偽物のご令嬢は本物の御曹司に懐かれています

玖羽 望月

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番外編 酸いも甘いも

side 冬弥2*

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 改めて、自分にこんな一面があったなんて今まで知らなかった。

「……ちーちゃん。どこがいか……教えて?」

 ちーちゃんの体の中に飲み込まれた僕の指には、体温以上の熱としたたる蜜が絡まり、蠢く感触が直に伝わっている。その指をゆっくり動かすと、ちーちゃんは苦しそうにも見えるその顔を歪ませた。

「ぅん。あっ、や、だ。そこっっ」

 体を揺らすその姿を上から眺めるだけで情欲を掻き立てられる。そして、もっと乱してみたいと心の底に湧いてくる。

「ここが悦いの?」

 どこまでも飲み込まれそうな指を擦るように動かすと、トン、と奥に当たる。

「あっ、ああんっ!」

 ひときわ高い官能的な声を上げ腰を浮かす姿に僕は口角を上げた。

「もっと……くなって?」

 大好きな人が気持ち良さそうにしてくれていると、自分まで同じくらい気持ち良くなってくる。昂ったものはまだ挿入いれていないのにそんな気持ちになる。

「あ、やあっ、そんな、っ!」

 すでに可愛がり紅く膨れた蕾をまた唇に閉じ込める。沈めたままの指を動かしながらそれを唇で喰みながら刺激すると、ちーちゃんは僕の頭を押さえながら背中を浮かせていた。

「ああん! あ、ダメぇっっ、いっちゃうっっ」

 その声を聞くだけでゾクゾクして、もっと聞かせてと心の中で懇願する。声に出さず、行動で示すように刺激を強くすると、指を包み込んでいた場所は大きく畝り次々と波が押し寄せていた。

「あ、あああっーーっ‼︎」

 叫び声とともに押さえていた足が跳ね、それが鎮まると顔を上げた。
 ハァハァと荒い息をしながら、紅潮したちーちゃんは、とてつもなく艶めかしい。

「気持ち、良かった?」
「う、ん。冬弥君は……? 一緒に……気持ち良く、なりたい」

 切れ切れの呼吸をしながら、ちーちゃんは僕を誘う。正直なところ、痛いほど昂っている自分自身はもうはち切れそうだ。

「じゃあ……いい?」

 ちーちゃんに覆い被さるように跨ってから、僕はハッとした。

「あ、の……」
「? どうしたの?」

 組み敷かれたまま僕を見上げちーちゃんは不思議そうに尋ねる。

「あれ……がなくて……」

 こんなことになると思っていなかったから夏帆ちゃんに貰った避妊具は家に置いてきた。いくら結婚を約束したからと言って、今そのままするのは気が引ける。
 何を言いたいのか察したのか、ちーちゃんは「ああ」と納得したように呟いた。それから体を捻り起き上がる様子を見せたちーちゃんに合わせるように体を起こした。

 どうしたんだろ……?

 起き上がりベッドの上部を探り出すちーちゃんを見ながら思う。もうここで終わりかと思うと自分の不甲斐なさに落ち込みそうになった。

「私、付けようか?」
「え?」

 振り返ったちーちゃんにそう言われて、俯き加減の僕は弾かれたように顔を上げた。

「これ、でしょ?」

 ちーちゃんが当たり前のように手にしていたのは、すでに袋から取り出された避妊具。

「なっん、で?」

 もしかしてちーちゃん、いつも持ち歩いてる、とか?

 半ばパニック状態の僕を見てちーちゃんは笑う。

「ここ、まぁ……そう言う場所だから、最初から置いてあるの」
「そうなの?」

 全く仕組みのわかっていない僕は目を丸くしながら答えた。
 けれど、そんなことは当たり前のような雰囲気のちーちゃんに少しだけモヤモヤする。

 今まで……どんな人と来たんだろう?

 考えても仕方ないのに考えてしまう。ちーちゃんの初めて付き合い相手が僕じゃないんだから。

「冬弥君? あの……。やる気、なくしちゃった?」

 あからさまにシュンとしてしまった僕に、ちーちゃんは戸惑っているようだ。

「そっ! んなことないよ。ただ……」

 ベッドに向かい合って座り、項垂れていた僕の頭をちーちゃんはそっと撫でてくれる。

「思ってること、言って?」
「ちーちゃんは、今まで付き合ってきた相手もいて……。見たこともないその人達に嫉妬してた」

 こんなこと言われても困るだけなのはわかっている。でも止められないでいた。

「付き合った人はいたし、こんなこともしてきた。でも、こんなに気持ちいいと思ったのは冬弥君だけなの。実は自分は不感症なのかなって思うこともあったくらい。それは……信じて欲しい」

 ちーちゃんは真剣な瞳で、真っ直ぐに僕を見て言う。

「もちろん……信じる。それに……凄く嬉しい。僕も気持ちいい。ちーちゃんに触れてるだけで心地良くって、天にも昇る気持ちになるから」

 顔を見合わせ二人でクスリと笑う。

「じゃあ、改めて。よろしくお願いします」

 ちーちゃんは膝を立て僕の肩に手を置いた。

「こちらこそ」

 腰に手を回してちーちゃんを抱き寄せる。僕はちーちゃんを見上げ、ちーちゃんは僕の顔を覗き込んだ。

「ちーちゃん、大好き。一生離さないから、覚悟して」
「うん。私も、離すつもりないから、覚悟してね」

 そんなことを言い合いながら、僕たちは唇を重ねた。
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