「お前、ちっせー頃道に転がる死にかけの蝉見ては泣いてたもんな」
司さんが笑いながら空になった皿を置き、コーヒーを手にしていた。
「司は余計な事言わないで!」
バツの悪そうな顔で香緒はそう言って、コーヒーカップに口をつけた。
また瑤子さんが手伝うとキッチンへ来てくれて、そこでケーキについて尋ねてみた。
「誰がどれか決まってますか?あと、もしかして希海さんと響の分も入ってます?」
今ここにいる人数より2つ多いケーキに、おそらくそうだろうと思いつつ尋ねる。
「うん。そう。2人はお仕事?」
瑤子さんは皿にフォークをセットしながらそう答える。
「いえ。2人は席が足りないからって。今日は外で食べてくるそうです」
俺はその横でカップにコーヒーを注いでいた。
「そっか。残念。あ、2人が好きそうなケーキがあれば先に取っておく?」
瑤子さんにそう言われて、希海さんにはスフレチーズケーキ、響にはモンブランを選んだ。
「良かったんですか?先に選んで」
コーヒーを乗せたトレーを持ちながら、ケーキを乗せたトレーを持つ瑤子さんに尋ねる。
「大丈夫だよ。というより予想通りでびっくりしてる」
「どうしてですか?」
キッチンを出ながらそう口にする瑤子さんに不思議に思いながら尋ねる。
「これ、誰が何食べるか予想して選んだの司だから」
「確かにそれは驚きますね」
甥っ子の分はともかく、司さんが響の好きなケーキまで知っていた事に驚きながら、俺はリビングに向かった。
ソファには岡田さんを挟んで司さんと香緒が座っていて、香緒は岡田さんとアルバムを覗き込んでいた。
「武琉!見て見てこれ!」
香緒が顔を上げて、あの時に戻ったようなワクワクしたような笑顔を見せる。
「ちょっと待って」
俺はそれに笑いながら返して、コーヒーをテーブルに置いていくと、瑤子さんは向こう側からケーキの皿を、何にするか尋ねる事なく置いていた。
司さんの前にザッハトルテ、岡田さんには苺のショートケーキ。そして香緒の前にフルーツタルトを置き、残ったレアチーズケーキとプリンアラモードを手に取ると、レアチーズケーキを自分の前に置いた。
何となく、俺をガキ扱いしたい司さんのちょっとした皮肉かな、と思いながら、俺は残りを受け取った。
「見て見てほらっ!」
ようやく香緒の横に座ると、香緒がアルバムを俺との間に寄せる。
その開いたページには、懐かしい香緒と俺の姿があった。
隠し撮り、と言うくらいだから、もちろんこっちを見てはいないが、それでも俺達がその時、どれくらい楽しかったか、写真から伝わってきた。
「これ、虫捕りしてた時だね」
香緒が懐かしそうに写真を撫でる。
そう言えば、当時香緒は虫捕りした事がないって言い出して、次の日俺は網と籠を持って行った記憶がある。
田舎に住む小学生男子の夏休みなんてする事はたかが知れていて、暇潰しに蝉を何匹捕まえられるか?なんて祐樹と争ってたのはいい思い出だ。
「お前、虫って大丈夫だったか?」
司さんはそう言いながら、いち早くケーキの皿を持ち結構な勢いでザッハトルテを口に運んでいる。
甘いものを食べるイメージなんてなかったから結構意外だ。
「え?大丈夫じゃなかったよ」
香緒は当たり前のようにそう言って、コーヒーカップを持ち上げる。
「だよね~。それ撮ってた時も、武琉君に掴んだ蝉を見せられて、すっごい顔して希海にしがみついてたもんね」
岡田さんが笑いながらそう言って、ショートケーキの苺を嬉しそうに口に放り込んだ。
「確かに凄い顔してました」
「だって!素手で蝉を掴むような子、僕の周りにいなかったし!」
顔を赤らめて、弁解するように香緒が俺に言う。
写真を見たからか、あの時の香緒を鮮明に思い出し、小さく息を漏らし笑ってしまう。
「もー!笑わないでよ!本当にあの時は怖かったんだからね?」
「お前、ちっせー頃道に転がる死にかけの蝉見ては泣いてたもんな」
司さんが笑いながら空になった皿を置き、コーヒーを手にしていた。
「司は余計な事言わないで!」
バツの悪そうな顔で香緒はそう言って、コーヒーカップに口をつけた。
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