上 下
7 / 60
1.お見合い話は突然に

7

しおりを挟む
 最後に出されたデセールと紅茶が綺麗さっぱり無くなると、さすがにお腹はいっぱいだ。

 明日はジム行きだな……

 お腹を摩りながら思う。食べるわりには太らないみたいだけど、さすがにこの年齢になるとそうはいかない。それなりに努力も必要だ。これと言って趣味もない自分にはジムはうってつけだ。

 倉木さんは趣味ってあるのかな?

 また無口になった倉木さんは、同じように皿を綺麗にして真顔でコーヒーを啜っていた。
 この表情の落差はなんだろう? 気のせい? とその顔をチラッと見る。

 そう言えばさっき様子がおかしかったな…… 

 ふと思い出し尋ねてみることにした。

「倉木さん。私に何かおっしゃりたいことはないんですか?」

 横を向き涼しい顔をしていた倉木さんは、その質問にあからさまに驚いている。

「……え?」

 その驚いた顔でさえ格好いい。ちょっと動揺しているようだけど。

「いえ。なんとなく時々何か言いたげにされていたものですから。粗相でもありましたか?」

 こうなると秘書にモードチェンジだ。私は自分の上司に尋ねるような顔をする。

「……ええと。その、千春さん」

 持っていたカップを置くと、倉木さんは決心したように顔を上げた。

「また会えますよね。次はいつ会えますか? 会ってくれますよね?」
「え…………?」

 それしか出てこなかった。
 倉木さんは突然豹変したのだ。
 道に捨てられたに。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:4,033

学園奴隷《隼人》

BL / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:373

私馬鹿は嫌いなのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:71

スローライフ 転生したら竜騎士に?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,974

ヤンデレから逃げようと思います

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:6

どこまでも続く執着 〜私を愛してくれたのは誰?〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,265pt お気に入り:87

処理中です...