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4.お見合い話は突然に(side倉木)
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翌日土曜日。僕は自分の部屋で一人溜め息を吐いていた。
ちーちゃんに会えるのは嬉しいけど……
昨日、夏帆ちゃんは散々思い出し笑いをしたあと言った。
『じゃあ、千春に会わせてあげる。ただし条件があります!』
どう見てもワクワクしている夏帆ちゃんは、悪代官なのかと思うくらいニタリと笑う。
それがまさか、偽のお見合いなんて……。
その上その条件も、それ大丈夫? って言いたくなる内容だった。
まず、正体は明かさない。苗字は変わってるからすぐに気づかないだろうし、名前は念のため言わないこと。
一回で断らないよう仕向けるから、次からは自力でなんとかすること。
『ま、千春に実際に会ってみて百年の恋も冷めるようならそれでいいじゃん。そうじゃなかったら自分で頑張りなよ』
笑いながら言ったあと、夏帆ちゃんはちーちゃんのことを少し教えてくれた。美味しいものとお酒が大好きで、コーヒーより紅茶派。趣味はジム通い、暇つぶしにスマホで漫画をよく読んでいる、などなど。
『あとで千春が好きな漫画、メッセ送るわ。それ読んで研究しなよ』
そう言ったときの夏帆ちゃんはやけにニヤニヤしていた。
そして、交換したメッセージアプリに送られてきたいくつかの漫画のうち一つを開いてスマホを落っことしそうになった。
これは少し……いや、かなり刺激的、なんだけど?
ファンタジーものでヒロインはヒーローの騎士と恋に落ちる。そして溺愛が始まる……というか、かなりの頻度でその……あれ、をする話だった。
とりあえず送られてきた漫画は一通り全部読んだ。全部、僕には相当過激な内容だったけど。
そしてまた溜め息を漏らしたのだった。
ちーちゃんは……こんな男性が好みなのか……
イケメンと表現されるのは当たり前。部下からも慕われるソードマスターとか、百戦錬磨の俺様弁護士とか、自分とは真反対の人物ばかりだ。夏帆ちゃんが研究しろと言うのも頷ける。
でも、ちょっと今は……頭がパンクしそう。
あと数ヶ月もすれば27になるというのに、なに純情ぶっているんだと言われればそれまでだけど、経験なんてないんだから仕方ない。
それは、とあることで夏帆ちゃんにもバレてしまっている。
昨日の帰り、店を出て歩き出すと、夏帆ちゃんは不意に『そうだ!』と斜めに掛けていたバッグを漁り出す。そこから手のひらより少しはみ出すサイズの箱を取り出すと僕に差し出した。
『ネットで注文したら数、間違ってさ。ふゆちゃんにもお裾分け。使うでしょ?』
僕の手に握らせると夏帆ちゃんはニコニコ笑う。
いったい何を? とよくよく見てると、その箱には【使用感0。究極の0.01ミリ】と大きく書かれていた。
「えっ! あ、えっと」
初めて手にするその箱に慌てていると、夏帆ちゃんに不思議そうに顔を覗かれた。
「え、何? もしかして、使わない派?」
「ちっ、違う! 使うとか使わないじゃなくて」
慌てて否定すると、察したのか夏帆ちゃんはまた悪代官のように笑った。
「そっかそっか。ま、男の嗜みとして持ってなさいよ。いつ使うことになるかわかんないでしょ?」
そう言って、半分強制的に押し付けられた。
ちーちゃんに会えるのは嬉しいけど……
昨日、夏帆ちゃんは散々思い出し笑いをしたあと言った。
『じゃあ、千春に会わせてあげる。ただし条件があります!』
どう見てもワクワクしている夏帆ちゃんは、悪代官なのかと思うくらいニタリと笑う。
それがまさか、偽のお見合いなんて……。
その上その条件も、それ大丈夫? って言いたくなる内容だった。
まず、正体は明かさない。苗字は変わってるからすぐに気づかないだろうし、名前は念のため言わないこと。
一回で断らないよう仕向けるから、次からは自力でなんとかすること。
『ま、千春に実際に会ってみて百年の恋も冷めるようならそれでいいじゃん。そうじゃなかったら自分で頑張りなよ』
笑いながら言ったあと、夏帆ちゃんはちーちゃんのことを少し教えてくれた。美味しいものとお酒が大好きで、コーヒーより紅茶派。趣味はジム通い、暇つぶしにスマホで漫画をよく読んでいる、などなど。
『あとで千春が好きな漫画、メッセ送るわ。それ読んで研究しなよ』
そう言ったときの夏帆ちゃんはやけにニヤニヤしていた。
そして、交換したメッセージアプリに送られてきたいくつかの漫画のうち一つを開いてスマホを落っことしそうになった。
これは少し……いや、かなり刺激的、なんだけど?
ファンタジーものでヒロインはヒーローの騎士と恋に落ちる。そして溺愛が始まる……というか、かなりの頻度でその……あれ、をする話だった。
とりあえず送られてきた漫画は一通り全部読んだ。全部、僕には相当過激な内容だったけど。
そしてまた溜め息を漏らしたのだった。
ちーちゃんは……こんな男性が好みなのか……
イケメンと表現されるのは当たり前。部下からも慕われるソードマスターとか、百戦錬磨の俺様弁護士とか、自分とは真反対の人物ばかりだ。夏帆ちゃんが研究しろと言うのも頷ける。
でも、ちょっと今は……頭がパンクしそう。
あと数ヶ月もすれば27になるというのに、なに純情ぶっているんだと言われればそれまでだけど、経験なんてないんだから仕方ない。
それは、とあることで夏帆ちゃんにもバレてしまっている。
昨日の帰り、店を出て歩き出すと、夏帆ちゃんは不意に『そうだ!』と斜めに掛けていたバッグを漁り出す。そこから手のひらより少しはみ出すサイズの箱を取り出すと僕に差し出した。
『ネットで注文したら数、間違ってさ。ふゆちゃんにもお裾分け。使うでしょ?』
僕の手に握らせると夏帆ちゃんはニコニコ笑う。
いったい何を? とよくよく見てると、その箱には【使用感0。究極の0.01ミリ】と大きく書かれていた。
「えっ! あ、えっと」
初めて手にするその箱に慌てていると、夏帆ちゃんに不思議そうに顔を覗かれた。
「え、何? もしかして、使わない派?」
「ちっ、違う! 使うとか使わないじゃなくて」
慌てて否定すると、察したのか夏帆ちゃんはまた悪代官のように笑った。
「そっかそっか。ま、男の嗜みとして持ってなさいよ。いつ使うことになるかわかんないでしょ?」
そう言って、半分強制的に押し付けられた。
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