上 下
157 / 183
そして、いつまでも

2

しおりを挟む
ガラガラと部屋の引き戸が開くと、私の顔を見て一斉に2人が飛び込んで来た。

「「ママっ!」」
「いらっしゃい。待ってたわよ?」

私はそう2人に笑いかけた。

ソファに座る私の両脇にいるのは、もうすぐ4才で、最近はすっかりお姉さんになってきた娘。そして、赤ちゃんから子どもに成長した2才を過ぎた息子。私の可愛い子ども達だ。

「2人とも早いよ!」

そう言いながら遅れて入って来たのは睦月さんだ。

「ママ。赤ちゃん?だれ?」

私の横に座り、娘が尋ねる。

「はーちゃんの弟よ?よろしくね?」

私は自分の腕に抱く、産まれたばかりの新しい家族の顔を見せる。

「可愛いね!」

その顔を覗き込み、娘はそう声を上げた。反対側では、睦月さんが息子を膝に乗せ同じように見ている。

「本当に可愛いよ。さっちゃん、ありがとう」

睦月さんは顔を上げると、私にそう言って微笑みかけてくれた。その顔を見て、私は娘が産まれたとき、泣きながらそう言ってくれた睦月さんを思い出していた。

結婚して、いや、する前から、子どもをどうするかっていう話はしていた。でも話というほどでもなく、お互いの思いは同じだった。

そして、自分でも驚くほど早く訪れてくれた娘。7月の終わりが予定日だったけど、産まれたのは8月。
慣れない育児を睦月さんや、周りの人達の手を借りて乗り越えた。と言っても、きっと育てやすい子だったと思う。でも不意に訪れた赤ちゃん返りに悩まされもした。

その娘が2才になる前の4月の終わりに産まれたのが息子。1人だとできたことも2人になると途端に大変になったり、保育園が見つからず、しばらく2つの園に送り迎えしたり、なんてこともあった。
でも、睦月さんはいつでも一緒にそれを乗り越えてくれたのだ。

「睦月さん。この子の名前、考えてくれた?」
「うん。顔みたら、やっぱりこれだなって」

そう言うと、睦月さんはポケットから小さな紙を取り出した。

「……素敵な名前」

そこに書いてある文字を見て、私は笑みを浮かべそう言った。

「また、増えたね。月の名前が。俺達の家族が」

睦月さんはそう言って、穏やかな優しい顔で子ども達を見る。

そこには、娘の葉月はづき、息子の羽月うづき、そしてまた一人、私達の元にやってきてくれた渚月なつきの顔がある。


──月の名前。それは私達の、大事な家族……だ。


Fin

next   番外編
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

評判が悪い妹の婚約者と私が結婚!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:2,190

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:2

病室で飼われてます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:303

何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:478

嘘つき同士は真実の恋をする。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:77

処理中です...