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☆番外編3☆
honey moon 16
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この旅行のメインイベントを控えたさっちゃんの瞳は、これ以上ないくらいにキラキラ輝いていた。
こんな顔、前にも見たなぁ……
と思い返して、それがこの旅行先のプランを考えていたときだと思い出した。
結婚式が決まったあと、必然的に旅行はどうしよう?となった。俺がニューヨークに連れて行って友人達に合わせたいと言ったら、さっちゃんは二つ返事でOKしてくれた。で、さっちゃんに『他に行きたいところない?』って聞いたら、恥ずかしそうにしながら口にしたのが、今着いたこの場所だった。もちろん俺は予想していたその場所に、笑顔で『うん、行こう。本場には行ったことないし』と答えたのだ。
日本には2つあるテーマパーク。さっちゃんの大好きな場所だ。5月のさっちゃんの誕生日には、パークに隣接するホテルに宿泊してお祝いした。そして、俺もさっちゃんと同じように年間パスポートを買って、ちょくちょく足を伸ばすようになった。
本場には4つのテーマパークがあり、2泊3日だと全部周りきれそうにないけど、2人でネットやガイドブックを眺めながら綿密に計画を立てたのだ。さっちゃんは、仕事?って言うくらい真剣に考えていて、本当に好きなんだなぁと微笑ましくなった。
「じゃ、まず耳買いに行こうよ!耳!」
エントランスに入ってすぐ、さっちゃんの手を引いてそう促す。
「えっ!長門さんに言ってたの、冗談じゃなかったの?」
歩きながらさっちゃんは驚いていて、俺はそれに笑いながら返す。
「司に言ったのはさすがに冗談だよ?さっちゃんに付けて欲しいな。日本じゃしてくれないし。ここならいいでしょ?知ってる人に会う確率は限りなく低い」
テーマパーク内で売られているカチューシャ。絶対似合うだろうから付けて見せてとお願いしても、さっちゃんは『知ってる人に見られたら恥ずかしい』と頑なに付けてくれない。だから、ここでは絶対付けてもらおうと俺は目論んでいた。
「本当にしなきゃダメ?」
カチューシャが並ぶコーナーの前に来ても、さっちゃんはまだ戸惑っている。
「さっちゃんが嫌なら無理強いしないけど……。見たかったな……。可愛い耳を付けた可愛いさっちゃんを……」
大袈裟に肩を落としながらそう言うと、さっちゃんは「わ、わかったよ!今回だけだよ?」と仕方ないとばかりに溜め息を吐きながら答えた。
「やった!じゃあどれにしようか?」
笑顔で顔を上げて、目の前のカチューシャを物色し始めると、「もう!睦月さん子どもみたい!」とさっちゃんは頰を膨らませていた。
念願の、可愛い耳を付けたさっちゃんとパーク内を周っているわけだけど、今日のさっちゃんは見たこともないくらいアクティブだ。
「睦月さん、次こっちね!」
俺のほうが手を引かれながら、それに従う。
今日は移動もあったから取れる時間は半日ほどだ。だから、日本にもあるテーマパークと似たところに来た。向こうと同じアトラクションも多い。そしてさっちゃんは、いつもはほとんど乗りたがらないアトラクションに、今日は珍しく乗りたがった。
「さっちゃん……もしかして、絶叫系、好きなの?」
3大マウンテンと呼ばれるジェットコースターを2つ制覇したあたりで俺は尋ねる。
「えっと……。実は。……睦月さん、苦手ならもうやめとく?」
「いや、苦手ってほどじゃないけど、久しぶりすぎて」
思い起こすと、そんなアトラクションに乗るのは学生時代以来かも知れない。いったい何年振りなのやら。
にしても、今まで何度か一緒にテーマパークに行ってるのに、なんで乗ろうとしなかったんだろう?と思って尋ねると、さっちゃんから返ってきたのはこうだった。
「並ぶのが面倒だったの。それに何回も乗ってるし、いいかなって」
確かに、乗り慣れてそうなのは見てわかった。俺が引き攣った顔で乗っている横で、さっちゃんはすこぶる笑顔で乗っていたから。
「せっかくだから全部制覇するよ。さっちゃんも乗りたいんでしょ?」
次の場所に向かいながら尋ねると、さっちゃんは恥ずかしそうに頷く。
「よし!じゃ、次行こっか」
今後はさっちゃんの手を引っ張るように自分が先を歩く。
「無理しないでね?」
「大丈夫!楽しもうね?」
アトラクション以外にショーやパレードを楽しみつつ、閉園間際まで楽しんだ。
俺の場合、最後の最後に乗った、残りのマウンテンを除いて。
「俺……三半規管弱いの実感した、かも」
真っ暗な宇宙空間を走るコースターは、行先が見えず翻弄されっぱなしで、降りたころにはヨロヨロだった。平然としているさっちゃんの隣で、俺は情け無い表情をしたまま歩いていた。
「格好悪いところ見せたよね」
自分に呆れながら、はぁ~と息を吐いて言うと、さっちゃんは俺を見上げて笑顔を見せた。
「そんなことないよ?私、そんな睦月さん……可愛いって思ってるから」
「俺は……さっちゃんの意外な姿が格好いいなぁって思ってる」
俺達はそう言い合いながら、顔を見合わせ笑った。
こんな顔、前にも見たなぁ……
と思い返して、それがこの旅行先のプランを考えていたときだと思い出した。
結婚式が決まったあと、必然的に旅行はどうしよう?となった。俺がニューヨークに連れて行って友人達に合わせたいと言ったら、さっちゃんは二つ返事でOKしてくれた。で、さっちゃんに『他に行きたいところない?』って聞いたら、恥ずかしそうにしながら口にしたのが、今着いたこの場所だった。もちろん俺は予想していたその場所に、笑顔で『うん、行こう。本場には行ったことないし』と答えたのだ。
日本には2つあるテーマパーク。さっちゃんの大好きな場所だ。5月のさっちゃんの誕生日には、パークに隣接するホテルに宿泊してお祝いした。そして、俺もさっちゃんと同じように年間パスポートを買って、ちょくちょく足を伸ばすようになった。
本場には4つのテーマパークがあり、2泊3日だと全部周りきれそうにないけど、2人でネットやガイドブックを眺めながら綿密に計画を立てたのだ。さっちゃんは、仕事?って言うくらい真剣に考えていて、本当に好きなんだなぁと微笑ましくなった。
「じゃ、まず耳買いに行こうよ!耳!」
エントランスに入ってすぐ、さっちゃんの手を引いてそう促す。
「えっ!長門さんに言ってたの、冗談じゃなかったの?」
歩きながらさっちゃんは驚いていて、俺はそれに笑いながら返す。
「司に言ったのはさすがに冗談だよ?さっちゃんに付けて欲しいな。日本じゃしてくれないし。ここならいいでしょ?知ってる人に会う確率は限りなく低い」
テーマパーク内で売られているカチューシャ。絶対似合うだろうから付けて見せてとお願いしても、さっちゃんは『知ってる人に見られたら恥ずかしい』と頑なに付けてくれない。だから、ここでは絶対付けてもらおうと俺は目論んでいた。
「本当にしなきゃダメ?」
カチューシャが並ぶコーナーの前に来ても、さっちゃんはまだ戸惑っている。
「さっちゃんが嫌なら無理強いしないけど……。見たかったな……。可愛い耳を付けた可愛いさっちゃんを……」
大袈裟に肩を落としながらそう言うと、さっちゃんは「わ、わかったよ!今回だけだよ?」と仕方ないとばかりに溜め息を吐きながら答えた。
「やった!じゃあどれにしようか?」
笑顔で顔を上げて、目の前のカチューシャを物色し始めると、「もう!睦月さん子どもみたい!」とさっちゃんは頰を膨らませていた。
念願の、可愛い耳を付けたさっちゃんとパーク内を周っているわけだけど、今日のさっちゃんは見たこともないくらいアクティブだ。
「睦月さん、次こっちね!」
俺のほうが手を引かれながら、それに従う。
今日は移動もあったから取れる時間は半日ほどだ。だから、日本にもあるテーマパークと似たところに来た。向こうと同じアトラクションも多い。そしてさっちゃんは、いつもはほとんど乗りたがらないアトラクションに、今日は珍しく乗りたがった。
「さっちゃん……もしかして、絶叫系、好きなの?」
3大マウンテンと呼ばれるジェットコースターを2つ制覇したあたりで俺は尋ねる。
「えっと……。実は。……睦月さん、苦手ならもうやめとく?」
「いや、苦手ってほどじゃないけど、久しぶりすぎて」
思い起こすと、そんなアトラクションに乗るのは学生時代以来かも知れない。いったい何年振りなのやら。
にしても、今まで何度か一緒にテーマパークに行ってるのに、なんで乗ろうとしなかったんだろう?と思って尋ねると、さっちゃんから返ってきたのはこうだった。
「並ぶのが面倒だったの。それに何回も乗ってるし、いいかなって」
確かに、乗り慣れてそうなのは見てわかった。俺が引き攣った顔で乗っている横で、さっちゃんはすこぶる笑顔で乗っていたから。
「せっかくだから全部制覇するよ。さっちゃんも乗りたいんでしょ?」
次の場所に向かいながら尋ねると、さっちゃんは恥ずかしそうに頷く。
「よし!じゃ、次行こっか」
今後はさっちゃんの手を引っ張るように自分が先を歩く。
「無理しないでね?」
「大丈夫!楽しもうね?」
アトラクション以外にショーやパレードを楽しみつつ、閉園間際まで楽しんだ。
俺の場合、最後の最後に乗った、残りのマウンテンを除いて。
「俺……三半規管弱いの実感した、かも」
真っ暗な宇宙空間を走るコースターは、行先が見えず翻弄されっぱなしで、降りたころにはヨロヨロだった。平然としているさっちゃんの隣で、俺は情け無い表情をしたまま歩いていた。
「格好悪いところ見せたよね」
自分に呆れながら、はぁ~と息を吐いて言うと、さっちゃんは俺を見上げて笑顔を見せた。
「そんなことないよ?私、そんな睦月さん……可愛いって思ってるから」
「俺は……さっちゃんの意外な姿が格好いいなぁって思ってる」
俺達はそう言い合いながら、顔を見合わせ笑った。
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