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1.始まりから間違いでした
5.
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(えっ?)
驚いて声も出せないまま、実乃莉は隣に寄り添うように並ぶ相手を見上げた。こうやって並ぶとよりその身長の高さを実感する。
実乃莉は一六二センチあり背が低いほうではないし、今はかなり高さのあるヒールを履いている。それでもこの人はまだ十五センチは目線が上だった。
「なんだね君は?」
その迫力に圧倒されたのか、実乃莉に取っていた尊大な態度を軟化させて相手は問いかけた。
「彼女とお付き合いしている皆上 龍と申します。あ、龍は坂本龍馬の龍ね。以後お見知り置きを。高木さん」
「なぜ僕の名前を……」
高木さんと呼ばれた男はそこで一旦考え込んでいる。そして苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「皆上? まさか、皆上先生の……」
龍は高木とは対照的に笑顔を浮かべると話し出す。
「えぇ。その皆上先生とやらの不肖の次男です」
実乃莉は口を開けたまま龍を見上げていた。たまたま居合わせたのが、祖父と、そして高木が仕える斎藤と同じ派閥の議員の息子だったなんて……と驚くしかなかった。
「で、では本当にこの人は鷹柳のお嬢さんなのか?」
「ええ、もちろん」
龍は満面の笑みを浮かべて高木に返している。高木は悔しそうにしながら続けた。
「しかし、お二人がお付き合いしているとは聞いてなかったが? 鷹柳先生はぜひ僕にとおっしゃっていた」
「すみませんね。まだ報告できてなかったものでご足労をおかけして。そう言うことなので今日はお帰り願えますか?」
棘のある言いように高木はカチンときたのか眉をピクリと動かす。だが先ほどのように声を荒げることなく立ち上がると実乃莉を睨みつけた。
「お嬢さん。今日のことはお父上に報告させてもらうので、そのつもりで」
そう捨て台詞を吐くと、高木は二人を押し除けるようにその場を離れ、出口に向かっていた。その背中が小さくなったのを見届けてから実乃莉は安堵したように肩から力を抜いた。
「お客様! 大変申し訳ございませんでした」
実乃莉の背後で先ほどのスタッフが深々と頭を下げている。そちらに振り返り実乃莉は打ち消すように両手を振った。
「いえ。私は何も……」
「本当に申し訳ありません。元はと言えば私がご案内を誤ってしまったこともあり焦ってしまい……」
「大丈夫ですから。むしろ……うまくいきましたし」
実乃莉が笑みを浮かべてそう言うと、男は不思議そうにしながら「本当にありがとうござました」と、礼をして下がって行った。
それから実乃莉は、まだ隣に立っていた龍に向いた。
「助けてくださってありがとうございました」
実乃莉はその場で、誠心誠意頭を下げる。
「そこまで礼を言われるようなことはしてない。とりあえず、立ち話はなんだ。席に戻ろう」
龍はぶっきらぼうにそう言うと先に元いたテーブルに戻っていく。実乃莉もとりあえずそれに続き席についた。龍は険しい表情で窓の外に視線を送っていた。
「あの。どうして急に助けてくださったんですか?」
恐る恐る尋ねると、龍は一つ息を吐きゆっくり実乃莉に顔を向けた。
「あいつがあんまりにもうるさかったからな。それに……公衆の面前で女に土下座させようなんて反吐が出る。それだけだ」
うんざりしたように龍は吐き捨てているが、実乃莉は高木より余程信用できる気がしていた。
驚いて声も出せないまま、実乃莉は隣に寄り添うように並ぶ相手を見上げた。こうやって並ぶとよりその身長の高さを実感する。
実乃莉は一六二センチあり背が低いほうではないし、今はかなり高さのあるヒールを履いている。それでもこの人はまだ十五センチは目線が上だった。
「なんだね君は?」
その迫力に圧倒されたのか、実乃莉に取っていた尊大な態度を軟化させて相手は問いかけた。
「彼女とお付き合いしている皆上 龍と申します。あ、龍は坂本龍馬の龍ね。以後お見知り置きを。高木さん」
「なぜ僕の名前を……」
高木さんと呼ばれた男はそこで一旦考え込んでいる。そして苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「皆上? まさか、皆上先生の……」
龍は高木とは対照的に笑顔を浮かべると話し出す。
「えぇ。その皆上先生とやらの不肖の次男です」
実乃莉は口を開けたまま龍を見上げていた。たまたま居合わせたのが、祖父と、そして高木が仕える斎藤と同じ派閥の議員の息子だったなんて……と驚くしかなかった。
「で、では本当にこの人は鷹柳のお嬢さんなのか?」
「ええ、もちろん」
龍は満面の笑みを浮かべて高木に返している。高木は悔しそうにしながら続けた。
「しかし、お二人がお付き合いしているとは聞いてなかったが? 鷹柳先生はぜひ僕にとおっしゃっていた」
「すみませんね。まだ報告できてなかったものでご足労をおかけして。そう言うことなので今日はお帰り願えますか?」
棘のある言いように高木はカチンときたのか眉をピクリと動かす。だが先ほどのように声を荒げることなく立ち上がると実乃莉を睨みつけた。
「お嬢さん。今日のことはお父上に報告させてもらうので、そのつもりで」
そう捨て台詞を吐くと、高木は二人を押し除けるようにその場を離れ、出口に向かっていた。その背中が小さくなったのを見届けてから実乃莉は安堵したように肩から力を抜いた。
「お客様! 大変申し訳ございませんでした」
実乃莉の背後で先ほどのスタッフが深々と頭を下げている。そちらに振り返り実乃莉は打ち消すように両手を振った。
「いえ。私は何も……」
「本当に申し訳ありません。元はと言えば私がご案内を誤ってしまったこともあり焦ってしまい……」
「大丈夫ですから。むしろ……うまくいきましたし」
実乃莉が笑みを浮かべてそう言うと、男は不思議そうにしながら「本当にありがとうござました」と、礼をして下がって行った。
それから実乃莉は、まだ隣に立っていた龍に向いた。
「助けてくださってありがとうございました」
実乃莉はその場で、誠心誠意頭を下げる。
「そこまで礼を言われるようなことはしてない。とりあえず、立ち話はなんだ。席に戻ろう」
龍はぶっきらぼうにそう言うと先に元いたテーブルに戻っていく。実乃莉もとりあえずそれに続き席についた。龍は険しい表情で窓の外に視線を送っていた。
「あの。どうして急に助けてくださったんですか?」
恐る恐る尋ねると、龍は一つ息を吐きゆっくり実乃莉に顔を向けた。
「あいつがあんまりにもうるさかったからな。それに……公衆の面前で女に土下座させようなんて反吐が出る。それだけだ」
うんざりしたように龍は吐き捨てているが、実乃莉は高木より余程信用できる気がしていた。
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