46 / 134
2
28.
しおりを挟む
「お前達、何やってるんだ?」
テーブルとソファの上に所狭しと広げられたアルバムを眺めている俺達を、帰って来た希海さんが呆れたように見下ろしていた。
「お帰りなさい」
「おかえり」
俺と香緒さんがそれぞれ声を掛けると、希海さんは「ただいま」と言ってからテーブルに視線を落とす。
「珍しいな。アルバムを見てるなんて」
「武琉に見せてたら響も見たいって。そしたらこの有り様」
香緒さんは首を竦めてちょっと笑う。その様子を見ながら、希海さんは響の横に座った。
響は自分の膝の上に乗せているアルバムの写真を指差しながら、希海さんに色々と話しかけている。
希海さんはアルバムを覗き込み、そして響に優しい視線を向けていた。
香緒さんや俺に対する顔とは違う顔で響と話をしているのを見て、今更ながらこの2人ってやっぱり付き合ってるんだよなぁ……。たぶん、と思った。
自分が色恋に疎すぎて正直よく分からないが、2人が付き合っていたからと言って自分の中で何が変わるわけでもない。希海さんも、響も、俺にとってはもう家族みたいなものだから。
でも、ちょっと気にはなってしまう。
そんなことを思いつつ、2人の、なんだか微笑ましい様子を見ながら俺は立ち上がり、キッチンへ向かう。希海さんにも飲み物と、何かつまめるものでも作ろうかと冷蔵庫の扉を開けた。
「何か作ってくれるの?」
冷蔵庫を中身を覗き込んでいる俺の後ろに、いつの間にか香緒さんが立っていた。
「ありあわせですけど、適当に何か作ろうかと」
冷蔵庫から材料を取り出しながら俺はそう答える。
「楽しみだな」
そう言って香緒さんは俺が取り出した材料を受け取りカウンターに置いてくれた。
「あの。すっごい今更かも知れないですけど……」
そう俺が切り出すと、香緒さんは不思議そうな顔でこちらを見る。
「希海さんと響って、その、付き合ってるんですか?」
突然の質問に、香緒さんは面食らったような顔を一瞬した。が、すぐに笑い出した。
「やっぱり、気づいてなかったんだ」
笑いを噛み殺すように肩を揺らして笑っている香緒さんを見て、自分の鈍感さに呆れてしまった。
「響、凄く分かりやすく武琉に嫉妬してたのに。最初の頃あたりが強かったのは、希海が武琉を連れて帰ったからだよ。まあ、あとでちゃんと聞いたんだろうけど、希海も言葉足らずなところあるからなぁ……」
「俺、全然気づきませんでした。響に言われなきゃ、たぶん今も気づかないままだったと思います」
ちょっと落ち込みながら俺はそう返す。
「らしいと言えばらしいよね」
全く褒められていないその言葉に肩を落としていると、香緒さんは子供をあやすように俺の頭をポンポンと撫でる。
「別にいいんじゃない?だって、武琉は2人の関係を知ったからって態度を変えるような事しないでしょ?だから、今まで通りでいいと思うよ」
香緒さんが俺の思っている事をズバリ言い当ててくれて、単純に嬉しくなる。もしかしたら、俺以上に俺の事を理解してくれているのは香緒さんかも知れない……とさえ思う。
「はい。そうします」
そう言って俺は笑顔で香緒さんに返事をすると、目の前にあったその唇にチュッと音を立てキスをした。
「!!」
目を見開いて驚いている香緒さんの両肩を掴み、くるりと反対を向かせると軽く背中を押す。
「さ、今から何か作りますから、座って待っててください」
俺は声を弾ませそう言うと、香緒さんをキッチンから送り出す。
向こう側からは「なに顔真っ赤にしてんだよ?」と言う響の声と、「なんでもない!!」と答える香緒さんの声が聞こえた。
俺はそんな会話を聞きながら、ふっと唇の端を上げ目の前の材料を手にする。
……何か。……凄く幸せだ
そんな気持ちが湧いてきた。
テーブルとソファの上に所狭しと広げられたアルバムを眺めている俺達を、帰って来た希海さんが呆れたように見下ろしていた。
「お帰りなさい」
「おかえり」
俺と香緒さんがそれぞれ声を掛けると、希海さんは「ただいま」と言ってからテーブルに視線を落とす。
「珍しいな。アルバムを見てるなんて」
「武琉に見せてたら響も見たいって。そしたらこの有り様」
香緒さんは首を竦めてちょっと笑う。その様子を見ながら、希海さんは響の横に座った。
響は自分の膝の上に乗せているアルバムの写真を指差しながら、希海さんに色々と話しかけている。
希海さんはアルバムを覗き込み、そして響に優しい視線を向けていた。
香緒さんや俺に対する顔とは違う顔で響と話をしているのを見て、今更ながらこの2人ってやっぱり付き合ってるんだよなぁ……。たぶん、と思った。
自分が色恋に疎すぎて正直よく分からないが、2人が付き合っていたからと言って自分の中で何が変わるわけでもない。希海さんも、響も、俺にとってはもう家族みたいなものだから。
でも、ちょっと気にはなってしまう。
そんなことを思いつつ、2人の、なんだか微笑ましい様子を見ながら俺は立ち上がり、キッチンへ向かう。希海さんにも飲み物と、何かつまめるものでも作ろうかと冷蔵庫の扉を開けた。
「何か作ってくれるの?」
冷蔵庫を中身を覗き込んでいる俺の後ろに、いつの間にか香緒さんが立っていた。
「ありあわせですけど、適当に何か作ろうかと」
冷蔵庫から材料を取り出しながら俺はそう答える。
「楽しみだな」
そう言って香緒さんは俺が取り出した材料を受け取りカウンターに置いてくれた。
「あの。すっごい今更かも知れないですけど……」
そう俺が切り出すと、香緒さんは不思議そうな顔でこちらを見る。
「希海さんと響って、その、付き合ってるんですか?」
突然の質問に、香緒さんは面食らったような顔を一瞬した。が、すぐに笑い出した。
「やっぱり、気づいてなかったんだ」
笑いを噛み殺すように肩を揺らして笑っている香緒さんを見て、自分の鈍感さに呆れてしまった。
「響、凄く分かりやすく武琉に嫉妬してたのに。最初の頃あたりが強かったのは、希海が武琉を連れて帰ったからだよ。まあ、あとでちゃんと聞いたんだろうけど、希海も言葉足らずなところあるからなぁ……」
「俺、全然気づきませんでした。響に言われなきゃ、たぶん今も気づかないままだったと思います」
ちょっと落ち込みながら俺はそう返す。
「らしいと言えばらしいよね」
全く褒められていないその言葉に肩を落としていると、香緒さんは子供をあやすように俺の頭をポンポンと撫でる。
「別にいいんじゃない?だって、武琉は2人の関係を知ったからって態度を変えるような事しないでしょ?だから、今まで通りでいいと思うよ」
香緒さんが俺の思っている事をズバリ言い当ててくれて、単純に嬉しくなる。もしかしたら、俺以上に俺の事を理解してくれているのは香緒さんかも知れない……とさえ思う。
「はい。そうします」
そう言って俺は笑顔で香緒さんに返事をすると、目の前にあったその唇にチュッと音を立てキスをした。
「!!」
目を見開いて驚いている香緒さんの両肩を掴み、くるりと反対を向かせると軽く背中を押す。
「さ、今から何か作りますから、座って待っててください」
俺は声を弾ませそう言うと、香緒さんをキッチンから送り出す。
向こう側からは「なに顔真っ赤にしてんだよ?」と言う響の声と、「なんでもない!!」と答える香緒さんの声が聞こえた。
俺はそんな会話を聞きながら、ふっと唇の端を上げ目の前の材料を手にする。
……何か。……凄く幸せだ
そんな気持ちが湧いてきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
72
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる