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振り返った睦月さんは、本当に素敵だった。オーソドックスな黒のタキシード姿だけど、私にとっては世界中の誰よりも格好いい人だと思う。
穏やかで、でも表情豊か。笑うと目尻に皺が寄る。そんな睦月さんが私は大好きだ。私は今、改めてそんなことを思っていた。

「あのね?ヘアアレンジしてくださったかたが百合さんに写真送りたいって。一緒に撮ってもらおう?」

私がそう言うと、睦月さんは私を見下ろしたまま微笑んだ。

「そうだね。百合ちゃんにも紫音にも見てもらおう。どこにいるの?」
「えっと、扉のところかな?」

私がそう答えると、それを確かめるように睦月さんは顔を上げ、私の後ろに視線を送り「あ、」と声を上げた。

「どうしたの?」
「いや……。呼んでないのにギャラリーが……」

決まりの悪そうな顔をする睦月さんに、私も振り返る。扉のすぐそこに、一緒にここに来たかた、それから担当のスタッフさん、そして何故かカメラを持った、それも望遠レンズの……長門さんに、希海さんの姿もあった。

「絶対さっき俺が泣いてたところ撮ってたよ、あれ。なんで望遠?」
「長門さんは、絶対お見通しだったかも。睦月さんのこと、私より知ってるもの」

笑いながら手を繋ぎ、私達は扉に向かって歩き出した。


「ではそろそろお式の時間です。ご移動お願いします」

しばらく2人のプロによる撮影会が行われ、百合さんにも無事に写真を送ってもらうと、微笑みながらスタッフさんに促される。チャペルには庭から向かえる。先にゲストの2人が向かい、私達はそのあとに続いた。

「ようやく主役の登場か。待ちくたびれたぞ」

チャペルの前で私達を見るなり、お父さんがソワソワした様子で口を開いた。

「さっちゃん、今日は一段と綺麗よ?お姫様みたいね」

お母さんはニコニコと私にそう言った。

そんな私達親子を見ながら、「じゃあ、俺は向こうで待ってるからね」と睦月さんは先にチャペルに入って行く。
開かれた扉の前まで私が進むと、お母さんは私と向かいあった。それを合図に私が屈むと、お母さんは後ろに垂れ下がっていたベールをゆっくりと持ち上げて私の前に下げてくれた。

「さっちゃん。私達の子どもになってくれてありがとう。幸せになるのよ?」

担当さんに『涙は堪えてください』なんて言われてたけど、そんなの無理だ。あっという間に涙が滲んで行く。

「咲月。行こう」

お父さんはバージンロードの前で腕を差し出してくれた。

私も、2人の子どもに生まれて幸せだよ?

そんな思いを胸に、私はその腕を取った。
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