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4.お見合い話は突然に(side倉木)
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『ま、今はフリーだしさ。安心して』
電話の向こうから少し反響した夏帆ちゃんの笑い声が聞こえていた。
「うん……。頑張るよ。ちーちゃんに少しは男に見られるくらいには……」
なんとなく……だけど、今僕が幼なじみの冬弥だと知られたら、ちーちゃんは僕のことを幼なじみとしか見てくれない気がする。だから、少しでも意識して欲しい。僕が彼氏候補の土俵に乗れるくらいには。
『頑張れ頑張れ。初恋が実るの、友だちとして応援するからさ』
「えっ。初恋って……」
言葉を濁すと笑ったまま夏帆ちゃんは言う。
『違う?』
「…………。違わ、ない」
『だよね。当日こっそり見届けに行きたいけど、残念ながら無理だから。自力で頑張りなよ?』
電話の向こうで、ザバァっとお湯の音が聞こえる。今まで湯船に浸かりながら喋っていたようだ。
「夏帆ちゃん、何かあるの?」
含みのある言いかたに尋ねる。
『来週から10日ほど海外出張。帰るの再来週だから、当日なんかあっても話聞けないから~。帰ってきたらまた聞くわ』
そういえば夏帆ちゃんは、インディーズ音楽レーベルの洋楽担当をしていると言っていた。それを聞いて、なんか似合う、と思ったのだ。
「そっか。気をつけて行って来て。メッキが剥がれないよう頑張るよ」
『ん。わかった。あ、彼氏がお風呂入ってきたから切るわ。じゃね!』
言うが早いかすぐに電話から切断された音が聞こえた。
……家にいたんじゃないの……? それに……。彼氏と一緒にお風呂、入るの……?
僕はポカンと口を開けたままその場に突っ立っていた。
夏帆ちゃんが出張へ行くまでの数日間、僕はまたたくさんアドバイスをもらった。
「ドライブ中って何か聴くもの?」
『いっつも何聴いてんのよ。女性アイドル? アニソン?』
「……。無音」
とくにこれと言って興味があるわけじゃない。車は母と買い物へ行くときくらいしか使わない。そのときは母の趣味で昭和後半から平成初期の、自分が生まれる前の曲が流れている。でも一人だとただ走ってるだけだ。
『じゃ、夏帆様おすすめドライブ曲のプレイリスト送るわ!』
送られてきた洋楽を一通り聴く。普段は聴かないジャンルだけどなかなかよかった。時々なんか際どい歌詞のが混ざってたけど。
「今度は何食べたらいいかな? 和食? 洋食?」
『千春は景色が良くて美味しいスイーツにありつけたら文句ないって。わかってると思うけど、よく食べよく飲む! で、あの体型維持するんだから神様は不公平だと思わない?』
夏帆ちゃんが口を尖らせている顔が目に浮かぶようだ。
自分の知ってる店のほうが安心するか、と何度か訪れたことのあるお店をチョイスした。
夏帆ちゃんは出張へ行ってしまい、僕はとにかくドキドキしながらその日を待った。あまりにも仕事が手につかず、結局いつもより残業が多くなってしまったけれど。
そして前日。もう一度夏帆ちゃんに教えられた漫画を全部読み直した。新たに追加されているのもあり読んでみたけど、やっぱり……かなり濃厚なラブシーンでスマホを落っことした。
電話の向こうから少し反響した夏帆ちゃんの笑い声が聞こえていた。
「うん……。頑張るよ。ちーちゃんに少しは男に見られるくらいには……」
なんとなく……だけど、今僕が幼なじみの冬弥だと知られたら、ちーちゃんは僕のことを幼なじみとしか見てくれない気がする。だから、少しでも意識して欲しい。僕が彼氏候補の土俵に乗れるくらいには。
『頑張れ頑張れ。初恋が実るの、友だちとして応援するからさ』
「えっ。初恋って……」
言葉を濁すと笑ったまま夏帆ちゃんは言う。
『違う?』
「…………。違わ、ない」
『だよね。当日こっそり見届けに行きたいけど、残念ながら無理だから。自力で頑張りなよ?』
電話の向こうで、ザバァっとお湯の音が聞こえる。今まで湯船に浸かりながら喋っていたようだ。
「夏帆ちゃん、何かあるの?」
含みのある言いかたに尋ねる。
『来週から10日ほど海外出張。帰るの再来週だから、当日なんかあっても話聞けないから~。帰ってきたらまた聞くわ』
そういえば夏帆ちゃんは、インディーズ音楽レーベルの洋楽担当をしていると言っていた。それを聞いて、なんか似合う、と思ったのだ。
「そっか。気をつけて行って来て。メッキが剥がれないよう頑張るよ」
『ん。わかった。あ、彼氏がお風呂入ってきたから切るわ。じゃね!』
言うが早いかすぐに電話から切断された音が聞こえた。
……家にいたんじゃないの……? それに……。彼氏と一緒にお風呂、入るの……?
僕はポカンと口を開けたままその場に突っ立っていた。
夏帆ちゃんが出張へ行くまでの数日間、僕はまたたくさんアドバイスをもらった。
「ドライブ中って何か聴くもの?」
『いっつも何聴いてんのよ。女性アイドル? アニソン?』
「……。無音」
とくにこれと言って興味があるわけじゃない。車は母と買い物へ行くときくらいしか使わない。そのときは母の趣味で昭和後半から平成初期の、自分が生まれる前の曲が流れている。でも一人だとただ走ってるだけだ。
『じゃ、夏帆様おすすめドライブ曲のプレイリスト送るわ!』
送られてきた洋楽を一通り聴く。普段は聴かないジャンルだけどなかなかよかった。時々なんか際どい歌詞のが混ざってたけど。
「今度は何食べたらいいかな? 和食? 洋食?」
『千春は景色が良くて美味しいスイーツにありつけたら文句ないって。わかってると思うけど、よく食べよく飲む! で、あの体型維持するんだから神様は不公平だと思わない?』
夏帆ちゃんが口を尖らせている顔が目に浮かぶようだ。
自分の知ってる店のほうが安心するか、と何度か訪れたことのあるお店をチョイスした。
夏帆ちゃんは出張へ行ってしまい、僕はとにかくドキドキしながらその日を待った。あまりにも仕事が手につかず、結局いつもより残業が多くなってしまったけれど。
そして前日。もう一度夏帆ちゃんに教えられた漫画を全部読み直した。新たに追加されているのもあり読んでみたけど、やっぱり……かなり濃厚なラブシーンでスマホを落っことした。
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