年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

玖羽 望月

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☆番外編 1☆

旅立ちは突然に⁈ 2

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海と平行に走る幹線道路をしばらく行くと、教えてもらった場所に近づいた。

「あ、そこだね」

◯◯展望台と書かれた標識が見え、俺は指を指す。車は左に曲がり、その先の駐車場に入ると、その向こうに広げる海が見えた。

車から降りると、舗装された駐車場のコンクリートは砂だらけで、柵の向こうにはすぐ砂浜が広がっていた。

そのまま足元をサクサク言わせて海に向かって歩く。最初はなだらかな下りだが、海のそばは波に削られたのか急に下っていて、波がここまで来るんだな、って教えてくれるように砂の色が変わっていた。

俺は司を置いて、先にそこまで降りてみる。
久しぶりに間近で見る海。寄せては返すその独特な音。遠くには水平線と、突き出している半島に、船らしき姿も確認できる。ずっと続く海岸には、犬を散歩させている地元の人らしい姿も見えた。
俺ははしゃぎながら、波打ち際まで近づいてみた。

足、付けてみたいなあ

そう思いながら振り返ると、絶対に波が届きそうにない場所に司は座り込んでいる。

「司~!こっち来ないのー?」

波にかき消されないように大声で叫ぶと、司からは返事はない。

聞こえてないのかな?

またサクサクと砂に足を取られながら司のところへいくと、司は面倒くさそうに俺を見上げた。

「お前はガキか!濡れても着替えねぇから俺は行かない」
「なんだ、ちゃんと聞こえてたんじゃん。えー、せっかくの海なのに~!」

不満タラタラでそう言いながら、俺も司の横に座った。

まぁ、しばらく景色眺めるのもいいか

今日はとにかく天気が良い。濃い青の海の色に続くのは、空の淡いブルー。海からの風もそう強くなく、とても心地よかった。

しばらく何を話すわけでもなくのんびりしていると、後ろから楽しそうな子ども達の声が聞こえてきた。
時間は夕方に差し掛かっていて、学校が終わって遊びに来たのかなぁ?なんてその子達の様子を眺めた。

「若いなぁ……」

砂の重さなどものともせず走り回る子ども達の姿を見て、俺はそう呟く。

「おっさんか、お前は!」

足を投げ出して、倒した体を自分の両腕で支えた姿勢で司も子どもの姿を見ながら俺に突っ込む。

「さすがに小学生みたら若いなって思うでしょ!一回り以上歳違うし」

少し先では、その小学生らしき3人が、波打ちぎわで濡れることも厭わずバシャバシャと走り回っている。

「ま、小学生から見たら、俺達は立派におっさんかもな」

司は、笑うわけでもなくそう答えた。

その時、不意に強く風が吹いた。
そして、「あっ!!」と言う声と共に、1人の子が被っていた麦わら帽子が宙に舞った。

波間に浮かぶのは、茶色い麦わら帽子。子ども達はどこからか棒を拾ってきて、帽子を拾い上げようとつついている。が、次から次へとやってくる波に阻まれ、なかなか上手くいかないようだ。

「俺、ちょっと見てくるよ」

そう言いながら、スニーカーと靴下を脱ぎそこに置く。

「へいへい。お前ならそう言うと思ったよ」

司は体勢を崩すことなく呆れたようにそう言った。俺はそれに返事をすることなく砂浜を海側に向かって歩いた。

「大丈夫?手伝おうか?」

俺がそう声を掛けると、3人は一斉に振り向いた。皆、半袖短パン姿で、早くも日に焼けた肌をしていて健康そうだ。

「ほんと?ありがとう!」

棒を持っていた男の子が、助かったとばかりに棒を俺に差し出した。

と言うか……近づいたら普通に取れそうなんだけどな

帽子はちょうど波が引いた辺りに浮かんで漂っている。俺はジーンズの裾を上げられるだけ上げると、波の引き際を狙ってそこに近づいた。

「アッ!そこ、急に深くなってるの!」

様子を見守っていた子のうち一人が慌てたようにそう声を上げた。

「えっ?」

よくよく目を凝らしてみると、確かに波が引いた向こう側から海の色が濃くなっていて、何となく深くなっていそうな感じがした。

だからこの子達も近づけなかったのか

さすが近所の子達だ。ちゃんとそういう危ないところは教えられているらしい。
俺は棒を持ったまま振り返ると、それを振りながら声を張り上げた。

「司ー!ちょっと手伝ってよー!」

少し高い場所に座る司は、明らかに顔を顰めているが、仕方ないとばかりに靴を脱ぎ、ゆっくりこちらに向かって来た。

「なんだよ、ったく!」

不機嫌そうな顔をしている司に構うことなく俺は司の手を引き帽子に近づいた。

「俺が海に落ちないように引っ張ってくんない?もうちょっとなんだよね」
「あぁ?面倒くせーな」

司はそう言いながらも、俺の手首を掴んでくれた。
足元では波が結構な勢いで砂を攫い、足を取られそうになる。ふくらはぎあたりまで海に浸かりながら、ゆっくり帽子に近づいて俺は棒を差し出した。

「もう……ちょっとっ……」

精一杯腕を伸ばしてそう言う俺の耳に届いたのは、子ども達の叫び声だった。

「危ないよ!!」

え?

と思っている間に急に目の前の海面が大きく持ち上がり、俺達を突然大波が襲った。

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