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番外編3. Welcome to my home
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「お招きありがとうございます」
玄関先で瑤子さんが笑顔で言うと、香緒に有名スイーツ店の紙袋を差し出す。
「気を使って貰わなくて良かったのに。後で皆で食べましょうか」
そう言いながら、香緒はそれを受け取っていた。
予定していた土曜日の夕方、あまり客の来ないこの家に、3人はやって来た。
瑤子さんの隣には司さんが立っていて、そしてその横にもう一人男の人の姿がある。
どっかで見たことあるような……
そんな気がして、ついその人の事をじっと見ていると、目尻にシワを寄せてその人はニコッと人懐っこい笑顔を見せた。
「武琉君!俺っ俺!覚えてない?」
そう言うその人に、司さんは「お前、詐欺かよ……」と呆れたように言っている。
「えっ?」
すぐに思い出せなくって、戸惑っていると隣で香緒が笑って口を開いた。
「睦月君、さすがに15年振りだしね」
15年……?
その頃の記憶にある大人は数えるくらいしかいない筈だ。
「にしても、大きくなったねぇ。昔はお兄さんお兄さんって後ろをついて回ってたのにね」
そう言われて唐突に思い出した。
「あの時のお兄さん!」
香緒が教会で撮影している時、香緒や希海さんを連れて来ていた人だ。凄く気さくな人で、お菓子をくれた記憶もある。
「そう!思い出してくれた?」
確か岡田さん、だったと思う。
そう言えば、さすがにあの頃より年は取った感じはするが、ニコニコとしたその笑顔は変わらなかった。
「わー!本当に会えて嬉しいよ」
俺の手を取って握手をするようにブンブン振る岡田さんを横目に、司さんは面白くなさそうにスリッパに履き替えている。
「おい睦月、行くぞ!」
リビングへ続く扉に、もうすでに香緒と瑤子さんが話をしながら入って行き、司さんもその後に続く。
「もー!感動の再会中なのに!今泣くとこだよ?」
なんて言いながら岡田さんは靴を脱いだ。
何か、変わってないな
自然に笑みが溢しながら、俺はその様子を眺めた。
お客さんの着ていた上着をリビングにあったコートハンガーに掛けながら、香緒が皆に呼びかける。
「皆、お酒飲むでしょ?帰りは僕送って行くし遠慮しないでね」
すると、司さんが即座にそれに反応した。
「タクシーでいい」
「何で?別にいいのに」
「俺はお前のあの狭い車に乗るのが嫌なんだ。それに、どうせ3人とも帰るところは一緒だ」
それを聞いた香緒が、唖然とした顔で司さんの方を見ていた。
「3人で一緒に住んでるの?」
突然隣では、岡田さんが盛大に吹き出しながら笑い出した。
「なわけないでしょーが!さすがに俺、司と一緒に住むのはゴメンだし!」
昔からそうだったけど、岡田さんの笑いの沸点はかなり低いと思う。子供の頃も、何かにつけよく笑っていた印象はあるが、それでも今のは香緒が悪いと思う。
「香緒。お前、結構天然だな……」
溜め息と共に司さんはそう吐き出している。
「えっ?えっ?」
さすがに俺でもなんとなく察したのに、香緒はイマイチよく分かっていないようだ。
「希海から何も聞いてねーの?アイツがうちに招待状持って来た時、出たの瑤子だぞ?」
そこまで言われてようやく理解した香緒は、「希海からは何も聞いてないよ!」と恥ずかしそうに声を上げた。
「俺は司と同じマンションに住んでるだけだよ~。今度遊びに来てね!」
笑いを堪えながら岡田さんが言うと、今度は瑤子さんから声が上がる。
「もー!!この話は終わりっ!」
実のところ、会話に入っていないだけで、ずっーと司さんの隣で顔を赤くしていたのは瑤子さんだ。
俺にはマネージャーだって言ってたし、結婚式の時もそんな関係だってあえて言わなかったのに、今こんな風にバラされたらそうなるだろう。
「もう食事始めますか?」
話の流れを変えるように、俺が誰にと言うわけじゃなく尋ねると、岡田さんから「そうしよ!そうしよ!腹減った」と明るく返ってきて、俺は「分かりました」と答えた。
玄関先で瑤子さんが笑顔で言うと、香緒に有名スイーツ店の紙袋を差し出す。
「気を使って貰わなくて良かったのに。後で皆で食べましょうか」
そう言いながら、香緒はそれを受け取っていた。
予定していた土曜日の夕方、あまり客の来ないこの家に、3人はやって来た。
瑤子さんの隣には司さんが立っていて、そしてその横にもう一人男の人の姿がある。
どっかで見たことあるような……
そんな気がして、ついその人の事をじっと見ていると、目尻にシワを寄せてその人はニコッと人懐っこい笑顔を見せた。
「武琉君!俺っ俺!覚えてない?」
そう言うその人に、司さんは「お前、詐欺かよ……」と呆れたように言っている。
「えっ?」
すぐに思い出せなくって、戸惑っていると隣で香緒が笑って口を開いた。
「睦月君、さすがに15年振りだしね」
15年……?
その頃の記憶にある大人は数えるくらいしかいない筈だ。
「にしても、大きくなったねぇ。昔はお兄さんお兄さんって後ろをついて回ってたのにね」
そう言われて唐突に思い出した。
「あの時のお兄さん!」
香緒が教会で撮影している時、香緒や希海さんを連れて来ていた人だ。凄く気さくな人で、お菓子をくれた記憶もある。
「そう!思い出してくれた?」
確か岡田さん、だったと思う。
そう言えば、さすがにあの頃より年は取った感じはするが、ニコニコとしたその笑顔は変わらなかった。
「わー!本当に会えて嬉しいよ」
俺の手を取って握手をするようにブンブン振る岡田さんを横目に、司さんは面白くなさそうにスリッパに履き替えている。
「おい睦月、行くぞ!」
リビングへ続く扉に、もうすでに香緒と瑤子さんが話をしながら入って行き、司さんもその後に続く。
「もー!感動の再会中なのに!今泣くとこだよ?」
なんて言いながら岡田さんは靴を脱いだ。
何か、変わってないな
自然に笑みが溢しながら、俺はその様子を眺めた。
お客さんの着ていた上着をリビングにあったコートハンガーに掛けながら、香緒が皆に呼びかける。
「皆、お酒飲むでしょ?帰りは僕送って行くし遠慮しないでね」
すると、司さんが即座にそれに反応した。
「タクシーでいい」
「何で?別にいいのに」
「俺はお前のあの狭い車に乗るのが嫌なんだ。それに、どうせ3人とも帰るところは一緒だ」
それを聞いた香緒が、唖然とした顔で司さんの方を見ていた。
「3人で一緒に住んでるの?」
突然隣では、岡田さんが盛大に吹き出しながら笑い出した。
「なわけないでしょーが!さすがに俺、司と一緒に住むのはゴメンだし!」
昔からそうだったけど、岡田さんの笑いの沸点はかなり低いと思う。子供の頃も、何かにつけよく笑っていた印象はあるが、それでも今のは香緒が悪いと思う。
「香緒。お前、結構天然だな……」
溜め息と共に司さんはそう吐き出している。
「えっ?えっ?」
さすがに俺でもなんとなく察したのに、香緒はイマイチよく分かっていないようだ。
「希海から何も聞いてねーの?アイツがうちに招待状持って来た時、出たの瑤子だぞ?」
そこまで言われてようやく理解した香緒は、「希海からは何も聞いてないよ!」と恥ずかしそうに声を上げた。
「俺は司と同じマンションに住んでるだけだよ~。今度遊びに来てね!」
笑いを堪えながら岡田さんが言うと、今度は瑤子さんから声が上がる。
「もー!!この話は終わりっ!」
実のところ、会話に入っていないだけで、ずっーと司さんの隣で顔を赤くしていたのは瑤子さんだ。
俺にはマネージャーだって言ってたし、結婚式の時もそんな関係だってあえて言わなかったのに、今こんな風にバラされたらそうなるだろう。
「もう食事始めますか?」
話の流れを変えるように、俺が誰にと言うわけじゃなく尋ねると、岡田さんから「そうしよ!そうしよ!腹減った」と明るく返ってきて、俺は「分かりました」と答えた。
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