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2.貴公子はやっぱりワンコ
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また話すことがなくなりしばらく黙る。どこへ向かっているのかもわからず、ただぼぉっと窓の外を眺めていた。高速に乗り、見えるのは防音壁に切り取られたビルの頭。それがなくなり周りが見えやすくなると窓に張り付いた。
「……珍しいですか?」
ようやく口を開いた倉木さんに尋ねられる。
「え。ええ。ドライブなんて初めてで。車にはあまり乗らないですし」
窓の向こうを見ながら答えると、開けた景色に海が見えた。
「あっ、海!」
子どものようにはしゃぐと背中から倉木さんが笑う気配がした。決まりが悪い思いをしながら恐る恐る振り返ると、前を向いた倉木さんは嬉しそうだった。
「よかった。喜んでもらえて。今は鎌倉方面に向かってます。時間は少し早いですが、着いたらランチにしようと思っています」
「本当ですか? あんまり行ったことないので楽しみです」
ランチに釣られて笑顔になる。そして、それに釣られたのか、倉木さんは褒められたハスキーみたいな顔をしていた。
そこからは少しずつ話しが弾みだした。主に食べ物の話だけど。
「――じゃあ千春さんは、特に嫌いな食べ物はないんですね。お聞きしてなかったので」
「はい。誰かが一生懸命作ったものはなんでも美味しいです。それが例えコンビニのおにぎりでも」
笑いながら、私は小さい頃からのポリシーを語った。
「って、倉木さんはコンビニのおにぎりなんて食べませんよね」
取ってつけたようにハハハと笑い横を向くと、少し寂しそう倉木さんの横顔が目に入る。
「そんなことありません。むしろしょっちゅう食べてます。残業のお供に」
意外……と言えばもっと気を悪くしそうだ。この見た目からして、そんなことを言われ続けているのかも知れない。けれど、もしかすると私が思うより普通の人、なのだろうか。
「お……美味しいですよね! 具は何が好きですか? 私はツナマヨとシャケは外せなくて」
頭によぎったことは正解だったのか、倉木さんは安心したように口元を緩めた。
「僕もツナマヨが一番好きです。あとおかか。昔からあるシンプルな味ばかり選んでしまいます」
「あ~。わかります。疲れてるときなんか特に。無性に食べたくなりますよね」
そう返す私に、倉木さんは目に見えて嬉しそうな顔をする。それを見て、なんとなくよかった、と思う。
「それにしても、残業のお供がコンビニおにぎりなんていいですよね。うちの常務なんか……」
それからは2年相手にしてきたうちの常務の所業を語り出す。
残業が常だが、かなり遅くなりそうだとわかると突然デパ地下の高級弁当を買いに行かされること。全く仕事に関係のない、この車の資料を集めさせられたこと。気づけば夏帆相手の愚痴大会みたいになってしまっていた。
「……珍しいですか?」
ようやく口を開いた倉木さんに尋ねられる。
「え。ええ。ドライブなんて初めてで。車にはあまり乗らないですし」
窓の向こうを見ながら答えると、開けた景色に海が見えた。
「あっ、海!」
子どものようにはしゃぐと背中から倉木さんが笑う気配がした。決まりが悪い思いをしながら恐る恐る振り返ると、前を向いた倉木さんは嬉しそうだった。
「よかった。喜んでもらえて。今は鎌倉方面に向かってます。時間は少し早いですが、着いたらランチにしようと思っています」
「本当ですか? あんまり行ったことないので楽しみです」
ランチに釣られて笑顔になる。そして、それに釣られたのか、倉木さんは褒められたハスキーみたいな顔をしていた。
そこからは少しずつ話しが弾みだした。主に食べ物の話だけど。
「――じゃあ千春さんは、特に嫌いな食べ物はないんですね。お聞きしてなかったので」
「はい。誰かが一生懸命作ったものはなんでも美味しいです。それが例えコンビニのおにぎりでも」
笑いながら、私は小さい頃からのポリシーを語った。
「って、倉木さんはコンビニのおにぎりなんて食べませんよね」
取ってつけたようにハハハと笑い横を向くと、少し寂しそう倉木さんの横顔が目に入る。
「そんなことありません。むしろしょっちゅう食べてます。残業のお供に」
意外……と言えばもっと気を悪くしそうだ。この見た目からして、そんなことを言われ続けているのかも知れない。けれど、もしかすると私が思うより普通の人、なのだろうか。
「お……美味しいですよね! 具は何が好きですか? 私はツナマヨとシャケは外せなくて」
頭によぎったことは正解だったのか、倉木さんは安心したように口元を緩めた。
「僕もツナマヨが一番好きです。あとおかか。昔からあるシンプルな味ばかり選んでしまいます」
「あ~。わかります。疲れてるときなんか特に。無性に食べたくなりますよね」
そう返す私に、倉木さんは目に見えて嬉しそうな顔をする。それを見て、なんとなくよかった、と思う。
「それにしても、残業のお供がコンビニおにぎりなんていいですよね。うちの常務なんか……」
それからは2年相手にしてきたうちの常務の所業を語り出す。
残業が常だが、かなり遅くなりそうだとわかると突然デパ地下の高級弁当を買いに行かされること。全く仕事に関係のない、この車の資料を集めさせられたこと。気づけば夏帆相手の愚痴大会みたいになってしまっていた。
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