年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

玖羽 望月

文字の大きさ
上 下
153 / 183
37

9

しおりを挟む
振り返った睦月さんは、本当に素敵だった。オーソドックスな黒のタキシード姿だけど、私にとっては世界中の誰よりも格好いい人だと思う。
穏やかで、でも表情豊か。笑うと目尻に皺が寄る。そんな睦月さんが私は大好きだ。私は今、改めてそんなことを思っていた。

「あのね?ヘアアレンジしてくださったかたが百合さんに写真送りたいって。一緒に撮ってもらおう?」

私がそう言うと、睦月さんは私を見下ろしたまま微笑んだ。

「そうだね。百合ちゃんにも紫音にも見てもらおう。どこにいるの?」
「えっと、扉のところかな?」

私がそう答えると、それを確かめるように睦月さんは顔を上げ、私の後ろに視線を送り「あ、」と声を上げた。

「どうしたの?」
「いや……。呼んでないのにギャラリーが……」

決まりの悪そうな顔をする睦月さんに、私も振り返る。扉のすぐそこに、一緒にここに来たかた、それから担当のスタッフさん、そして何故かカメラを持った、それも望遠レンズの……長門さんに、希海さんの姿もあった。

「絶対さっき俺が泣いてたところ撮ってたよ、あれ。なんで望遠?」
「長門さんは、絶対お見通しだったかも。睦月さんのこと、私より知ってるもの」

笑いながら手を繋ぎ、私達は扉に向かって歩き出した。


「ではそろそろお式の時間です。ご移動お願いします」

しばらく2人のプロによる撮影会が行われ、百合さんにも無事に写真を送ってもらうと、微笑みながらスタッフさんに促される。チャペルには庭から向かえる。先にゲストの2人が向かい、私達はそのあとに続いた。

「ようやく主役の登場か。待ちくたびれたぞ」

チャペルの前で私達を見るなり、お父さんがソワソワした様子で口を開いた。

「さっちゃん、今日は一段と綺麗よ?お姫様みたいね」

お母さんはニコニコと私にそう言った。

そんな私達親子を見ながら、「じゃあ、俺は向こうで待ってるからね」と睦月さんは先にチャペルに入って行く。
開かれた扉の前まで私が進むと、お母さんは私と向かいあった。それを合図に私が屈むと、お母さんは後ろに垂れ下がっていたベールをゆっくりと持ち上げて私の前に下げてくれた。

「さっちゃん。私達の子どもになってくれてありがとう。幸せになるのよ?」

担当さんに『涙は堪えてください』なんて言われてたけど、そんなの無理だ。あっという間に涙が滲んで行く。

「咲月。行こう」

お父さんはバージンロードの前で腕を差し出してくれた。

私も、2人の子どもに生まれて幸せだよ?

そんな思いを胸に、私はその腕を取った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

クリスマスに咲くバラ

篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜

玖羽 望月
恋愛
 親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。  なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。  そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。  が、それがすでに間違いの始まりだった。 鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才  何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。 皆上 龍【みなかみ りょう】 33才 自分で一から始めた会社の社長。  作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。 初出はエブリスタにて。 2023.4.24〜2023.8.9

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...